🐦 本例は”右室肥大”を伴う閉塞性肥大型心筋症
- Ⅳ音と収縮期駆出性雑音の組み合わせは閉塞性肥大型心筋症の特徴.理論上は大動脈弁狭窄でも生じるが,大動脈弁狭窄では駆出性雑音がもっと広い範囲で聴取できる.
- Ⅳ音は肥大型心筋症では明瞭であるが,大動脈弁狭窄では通常は不明瞭(大きな収縮期駆出性雑音のため最小可聴値曲線が歪み低調音は認識が難しいため=マスキング効果)
- 肥大型心筋症でも閉塞性であれば雑音がありⅣ音の認識は難しくなるが,大動脈弁狭窄とは比べ物にならない(練習すればⅠ音直前の引っかかり=Ⅳ音を認識できる様になる)
- 通常はⅣ音は心尖部に限局する低調音として認識されるが,広範囲で聴取することがある(本例では2R~胸骨左縁~心尖部 ➜ どこでもⅣ音).その場合は右室肥大を伴う肥大型心筋症が多い.
🐧 おまけ
- 本ビデオを注意深く聴くと,3Lで4心拍目にⅡ音直後の過剰音に気がつく.心音図ではⅡ音から約200ms後に低調〜高調な成分を含む過剰音がある.もちろんこれはⅢ音ではなくてアーチファクトである.心音や心音図にはこのようなノイズが混入しやすいため常に再現性を重視する.
- 大動脈弁狭窄では,閉塞性肥大型心筋症と異なり,雑音が頸部や鎖骨に放散するため両疾患の鑑別に利用できる.しかし大動脈弁硬化が存在すると肥大型心筋症でも雑音が上方に放散するため注意を要する(特に高齢者).
(松下記念病院 川崎達也)
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