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2024-01-01

急性MR vs 心雑音

  • 急性の大動脈弁逆流 AR では左室の拡張期圧が急速に上昇します.その結果,逆流が早期に終了するため,心雑音を認識することがますます難しくなります(自験例).実際に心エコー図でも逆流シグナルの検出が容易ではない症例があります(自験例).
  • 急性の僧帽弁逆流 MR でも同様の現象が推察されますが,ARは拡張期でMRは収縮期と根本的に異なります.以前経験した検索断裂による急性 MR の自験例ではとても大きな雑音でした(拡張期クリックもあり).そこでこの疑問の答えを確かめてみました 👶

🔎 Acute MR vs murmurs
  • 心筋梗塞を発症30日以内に心エコー図を行った773例の検討では,中等度または重度のMR患者の1/3は聴診で心雑音を認めなかった(Circulation 2005;111:295-301
  • 急性心筋梗塞時に乳頭筋断裂による重症の僧帽弁逆流を発症したにも関わらず,心雑音を呈さなかった2例報告(Ann Thorac Surg 1991;52:296-9
  • 急性MRで血行動態が著しく悪化した場合,収縮中期に左心室圧と左房圧が等しくなるため雑音は減弱あるいは消失しうる.重症の呼吸困難患者の救急状態で減弱した心雑音を認識することは困難である(Heart 2019;105:671-7
  • 心筋梗塞に伴う急性MR雑音の強さとMRの重症度には直接的な相関はない.心拍出量の低下した患者では収縮期のLVとLA間の圧勾配が低下するため雑音はソフトあるいは消失することもある(Journal of Acute Disease 2016;5:96-101
  • 急性MRでは収縮期早期の短い雑音のみで診断が臨床的に困難になる.これは非コンプライアントの左房で大きなv波が発生し,LAとLVの圧が収縮期で基本的に等しくなり収縮期初期以降に僧帽弁を横切る逆勾配がなくなるためである(European Society of Cardiology, E-Journal of Cardiology Practice - 2018;16

松下記念病院 川崎達也)

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