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2024-08-29

今週の一枚 🎯

利尿薬抵抗性の下腿浮腫を訴える症例

✋ 末梢表在静脈の怒張
  • 机上で手背静脈が怒張 ➜ 中心静脈圧上昇?
  • ただし第二関節(PIP関節)に皺 ➜ 脱水?
  • 挙上(心臓より上)で手背静脈の怒張消失
  • いわゆる座位アンサム徴候は陰性と判断
  • 本例の最終的な診断は肺高血圧(CTEPH
😀 コメント
  • 末梢表在静脈は静脈弁や筋肉の影響などで,頚静脈ほど中心静脈圧を正確に反映しないと思われています(多分).
  • しかし末梢静脈圧と中心静脈圧を侵襲的に同時測定した研究では両者の差はわずか<1 mmHgでした(過去の投稿
  • 本例では利尿薬である程度コントロールされた肺高血圧の病態を,末梢静脈が比較的忠実に反映していたと思われます.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎達也)

2024-08-26

ついにデータが...

  • 心臓アミロイドーシスでは左室肥大を呈するにも関わらずⅣ音(S4)があまり認められません.おそらく心房筋にもアミロイドが沈着して心房の機能が低下しているためと考えられます.ただしいずれもエキスパートオピニオン 😐
  • 今回,高知大学の山崎先生らのグループがこの問題に対する自験例での解析結果を報告されました(ESC Heart Fail 2024 Aug 1. Online ahead of print).とても素晴らしい臨床研究なので本コンテンツにもアップしておきます😁

  • 対象 心音図を施行したATTRwt-CM患者76名(平均80歳)を後向きに評価
  • 方法 S4あり洞調律(SR),S4なしのSR,非SRの3群の臨床背景と予後を検討
  • 結果 SR患者でS4あり例はS4なし例よりBNPが低値で左房の収縮機能が保持
  • 予後 S4なしSR例は他2群と比較し短期予後不良(一般化ウィルコクソン検定)
  • 結論 S4の欠如(SR患者の53%)はATTRwt-CM患者の短期予後不良の前兆



👉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2024-08-22

酷暑もあと少し?

虚血性心疾患でフォロー中の症例(座位)

😊 解説
  • 外頚静脈を明瞭に視認(矢印) ➜ 静脈圧上昇?
  • ネックックーラーを外すと外頚静脈は視認不能
  • 深吸気負荷で内頚・外頚静脈ともに視認できず
  • フィジカル所見から心不全状態ではないと判定
  • 自覚症状はなく予定採血のBNP値も正常範囲内
  • 最終的に首掛けクーラーによる偽陽性と考えた
👔 ネッククーラー
  • このneck coolerがいつ頃から使われているのか知りませんが(首かけ扇風機よりは後発?),今年は特に見かけるようになりました.保冷剤による冷却効果だけではなくて,冷却プレートへの通電で直接冷やすタイプもあるようです.
  • 本症例には心不全の既往はなかったのですが,今までなかった外頚静脈が目立ち「あれっ?」と思いました.しかしネッククーラをしたままで吸気負荷を追加したら外頚静脈は見えなくなりました(上記動画には含まれていません).
  • 長い歴史をかけて磨き上げられた身体所見ですが,時代とともにアップデートしていく必要があります.コロナ禍以降は診察室でもマスク装着がスタンダードになったため,それを加味した判定などです(一例:マスクでマスク

松下記念病院 川崎達也)

2024-08-19

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


👻「フィジカル講習会」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2024-08-15

左優位② Lefty JVP (part 2)

労作時の息切れを訴える女性(座位)

😐 解説
  • 頸部の左側が周期的に拍動している(矢印)
  • 触診で静脈性の拍動を確認(心不全と診断)
  • 深吸気で右側にも明瞭な拍動が出現(矢頭)
  • 本例は最終的に心不全(PEF)と診断された

💙 なぜ左?
  • 左側優位の内頚静脈拍動は稀です.今までに内臓逆位(ココ)やペースメーカ(ココ)に関連した症例を経験したことがあります.
  • 本例には乳がんの手術歴がありました(ただし術式は未確認).また胸部CTでは右腋窩〜頚部のリンパ節郭清が示唆されました.
  • 本例ではこれらの影響で安静時に左側の内頚静脈の拍動が目立ったのかもしれません(もっとも吸気後は右側が目立ちましたが...😯)

松下記念病院 川崎達也)

2024-08-12

👴 歴史クイズ

(Public Domain)



松下記念病院 川崎達也)

2024-08-08

👺 低下だけではありません

心雑音と動悸で受診した症例

💀 解説
  • ABI(足関節上腕血圧比)低下なし(むしろ高値)
  • 下肢血圧が高値(通常は下肢が10~20mmHg↑)
  • その差>20mmHgでヒル徴候(Hill's sign)陽性
  • 心エコー図では右冠尖bending+重症AR(下図)


👀 ヒル徴候(Hill's sign)
  • 英国の生理学者Sir Leonard Erskine Hill(1866–1952)が発見(過去の投稿).一回拍出が増加した速脈で出現することがある.ただしその機序はシンプルではない(過去の投稿).
  • 臨床現場ではヒル徴候は大動脈弁逆流に多い(60mmHg以上の差なら重症AR).肥満低換気症候群 OHS に生じた高心拍出性の心不全でヒル徴候が陽性だった症例の経験あり(ココ).
  • ABI低下の有無を見る検査のため,実際の血圧値をあまり見ていない方も少なくないのでは?(投稿者を含む😓)本例のような症例もあるためABI値だけでなくて実測値も要確認.
  • なおABI検査は心音マイクを装備しているので簡易な心音計として活用可能です.特にマイクを心尖部に置けば,過剰心音を描出してくれます(当院の研究).ただし雑音は苦手?

松下記念病院 川崎達也)

2024-08-05

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


👻「フィジカル講習会」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2024-08-01

S字状+α

息切れと動悸を自覚する症例

😋 反跳脈(Bounding pulse)+心室三段脈(Ventricular trigeminy)
  1. 上腕にS字状の周期的な隆起(矢印)
  2. 触診で動脈性拍動であることを確認
  3. 3回拍動+期外収縮+代償性休止期
  4. 心電図では予想通りPVC(三段脈)
  5. エコーでは重症の大動脈弁逆流 AR

💁 本例の経過
  • 本例は数年前に検診で心雑音を指摘され医療機関を初めて受診されました.この時は往復雑音で息切れなどの自覚症状は全くなかったようです.
  • 心エコー図で重症の大動脈弁逆流(おそらく右冠尖の屈曲 bending)を指摘されました.上記の反跳脈はその数年前から自覚されていたようです.
  • 初診から5年ほどして息切れと動悸感が出現し,心電図でPVC頻発+BNP値上昇(それまでは正常範囲内).ご本人も弁置換術に同意されました.

松下記念病院 川崎)