このブログを検索

2024-05-30

e-casebook「心不全のフィジカル」

  • 先日,e-casebookで「心不全のフィジカル」についてお話をさせていただきました.心不全症例が呈する様々な身体所見の中から,頚静脈の座位定性法に特化した内容です.
  • 目標は心不全の共通言語として「座位で頚静脈が見えます」の普及です.本人~家族,救急隊員,訪看スタッフ,診療所,病院の各間で,より迅速かつ円滑な対応が望めます.
  • 登録(無料)が必要ですが,よろしければご覧ください(視聴サイト).貴重な機会なので新アプリ「シンプル頚静脈」も作成し,講演中に公開しました(QRコードを提示).


e-casebook(© Heart Organization.Co.,Ltd.)は、循環器内科(Cardiology)・整形外科(Orthopedics)・脳神経外科・内科(NS , Neuro)・消化器外科・内科(GI Surgery , GI)をはじめとするいろいろな分野の医師が知⾒を深める支援をしています。トップレベル医師による⼿術・手技、レクチャーなど実践的な内容で専門医が学べるライブ・ビデオ配信サービス「e-casebook LIVE」やDICOM画像をもとにWeb上で症例検討ができるディスカッションプラットフォーム「e-casebook FORUM」を運営しています。(e-casebook HPより文言そのまま)

松下記念病院 川崎達也)

2024-05-27

頚静脈波曲線と三尖弁逆流:覚書

  • TRの頚静脈波曲線はLancisiが初記載(De Motu Cordis et Anetlryslnatibus. Roma,1728)
  • 軽症はx谷浅化+v波増高(共に早期出現),中等症は収縮期波(s波),重症は心室化
  • ただし頚静脈波曲線のTRパターンは心房細動ならTRがなくても30%以上に出現(下図)
  • 開心術後の症例では三尖弁逆流が存在しなくても通常的に三尖弁逆流パターンが出現
  • 原因として心膜の影響?(左心膜完全欠損例では典型的な三尖弁逆流パターンが出現)
  • 術後の心室中隔奇異性運動や右房(切開に伴うコンプライアンス低下)なども関与?

参考)循環器フィジカルイグザミネーションの実際(文光堂),他

- AF例の頚静脈波曲線 -

松下記念病院 川崎達也)

2024-05-23

頸静脈の立位負荷

弁膜症で開心術の既往がある症例


松下記念病院 川崎達也)

2024-05-20

最近の耳学問 👂

  • 「太った?」の簡単な確認はベルトサイン(穴が一つずれた)や指輪サイン(抜けにくくなった)
  • ミルリノン(医薬品添付文書)は左心不全の治療薬であるが右心機能もサポート
  • 血清hCG(Human chorionic gonadotropin/ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が2000以上(+超音波検査で胎嚢なし)なら異所性妊娠を考慮
  • 閉塞性肥大型心筋症の頸動脈所見 spike and dome pattern は dart and dome pattern とも称される(ダーツ矢のdart)
  • 心尖部の血栓が疑われるときはコンパウンドをオフにする(空間コンパウンドは多方向の超音波を合成する画像処理で,デフォルトはオンが多い)
  • Eclipsed MRとは,(左室駆出率が保たれた患者で明らかな誘因なく)一過性にごく短時間生じる急性の機能性僧帽弁逆流(eclipseは日蝕や月蝕の蝕)
  • 感染性心内膜炎の7-8割に貧血を認める(ただしエビデンスとして確認できず...😂)
  • サッケード(saccade)とは高速な眼球運動のことで,物体を網膜中心窩で捉えることに寄与(適切なフィードバックがあるため視界はブレない)
  • 近代哲学の祖であるドイツのカント(1724-1804)は夏も冬も朝4時55分に起きていた(どうでもいいことですが投稿者も全く同じだったので...😅)

💁 耳学問に関する過去の投稿 ➜ コチラ(松下ERランチ・カンファレンスに移動)

松下記念病院 川崎達也)

2024-05-16

心音クイズ(Q1・Q2)

  • 持田製薬さんと心音クイズを作成しました(GROUP T inc.さんにも感謝 🙏).初回は重要心雑音の2症例で,6領域の実際の心音+ポイントとなる2領域の心音図です.基本的な解説に加えて,一歩踏み込んだコメントを心がけました.
  • 今後も3ヵ月毎に2症例ずつアップする予定です(次回は2024年7月).無料なのでよろしければ是非ご覧ください(次回以降は簡単な登録が必要になるようですがコストは掛かりません).予定は1年ですが好評なら延長されるかな...😁


松下記念病院 川崎達也)

2024-05-13

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


👻「フィジカル講習会」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2024-05-09

有名も役立たず?

息切れ症例の心尖拍動

😐 偽ブロードベント徴候(Pseudo Broadbent's sign)
  • 臥床(20度ヘッドアップ)で心尖部拍動を視認(矢印)
  • 拍動は陥凹で時相は収縮期(背後のモニター音に注目)
  • 最終的に本例は心房中隔欠損による心不全と診断した

😕 独り言
  • 心尖拍動の収縮期陥凹は,収縮性心膜炎で出現する所見(ブロードベント徴候/Broadbent sign)として有名です.しかし本例ではクスマウル徴候や心膜ノック音はありませんでした(フリードライヒ徴候は微妙に陽性?)
  • ベットサイド心エコー図では右心系の拡大が少し目立ちましたが,明らかなシャント疾患を検出できませんでした.その後にハイエンド機で再検して,心房間のシャントを認めたため心房中隔欠損による心不全と診断しました.
  • この収縮期陥凹(systolic retraction)は,様々な病態で認めます(自験例1自験例2).収縮性心膜炎で欠くことも多く,個人的には臨床現場であまり役立たない所見(感度も特異度もともに低い)と思っています.

松下記念病院 川崎達也)

2024-05-06

頚静脈 vs 頸静脈

の略字体ですが,個人的には一貫してを使用してきました.これは2000年以後の書籍でも頸静脈と記載されているためです.
  • 心疾患の視診・触診・聴診 2002/5/1 福田 信夫 (著)(アマゾン
  • 循環器フィジカルイグザミネーションの実際 2005/9/1 吉川 純一 (著) (アマゾン)
  • General Physician循環器診察力腕試し―達人の極意,マスター! 2012/9/1 室生 卓 (著)(アマゾン
  • 心エコーハンドブック 別巻 心臓聴診エッセンシャルズ 2012/9/14 坂本 二哉 (著)(アマゾン
  • 循環器Physical Examination: 診断力に差がつく身体診察! 2017/9/25 山崎 直仁 (著)(アマゾン
  • Physical Examinationからみた循環器の病態生理 2022/3/24 林田 晃寛 (著)(アマゾン

  • 日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)では頚静脈を採用していることは知っていました.頚静脈が17か所あり一方,頸静脈の記載はなし.
  • しかし先日,日本医学会医学用語管理委員会が略字体の使用を推奨していることを同僚医師から教えてもらいました.例として頚部頸部を記載(下表).遅ればせながら頚静脈を使用していく決心がつきました.




松下記念病院 川崎達也)

2024-05-02

今週の一枚 🎯

右心カテーテルで意外な疾患が判明した症例

👿 カテ後に身体所見を確認

👾 臨床現場
  • 本例はⅡ音の肺動脈成分が亢進していたため肺高血圧が疑われた.しかし右心カテーテル検査で肺高血圧はなかった.右室の内圧は想定外のdip and plateauを示していた.
  • その後に身体所見を見直すと収縮性心膜炎の軽症〜中等症に合致する所見(重症度分類).明瞭なⅡ音の肺動脈成分は,肺動脈弁領域に限局したノック音であったようだ.
  • いつもながら収縮性心膜炎は一筋縄ではいかない.本例は利尿薬等で安定したため心膜剥離は未施行.ちなみに本例には心尖の収縮期陥凹(ブロードベント徴候)はなし.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎達也)