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2019-08-29
外頸静脈の流れ
慢性左心不全症例の外頸静脈(拡大動画)
👀
解釈
中心静脈圧はおそらく上昇(内頸静脈が見えない時には慎重に判断する必要があるが,外頸静脈の呼吸性変動や血流拍動が確認できれば外頸静脈でも概ね判定可能)
本例で興味深い所見① ➜ 外頸静脈の順行性フローが確認可能(=ビデオ前半で外頸静脈の陥凹が下方へ移動).動脈血流とは異なり頸静脈の血流速度は遅い.
本例で興味深い所見② ➜ 外頸静脈の血流がスムーズではない(=ビデオ後半で外頸静脈壁の不規則な動き).内頸静脈とは異なり静脈弁や皮膚伸展など様々な影響を受ける.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
(
松下記念病院
川崎達也)
2019-08-26
高度肥満
高度肥満(BMI>60)の症例が呼吸困難感でER室に搬入された
💁
現場
酸素飽和度は低下し心不全も鑑別に含まれるが頼みの頸静脈は評価不能
心音は聴診できずベットサイド心エコー図で心臓の描出も困難であった
BNPは100 pg/ml(ただし高度肥満例のBNPは低値になり要注意:
参照
)
➜ 最終的に
肥満低換気症候群
OHSと診断(心不全ではないと判断)
👻
独り言
本例では上肢より下肢の収縮期血圧が100mmHgほど高値でした(=
ヒル徴候 Hill’s sign
陽性).脂肪組織は血管床が豊富であるため肥満低換気症候群 OHSに生じた心不全は高心拍出状態になるようです(
Am J Med 1976;60:645-53
).
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
(
松下記念病院
川崎達也)
2019-08-22
右 vs 左(心尖拍動の舌圧子)
連合弁膜症による慢性左心不全例の心尖拍動
🔎
解釈
心尖拍動は収縮期に陥凹している(中央動画).同所見は収縮性心膜炎で有名であるが本例にはない.左動画では舌圧子が収縮期に体側に移動しているが,右動画では舌圧子が収縮期に外側に動いていることに注目
舌圧子を用いた心尖拍動の評価は”てこの原理”の応用であるため,支点と力点によって作用点の方向や程度が大きく変化することに注意が必要.常に収縮時間>拡張時間を意識(Ⅰ音とⅡ音でも同じ ➜
コチラ
).
本例は聴診でⅣ音とⅢ音あり.視診では心房収縮によるatrial kick(抬起性拍動の直前でⅣ音を反映)は分かりやすいが,左室急速流入によるventricular kick(拍動直後でⅢ音を反映)ははっきりしない(と思う).
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
(
松下記念病院
川崎達也)
2019-08-19
👴 歴史クイズ
(Public Domain)
💁
コリガン
アイルランドの医師Sir Dominic John Corrigan(1802–1880)で,大動脈弁逆流時に出現する頸動脈の急速な怒張と虚脱(
コリガン脈
/Corrigan's pulse)を発見した.
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フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
(
松下記念病院
川崎達也)
2019-08-15
a波と枕の有無
心尖部肥大型心筋症として無投薬でフォローしている症例の頸静脈(左=枕なし/右=枕あり)
👿
解釈
いずれの動画でも内頸静脈で増高したa波が目立つ.これは肥大型心筋症の特徴で,コンプライアンスの低下した心室に対する心房の頑張りを反映している.高さ約10cmの枕(≒10cm血柱)をもろともしない心房のパワーに脱帽.x谷やy谷は枕あり(右動画)の方が観察しやすいと思われるが,これには枕による圧勾配が影響している(と思う).一方,外頸静脈は枕なし(左動画)の方が明瞭に観察できる.
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👴 歴史クイズ
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
(
松下記念病院
川崎達也)
2019-08-12
心音クイズ
【問題】息切れで来院した症例の心音(心尖部で記録).診断は?
1. 正常
2. Ⅰ音の分裂
3. Ⅱ音の分裂
4. Ⅲ音
5. Ⅳ音
判定
👾
解説
Ⅱ音から少し遅れて過剰心音を聴取する(選択枝で合致するのは解答4のⅢ音のみ)
この音だけではⅡ音の分裂との鑑別は少し難しいがⅡ音の分裂はもっと早期に出現
本例は最終的に拡張型心筋症による非代償性の左心不全状態と診断され入院した
※Ⅰ音とⅡ音の鑑別は
コチラ
👀 ただし理屈よりも耳で覚える
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フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
(
松下記念病院
川崎達也)
2019-08-08
頸静脈クイズ
動悸と息切れを訴えて来院した冠動脈バイパス術後の症例
👀
解釈
座位で内頸静脈の明瞭な拍動が鎖骨上に出現 ➜ 中心静脈圧はかなり上昇している
パターンは規則正しい単相性の拍動 ➜ ただし
フロッグ・サイン
🐸ほど早くない
本例は最終的に2:1伝導の心房粗動による慢性左心不全の急性増悪と診断された
👿 コメント
本例の頸静脈拍動は,心房粗動の心房収縮による(逆行する)駆出血流を反映している可能性と右室収縮時の三尖弁逆流(巨大v波=
ランチージ兆候
)を反映している可能性が考えられる.理論的には心音との時相関係で鑑別可能であるが,実際には頻脈時は困難である.
サパイラ先生
も心拍数が毎分100回以上では(初心者は)波形解析を試みないよう述べている(Sapira's Art and Science of Bedside Diagnosis, p363)
frog sign
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
(
松下記念病院
川崎達也)
2019-08-05
胸痛+皮疹で決まりですが…
リウマチ熱による弁膜症に対し大動脈弁と僧帽弁の二弁置換術後例
胸痛と眩暈を訴え循環器内科を受診/明らかな神経脱落症状はない
💁
現場レポート
右胸壁の帯状疱疹であるが眩暈は説明できないと思い耳鼻咽喉科に相談に行った
循環器内科医 「胸壁の帯状疱疹だけど,めまいがひどいから見てくれない?」
耳鼻咽喉科医 「いいですよ.耳鳴りはあるんですか?」
循環器内科医 「耳鳴りはない.顔に水疱もないしハント症候群ではないと思うんだけど…」
耳鼻咽喉科医 「でもハント症候群で顔に水疱がない症例を以前に経験したことがありますよ」
本例は最終的に
ラムゼイ・ハント症候群
の可能性が高いと診断され耳鼻咽喉科で入院
アメナメビル
で治療して合併症なく改善(経過中に胸壁以外の皮膚所見は出現せず)
👾
おまけ
帯状疱疹が3分節以上に広がっていると
播種性帯状疱疹
に分類されるため,接触感染対策に加えて
空気感染の予防
も必要になってくる.帯状疱疹に関しては
ハッチンソン徴候
(Hutchinson's sign)や
帯状疱疹ワクチン
なども知っておきたい.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
(
松下記念病院
川崎達也)
2019-08-02
頸静脈 vs 運動負荷
慢性心不全に対して心臓リハビリテーションの集団監視下運動療法を継続している症例
運動処方(有酸素運動のため嫌気性代謝閾値の測定)目的に心肺運動負荷試験を行った
🔎
解釈
安静時に座位で頸静脈を確認 ➜ 中心静脈圧の上昇(負荷は注意して行うべし)
負荷ピーク時には深吸気でも頸静脈を確認できる ➜ 中心静脈圧は高度に上昇
拍動上縁は負荷終了1分後には顎下 ➜ 5分後には頸部中央(負荷前)まで低下
心エコー図がなくても肺高血圧の程度を推測可 😈 比類なき
頸静脈の簡便さとリアルタイム性
!
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
(
松下記念病院
川崎達也)
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