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2021-08-30
心房細動 vs ギャロップ
ギャロップは馬の最速歩法(襲歩/しゅうほ)であり
規則正しい
リズミカルな音質が特徴
通常は心房細動例のような
絶対不整
(irregularly irregular)ではギャロップは出現しない
しかし頻脈性心房細動でRR間隔のばらつきが減少して
ギャロップ
様に聞こえることがある
心房細動例でギャロップと言う表現の可否は不明(
個人的には音感が似ればOKと思うが
)
ただしGoogle scholarで"gallop * atrial fibrillation"を検索しても,肯定的な結果は得られず
自験例
中年男性で心不全急性期の心音図(赤四角が過剰心音)
※特にRR間隔のばらつきが少ない前半はギャロップのように聞こえる
※ 以前に
松下ERランチカンファレンス
に投稿した内容の更新版です 🎶
(
松下記念病院
川崎達也)
2021-08-26
頸動脈の抬起性隆起 Carotid heave
突然発症した動悸でER室に搬入された高齢者
🍘
解説
心電図を装着する前に頸部の明瞭な拍動に気がついた(なにはともあれ,まずココを見たい)
触診で拍動が動脈であることを確認 ➜ 血圧が保たれる規則正しい頻脈 ➜ PSVTやAFL,PAT?
心電図で逆行性P波を認め発作性上室頻拍(paroxysmal supraventricular tachycardia; PSVT)
バルサルバ負荷は無効であったが
修正バルサルバ負荷
で洞調律に回復し,自覚症状も消失した
内頸静脈は視認せず(治療後は少し陥凹?)/外頸静脈は視認できるが中心静脈圧の上昇なし
🍙
臨床現場
頸部拍動の性状が
コリガン脈
っぽいことを気にしながら治療を開始しました.不整脈の停止後にも
大脈・速脈
が続くため,「大動脈弁逆流や甲状腺機能亢進が合併した上室性不整脈かも…」と思いました.しかし本例は不整脈以外に特記すべき異常所見はなく,最終的に加齢に伴う動脈蛇行による
偽コリガン脈
と考えられました.
🉐
ヒトはいろんなところが拍動します
傍(だけでない)胸骨拍動
肺動脈拍動
お腹を触る
心膜ドレナージ
(
松下記念病院
川崎達也)
2021-08-23
Ⅱ音の肺動脈成分
👭
再確認
肺高血圧ではⅡ音が分裂して後半成分(肺動脈弁由来)が亢進することあり
Ⅱ音は
エルプ領域
(第3肋間胸骨左縁で別名,心臓の窓)での聴診がお薦め
コツは頭で考えずに耳がすぐ反応できるよう聴き込むこと(
心音耳の作成
)
【症例1】
高血圧性心疾患,右脚ブロック
※Ⅰ音が減弱している点にも要注意(心収縮力低下のためと思われる)
【症例2】
陳旧性前壁梗塞,冠動脈バイパス術後
※Ⅰ音も分裂しているがこれは肺動脈駆出音と思われる
※ 以前に
松下ERランチカンファレンス
に投稿した内容の更新版です 🎶
(
松下記念病院
川崎達也)
2021-08-19
R
on T
(
アール
オンティー
)
ならぬ
P
on T
(
ピー
オンティー
)
😊 番外編ですが最近知って,手持ちの心電図を見直したらその通りだったので…
R
on T
(
アール
・オン・ティー)
心室性期外収縮のR波がT波の上に出現 ➜ このタイミングは心室の受攻期で
心室細動
のリスクとして昔から有名
P
on T
(
ピー
・オン・ティー)
心房期外収縮のP波がT波の上に出現 ➜ これも心房の受攻期(?)で
心房細動
のリスクとして最近注目されている
自験例
(赤矢印のP on Tを契機に心房細動に移行)
(
松下記念病院
川崎達也)
2021-08-16
疾患-心音 🐯 虎の巻
👂
再確認にご利用ください
(無料アプリ『
ポケット心音
』にも入っています)
大動脈弁狭窄
➜ 収縮期の駆出性雑音,重症例ではⅡ音が減弱
大動脈弁逆流
➜ 拡張期の灌水様雑音(前屈姿勢で聴取しやすい),重症では直ちに漸減
僧帽弁狭窄
➜ 僧帽弁開放音,Ⅰ音の亢進,拡張期ランブル
僧帽弁逆流
➜ 収縮期の逆流性雑音,Ⅰ音の減弱,重症例ではⅢ音やランブル
僧帽弁逸脱
➜ 収縮中期のクリック音(聞き逃すことが意外に多い)
僧帽弁逸脱+逆流
➜ 漸増する収縮後期の逆流性雑音,クリック音(不明瞭なことも多い)
心不全
➜ 心尖部でⅢ音や奔馬調律(別名ギャロップ,馬の駆けるような音)
拡張型心筋症
➜ Ⅱ音の後にⅢ音を聴取(Ⅰ音減弱やⅣ音聴取も少なくないが・・・)
肥大型心筋症
➜ Ⅰ音の前に明瞭なⅣ音が出現
閉塞性肥大型心筋症
➜ 収縮期駆出性雑音があり期外収縮後に増強
心室中隔欠損
➜ 汎(全)収縮期雑音(Ⅰ音とⅡ音の聴取は難しい)
収縮性心膜炎
➜ 広い範囲で心膜ノック(叩打)音
急性心膜炎
➜ 心膜摩擦音(例:シュポシュポ,カリカリ)
※ 以前に
松下ERランチカンファレンス
に投稿した内容の更新版です 🎶
(
松下記念病院
川崎達也)
2021-08-12
オスラー名言の視覚版
心不全で入院中の症例:端座位 ➜ 前かがみ
🐷
解説
端座位で右鎖骨上に内頸静脈の拍動をわずかに視認可(座位陽性)
内頸静脈拍動は不規則(不整脈や呼吸性:本例では心室期外収縮)
前かがみになると内頸静脈の拍動が増強(陽性波=
ランチシ徴候
)
ビデオ後半で拍動視認の頻度が多い ➜ 心室期外収縮の増加を示唆
👂
臨床現場
回診時に患者さんが「
入院ベットに座って横にある台から物を取ろうとするとしんどくなる
」と教えてくれました.実際にやってもらったのがこの動画です.まさしく前屈時呼吸困難症(
bendopnea
)です.
患者さんから身体所見を教えてもらうことが少なくありません(
自験例1
・
自験例2
・
自験例3
・
自験例4
).
オスラーの名言
"Listen to your patient, he is telling you the diagnosis." のまさに視覚版です.
(
松下記念病院
川崎達也)
2021-08-09
Bendopnea 前屈時呼吸困難症
👻 2年以上前に
松下ERランチ・カンファレンス
にアップした投稿(
ココ
)ですが,この身体所見は
心臓フィジカル広場
にもしばしば登場(
自験例1
・
自験例2
・
自験例3
)しているので更新版を転記しておきます.発音は“bend-op-nee-ah”ですが,pの音は聞こえないことが多いようです(
音声
).
前かがみになった時(例えば靴をはく 👞)に息切れが生じる状態(心不全の症状)
米国の循環器内科医Thibodeauらによる造語(
J Am Coll Cardiol HF 2014;2:24–31
)
右房圧や肺動脈楔入圧の上昇時に前かがみでさらに圧上昇(特に心拍出量低下時)
(
Bendopnea in Wiki
)
図の解説
➜ bendopneaがある心不全例では
Nohria-Stevenson 分類
で予後不良の指標であるProfile C(うっ血所見あり+低灌流所見あり/wet-cold)が多い 💀
(
J Am Coll Cardiol HF 2014;2:24–31
)
(
松下記念病院
川崎達也)
2021-08-05
低下は異常・上昇も異常
息切れと心雑音で循環器内科を紹介受診した症例
😗
ヒル徴候
(Hill's sign)陽性
下肢の収縮期血圧が上肢より>20mmHg高い状態(健常者は下肢が10~20mmHg高)
ヒル徴候陽性は大動脈逆流の診断に対する感度89%,特異度71-100%(
過去の投稿
)
通常は末梢動脈疾患を疑い下肢血圧の低下に注目するが,本徴候は逆に上昇してくる
本例は拡張期雑音があり心エコー図で高度大動脈弁逆流を確認 ➜ 後に弁置換術を施行
👺
機序
(分かるようで分かりにくい?
引用
に一部追加)
血圧は心臓からの駆出波とその反射波の合算から成る
下肢の動脈壁は上肢の動脈壁に比べてより筋成分が多い
さらに下肢動脈は大動脈の直接延長であるが,上肢動脈は約90度の角度で発生
その結果,下肢動脈で圧力波はより高速に伝わり末梢で反射されて駆出波と合流
よって(一回拍出が多い大動脈弁逆流では)下肢血圧が上肢血圧より明らかに上昇
👻大動脈弁の過去の投稿は
コチラ
(PC版なら画面右の分類からも選択可)
(
松下記念病院
川崎達也)
2021-08-02
心音クイズ
息切れで来院した症例
😀
解説
聴診器の膜部で収縮期駆出雑音(赤菱形)と拡張期漸減性雑音(赤三角)➜ 往復雑音
聴診器のベル部で拡張期に大きなランブルあり(これは聴診器の膜部では聴取せず)
このランブルはベル部の押し付けで消失する ➜ 低音成分が主体(心音図の赤矢印)
その後に行った心エコー図では,大動脈弁輪拡大による高度の大動脈弁逆流を認めた
以上より本例の拡張期低音雑音は
オースチン・フリント雑音
(Austin Flint Murmur)
🚸
臨床現場
本例の往復雑音を聞いて安易に大動脈弁狭窄+大動脈弁逆流とは考えなかった.初診挨拶時にすでに頸動脈拍動(
コリガン脈
)に気づいていたからである.おそらく高度の大動脈逆流だろうなと予想していた😤
「
オースチン・フリント雑音
があるかも…」と思い
ワクワクしながら聴診
を行ったが,心尖部で同雑音は聞こえなかった.しかしその後に行った心音図で明瞭なランブルの記録を見てちょっとびっくり😳
言い訳になるが聴診部位に問題があったと思う.通常オースチン・フリント雑音は心尖部周囲で認めるが,本例は第3肋間胸骨左縁(3LSB)に限局していた.偏位した逆流シグナルがその原因と推測...反省😪
(
松下記念病院
川崎達也)
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