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2020-12-31

番外編:深爪・陥入爪・巻き爪

臨床現場 💨
  • 循環器内科医A「深爪って専門用語で何て言うんですか?」
  • 循環器内科医B「う~ん,陥入爪(かんにゅうつめ)?」
  • 循環器内科医C「過剰切断爪なんかだったりして…笑」

😎 なんでも調査隊
  • 学会誌にも深爪という記載が散見されるため医学用語として使用できると思います.深爪は陥入爪(かんにゅうそう)や巻き爪(まきづめ・まきつめ)の原因
  • 陥入爪(Ingrown nail)とは爪甲が側爪郭を損傷し,炎症を引き起こした状態.若い男女に多く,様々な外因によって引き起こされる一過性の病態のようです.
  • 一方,巻き爪(Pincer nail)とは爪甲が過度に彎曲した状態.中高年齢の女性に多く,遺伝的素因や生活環境などによる爪変形が継続する病態と考えられます.


左:陥入爪(Ingrown nail) 右:巻き爪(Pincer nail)

🉐 爪に関連する過去の投稿 ➜ コチラ(松下ERランチカンファレンスに移動します)

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-12-28

「座位の心尖拍動」普及委員会

慢性左心不全でフォロー中の症例

😀 解説
  • 座位で心尖拍動の最外側は左乳輪の左側かつ心尖拍動が2肋間で観察 ➜ 心拡大の疑い
  • 仰臥位では心尖拍動は視認できない ➜ 残念ながら心拡大を確定することができず
  • 左半側臥位で心尖拍動の最外側は左乳輪の左側かつ心尖拍動が2肋間 ➜ 心拡大の疑い

😌 独り言
  • 心尖拍動を用いた心拡大の判定のゴールドスタンダードは仰臥位(復習はコチラ).しかし仰臥位では重力の影響で心臓が胸壁から離れるため,心尖拍動の視認性は良くない.よって左半側臥位でも確認する.
  • 心尖拍動は座位でも意外に分かりやすい自験例1自験例2).座位の頸静脈評価が少しずつ普及してきたのと同様に,座位の心尖評価をもっと活用してもいいと思う(特に最近のコロナ禍での診療では).
  • 特異度を重視して仰臥位で心拡大の確定(ルールイン)にこだわるか,感度を優先して座位や左半側臥位で心拡大の除外(ルールアウト)を重視するのかの問題だと思う.身体所見を学習中の管理人は後者よりかな 😊

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-12-24

ペースメーカ感染症

ペースメーカ植込み慢性期に創部異常を認めた症例

😈 コメント
  • 皮膚が壊死してペースメーカ本体が露出し,創部からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出された.抗菌薬投与と創面切除(デブリードマン)では完治せず,最終的にペースメーカ抜去を要した.
  • ポケット感染の発生頻度は759手術中20例(約3%)で,3月以内が5例,7ヵ月〜2年が12例(心臓 2002;34:639-43).その予後は不良で,感染デバイス416件の30日死亡は5.5%, 1年死亡は14.6%(Heart Rhythm 2011;8:1678-85) 
  • 一旦ポケット感染を発症した症例では,創部治癒後に再手術を対側に行うことが多いが,再感染を生じるリスクが低くない.心房ペーシングが必須でないなら,リードレスペースメーカ(下図)を植込む選択肢がある.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-12-21

簡易定性法 プラス

  • 中心静脈圧を推定する従来定量法(例:45度座位で拍動上縁と胸骨角の垂直距離)は不便
  • 近年,鎖骨上の内頸静脈拍動の有無を座位で判定する簡易定性法が少しずつ普及してきた
  • この簡易定性法にわずかな工夫を加えるとより多くの情報が得られる ➜ 簡易定性法プラス

実例:息切れで来院した症例

😗 解説
  • 座位で鎖骨上に内頸静脈の拍動あり ➜ 非代償性心不全
  • 拍動上縁は耳垂(耳ウインクサイン)➜ 重篤な心不全
  • 右内頸静脈の拍動は絶対不整である ➜ 心房細動の疑い
  • 耳垂皺あり(フランクサイン)➜ 虚血性心疾患の疑い
  • 実際に本例は心房細動かつ冠動脈バイパス術の既往あり

😙 独り言
  • 簡易定性法 プラスのプラスに何を加えられるかはあなた次第だよ.面白い症例があったら是非,この心臓フィジカル広場に投稿してネ(投稿方法).このページは元々,心臓フィジカルの共有サイトとしてスタートしたんだし...
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-12-17

📛 心音の復習

ポケット心音 基礎編の症例1より

【第2肋間胸骨左縁】


【心尖部】



松下記念病院 川崎達也)

2020-12-14

外頸静脈に騙されるな!

労作時の動悸で来院した症例

💙 解説
  • 外頸静脈の明瞭な拍動(+呼吸性変動)が視認できる.その最高点は頸部中央まで達し,中心静脈圧のかなりの上昇が推察される.しかし内頸静脈は陰性で,クスマウル徴候もなかった.
  • 本例ではBNP値の上昇はなく,心エコー図も正常であった.冠動脈CTで狭窄病変なく,運動耐容能も年齢相応.貸出心電計で記録した動悸時の波形にも問題になる不整脈を認めず.

😶 独り言
  • 中心静脈圧の推定には,その直線的位置関係から右側の頸静脈を使用(復習).さらに外頸静には逆流防止に有効な静脈弁があるため,内頸静脈をより信頼すべきである(復習).
  • ただし外頸静脈でも,その拍動や呼吸性変動が明瞭な場合は中心静脈圧の推定に用いることができるという意見が多いと思う.本例では残念ながら外頸静脈はあまりあてにならなかった.
  • 外頸静脈は表在静脈であるため,微妙な変化は内頸静脈よりも得意(例:収縮性心膜炎のフリードライヒ徴候).本例でも,その規則正しい拍動は洞調律を示唆した(実際に正常洞調律).

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-12-10

頸静脈確認のついでに…

心不全のフォローで来院した症例



松下記念病院 川崎達也)

2020-12-07

👀 時間分解能に挑戦

ヒントなしで挑戦!




松下記念病院 川崎達也)

2020-12-03

👴 歴史クイズ

(Original)


松下記念病院 川崎達也)

2020-11-30

🙇 一句できました

拡張型心筋症による慢性左心不全で通院中の症例

🐤 独り言
  • コロナ禍の診察で身体所見を詳細に確認することは難しい.しかし頸静脈はちょっと覗くだけ
  • 本例は通常呼吸時に内頸静脈を視認しないが深吸気息止め後に鎖骨上窩に拍動が出現し要注意
  • 「頸静脈・座位で陰性・一安心・深吸気でも陰性・かなり安心」(字余り:読人知らず?)
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-11-26

ニコニコしている症例

無症状の高齢者(家族が何かおかしいと感じて受診)



👵 認知症を伴う非代償性心不全
  • 座位で鎖骨上に内頸静脈の明瞭な拍動 ➜ 中心静脈圧の高度上昇
  • 内頸静脈の拍動は不規則 ➜ 心房細動の疑い(後に心電図で確認)
  • 身体所見と自覚症状との乖離 ➜ 認知機能障害の疑い(後に確定)

👵 頸静脈の簡易定性法
  • システマティックレビュー(J Card Fail 2017;23:464-75)では,心不全患者の認知機能障害の頻度は43%(95%信頼区間30~55)と高く, 年齢・性別・合併症などで補正しても認知機能障害のオッズ比が1.67(95%信頼区間1.15~2.42)と有意
  • 認知症を有する高齢の慢性心不全患者で家族がとらえた心不全増悪徴候は以下の3つ:「目にみえる身体の変化がある」「発話,身支度,移動がままならなくなる」「その人なりの身体の不調を表すようになる」(老年看護学 2017;21:42-50
  • 認知症を有する高齢者では多数の鑑別疾患を考慮する必要があるが,このような状況においては座位の内頸静脈の視認法(簡易定性法)は利用価値が高い.心疾患の有無で不要な検査を回避できる.
  • この簡易定性法は視認で心不全と診断できるためコロナ禍の診療でも大活躍.従来の複雑な判定法(例:45度半座位で胸骨角より3cm以上高い)よりも実用的.おまけにこのテクニックは無料ゲームで簡単にマスター可能 ➜ 頸静脈-30

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
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2020-11-23

📣 連続しない連続





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2020-11-19

格言:胸痛時には耳も?

胸痛で来院した症例


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2020-11-16

ランチージ徴候 vs クスマウル徴候

労作時の胸部症状がニトロで改善する症例

👌 解説
  • 陽性波なので頸動脈のコリガン脈(大動脈弁逆流)or 頸静脈のランチージ徴候(三尖弁逆流)
  • 通常は,頸静脈には呼吸性変動が存在し頸動脈には存在しない ➜ 本例には呼吸性変動はない
  • 拍動は圧迫で容易に消失 ➜ 内頸静脈と判断(触診や聴診を併用した視診もその鑑別に有用)
  • 最終的に高度の三尖弁逆流によるランチージ徴候を伴った慢性左心不全の増悪と診断された

😸 独り言
  • ランチージ徴候陽性の高度の三尖弁逆流では持続性の心房細動になっていることが多いと思う.そして三尖弁に対する外科的介入の至適時期をすでに逃していることが少なくない.本例では陽性波が規則正しいため洞調律の疑い ➜ 実際に心電図で正常洞調律を確認
  • ランチージ徴候を認める症例では吸気負荷でも頸静脈拍動に変化を認めることは少ないと思う.本例でも変化なしと判定(クスマウル徴候陰性と表記すべし?).これは中心静脈圧はすでに十分上昇しているため前負荷の増加をもはや反映しないためであろうか?
  • 本例の症状はニトロ製剤で改善した.硝酸薬が狭心症の症状緩和に有効であることは有名(表在冠動脈の拡張).ただ心不全の症状緩和にも有用:低用量で静脈系容量血管を拡張(前負荷軽減効果)+高用量で動脈系抵抗血管も拡張(後負荷軽減).本例の冠動脈はまだ評価していないが,臨床現場では虚血と心不全の両者が並存することも少なくない ➜ 自験例
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2020-11-12

収縮期クリックと体位

👂 臨床現場
  • 先日,僧帽弁逸脱症例の収縮期クリックを色々な体位で確認したのでまとめておきます


 😈 機序
  1. 前負荷が増加 ➜ 左室容積が増加 ➜ 逸脱が遅れる
  2. 前負荷が減少 ➜ 左室容積が減少 ➜ 逸脱が早まる

🉐 関連投稿(体位編:松下ERランチカンファレンスに移動します)
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-11-09

😕 心不全?

労作時の息切れで受診した症例・左半側臥位で心尖部を記録




松下記念病院 川崎達也)

2020-11-05

👴 歴史クイズ

(Original)


松下記念病院 川崎達也)

2020-11-02

📣 心音クイズ:心雑音を指摘された症例





松下記念病院 川崎達也)

2020-10-29

手クイズ

難治性心不全(ステージD)で低拍出症候群と悪液質の症例



松下記念病院 川崎達也)

2020-10-26

再登場:触ってナンボの法則

心電図異常を指摘された無症状の症例

🔗 肥大型心筋症
  • 触診では典型的な二峰性の抬起性心尖拍動であった.しかし視診や舌圧子(収縮期に左方移動)では分かりにくい.抬起性拍動は明瞭であるが,その直前にあるatrial kickはあまり伝わらない.
  • これも”触ってナンボの法則”が当てはまる.右手の第2〜3指腹を拍動部に当ててみる.ダブルインパルスは肥大型心筋症の特徴であるが,視診で明瞭に認識できる例は決して多くない(自験例).
  • 視診はわずかな色調差の認識は得意であるが,微妙な凹凸の判定は苦手である.一方,指腹は超高精度の圧センサーである.フィジカルをとるときには,視診・聴診・触診をうまく使い分けたい.

🉐 関連投稿(ダブルインパルス編)

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
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2020-10-22

大きなギャップ

増悪する左下腿の浮腫で来院した症例




フィジカル 広場 心臓 physical exam examination 身体所見
松下記念病院 川崎達也)

2020-10-19

改良版指輪っかテスト Modified finger-ring test

重症心不全で悪液質の症例

👌 改良版指輪っかテスト陽性
  • 指輪っかテスト(finger-ring test)はサルコペニアの有無を判断する簡便なテストで,下腿の最大径部を患者さん自身の母指と示指で作った指の輪っかで囲めれば陽性(以前の投稿).本動画のように足首から膝下まで指輪っかを移動できるかどうかで判定するとより分かりやすいと思う.

😸 独り言
  • 指輪っかテストは下腿の最大径部を指で囲むだけであるが,最大の部位が意外に分かりにくい.しかし,この改良版ならより簡単に判定することができると思う.リハビリテーションの効果をみる方法として患者さんに伝えれば,モチベーション維持に役立つかも.

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-10-15

👴 歴史クイズ

(Public Domain)


松下記念病院 川崎達也)

2020-10-12

😗 これは心電図でいいね!

心電図異常を指摘され紹介受診した無症状の症例

🙇 解説不能(すいません)
  • 内頸静脈が不規則に拍動しているため不整脈がありそうです.また仰臥位で外頸静脈が虚脱していないため高度の脱水はなさそうです.でもそれ以上は僕には分かりませんでした.
  • 諦めて心電図を確認するとウェンケバッハ型の2度房室ブロックでした(下図).診断が分かった上で(橈骨動脈を触知しながら)頸静脈をじっくり見直しましたが,やはり理解できませんでした 😂


🐦 トリビア
  • 2度房室ブロックの初報はイギリスの医師 John Hay(1873-1959)です. 徐脈を有する65歳男性で,頸静脈波形のa波とc波の関連および動脈拍動から同疾患を診断しています(Lancet 1906;167(4299):139-43).
  • 同報告の3年前(1903年)にはウィレム・アイントホーフェン(Willem Einthoven, 1860-1927)によって心電計が発明されていますが,当時の心電計は巨大で臨床的な普及には時間がかかったと思います.John Hayの歴史的な論文は ココ から全文が読めるので是非ご覧ください.
  • その18年後にドイツの医師 Woldemar Mobitz(1889–1951)が2度房室ブロックをMobitz type I(ウェンケバッハ型)とMobitz type IIに分類しました(Zeitschrift für die gesamte experimentelle Medizin volume 1924;41:180–237).

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-10-08

心臓番外編パート2

数日前から左耳に違和感(ポコポコという音)を自覚する循環器内科医の外耳道~鼓膜


フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-10-05

🎯 一発診断

心臓リハビリテーション目的に当院を紹介受診した症例(頸部拍動は橈骨拍動に遅れていた)




松下記念病院 川崎達也)

2020-10-01

📣 心音クイズ:動悸と息切れで来院した症例





松下記念病院 川崎達也)

2020-09-28

関西風命名:触ってナンボの法則

心電図異常で来院した症例(持続する胸痛の既往あり)

🐧 解説
  • 収縮期に持続時間の長い外方運動=抬起性 ➜ 心肥大の疑い
  • その隆起は後半(収縮中期〜後期)が大 ➜ 収縮期バルジ
  • 収縮期バルジの存在 ➜ 心室瘤あるいは左脚ブロックを示唆
  • 本例の最終診断は陳旧性前壁心筋梗塞+心尖部瘤であった

🐦 コツ
  • 収縮早期の隆起+収縮中期〜後期の大きい隆起(収縮期バルジ)は,まるでふたコブラクダ🐫です.しかし視認で気がづくことは稀です.Atrial kickやventricular kickの視認が難しいのと同じ現象です.是非,触診で感じてください(個人的に関西風に命名:触ってナンボの法則).収縮期バルジは時相判定が必要であるため,動脈触診や頸静脈視診を併用した心尖部触診がおすすめです.

🐤 おまけ
  • 心尖拍動を用いた心拡大の評価は通常,仰臥位で行われます(実際の方法).しかし臨床では座位で評価しても問題ないと思います(実例).実際に胸部X線では心拡大の判定は立位像で行っています.
  • 本例のように心尖拍動が左乳輪の外側にあれば心拡大が強く疑われます.2肋間以上での拍動も心拡大を示唆します.座位の頸静脈評価(簡易定性法)が普及してきたのと同様に,座位の心尖拍動評価が現場でもっと活用されることを期待します.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-09-24

さぁ,次の一手は?

下腿浮腫と倦怠感を主訴に来院した高齢女性の前胸部(座位)

 😕 臨床現場 😕
前胸部の表在静脈が怒張している.索状硬結や圧痛はないためモンドール病は否定的.
中心静脈圧の上昇が予想されるが,座位で鎖骨上に頸静脈拍動はない.次の一手は?


松下記念病院 川崎達也)

2020-09-21

心臓番外編

陳旧性心筋梗塞で通院中の男性から左示指痛の相談を受けた


松下記念病院 川崎達也)

2020-09-17

命名:こめかみサイン Temple sign of JVP

増悪する息切れで来院した症例

😲 解説
  • 外頸静脈の怒張に加えて,内頸静脈の収縮期陽性波(ランチージ徴候)が目立つ.その拍動は耳垂を超えてこめかみ(側頭部)まで達している.内頸静脈は外耳孔の内側にある頸静脈孔から頭蓋内に入るため,本例で認める側頭部の拍動は拡張した下顎後静脈の拍動と考えられる.また拍動は絶対不整であり心房細動が疑われる.本例の最終診断は心房細動を合併したアルコール性心筋症による重篤な両心不全であった.

😨 独り言
  • 頸静脈の拍動の上縁が高位であるほど,中心静脈圧は高値であると考えられます.例えば頸静脈の拍動と同期して耳たぶが動く現象はwinking earlobe sign(ウインクサイン/耳朶サイン)と呼ばれ,重症の心不全を示唆します.同所見は日常臨床で稀ならず認めますが,多くは臥床(自験例)あるいは半坐位(実例)であり,座位ではあまり見かけません.本例の様に,座位で耳たぶを超えてこめかみの拍動を観察できることは極めて稀と思います.個人的には こめかみサイン(Temple sign)と呼んでいます.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-09-14

ダブル・キャノン

1週間前から急に増悪した倦怠感で来院した症例

😊 解説
  • 正中寄りの左鎖骨上に内頸静脈の間欠的隆起(巨大a波/cannon a wave)を観察
  • 心音ではⅠ音の大きさが心拍毎に異なり4拍目に最大(大砲音/cannon sound)である
  • いずれの所見も房室解離時に認めることで有名であるが,心室期外収縮でも出現する
  • 本例は心臓サルコイドーシスによる3度房室ブロックを生じたときに記録された所見

😙 独り言
  • いずれの所見もcannonと記載されるが,そのメカニズムは異なることに要注意.巨大a波(cannon a wave)の出現機序は,三尖弁閉鎖中に心房収縮が生じるため.一方,大砲音(cannon sound)の機序は,心房収縮直後(房室弁の最大開放時)に心室収縮が生じるため.実際の本例の心音図でも,大砲音ではP波がQRS直前に生じている点に注目.
  • 注意深い聴診あるいは心音図(本例では低音と低中音を表示)ではP波の後に過剰心音(Ⅳ音)が観察される.このⅣ音も音量が変化して,心室急速流入期に合致すれば大きくなることが知られている(我々はatrial cannon soundと呼んでいます).

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
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2020-09-10

🏆 論文:頸静脈を見てみよう!

  • 手前味噌で恐縮ですが投稿者のフィジカル論文が出版されました.心臓リハビリテーション学会誌の循環器教育講座であるため,あまり堅苦しくならない論調を心がけました.イラストも自前で,英語タイトルはフィジカルの温故知新を考慮して”Jugular venous pulsation revisited”としてみました.無料アプリのポケット・フィジカルや本ページ(心臓フィジカル広場)のようなweb上での身体所見の共有にも触れています.よければご覧ください.

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(心臓リハビリテーション JJCR 2020;26:291-3)

👿 身体所見に関する「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)
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