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2023-04-27

座位アンサム徴候

慢性心不全の増悪で入院した高齢者の手背静脈

👽 解説
  • 端座位の卓上で手背静脈が隆起(高齢者では健常者でも稀でない)
  • 左鎖骨レベルでも手背静脈の怒張は消失せず ➜ 末梢静脈圧の上昇
  • Anthem(国歌斉唱)signは末梢静脈虚脱による中心静脈圧判定法
  • アンサム徴候は30度臥床で判定するが座位でも可能(特異度上昇)

 😁 独り言
  • 手背静脈と右房の解剖的つながりを考えると,末梢静脈を用いた中心静脈圧の推定に懐疑的な方が多いことにも納得できます.ただし本例で示したよう同一症例内で負荷に対する反応は,ある程度信用していいのではと思っています.
  • 末梢静脈を用いた判定方法は患者さんとのラポール形成にも役立ちます.とても簡便なため患者さんやその家族の方にも(頸静脈より)受けがいいと思います.患者さん自身がなにげに手を上下させていることを見ることがあります.

松下記念病院 川崎達也)

2023-04-24

👴 歴史クイズ

(Public Domain)



松下記念病院 川崎達也)

2023-04-20

論文 🏆

  • 当院の循環器内科専攻医である野口先生が経験した症例が出版されました
  • 近医で心雑音を指摘され紹介 ➜ 心エコー図で右室へ突出する瘤状構造物
  • 収縮期に同構造物と右室壁が近接し,右室流出路はモザイク血流シグナル
  • 明らかな短絡血流なし ➜ 最終的に未破裂の右バルサルバ洞動脈瘤と診断
  • 弁膜症なく術後に雑音が消失 ➜ 未破裂の動脈瘤に起因した雑音と確定
  • 論文には実際の音声ファイルがないのでYouTubeにアップ(ココです)


😀 考察
  • PubMed検索で未破裂バルサルバ洞動脈瘤の報告が42例ありました.その診断契機は胸痛,息切れ,併存循環器疾患,房室ブロックの順に高頻度でした.心雑音を有した症例も2例報告されていましたが,いずれもバルサルバ洞動脈瘤とは異なる併存心疾患に起因した雑音です.本例は純粋に動脈瘤によって雑音を来した世界初の症例報告かも知れません.
  • 本例は初診の家庭医の先生(専門は消化器内科)が雑音に気が付かれたため診断に至ることができました.素晴らしいことに,紹介状には「肺動脈領域の収縮期雑音の精査をお願いします」と記載されていました.先日,お会いした時にお話ししていたら,聴診は「ポケット心音」で勉強されてるとお伺いしました.まさに”アプリ開発者冥利”につきます😂

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2023-04-17

番外編:Hoagland sign ホーグランド徴候

  • 伝染性単核球症で出現する早期皮膚所見(両側の上眼瞼浮腫)
  • 命名は米国のHOAGLANDの初報(Am J Med 1952;13:158-71
  • 同所見は通常、臨床症状が出現した急性期の数日間のみ存在
  • 鑑別は接触性皮膚炎や血管性浮腫,川崎病,旋毛虫,蜂窩織炎
  • 機序は不明(リンパの閉塞?)/発生頻度は58%?(引用

伝染性単核球症の20代女性(A)・解熱前(来院3日後)には消失(B)


🔗 感想
  • 循環器領域で眼瞼浮腫といえば心不全です.伝染性単核球症とは対象が異なるため,ホーグランド徴候を現場で活用する機会は多くなさそうです.
  • でも伝染性単核球症の3大所見(発熱・咽頭炎・リンパ節腫脹)はいずれも非特異的です.感染を契機に悪化する慢性心不全は少なくありません.
  • 感冒所見と同時に両側の目尻の腫れがあって,頸静脈の座位陰性を確認できれば,一発診断ができそうです.これってフィジカルの醍醐味です 😋

👻 眼瞼に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2023-04-13

上肢挙上と心負荷

息切れで来院した症例(端座位)

🙋 解説
  • 右頸部に大きな陽性波(巨大v波)で中心静脈圧は上昇
  • 拍動上縁は額レベル付近で推定中心静脈圧は20cm水柱
  • 左上肢の垂直挙上で拍動上縁は数cm上昇(耳下レベル)
  • 最終診断は弁膜症による慢性心不全の増悪(非代償期)

 💁 つぶやき
  • 左上肢挙上で明瞭な息切れが出現した典型的な症例を経験以降,挙上負荷を行うことが増えました(別の自験例).その機序は上肢挙上に伴う静脈還流の増加(前負荷増大)だろうと安易に考えていました.
  • しかし本例の動画を編集中に,上肢挙上を開始直後から拍動上縁が上昇していることに気がつきました(画面右に少し写っている左上肢の動きに注目).この現象は上肢の静脈還流だけでは説明は困難です.
  • どうやら上肢の静脈血液の還流(前負荷増大)に加え,挙上という仕事(心拍数増加を含む),呼気時間の延長(胸腔内圧上昇),吸気時間の短縮(前負荷減少)などが複雑に関与している様子(下表参照)


🉐 上肢挙上負荷の過去投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2023-04-10

ペンバートン徴候 Pemberton's sign

  • 両腕を垂直挙上したときに出現する一連の身体所見と自覚症状
  • 由来は英医師 Hugh Pemberton の報告(Lancet 1946;248:509
  • 顔面うっ血やチアノーゼ,呼吸困難感などがあれば陽性と判断
  • 甲状腺腫や縦隔腫瘤などによって生じる血管の圧迫がその原因

甲状腺腫大の77歳男性(図Cの矢印は気管偏位を示す)

甲状腺腫20年の病歴を持つ58歳女性

📺 おまけ
  • 上記の2症例はともにNEJMに掲載されています.いずれも今世紀ですが,2018年掲載の上段の症例には動画があり時代の進歩を感じますココから動画参照)
  • 下段の症例は2004年掲載で,当時はまだ動画共有システムがありませんでした,ちなみに YouTube は2005年設立で最初の投稿動画は Me at the zoo(ジョード・カリム投稿)

(投稿者 川崎)

2023-04-06

巨大と言われる小波

検診の心電図で異常を指摘された症例  問題  心電図異常とは?



松下記念病院 川崎達也)

2023-04-03

ダール徴候 Dahl's sign

  • 大腿と肘に色素沈着過剰 と肥厚(角化亢進)を認める状態
  • 米国の皮膚科医Dahlに由来(Arch Dermatol 1970;101:117
  • 長期にわたる重度の慢性閉塞性肺疾患を患う患者に発生する
  • 機序は呼吸困難で肘を大腿に置くため接触部に慢性的な刺激

73歳のCOPD女性

👻 命名問題
  • 実はDahl先生に先行すること7年,Rothenbergがこの所見を報告しています(JAMA 1963;184:902-3).よってRothenberg's sign's(ローゼンバーグ徴候)とも呼ばれています.
  • もっともRothenberg先生はこの所見を,その姿勢からThe thinker's sign(考える人徴候)と呼んでいます.またその丸い形からtarget sign(標的マーク)と称されることもあるようです.

💁 COPDに関する過去の投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)