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2024-10-31

ベンドニア Bendopnea 

前かがみが苦しいと訴える緻密化障害例

🐤 前屈時呼吸困難症
  • 安静座位で鎖骨上に頸静脈の拍動なし
  • 吸気負荷を追加したが拍動は出現せず
  • 前屈位で頚静脈の拍動が出現(矢印)
  • それと同時に主訴の苦しさが出現した
🐥 系統的レビュー(6研究/891名)
  • ベンドプネアは呼吸困難 [オッズ比(OR)69.70(17.35-280.07); p <0.001],起座呼吸 [OR 3.02(2.02-4.52); p <0.001],発作性夜間呼吸困難 [OR 2.76(1.76-4.32); p <0.001],腹部膨満感 [OR 7.50(4.15-13.58); p <0.001] と関連
  • ニューヨーク心臓協会(NYHA)機能クラスIVは.ベンドプネア患者でより多く [OR 7.58(4.35-13.22); p <0.001],下図の様に死亡率の上昇とも関連 [OR 2.21(1.34-3.66); p <0.002].2つの研究では頸静脈圧の上昇とも関連あり.


松下記念病院 川崎達也)

2024-10-28

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


👻「フィジカル講習会」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2024-10-24

頻脈は止めたいが...

動悸を訴える症例(モニター音に注目

😎 解説
  • 座位で鎖骨上に周期の短い陥凹(外頚静脈)
  • モニター音と拍動が一致(陥凹は多分 x谷
  • 吸気負荷で静脈膨隆(クスマウル徴候陽性)
  • 突然生じた動悸が約2週間持続していた様子
  • 本例の最終診断は頻脈の持続による心不全
😑 独り言
  • PSVTなど頻脈性不整脈を停止すること自体はそれほど難しいことはありません.しかし本例のように頻脈誘発性心筋症などから心不全に至った例には注意が必要です.徐脈化に伴い血行動態が破綻することがあります(ショックに陥った自験例あり).
  • よって本例のように中心静脈圧の上昇が疑われる症例(座位で頚静脈視認あるいはクスマウル徴候陽性など)では不整脈の停止よりも心不全加療が優先されると思われます.もちろん類似した頻脈の心房粗動などでは左房血栓の有無の検索も重要です.
  • 頚静脈拍動から各種不整脈の診断は可能です(a波=P波,x谷=収縮期など:過去の報告).ただし頻脈時にはフロック・サインを除き不整脈の鑑別は容易ではありません.むしろ中心静脈圧上昇の有無に注視してもいいように個人的には思っています 😐

松下記念病院 川崎達也)

2024-10-21

S3:ASとMR

  • 先日の学会(フィジカル教育セッション)で大動脈弁狭窄(AS)ではⅢ音(S3)があまり聴取されないことを知りました.演者の施設では40余例でS3は1例のみでした.同様の結果を示す論文(下図左)も提示されていました.あまり考えたことはなかったのですが,確かに心不全を発症したASでS3を耳にした記憶は乏しいかもしれません.
  • やはりS3といえば僧帽弁逆流(MR)でしょうか.その重症度に伴ってS3の頻度は増加する様です(下図右).ただし発表の結論の一つに「MRではS3を認めても必ずしも左房圧が上昇しているとは限らない」というものがありました.また「HFrEFではS3の大きさとPAWP値と相関する」とも述べられていました.とても勉強になります.
  • 座長をされていた先生(フィジカルの匠)が興味深い表現をされていました.思い出せる範囲で記録しておきます.「S3はバチと太鼓の関係です.バチが鋭く太鼓の皮が薄いほど響く.つまり左室の急速流入血(E波)が高くて左室肥大がないMRでは出現しやすい.一方,ASではバチは鋭くないし,おまけに太鼓の皮もぶ厚い」 なるほどです😐

- 弁膜症とS3の頻度 -

松下記念病院 川崎達也)

2024-10-17

本人・家族も一緒に

慢性左心不全の高齢者

💙 解説
  • 3ヵ月ぶりの受診でご本人は変わりないと述べた
  • 安静座位で頸部に明らかな拍動は認められない
  • しかし吸気時には鎖骨上窩に陥凹が出現(矢頭)
  • 吸気保持を解除した後には拍動は消失している
  • 採血でBNPは前値197から362に上昇していた

😶 独り言
  • 本例には明らかな息切れはなかったが,中心静脈圧は少し上昇していると考えられる.このような場合,安易な利尿薬投与は慎みたいかも...特に高齢者で今回のような夏場では容易に脱水.減塩指導も有効であるが食欲低下のリスクもある.
  • どういう対応が正解かは分からないが,ご本人と付き添いの娘さんに心不全の増悪が疑われることをお伝えた.次回予約を早めるのと同時に,撮影した動画を見ていただき増悪時(特に安静座位で出現時)には早期受診していただくよう指導

松下記念病院 川崎達也)

2024-10-14

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


👻「フィジカル講習会」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2024-10-10

広義の耳ウインク・サイン

慢性心不全増悪で入院中の症例(座位)

👿 解説
  • 頸部に明瞭な拍動(陥凹ではなく隆起)を視認する
  • 下から上への緩徐な陽性波 ➜ 静脈性(ランチシ徴候)
  • 外頚より内頚静脈の拍動上縁が高い(内頚を信頼!)
  • 左上肢の挙上に伴い内頸静脈の拍動上縁は上昇
  • 耳垂に揺れはないがその背面には拍動あり(矢印)
  • 本例の心エコー図は重症の三尖弁逆流+肺高血圧

💀 広義の耳ウインクサイン
  • 狭義の winking earlobe sign といえば耳たぶの揺れが必要です(英語の文言通り).でも本例のように耳朶後方の皮膚面が拍動していれば広義の耳ウインクサインとしてもいいと思います.
  • 本例には明瞭な三尖弁逆流がありました.しかし三尖弁逆流がほとんどないにも関わらず,明瞭な内頸静脈の陽性波を認めることが少なからずあります.特に開心術後の症例に多く経験します.
  • 心臓病診断学の実際(吉川純一著)には,その機序として「心膜の閉鎖にからんだ三尖弁輪下降の制限」が提案されています.左心膜完全欠損でも同様の所見が観察されると記載されています.
  • 個人的には,静脈コンンプライアンスの低下あるいは静脈キャパシティーの限界を反映している症例も散見されるのではと思います.よってv波が容易に圧上昇につながるのではないのかな~😐

🉐 上肢挙上負荷の過去投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2024-10-07

シンプルJVP© Simple JVP©

  • 頚静脈評価が心不全管理に役立つことは疑いありませんが,あまり現場では活用されていません.その大きな理由に複雑な方法論の問題があると思われます.本邦のガイドラインには「45度の半座位で内頸静脈の拍動上縁と胸骨角の垂直距離が3cm以上で静脈圧上昇」と記載されています.しかし臨床現場では患者さんに45度の半座位という姿勢をとってもらうことは容易ではありません.さらに内頸静脈は深部静脈であるため,その拍動上縁を見極めることも難しいと思われます.
  • 当院では頚静脈のシンプルな評価方法を追求してきました.まぁこれ位でいいかな〜という段階に達したので,その手法を「シンプルJVP」としてアプリ化(WEB版)してみました.ポイントは,座位の姿勢で頸静脈拍動が視認できるか否かの定性法です.そして軽度〜中等度の中心静脈圧上昇を見逃さないために各種負荷を併用します.当院では患者さん自身やそのご家族にも活用していただいています.将来,ガイドラインに記載されたらすてきだな〜なんて思っています 😊

(シンプルJVP:日本語版 / English edition

松下記念病院 川崎達也)

2024-10-03

偽クスマウル徴候②

脳神経内科に通院中の症例(以前と同一症例

😗 解説
  1. 安静時には頚静脈の拍動を座位で視認せず
  2. 吸気後での胸鎖乳突筋の萎縮に注目(矢印)
  3. その後は外頚静脈が視認可能である(矢頭)
  4. 本例はBNPと心エコーも正常で心不全なし
  5. 診断は筋強直性(筋緊張性)ジストロフィー

👥 偽クスマウル徴候
  • 胸鎖乳突筋が目立つことによる偽クスマウル徴候の症例は経験済みです(安静時吸気後).ただし筋肉は拍動しないのでその鑑別は容易と思われます.
  • 今回,胸鎖乳突筋が萎縮する病態でも偽クスマウル徴候が出現することを初めて知りました.こちらは実際の静脈なので拍動があり,触診でも静脈です.
  • 本例はクスマウル徴候が陽性から心不全(≠重症)と誤診される可能性があります.その意味でも筋萎縮による偽クスマウル徴候を覚えておきたいです.

松下記念病院 川崎)