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2022-01-24

心臓番外編:クスマウル兄弟

💣 クスマウル呼吸(Kussmaul breathing)
  • 規則正しくて深い(大きな)呼吸が連続している状態
  • ドイツ人医師の クスマウル(1822-1902)が発見した
  • 代謝性アシドーシスに対する呼吸性代償(ココで復習
  • 糖尿病性ケトアシドーシスや腎不全を伴う尿毒症で出現
  • クスマウル徴候は吸気時の頸静脈隆起(詳細はコチラ

糖尿病性ケトアシドーシスに出現したクスマウル呼吸の症例(YouTubeより)
 

    😤 独り言
  • 今回,経験した症例は糖尿病性ケトアシドーシスに伴うクスマウル呼吸でした.その時に呼吸数で少し議論になりました(当院の症例は頻呼吸).クスマウル呼吸はゆっくりした呼吸と記載されていることもありますが,Sapira先生の成書では"Kussmaul respirations are regular, deep, and usually fast."と表現されています.
  • 同教科書には,呼吸数が正常であるクスマウル呼吸の症例では,一回換気量の増加を会話困難であることから気付くことができると記載されています.会話のために呼吸を止めることができないため,会話を途中で止めないといけないからのようです(初版100ページ右段).

松下記念病院 川崎達也)

2020-05-11

肥大型心筋症のクスマウル徴候(外頸静脈)

無症状の非閉塞性肥大型心筋症(座位で通常呼吸 ➜ 深呼吸)

👶 解説
  • 座位での通常呼吸では頸静脈は視認できない(座位陰性).一方,深吸気後には外頸静脈が隆起している(クスマウル徴候陽性).呼吸再開後には外頸静脈の怒張は速やかに消失している.
  • クスマウル徴候は収縮性心膜炎や右心不全,重症左心不全でよく知られているが,肥大型心筋症でも決して稀ではない.本例は外頸静脈であるが,内頸静脈で出現することもある ➜ コチラ

🐣 おまけ

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination クスマール
松下記念病院 川崎達也)

2020-08-03

お手軽負荷

階段を登る時の息切れで紹介受診した症例


👿 解説
  • 座位の通常呼吸時(ビデオ前半)では鎖骨上に内頸静脈の拍動をほぼ認めない
  • 深吸気後(ビデオ後半)では鎖骨上に内頸静脈の拍動を視認するようになった
  • 新たに出現した内頸静脈拍動は陥凹が主で怒張なし ➜ クスマウル徴候は陰性
  • 中心静脈圧の上昇はあるが高度でないと判定 ➜ 本例の最終診断は軽症心不全

👾 独り言
  • 心不全が疑われる症例で安静座位で内頸静脈の拍動を認めなければ一安心であるが,深呼吸後(=前負荷の増大時)にも視認しなければさらに安心できる.前負荷を増大させるには蹲踞姿勢も一つであるが,高齢者では膝痛のため施行できないことが少なくない.深吸気負荷はとても簡便なので,外来診察室や救急室で積極的に活用したい.

🙊 関連投稿(クスマウル編)
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2024-10-03

偽クスマウル徴候②

脳神経内科に通院中の症例(以前と同一症例

😗 解説
  1. 安静時には頚静脈の拍動を座位で視認せず
  2. 吸気後での胸鎖乳突筋の萎縮に注目(矢印)
  3. その後は外頚静脈が視認可能である(矢頭)
  4. 本例はBNPと心エコーも正常で心不全なし
  5. 診断は筋強直性(筋緊張性)ジストロフィー

👥 偽クスマウル徴候
  • 胸鎖乳突筋が目立つことによる偽クスマウル徴候の症例は経験済みです(安静時吸気後).ただし筋肉は拍動しないのでその鑑別は容易と思われます.
  • 今回,胸鎖乳突筋が萎縮する病態でも偽クスマウル徴候が出現することを初めて知りました.こちらは実際の静脈なので拍動があり,触診でも静脈です.
  • 本例はクスマウル徴候が陽性から心不全(≠重症)と誤診される可能性があります.その意味でも筋萎縮による偽クスマウル徴候を覚えておきたいです.

松下記念病院 川崎)

2021-04-22

古典的クスマウル徴候

慢性左心不全の1例に座位で深呼吸負荷


松下記念病院 川崎達也)

2022-06-13

吸気ならぬ呼気負荷

労作時の息切れで来院した症例

🍘 解説
  • 深吸気の保持で右鎖骨上窩に陥凹(矢印)あり(クスマウル徴候陽性)
  • よくみると通常呼吸時にも吸気時に陥凹(広義のクスマウル徴候陽性
  • 内頸静脈の陥凹はx谷とy谷が同じ深さで優位性なし(y谷優位の症例
  • 興味深いのは深呼気保持では内頸静脈拍動は不明瞭(表在静脈は隆起)

🍙 独り言
  • 個人的には内頸静脈の簡易定性法(座位で鎖骨上に拍動の有無を視覚的に判定)では吸気負荷を追加するようにしています(クスマウル徴候の確認).簡易定性法では軽度(〜中等度)の中心静脈圧上昇を見逃すことがあるためです.
  • このクスマウル徴候ですが,逆に吸気時に頸静脈拍動が消失する症例は経験したことがありません.逆クスマウル徴候(paradoxical or reversal Kussmaul's sign)という用語もヒットしません.報告したら世界初になるかも...
  • 同様に内頸静脈の呼気負荷(jugular venous response to expiration)に関する報告もほとんどないようです.あまり役立つとは思えませんが,特定の疾患に対する有用性は否定しません.発見したら歴史に名を残せるかも...😳

松下記念病院 川崎達也)

2022-04-14

クスマウル徴候:陰性? 陽性?

慢性心不全の増悪で来院した症例

🐤 解説
  • 座位で外頸静脈を明瞭に視認できる.呼吸性変動(吸気時に虚脱)があるため中心静脈圧の判定に利用可能(外頸静脈は内頸静脈と異なり逆流防止弁の効果が強いため,呼吸性変動がない場合はあまり信用できない).
  • 外頸静脈は呼気時には怒張しているが,吸気時には虚脱するためクスマウル徴候(Kussmaul's sign)は陰性と判断.しかし深吸気保持(ビデオ後半)では外頸静脈の怒張が出現しているためクスマウル徴候は陽性?
  • 内頸静脈の拍動も鎖骨上窩(矢頭)で観察できるため,中心静脈圧は確実に上昇している.忘れがちな 前頸静脈(Anterior jugular vein:矢印)は吸気時に拍動が明瞭で,広義のクスマウル徴候陽性と考えられる.

🐥 独り言
  • ドイツの医師 アドルフ・クスマウル が発見したこの負荷法は,非常に奥が深いと思います.臨床現場では本例のように複雑な反応を示す例が散見されます.その詳細な原因は不明ですが,吸気時の胸腔内圧低下と静脈還流の増加にタイムラグがあるためかもしれません.肺の状態(例:肺葉切除後)などの影響を受けることもあるようです(自験例).個人的にはとても気に入っている負荷なので,あまり深く考えずにほぼ全例に行なっています 😊

松下記念病院 川崎達也)

2024-02-08

頸静脈の陽性波:a波 vs v波

転居に伴い当科を紹介受診した症例(座位)

🐤 解説
  • 陽性波あり(矢印)➜ 動脈または静脈(a波 or v波)
  • この陽性波は吸気で消失している ➜ 動脈性ではない
  • 吸気で外頸静脈怒張(クスマウル徴候陽性)(矢頭)
  • 橈骨動脈の触診による時相判定で同波形をa波と診断
  • 本例は虚血性心疾患による慢性心不全状態であった

🐦 追加コメント
  • 頸静脈拍動が呼吸性に変化すれば動脈性よりも静脈性を考えます(過去の投稿:twitter).吸気で胸腔内圧は低下しますが,本例のようにクスマウル徴候が陽性になる症例では頸静脈拍動の所見はまず正常化しません(ほとんどの症例で悪化:過去の投稿).よって本例では視認するv波(ランチシ徴候,CV merger)はおおむね否定できると思います.
  • 座位でa波を視認するということは,心室コンプライアンスが相当低下していることを意味します(肥大型心筋症でも10%程度:過去の投稿).しかしこのa波が吸気で消失することを少なからず経験します.おまけ 🐧 クスマウル徴候を発見したドイツ人医師のAdolf Kussmaul(1822-1902)は1869年に金属管を用いて生きた人の胃内を世界で初めて観察

松下記念病院 川崎達也)

2022-07-14

この組み合わせを見たら…

非心臓手術の術前評価で循環器内科を受診した症例

🐔 解説
  • 座位で内頸静脈と(僅かに)外頸静脈の拍動を視認 ➜ 中心静脈圧の上昇
  • 吸気で外頸静脈が怒張している(動画中の矢印)➜ クスマウル徴候陽性
  • 内頸静脈は吸気で拍動が明瞭化(動画の✳︎) ➜ (広義のクスマウル徴候)
  • 拍動は二峰性陥凹でx下行よりy下行が大かつ急峻(フリードライヒ徴候)
  • 本例は他院で収縮性心膜炎と診断され経過観察されている症例であった
  • 心不全は概ね代償されているため当院で予定の非心臓手術は可能と判断

🐓 独り言
  • 急峻y下行(フリードライヒ徴候)と深吸気時怒張(クスマウル徴候)の組み合わせは収縮性心膜炎を疑うきっかけになります(典型例).本例では通常呼吸時の外頸静脈で(よくみると)y谷が急峻であることから”ピン”ときました.
  • 心エコー図で収縮性心膜炎に関する所見をルーチンに評価することはないと思います.よって身体所見で収縮性心膜炎を疑い,そのことをエコー検者に伝えることが重要です(フィジカルと心エコー図が手を組めば鬼に金棒以前の投稿

松下記念病院 川崎達也)

2022-05-19

呼吸反応+拍動パターン:判定量的評価

慢性左心不全で加療中の症例が息切れの悪化を訴えた

🐦 解説
  • 深吸気保持で鎖骨上窩に陥凹(矢印)が出現(クスマウル徴候が陽性)
  • よくみると通常呼吸時にも吸気時に陥凹(広義のクスマウル徴候陽性
  • さらによく見ると,内頸静脈の陥凹はy谷が優位(通常ではx谷が優位)
  • 慢性左心不全の増悪と診断して内服薬の調整を行なった(利尿薬追加)

🐤 追加コメント
  • 内頸静脈拍動は二峰性の陥凹が基本です(復習).通常はx谷>y谷で,中心静脈圧の上昇に伴いx谷<y谷収縮期陽性波と変化することが多いと思います.
  • 座位で鎖骨上に内頸静脈拍動の有無を視覚的に判定する簡易定性法はあくまでも定性法ですが,上記の拍動様式を評価すれば半定量的な評価もできます.
  • さらに呼吸に対する反応も追加可能(例:通常呼吸の吸気時に認めれば,通常のクスマウル負荷陽性よりも重症で,拍動パターンがx谷の閉塞ならより重症)

松下記念病院 川崎達也)

2020-09-24

さぁ,次の一手は?

下腿浮腫と倦怠感を主訴に来院した高齢女性の前胸部(座位)

 😕 臨床現場 😕
前胸部の表在静脈が怒張している.索状硬結や圧痛はないためモンドール病は否定的.
中心静脈圧の上昇が予想されるが,座位で鎖骨上に頸静脈拍動はない.次の一手は?


松下記念病院 川崎達也)

2022-03-14

自覚症状と身体所見の乖離:パート2

慢性左心不全で加療中の症例が息切れで来院



松下記念病院 川崎達也)

2022-04-21

収縮性心膜炎の重症度判定

腹部膨満感を訴える大動脈弁置換術後の症例


👄 解説
  • 本例は座位で自然呼吸時と深吸気負荷時のいずれにも頸静脈拍動なし
  • しかし臥位では外頸静脈の拍動を視認可能(内頸静脈はやはり不明瞭)
  • 急峻y下行(フリードライヒ徴候)と深吸気時怒張(クスマウル徴候)
  • 本例は最終的に収縮性心内膜炎と診断されたが利尿薬のみで症状改善

👅 独り言
  • 身体所見と心エコー図は良きライバルです.前者は””の評価に優れ,後者は””の描出が得意です.よって「フィジカルと心エコー図が手を組めば鬼に金棒
  • 日々の臨床では基礎疾患の診断だけでなく,その重症度まで判定する必要があります.大動脈弁狭窄症ではやはり心エコー図に分がありそうです(過去の投稿
  • しかし心不全の診断と重症度判定ではフィジカルが勝っています.収縮性心膜炎においてはフィジカルの圧勝と思います 😊 自験例:重症,中等症=本例,軽症
個人的に感じている収縮性心膜炎のフィジカル重症度

座 位 臥 位
フリードライヒ徴候 クスマウル徴候 フリードライヒ徴候 クスマウル徴候
重症 ⭕️ ⭕️ - -
中等症 ✖️ ✖️ ⭕️ ⭕️
軽症 ✖️ ✖️ 呼気時 ✖️
吸気時 ⭕️
⭕️

👿「収縮性心膜炎」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2019-02-28

👴 歴史クイズ



フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2021-05-10

喉仏サイン Adam's apple sign

薬剤を自己中断して増悪した慢性心不全症例

🍏 所見の解説
  • 通常呼吸時には座位で頸静脈拍動を視認しない(座位陰性).一方,深吸気保持では外頸静脈の怒張が出現(クスマウル徴候陽性)するため,中心静脈圧は潜在的にある程度上昇していることが推察される.
  • よく見ると前頸静脈(Anterior jugular vein)も密かに怒張している.個人的には喉仏サイン(Adam's apple sign)陽性と呼んでいる.頸静脈といえば内頸と外頸だけど,正面にいるのに目立たないシャイな前頸静脈も忘れないように.

🍎 独り言
  • 喉仏(Adam's apple)は俗称で,正式には喉頭隆起(laryngeal prominence?) です.なぜなのかですが,仏教では火葬時に喉仏が綺麗に焼き上がると四十九日を待たずに極楽浄土行きが決まるといわれているからだそうです.軟骨部だけを取り出すと,座禅したお坊さんやお釈迦さん,阿弥陀さんの結跏趺坐(けっかふざ)した姿に見えるという説もあるようです().しかし喉仏がうまく焼け残るには骨密度と火加減が重要だそうです.現在の火葬では喉頭隆起は焼けてしまい残らないので,仏事では第二頸椎を喉仏と呼んでいるようです().

💁 クスマウル徴候に関する過去の投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2024-05-02

今週の一枚 🎯

右心カテーテルで意外な疾患が判明した症例

👿 カテ後に身体所見を確認

👾 臨床現場
  • 本例はⅡ音の肺動脈成分が亢進していたため肺高血圧が疑われた.しかし右心カテーテル検査で肺高血圧はなかった.右室の内圧は想定外のdip and plateauを示していた.
  • その後に身体所見を見直すと収縮性心膜炎の軽症〜中等症に合致する所見(重症度分類).明瞭なⅡ音の肺動脈成分は,肺動脈弁領域に限局したノック音であったようだ.
  • いつもながら収縮性心膜炎は一筋縄ではいかない.本例は利尿薬等で安定したため心膜剥離は未施行.ちなみに本例には心尖の収縮期陥凹(ブロードベント徴候)はなし.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎達也)

2022-03-17

鎖骨上のピコピコ

CTで悪性腫瘍の右心系転移が疑われた症例

🐳 巨大a波(Prominent or Giant a wave)
  • 右鎖骨の頭側(鎖骨上窩)に周期的に隆起する拍動を視認(前半矢印)
  • 手指で容易に圧迫され,時相は動脈拍動やⅠ音の直前 ➜ 頸静脈のa波
  • 深吸気時に右内頸静脈の拍動が出現(クスマウル徴候陽性:後半矢印)     
  • 心エコー図で三尖弁周囲に腫瘍を認め,三尖弁狭窄の病態が疑われた

💣 おまけ
  • ご本人に自覚症状はなく,心音にも特記すべき異常はありませんでした.また座位で頸静脈は視認できず,クスマウル徴候も陰性でした.
  • 同様のa波は不整脈(完全房室ブロック心室期外収縮)で有名です.この場合はCannon a waveと呼ばれます(キャノン音と要区別
  • 日常臨床では頸静脈の大きなa波は肥大型心筋症で視認することが多く,同疾患のフィジカル診断にも有用です(典型例
  • a波は本例のような三尖弁狭窄症など右房圧が上昇した病態で目立ちますが,日常臨床でお目にかかることは稀(他の自験例:心房中隔欠損
  • 頸部の陽性波と言えば一発診断可能なコリガン脈ランチシ徴候(巨大v波)ですが,個人的には地味なa波が大好きです 😊

松下記念病院 川崎達也)

2023-02-16

拍動する怒張

心不全と診断され入院した症例

😄 解説
  • 臥床で外頸静脈が怒張している ➜ 中心静脈圧の上昇あり?
  • 吸気負荷で外頸静脈怒張は改善なし(クスマウル徴候陽性)
  • よく見ると👀怒張した外頸静脈に拍動あり(周期的な隆起)
  • 外頸静脈の下にある胸鎖乳突筋の拍動 ➜ 内頸静脈の拍動!
  • 端座位で内頸静脈の陽性波(ランチシ徴候/Lancisi's sign
  • 座位で吸気負荷 ➜ 内頸静脈の陽性波+外頸静脈の隆起出現

😃 コメント
  • プレゼンで多用されている表現「頸静脈の怒張」は,拍動や呼吸性変化を伴わないパンパンに張った状態と考られます.この表現は頸静脈にのみ適応されるべきです(実例).頸静脈が怒張するような病態では循環動態を保てません(生存困難).
  • 本例の外頸静脈は拍動していますが,今回は怒張と表現してもいいと思います.これは外頸静脈自らの拍動ではなくて,他の要因(内頸静脈の拍動)を反映しているに過ぎないからです.ただし怒張は仰臥位でのみで,座位は単なるクスマウル徴候です.

松下記念病院 川崎達也)

2021-07-19

プチマウル徴候

定期受診時に体重増加が判明した慢性左心不全症例(端座位)

😈 解説
  • 自然呼吸で吸気時に鎖骨上窩に拍動を認め,触診では静脈拍動であった.外頸静脈も吸気時に明瞭化している.一方,呼気時には鎖骨上窩の拍動はなく外頸静脈も不明瞭
  • 深吸気保持では外頸静脈に怒張が出現(古典的クスマウル徴候).しかし自然呼吸で吸気時にのみ認めた鎖骨上窩の拍動は,深吸気保持時には視認できない.
  • 最終的に慢性心不全の軽度増悪と診断.自覚症状に乏しいが,本例には認知症あり(以前の類似投稿).同居家族に減塩指導を行い,2週間後に再診することにした.

👻 独り言
  • 頸静脈のセンシティブな反応にはいつも驚かされます.クスマウル徴候のように強制的な吸気負荷を用いなくても,本例のように自発呼吸の吸気時相で頸静脈拍動が出現することは稀ながら経験します.個人的にはプチマウル徴候と呼んでいるのですが,もう少しイケたネーミングセンスがあれば...といつも悩んでいます😂

🉐 勝手に命名編
松下記念病院 川崎達也)

2022-07-21

前屈は意外に高負荷?

労作時の息切れを訴える症例

🐦 解説
  • 座位の安静時に右鎖骨上に頸静脈の拍動を視認しない(座位陰性)
  • 吸気負荷を追加後も頸静脈拍動の出現なし(クスマウル徴候陰性)
  • しかし少し前かがみになると内頸静脈の拍動が出現(前屈負荷陽性)
  • 拍動は陽性波(ランチージ徴候陽性)かつ不規則(心房細動を示唆)
  • 最終的に本例は,持続性心房細動を伴った慢性左心不全と診断した

🐤 臨床現場
  • 安静端座位で頸静脈拍動がないため著明な中心静脈圧の上昇(目安は15cm水柱)はないと判断.吸気負荷(クスマウル徴候)も陰性であるため「中等度の上昇もなさそうだな〜」と思っていました.
  • しかし症状が心不全のまさしく”short of breath”であったため,前かがみ(頭部前方位姿勢)になってもらったら陽性波が出現してびっくり 😮 前屈による胸腔内圧上昇は(僕が)思っているより高負荷?
  • 蹲踞は前負荷増大+後負荷増大でかなりの負荷量です.蹲踞+前屈負荷は旧最強負荷でいわゆるトリプル負荷.蹲踞+前屈負荷+吸気負荷が新最強負荷でいわゆる負荷の四重奏.すべて勝手に命名ですが...😅

松下記念病院 川崎達也)