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2023-12-28

外頸静脈を信じないで

息切れで来院した症例(端座位)

👶 解説
  • 座位で頸部に外頸静脈が怒張?(矢印)
  • 一方,内頸静脈の拍動は明らかでない
  • (顎下に僅かに認める拍動は動脈拍動)
  • 吸気負荷を追加するが内頸静脈は陰性
  • 左上肢挙上負荷後でも内頸静脈は陰性
  • 暫くして怒張していた外頸静脈が虚脱
  • 精査で心肺疾患なし(息切れは年相応)

 😎 外頸静脈の問題点
  1. 外頸静脈には静脈弁が存在している(厳密には内頸静脈にも静脈弁があるが,有効な逆流防止機能はないらしい)
  2. 外頸静脈は右房と直線的な位置関係を有しない(内頸静脈はほぼ直線的な関係を示す:解剖学的シェーマ
  3. 外頸静脈は表在静脈である(深部静脈へ繋がる部分[下肢静脈で言えば穿通枝]が筋肉の圧迫を受けやすい)

 😍 メリットも忘れずに
  • 外頸静脈も隆起している上縁の心周期変動や呼吸性変動が明瞭な場合には,内頸静脈と同様に中心静脈圧の推定に十分活用可能です.
  • 収縮性心膜炎に特徴的な急峻y下行(フリードライヒ徴候)や不整脈の診断(過去の投稿)など繊細な波形解析は,むしろ得意です.

松下記念病院 川崎達也)

2023-12-25

🏆 論文

  • 当院のリハビリテーション室のPT笠井先生の研究が出版されました
  • 吸気負荷を用いた頸静脈の座位定性法による心不全リスク評価です
  • 同評価法は心不全の多様性(REF vs PEF他)によらず一貫して有用
サブグループ解析

😀 当院の頸静脈評価
  • 当院では頸静脈の座位定性法を知って以降,積極的に臨床活用してきました.つまり安静時に右鎖骨上に拍動があるか否かです.視認しなければ心不全は安定していると判断していました.しかしある時,安定しているにも関わらず運動負荷後に頸静脈拍動が出現した症例に遭遇しました.本例は残念ながら数ヵ月後に死亡されました.
  • この時に心疾患の慢性期では負荷が重要であることを再認識しました.負荷心電図や負荷心エコー図と同様に,負荷頸静脈です.そこで負荷頸静脈の報告を検索したのですが,ほとんどないことが分かりました.これは頸静脈評価の従来定量法(例:45度半坐位で胸骨角からの垂直距離を測定:ルイス法)に問題があると考えました.
  • 近年普及してきた座位定性法なら,負荷後も頸静脈の判定が容易です.早速6分間歩行で行ってみると,予想以上にいい結果が得られました(笠井論文).運動が困難な症例も少なくないので,吸気負荷(前負荷増大)に対する反応を確認しましたが同様に良い結果でした(車古論文).今回は第三弾で心不全の多様性に対する検討です.

💁 論文の過去投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2023-12-21

動脈 vs 静脈:マイスターへの道

労作時の息切れで来院:拍動は動脈? 静脈??

👻 解説
  • 右頸部に周期性に隆起あり(左側も観察可能)
  • 一見,コリガン脈(動脈性拍動)に思われる
  • 吸気保持で外頸静脈の怒張が出現した(矢頭)
  • ARなどによる高心拍出状態で心不全の状態?
  • ただよくみると吸気で隆起上縁が上昇(矢印)
  • やはり拍動は静脈性で中心静脈圧は著明上昇
  • 最終診断は虚血性心疾患の非代償性左心不全

💚 マイスターへの道
  • 上記の動画をよく見ると,吸気負荷前からすでに吸気時の外頸静脈隆起を認めます(クスマウル徴候陽性).またVネックの上に開心術を思わせる手術創も確認できます(本例は冠動脈バイアス術後).さらに耳朶を確認すると45度の皺(フランク徴候)もあったので重症虚血性心疾患を予想しました(…と書きたいところですが実は耳は確認していません 😅 すいません).
  • 先日,日本不整脈心電学会が開催している心電図検定2023を初めて受けてきました.個人的には初期研修医と長年,心電図の勉強会(松下心電塾)を開催していることもあり,ある程度の知識は有していると思っていました.しかし試験対策では,12誘導心電図でここまで読めるのかと驚きの連続でした(忘備録).本ページでは心臓フィジカル・マイスターを目指してください.

松下記念病院 川崎達也)

2023-12-18

鳩胸 Pectus carinatum

先日,SNSで高度の鳩胸の症例を見かけたので少しまとめてみました.

  • 概略 前胸壁が前方に突出した胸壁の先天異常(漏斗胸とは逆)
  • 原因 肋軟骨の伸長欠陥の疑い(25~33%で遺伝的要素あり?)
  • 疫学 発生率は約1000人に1人(漏斗胸の約1/10)で男:女は5:1
  • 合併 稀に側弯症,マルファン,僧帽弁逸脱,骨形成不全など
  • 経過 通常出生直後には確認されず成長で加速(10代で顕性化)
  • 症状 多くは無症状(稀に突出部位の圧痛や運動耐容能の低下)
  • 予後 良好で通常は長期的な健康への悪影響もないと思われる
  • 対応 矯正器具,外科的修復,隠蔽(ボディビル,女:豊胸術)


😉 なんでも探偵団
  • pectusはラテン語で胸(chest),carina(or keel)は古代ローマの船の竜骨(船底中央を縦に通す強度部材)から名付けられたようです().発音はココで,別名はkeel chestやpigeon chest
  • 逆の病態である漏斗胸の英名はpectus excavatumで,excavatumはラテン語でhollowed(空洞の)を意味するようです().発音はココで,sunken chestなどとも呼ばれることがあります.

松下記念病院 川崎達也)

2023-12-14

今週の一枚 🎯

多量の利尿薬でも息切れが続く慢性心不全症例



松下記念病院 川崎達也)

2023-12-11

内頸静脈の水源

  • 頸静脈(jugular veins)〜心臓の解剖(概略詳細)はよく知られています.しかし内頸静脈に至る経路(つまり上流)はあまり知られていないでしょうか?
  • X(旧ツイッター)に分かりやすい図が投稿されていたので転載(cortical veins=皮質静脈,superior sagittal sinus=上矢状静脈洞,vein of Galen=ガレン大静脈,straight sinus=直(静脈)洞,transverse sinuses=横静脈洞)
  • 脳静脈に関してもっと知りたい方は脳静脈の機能解剖(Jpn J Neurosurg 2009;18:821-29)がオススメです.脳外科医でなければ難解かもしれませんが超絶詳細です.

(by @sargsyanz

松下記念病院 川崎達也)

2023-12-07

フィジカル所見の注意点

先週から急に出現した動悸を訴える症例

😎 解説
  • 左側の肘部〜前腕にかけて明瞭な拍動を認める
  • 触診で動脈性の拍動 ➜ 上腕動脈のコリガン脈
  • 爪床のクインケ徴候は圧迫法で僅かに陽性??
  • ライト法を追加したがこちらでもはっきりせず
  • この症例の最終的な診断は急性の大動脈弁逆流

👿 臨床現場
  • 実は本例は初診時のフィジカルで大動脈弁逆流と診断できませんでした.ギャロップがあり心不全とは思いましたが,明らかな心雑音を聴取しませんでした.よって肘部の動脈拍動は,高齢者によくある偽コリガン脈と判断してしまいました.今から思うとその拍動は直線状であるため本物のコリガン脈っぽいのですが...
  • 慢性ARと比較して急性ARでは一回拍出量の増加が少ないため,クインケ脈が出現しにくいのではと思われます(ただし関連論文は見つかりませんでした).同様に急性大動脈弁逆流では心雑音が出現しにくく,おまけに心エコー図でも逆流シグナルが描出しにくい症例があるので要注意です(特に頻脈時:自験例).

👀 クインケ徴候に関する過去の投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2023-12-04

番外編

  • 循環器疾患ではありませんが,興味深い症例を見かけたので本ページにもアップしておきます(松下ERランチ・カンファレンスとのマルチポストです 🎶)

🏀 頭部脳回転状皮膚(Cutis Verticis Gyrata: CVG)
  • 頭皮軟組織の過剰肥厚で脳のような外観を呈する病態
  • 初報は1837年にフランスの皮膚科医であるJLM Alibert
  • 隆起部は硬く圧を加えても平らにすることはできない
  • 頭皮の中央〜後部に多いが頭皮全体に及ぶこともある
  • 頻度は1/10万人以下で男女比6:1,好発は思春期〜30歳
  • 脳性麻痺やてんかん,精神神経疾患と関連する可能性
  • 二次性CVGは先端巨大症,母斑,炎症過程などと関連
  • 通常は良性疾患で治療不要(二次性では原疾患の治療)
  • 美容的に外科切除,皮膚充填剤,ヒアルロニダーゼ注射


- 頭部脳回転状皮膚を呈した先端巨大症の60歳男性 -

松下記念病院 川崎達也)

2023-11-30

身体所見普及委員会:循環器部門 担当

  • 心エコー図が臨床応用されたのは,たかだかこの50年です.一方,身体所見(特に循環器領域)は紀元前から活用されてきました(例:アリストテレス).画像診断学の目覚ましい発展を見れば,身体所見学の衰退は致し方ないのかもしれません.しかしフィジカルの知識は日常臨床を色彩豊かな楽しいものに変えてくれます.
  • 以下の表に示すような人名の冠されたフィジカル所見(人名フィジカル)はなおさらです.幾つ知っているのか是非,確認してみてください.自信のない所見はネットで検索してみてください.本ページにも多くの所見がすでにアップされています.これらの人名所見は,明日からの循環器診療を艶やかなものに変えてくれます.


😀 皆で盛り上げよう
  • 勝手に身体所見普及委員会を設立して,勝手に循環器部門担当を宣言しています(X:旧ツイッター @jsbtk).協賛いただける方のご参加をお待ちしております(笑)許可は不要なので自由に宣言して活動を開始してください 😀

松下記念病院 川崎達也)

2023-11-27

胸鎖乳突筋 Sternocleidomastoid muscle

軽労作での息切れで来院した症例(体位は座位)

🐤 解説
  • 座位で内頸静脈の明瞭な拍動を視認可 ➜ 中心静脈圧は高度に上昇
  • 拍動は隆起ではなくて陥凹で不規則と思われる ➜ 心房細動の疑い
  • 吸気負荷の追加 ➜ 胸鎖乳突筋が明瞭化し頸静脈反応は評価できず
  • 患者さんの右側から再度負荷 ➜ 拍動上縁は上昇するが陽性波なし
  • 本例の最終診断は心房細動を合併した非代償性の左心不全(PEF)

🐥 独り言
  • 座位で内頸静脈の陥凹を認めた場合,吸気負荷で陽性波(CV merger)になれば心不全はより重篤と考えられます.本例は負荷後も陰性波のままだったため,そこまで重症ではないと考えられました.ちなみに吸気負荷で拍動が消失する症例を経験することは(ほぼ)ありません(直近の座位陽性12例では吸気で拍動消失例なし).
  • 安静座位で内頸静脈の拍動を認めない症例で,吸気後に拍動が出現すれば中心静脈は中等度上昇していると(個人的には)判断しています.胸鎖乳突筋が安静時から目立っている場合(自験例)や本例のように吸気で目立つ場合(偽クスマウル徴候)があります.しかし筋肉は拍動しないので頸静脈と見間違うことはないと思います.

松下記念病院 川崎達也)

2023-11-23

右心カテーテル

  • 最近では右心カテーテルを行う機会はめっきり減少しました.しかし頸静脈所見を解釈するためには,右心カテーテルで得られる圧波形を知っておくことが重要です.少し前にSNSで目にした論文)が気になったため,右心カテーテルの歴史と代表的な波形を復習してみました.

♻ 歴史
  1. 西ドイツの泌尿器科医フォルスマンWerner Forssmann、1904-1979)が自らの腕を切開して尿道カテーテルを右心房まで到達させレントゲンを撮影した(Klinische Wochenschrift 1929;8:2085). その一件で病院を解雇されたが,これは世界初の心臓カテーテルで1956年にノーベル生理・医学賞を受賞.同じ様な行動をとった医師が他にもいたがフォルスマンのみ写真が残っていたらしい(
  2. フランスの医師・生理学者であるクールナンAndré Frédéric Cournand, 1895-1988)が,右心カテーテルによる圧測定および心拍出量の測定法を確立した(J Clin Investig 1945;24:106).フォルスマンと同時にノーベル生理・医学賞を受賞した.同年は3人の同時受賞でもう1人はリチャーズDickinson Woodruff Richards Jr.,1895-1973)
  3. アイルランドの心臓専門医スワンHarold James Charles “Jeremy” Swan,1922–2005)とスロバキア生まれのアメリカの心臓専門医ガンツWilliam Ganz,1919-2009)が先端にバルーンが付いた肺動脈カテーテル(別名:スワン・ガンツカテーテル/Swan-Ganz catheter)を開発(N Engl J Med 1970;283:447-51

- 圧力波形のピットフォールと異常 -

松下記念病院 川崎達也)

2023-11-20

「アレっ?」と思ったら慎重に

2週間前から息切れが続く症例(座位)

🐥 解説
  • 頸部は右側のみでなく正中,左側も拍動(隆起)
  • 吸気負荷でも陽性波所見に変化なし(動画なし)
  • 同様に左上肢の挙上後にも頸部所見に変化なし
  • 最終診断は大動脈弁逆流のコリガン脈(頸動脈)

🐤 つぶやき
  • 右側に限局しない陽性拍動なら動脈性を真っ先に考えるべきでした.呼吸負荷や上肢挙上負荷で変化がないならなおさらです.しかし何故かこの時は頸動脈のことが少しも頭に浮かびませんでした.当日の外来があふれていたことと本例の病歴が典型的な心不全であったためかもしれません(反省😓).前頸静脈(Anterior jugular vein)の拍動って珍しいな〜と思っていました.
  • 上肢の重量は片側で体重の4%程度だそうです(例:体重60 kgなら2.4 kg).2Lのペットボトルを挙上・保持する動作はなかなかの重労働です.挙上に伴う前負荷増大(上肢内血液の心臓への還流)および後負荷増大(上肢が心臓よりも高位に移動)を考えると,上肢挙上は蹲踞姿勢(最強負荷新最強負荷)に匹敵するなかなかの負荷ではないかと思っている今日この頃です.

松下記念病院 川崎達也)

2023-11-16

今週の一枚 🎯

1週間続く胸背部の内部痛(大動脈弁置換術の既往あり)
(左側胸部:少しボケていて🙇)




松下記念病院 川崎達也)

2023-11-13

症状があてにならない時

息切れがあるのかないのかはっきりしない症例

😶 臨床現場
  • 座位では僅かに拍動あり? ➜ 心不全ありとは言えず
  • 吸気負荷で内頸静脈の隆起?(拍動なし)➜ 心不全?
  • 左上肢挙上で周期的な陥凹出現 ➜ 心不全ありと判断
  • 最終診断は慢性左心不全(HEpEF)➜ SGLT2i を投与

🔗 復習
  • 高齢者の心不全例では自覚症状が曖昧なことがあります.加齢に伴う身体活動の低下や各種知覚センサーの鈍化が原因と推測されます.また認知機能障害の合併も念頭に置く必要があります(自験例:ニコニコしている症例).システマティックレビュー(J Card Fail 2017;23:464-75)では,心不全患者で認知症の頻度が43%に達していました(95%信頼区間30~55).怪しければ吸気負荷に加えて左上肢挙上負荷前屈負荷の追加が役立ちます.

松下記念病院 川崎達也)

2023-11-09

今週の一枚 🎯 ゴニョゴニョ

心電図異常(洞調律・ST-T変化)で来院した男性(座位)

😎 診察室中継
  1. 呼吸時の大きな胸壁の動きにめげずに心尖の拍動を探す
  2. 心尖拍動(矢印)を認識したら次はその位置を確認する
  3. 拍動が左乳輪外側とは言えないため心拡大はないと判断
  4. 次に拍動様式を分析:なにか”ごにょごにょ”している?
  5. 触るってみると二峰性拍動(ダブルインパルス)の疑い
  6. 拍動部位で大きなⅣ音を聴診して肥大型心筋症を疑った
  7. その後に心エコー図で心尖部肥大を確認しAPHと診断

😁 楽しい臨床
  • 二峰性心尖拍動(ダブルインパルス)と言えば肥大型心筋症です(特異度98%:当院の臨床研究).心尖部肥大型心筋症に限らず,巨大Ⅳ音を示唆する所見です.視診・触診・聴診のいずれでも診断できますが慣れが必要でしょうか?
  • 最近は,二峰性またはダブルにはあまりこだわらなくていいのではと思っています.リアルの臨床現場では本例の様に胸壁の動きも加わるため細かい判定はより難しく成ります.「なにかゴニョゴニョしているな〜」程度で十分です.
  • 先月に経験した症例はHCMでギクシャクしている心尖拍動でした.視診から肥大型心筋症を疑い,心エコー図で確認する臨床スタイルは机上の空論ではありません.誰にでも可能で,かつ日常臨床を楽しくする知識だと思います.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎達也)

2023-11-06

👴 歴史クイズ

CC BY 4.0



松下記念病院 川崎達也)

2023-11-02

今週の一枚 🎯

慢性心不全でフォロー中の症例(座位)

🔥 解説(個人的見解)
  • 端座位で鎖骨上に内頸静脈の拍動はなし ➜ 中心静脈圧の高度上昇なし
  • 吸気でも拍動は出現せず ➜ 中心静脈圧の中等度上昇なし(ビデオなし)
  • 左上肢の挙上で陥凹が出現(矢印)➜ 中心静脈圧の軽度〜中等度の上昇
  • 新たに出現した陥凹は不規則 ➜ 心房細動の疑い(実際に本例はAFです)

💛 心不全否定のMyパターン
  • 症状で心不全を疑わない症例:安静時に内頸静脈の座位陰性を確認
  • 心不全が否定できない症例:安静時と吸気負荷後ともに陰性を確認
  • 心不全の可能性あり例:安静吸気左上肢挙上すべて陰性を確認

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎達也)

2023-10-30

視診だけでは難しいが...

労作時の動悸感を訴える症例(端座位)

😀 解説
  • 安静時や吸気時に鎖骨上にわずかに拍動あり??
  • 前屈で周期的拍動(隆起)が明瞭になった(矢印)
  • 隆起を触ってみると明らかに動脈性拍動であった
  • 本例は最終的に心不全の状態ではないと判断した

 😎 追加コメント
  • 前屈で頸静脈所見が悪化する症例は少なくありません.陥凹から隆起になることが多いと思いますが(自験例),吸気陰性なのに前かがみでいきなり陽性波を示す症例もあります(自験例).前屈は吸気負荷よりも心臓への負担が大きいと思います
  • 本例も一見,中心静脈圧の上昇が疑われましたが,最終的には体位変換に伴って顕性化した動脈拍動でした.大脈を示す病態(大動脈弁逆流や甲状腺機能亢進,発熱,貧血など)はないため,加齢に伴う動脈蛇行(=偽コリガン脈)と診断しました.
  • 鑑別すべき病態に肥大型心筋症のa波の顕性化があります(自験例).触診で静脈を確認したら次は脈や心音を併用した時相確認が必要です.隆起のタイミングが前収縮期なら硬くなった心室(HCMなど)や不整脈(キャノンa波)などを考えます.

松下記念病院 川崎達也)

2023-10-26

今週の一枚 🎯

下腿症状で来院した男性

☆ 解説
  • 皮膚の肥厚と境界不明瞭な色素沈着,鱗屑,苔癬化
  • 右下腿前面の中央付近にびらんまたは潰瘍の治癒跡
  • 本例に下肢静脈瘤を示唆する所見は明らかではない
  • 男性にもかかわらず下腿に体毛をほとんど認めない
  • 最終的に慢性両心不全によるうっ滞性皮膚炎と診断

★ 鬱滞性皮膚炎(Stasis dermatitis)
  • ヒト下肢静脈は,深部静脈・表在静脈(伏在静脈)・深部と表在をつなぐ穿通枝・ポンプ作用を担う静脈洞から構成される.なんらかの原因で静脈圧の上昇を生じて皮膚炎をきたした病態がうっ血性皮膚炎で,重症化すると下肢静脈性潰瘍を生じる.
  • 下肢静脈高血圧のため慢性的に血管透過性が亢進して,フィブリノーゲンや赤血球が血管外に漏出して炎症を惹起し,ヘモジデリン沈着や結合織の増生と硬化を生じる.組織レベルでの動脈血流入が減少して栄養状態が障害されると皮膚潰瘍に至る.
  • 通常は50歳以上の方に多く,男性よりも女性の方が罹患頻度は高い.原因には静脈瘤,肥満,(多胎)妊娠,下肢静脈血栓,心不全,腎不全,高血圧,特定のライフスタイル(例:少ない身体活動や長時間の立位・座位),下肢の外傷後などがある.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎達也)

2023-10-23

心不全の診断

  • 心不全の本態:左室拡張期圧の上昇(心臓が広がりきったときにかかる圧を逃がしきることができない状態)
  • 診断時にアクセスの容易な所見:①心尖拍動,②両肺ラ音,③傍胸骨拍動
  • 経験を要するが特異性の高い所見:①III音,②頸静脈怒張





😗 独り言
  • 「心不全かも?」と思った時に心尖拍動や傍胸骨拍動がアクセス容易な所見であることにはとても同意します.しかし残念ながら心不全診療の現場で活用されているとは(全く)思えません.とにかく触ってみるという一歩を踏み出してみることが大切でしょうか(難しいことは考えずに)
  • 本論文では頸静脈所見が経験を有する所見に分類されています.これは従来から行われてきた方法論に起因する問題だと思っています(ルイス法).例えば45度の半座位なんて臨床現場では困難です.是非とも簡易定性法座位で鎖骨上に見えるか否か)を試してください.ハマります😊

松下記念病院 川崎達也)

2023-10-16

「ちょっと前かがみになってもらえませんか」

肥大型心筋症による慢性心不全例(座位)

😎 解説
  • 安静座位で鎖骨上に内頸静脈の陥凹あり(矢印)
  • クスマウル徴候陽性:吸気で陥凹 ➜ 隆起(矢印)
  • 前かがみで内頸静脈の陽性拍動が明瞭化(矢頭)

👟 Bendopnea(前屈時呼吸困難症)
  • 前かがみになると通常,頸静脈拍動がより明瞭になります.その機序は,前屈による胸腔内圧の上昇に伴い左室拡張末期圧や肺動脈楔入圧,右房圧などがさらに高くなるためと考えられてれます(JACC Heart Fail 2014;2:24-31).
  • 上記の心内圧の増加に加えて,体位変換による物理的な距離の変化もその一因かもしれません.本例の動画からも分かるように,前屈時には心臓と内頸静脈の垂直距離が短縮します(いわば首から上だけの[逆]半座位のような感じ?)
  • いずれにせよ吸気や左上肢挙上と同様に簡便な負荷に違いありません.患者さんに「ちょっと前かがみになってもらえませんか」と言うだけです.そして「普段の生活でこういう体勢はしんどくありませんか?」と続けてみてください.

👀 前屈に関する過去の投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2023-10-12

今週の一枚 🎯

労作時の息切れで来院した男性(座位)

😎 解説
  1. 吸気時の肋間陥凹(フーバー徴候:矢印)➜ 後に慢性閉塞性肺疾患 COPD と診断
  2. 男なのに乳房の発達(女性化乳房:矢頭)➜ 前立腺ガンでホルモン療法中が判明
  3. 心尖拍動の外方偏位+抬起性拍動(○)➜ 肥大型心筋症による慢性心不全と診断

😁 追加コメント
  • COPDでは肺容積が増加して滴状心になるので,心拡大は一般的ではありません.しかし心不全(NT-proBNP上昇や肺水腫,胸水貯留)を合併するようになると心胸郭比(CTR: cardio thoracic ratio)は増加してきます(Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2018;13:217-29).
  • 肥大型心筋症では硬い心室が特徴のため心室拡大は稀です(拡張相・エンドステージHCMを除く).しかし心不全を伴うHCMでは心房拡大の結果,心拡大を呈することが決して少なくありません.左房容積は心尖拍動の左方偏位に最も関連する因子です(J Cardiol 2021;78:136-41).

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎達也)

2023-10-09

これは指腹ではなく指先で!

検診で心電図異常を指摘された無症候例

👥 ダブルインパスルス(二峰性心尖拍動)
  • 左半側臥位で抬起性(持続時間の長い)の心尖拍動(矢印)
  • よく見るとグググといった(スムーズでない)隆起パターン
  • 付箋をつけるとその立ち上がりが一峰性でないことが分かる
  • 最終診断は肥大型心筋症(非閉塞性かつ非対称性中隔肥大)

👤 コメント
  • Double apical impulseとは小さな振れ(atrial kick=A波=心房収縮波)の後に大きな振れ(抬起性)が続く心尖拍動で,肥大型心筋症にかなり特異的です(感度27%・特異度98%)(当院の研究).つまりあればおそらく肥大型心筋症と確定可
  • 問題はダブルインパスルスを認識できるか否かです.視診・触診・聴診の中では視診が最も難しいと思いますが,これは慣れで克服できると思います.本ページには肥大型心筋症の二峰性拍動が多数アップされているので確認してみてください(ココ
  • 視覚の時間分解能は低いと思われますが,指先は超高感度の圧センサーです.何かギクシャクした隆起だと思ったら是非,指先で感じてみてください(触ってなんぼの法則).ポイントは指腹でなくて指先でしょうか.ズズンと伝わってくるでしょう.
  • 個人的にはⅣ音が好きかつ得意なので,ダブルインパスルスよりも巨大Ⅳ音(心房収縮波の音版)を信頼しています.ただし閉塞生の肥大型心筋症では収縮期雑音が過剰心音の聴診を難しくすることが少なくありません(自験例).この時は指先に全集中

松下記念病院 川崎達也)

2023-10-05

今週の一枚 🎯

深部静脈血栓症の疑いで循環器内科を紹介された症例




松下記念病院 川崎達也)

2023-10-02

楽音様雑音 Musical murmur

😀 先日の学会で...
  • 友人のフィジカル匠からナイスな論文を教えてもらったのでまとめておきます

🎼 楽音様雑音(Musical murmur)
  • 心エコー図と心音図を行った3,255例中93例(2.9%,男49例・女44例,平均55歳)
  • 出現時相は収縮期が77例(83%)で,拡張期が16例(17%)(拡張早期雑音は8例)
  • 大動脈弁由来が43例:31例が弁の石灰化で,その他には疣腫,術後の変化,弁逸脱
  • 僧帽弁由来が26例:17例が弁逸脱,他は弁輪石灰化,疣腫,術後変化,弁輪拡大
  • 三尖弁由来が10例:弁石灰化1例,2次性閉鎖不全5例,ペーシングリード関連4例
  • 弁膜症はAS 14.3%,AR 8.7%,A弁石灰化 5.0%,MR 6.3%,連合弁膜症3.1%,MSなし
  • 先天性心疾患ではVSD 4.7%のみで,他はHCM 5.1%,ペースメーカ植込み例が10.5%



😃 追加コメント
  • 本論文内の楽音様雑音の定義は「聴診上純音で,楽器の音や鳥の鳴き声に代表されるような特徴的な雑音を聴取し,心音図で規則正しい正弦波形を呈したもの」です.なお正常心に認められる若年者の Still's murmur(収縮期前半の低調なブンという無害性(機能性)雑音)は除外されています.
  • 楽音様雑音でも比較的短い雑音なら"honk"(自動車のクラクション)や"whoop"(フクロウなどのホーホーと鳴く声),大動脈弁逆流雑音の長い持続なら"seagull cry"(カモメの鳴き声)などと称されているとも記載されています."seagull cry"は"dove-coo murmur"(ハトのクークー鳴く音)や"cooing murmur"(乳児のア〜 or ウ〜という発語)とも言われます.

松下記念病院 川崎達也)

2023-09-28

ホーマンズ徴候 Homans's sign


  • 深部静脈の血栓(性静脈炎)の有無を判定するのに有用な身体所見のひとつ
  • 足首の強制背屈時に膝の屈曲あるいは下腿の疼痛が出現すれば陽性と考える
  • 米の外科医 John Homans (1877–1954) に由来(N Engl J Med 1944;231:51-60
  • 診断能は必ずしも高くないため,Dダイマーや静脈エコーと組み合わせて使用
  • 感度10-54%,特異度39-89%(McGee. Evidence-Based Physical Diagnosis 2012)


Homan's Sign by siom916 より)

😶 おまけ+独り言
  • ガイドラインには「末梢型DVTには画一的に抗凝固療法を施行しない」(推奨クラス I  エビデンスレベル B)と記載されています(表33).(追記:中枢型=腸骨・大腿・膝窩静脈の血栓).本文中にも「末梢型は,中枢型にくらべてPTEのリスクは約半分と低く,2週間以内に血栓の中枢伸展がなければその後の伸展はない.超音波検査で1週ごとに中枢伸展の有無を経過観察するのがよい.中枢伸展があり,症候性で出血リスクが低い場合には,中枢型に準じた抗凝固療法を行う.」とも書かれています.つまり無症候性の遠位部血栓はエコーによるフォローで良さそうです.
  • ガイドラインには「Homans徴候は足関節を強く背屈させると腓腹部に強い疼痛が生じる所見で,Lowenberg徴候は腓腹部に血圧計のカフを装着し,60~150 mmHgに加圧すると疼痛を生じる所見であるが,特異性がなく,あまり使用されなくなっている524)」とも記載されています.しかしここでの引用524)は半世紀以上前の論文です(Br J Surg 1968;55:822-4).Homans徴候とLowenberg徴候の説明のための引用かもしれませんが,それならば 524) の記載位置が少しずれていると思います.いずれにせよ個人的には今でもHomans徴候を活用しています 😁

松下記念病院 川崎達也)

2023-09-25

第102回(2013)看護師国家試験より

問題 心音の聴取部位を図に示す。肺動脈弁領域の聴診部位はどれか。ただし、点線は心臓を示す。

 
 
 
 
 

判定

😉 聴診部位(覚え方は ➜ コチラ
  1. 第2肋間胸骨右縁(2RSB)は大動脈弁領域
  2. 第2肋間胸骨左縁(2LSB)は肺動脈弁領域
  3. 第3肋間胸骨左縁(3LSB)はErb領域
  4. 第4肋間胸骨左縁(4LSB)は三尖弁領域
  5. 心尖部は僧帽弁領域

😳 独り言
  • 上記領域は単なる命名で個人差もあるから特にこだわる必要はないと思うけど、肺動脈領域とErb領域がごっちゃになっている方も少なくないのでは...
  • 聴診順は ① ➜ ⑤ でも ⑤ ➜ ① でもどちらでもOKです。心尖部に多い重要音(過剰音やランブル)をすぐ聞きたいか後に取っておきたいかの違いかな

松下記念病院 川崎達也)

2023-09-21

ビンビン来ます

心電図異常(ST-T変化)で受診した高齢者

👻 解説
  • 胸骨頸切痕の上部に規則的に隆起する明瞭な拍動あり
  • 手指で圧迫できず(指先まで拍動がビンビン伝わる)
  • 呼吸負荷を追加しても拍動上縁の変動は観察できない
  • 本例には心電図変化を説明する明らかな心疾患はなし
  • 拍動は加齢に伴う動脈蛇行と判断(=偽コリガン脈

💚 追加コメント
  • 頸静脈の評価は左側の鎖骨上〜頸部で行いますが,前頸静脈(Anterior jugular vein)が目立つ症例もあるので注意が必要です
  • 頸動脈の拍動が明瞭ならコリガン脈ですが通常は頸部側面に認めます.前頸部のみなら動脈蛇行による偽コリガン脈かも(自験例

松下記念病院 川崎達也)

2023-09-18

心雑音の性状(quality, character)

👤 篠山重威先生が25年ほど前にまとめられた心雑音の日本語表現
  • rumbling(遠雷様,輪転様)
  • blowing(吸気性)
  • machinary(機械様)
  • musical(音楽的)
  • rustling, rippling(流水様,さらさら)
  • grating(すり砕くような,きしるような)
  • rasping(やすりをかけような)
  • sawing(鋸をひくような,曳鋸性)
  • pouring(液水性)
  • scratching(爬くような)
  • whistling(吹鳴性)
  • harsh(荒い,ざらざらした)
  • soft(やわらかい)


- 種々の心雑音の典型的な形 -

松下記念病院 川崎達也)

2023-09-14

上肢挙上負荷は慎重に

慢性心不全の増悪症例(体位は座位)

👿 解説
  • 内頸静脈を視認(矢印)➜ 中心静脈圧は高度上昇
  • その拍動は陥凹波ではなく陽性波(ランチシ徴候)
  • 吸気負荷でも虚脱せず ➜ 広義クスマウル徴候陽性
  • 左上肢の挙上に伴い外頸静脈の明瞭な拍動が出現
  • 中心静脈圧の上昇程度:上肢挙上負荷>吸気負荷

💀 独り言
  • 座位での頸静脈評価の問題点は軽度〜中等度の中心静脈圧の上昇を見逃す場合があることです(安静座位で視認すれば推定15 cmH2O以上).この見落としを防ぐオススメの手技が負荷頸静脈評価法です(45度座位も有用ですが実施困難)
  • 負荷頸静脈評価法で最も簡便な方法が,前負荷を増やす吸気負荷だと思います.同負荷は簡便に加えてとても安全です.安静時に内頸静脈が陽性拍動を呈している症例でも,負荷後に自覚症状が悪化した症例を経験したことはありません.
  • 左上肢挙上による頸静脈負荷法も診察室で簡便に追加できる負荷で重宝しています.しかし自覚症状が明らかに悪化する症例を稀ならず見かけ要注意です(症例1:動画中の音声に注目/症例2:ビデオでは少し分かりのですが顔が真っ赤に)

🉐 上肢挙上負荷の過去投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2023-09-11

🏆 論文

  • 当院初期研修医の間瀬先生が循環器内科で経験した症例が出版されました🎉
  • 薬剤性体液貯留による過収縮から流出路狭窄を伴う心不全を生じた症例です
  • LVOTの改善にはベータ遮断薬ですが,著明な全身浮腫もあり躊躇しました
  • トルバプタンは効果なし ➜ 最終的には利尿薬の調整で徐々に改善しました

🚀 告白
  • 本例では身体所見から心不全であることは容易に診断できました(推定の中心静脈圧は18 cmH2O).しかし心エコー図のレポートを見てびっくり 😳 なんと左室流出路狭窄が記載されているではありませんか.
  • 改めて身体所見を取り直すと頸動脈拍動はスパイク&ドームで,座位から立位で音量が増加する収縮期雑音でした.超反省 😰 その後は(主治医ではなかったのですが)毎日聴診してエコー(連日計測)と対比

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2023-09-07

手抜きではありません 😤

倦怠感を訴える高齢男性(体位は座位)

😀 解説
  • 端座位で心尖拍動は左乳輪の左外側へ偏位 ➜ 心拡大の疑い
  • 心尖拍動は2肋間で観察でき長い隆起時間 ➜ 心肥大の疑い
  • 吸気保持で心尖拍動はより明瞭に(通常は吸気時に不明瞭)
  • 心エコー図で遠心性肥大あり ➜ 最終診断は慢性の左心不全

😑 自白
  • 最近は心不全が疑われる症例では,頸静脈評価はほとんど座位でのみ行っています.もちろん脱水を疑う症例では臥位で拍動消失を確認しますが...
  • 同様に心尖拍動も座位でのみ確認しています.もちろん肥大型心筋症が疑われる症例では臥位や左側臥位でダブルインパルスを探しにいきますが...
  • 実は腹部大動脈瘤を確認するための初診時の腹部触診も座位で済ませることが増えてきました.背中とお腹を両側の手掌で挟み込むようにして...
  • なんでも簡略化することが良いとは思っていません.しかし時間をかける身体所見の評価は必要な症例のみでいいのではと感じる今日この頃です

松下記念病院 川崎達也)

2023-09-04

電紋 Lichtenberg figure

  • 落雷直撃で体表を這う沿面放電による皮膚の樹枝状所見(下図)
  • 英名は分岐放電を研究した独の物理学者 リヒテンベルク に由来
  • 機序は体表面の放電で血管透過性が亢進して血液の血管外漏出
  • 落雷は雷雲と地表の間に2百万V/m以上の電圧差の形成時に発生
  • 本体は数ns以内に最高値3万Aに達して,約40nで半減する衝撃波
  • 世界中で100万人あたり0.2〜1.7人/年間の頻度で雷撃死が発生
  • 発生頻度は女性よりも男性が5倍ほど多く,好発年齢は10〜29歳
  • 雷撃症の瞳孔散大や対光反射消失は予後と無関係で蘇生が必要
  • 雷撃症の死亡率は10〜30%で生存者でも約70%に重大な合併症


左即腹部の電紋(リヒテンベルク図形)

雷撃症による皮膚病変のイメージ図
線状熱傷(左):点状熱傷(中, 矢印):樹枝状電紋(右)

💔 心臓への影響
  • 脱分極による心停止,不整脈,心筋挫傷,心筋梗塞,心膜炎,たこつぼ心筋症など
  • 原因は冠動脈攣縮,血中カテコラミン上昇,直接温熱障害,不整脈に伴う虚血など
  • 不整脈では心房細動や心室性不整脈が出現しやすいが通常24時間以内に正常化する


松下記念病院 川崎達也)

2023-08-31

バンザイはダメでした 😓

慢性左心不全の増悪が疑われる症例

🐥 解説
  • 座位で頸部に内頸静脈の2峰性陥凹(中心静脈圧の高度上昇)
  • 吸気で内頸静脈の陥凹は隆起(ランチシ徴候)に変化(矢印)
  • 両側の上肢を挙上するとシャツの襟が頸部を隠してしまった
  • 慌てて襟元を覗いてみたがやはり頸静脈の拍動は確認できず

🐤 コメント
  • 上肢挙上は吸気よりも強い負荷になることが少なくありません.吸気負荷は前負荷の増大が中心ですが,上肢挙上負荷は上肢の静脈血液の還流(前負荷増大)に加え,挙上という仕事(心拍数増加を含む),呼気時間の延長(胸腔内圧上昇)などが加わるためと思われます(過去の投稿).
  • 本例では吸気負荷で陽性波(巨大v波/cv merger)が出現したため,過剰負荷にならないか少しヒヤヒヤしながら上肢挙上を追加しました.しかし両手をバンザイしてもらったら服がせり上がって頸静脈が見えなくなりました.急いで服をずらしましたが頸静脈の拍動は確認できませんでした.
  • 単なる視界不良でなく,ペンバートン徴候(Pemberton's sign)と同様の機序が働いているのかもしれません.拡大した両側の頸静脈が万歳ポーズで圧迫された結果,頭部からの静脈還流が減少しそうです.顔面うっ血が生じないのは甲状腺腫大や縦隔腫瘍と異なり完全閉塞にならないため?

松下記念病院 川崎達也)

2023-08-28

‘Reverse-Namaskar’ sign 逆ナマスカー徴候

  • Namaskar(ナマスカー)はインドの典型的な挨拶方法
  • 通常は前腕を胸の前で組み手掌を向かい合わせにする
  • 逆ナマスカー徴候は背中で手掌を合わせる動作(下図)
  • エーラス・ダンロス症候群などの関節の過伸展で陽性
  • 日本風なら”後ろの人にもお礼”サインでしょうか?😉
Ehlers-Danlos Syndrome (EDS) と考えられる65歳女性

松下記念病院 川崎達也)

2023-08-24

今週の一枚 🎯

ペースメーカ外来を定期受診した症例



松下記念病院 川崎達也)

2023-08-21

🏆 論文:心アミのフィジカル

  • 当院初期研修医の平野先生が循環器内科で経験した症例が出版されました🎉
  • 身体所見が診断契機になったトランスサイレチン型心アミロイドーシスです
  • このATTR型は高齢者に多く簡便なマーカーがないため診断が遅れがちです
  • 本例は著明肥大にも関わらずⅣ音(S4)なし+ポパイ徴候が診断契機でした

非外傷性の上腕二頭筋腱断裂(ポパイ徴候)がら15年後にATTR型心アミロイドーシスと診断された70歳男性

😀 追加コメント
  • 本例の左室駆出率は55%で左室はびまん性に肥厚し(15 mm程度),左室心筋重量係数は111.9 g/ms2(基準: 56〜92 ms2)でした.ドプラ指標はE/A 2.66,E/e' 32.0とグレードⅢの高度拡張障害でした.しかし通常なら存在が予想されるⅣ音を聴取せず,心音図でも記録されませんでした.
  • 心臓アミロイドでは肥大があるのにⅣ音を欠くことは従来から論文に記載されてきました(Am J Cardiol 2000;86:244-6Clin Cardiol 2021;44:322-31).しかしこれらはエキスパートオピニオンです.友人のフィジカル巨匠が実データを現在投稿中と聞いています(出版がとても楽しみです 😄)
  • 心アミ症例でⅣ音(S4)を欠く機序は心房へのアミロイド沈着と考えられます.本例でもピロリン酸が両心室のみならず両心房に集積していました(下図).以前の投稿「問題硬い左室+Ⅳ音なし=?」はいつも頭の片隅に置いておきたい事です.なお肥大型心筋症の心房の辛抱も忘れずに 😁


👉「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)