このブログを検索

2023-12-28

外頸静脈を信じないで

息切れで来院した症例(端座位)

👶 解説
  • 座位で頸部に外頸静脈が怒張?(矢印)
  • 一方,内頸静脈の拍動は明らかでない
  • (顎下に僅かに認める拍動は動脈拍動)
  • 吸気負荷を追加するが内頸静脈は陰性
  • 左上肢挙上負荷後でも内頸静脈は陰性
  • 暫くして怒張していた外頸静脈が虚脱
  • 精査で心肺疾患なし(息切れは年相応)

 😎 外頸静脈の問題点
  1. 外頸静脈には静脈弁が存在している(厳密には内頸静脈にも静脈弁があるが,有効な逆流防止機能はないらしい)
  2. 外頸静脈は右房と直線的な位置関係を有しない(内頸静脈はほぼ直線的な関係を示す:解剖学的シェーマ
  3. 外頸静脈は表在静脈である(深部静脈へ繋がる部分[下肢静脈で言えば穿通枝]が筋肉の圧迫を受けやすい)

 😍 メリットも忘れずに
  • 外頸静脈も隆起している上縁の心周期変動や呼吸性変動が明瞭な場合には,内頸静脈と同様に中心静脈圧の推定に十分活用可能です.
  • 収縮性心膜炎に特徴的な急峻y下行(フリードライヒ徴候)や不整脈の診断(過去の投稿)など繊細な波形解析は,むしろ得意です.

松下記念病院 川崎達也)

2023-12-25

🏆 論文

  • 当院のリハビリテーション室のPT笠井先生の研究が出版されました
  • 吸気負荷を用いた頸静脈の座位定性法による心不全リスク評価です
  • 同評価法は心不全の多様性(REF vs PEF他)によらず一貫して有用
サブグループ解析

😀 当院の頸静脈評価
  • 当院では頸静脈の座位定性法を知って以降,積極的に臨床活用してきました.つまり安静時に右鎖骨上に拍動があるか否かです.視認しなければ心不全は安定していると判断していました.しかしある時,安定しているにも関わらず運動負荷後に頸静脈拍動が出現した症例に遭遇しました.本例は残念ながら数ヵ月後に死亡されました.
  • この時に心疾患の慢性期では負荷が重要であることを再認識しました.負荷心電図や負荷心エコー図と同様に,負荷頸静脈です.そこで負荷頸静脈の報告を検索したのですが,ほとんどないことが分かりました.これは頸静脈評価の従来定量法(例:45度半坐位で胸骨角からの垂直距離を測定:ルイス法)に問題があると考えました.
  • 近年普及してきた座位定性法なら,負荷後も頸静脈の判定が容易です.早速6分間歩行で行ってみると,予想以上にいい結果が得られました(笠井論文).運動が困難な症例も少なくないので,吸気負荷(前負荷増大)に対する反応を確認しましたが同様に良い結果でした(車古論文).今回は第三弾で心不全の多様性に対する検討です.

💁 論文の過去投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2023-12-21

動脈 vs 静脈:マイスターへの道

労作時の息切れで来院:拍動は動脈? 静脈??

👻 解説
  • 右頸部に周期性に隆起あり(左側も観察可能)
  • 一見,コリガン脈(動脈性拍動)に思われる
  • 吸気保持で外頸静脈の怒張が出現した(矢頭)
  • ARなどによる高心拍出状態で心不全の状態?
  • ただよくみると吸気で隆起上縁が上昇(矢印)
  • やはり拍動は静脈性で中心静脈圧は著明上昇
  • 最終診断は虚血性心疾患の非代償性左心不全

💚 マイスターへの道
  • 上記の動画をよく見ると,吸気負荷前からすでに吸気時の外頸静脈隆起を認めます(クスマウル徴候陽性).またVネックの上に開心術を思わせる手術創も確認できます(本例は冠動脈バイアス術後).さらに耳朶を確認すると45度の皺(フランク徴候)もあったので重症虚血性心疾患を予想しました(…と書きたいところですが実は耳は確認していません 😅 すいません).
  • 先日,日本不整脈心電学会が開催している心電図検定2023を初めて受けてきました.個人的には初期研修医と長年,心電図の勉強会(松下心電塾)を開催していることもあり,ある程度の知識は有していると思っていました.しかし試験対策では,12誘導心電図でここまで読めるのかと驚きの連続でした(忘備録).本ページでは心臓フィジカル・マイスターを目指してください.

松下記念病院 川崎達也)

2023-12-18

鳩胸 Pectus carinatum

先日,SNSで高度の鳩胸の症例を見かけたので少しまとめてみました.

  • 概略 前胸壁が前方に突出した胸壁の先天異常(漏斗胸とは逆)
  • 原因 肋軟骨の伸長欠陥の疑い(25~33%で遺伝的要素あり?)
  • 疫学 発生率は約1000人に1人(漏斗胸の約1/10)で男:女は5:1
  • 合併 稀に側弯症,マルファン,僧帽弁逸脱,骨形成不全など
  • 経過 通常出生直後には確認されず成長で加速(10代で顕性化)
  • 症状 多くは無症状(稀に突出部位の圧痛や運動耐容能の低下)
  • 予後 良好で通常は長期的な健康への悪影響もないと思われる
  • 対応 矯正器具,外科的修復,隠蔽(ボディビル,女:豊胸術)


😉 なんでも探偵団
  • pectusはラテン語で胸(chest),carina(or keel)は古代ローマの船の竜骨(船底中央を縦に通す強度部材)から名付けられたようです().発音はココで,別名はkeel chestやpigeon chest
  • 逆の病態である漏斗胸の英名はpectus excavatumで,excavatumはラテン語でhollowed(空洞の)を意味するようです().発音はココで,sunken chestなどとも呼ばれることがあります.

松下記念病院 川崎達也)

2023-12-14

今週の一枚 🎯

多量の利尿薬でも息切れが続く慢性心不全症例



松下記念病院 川崎達也)

2023-12-11

内頸静脈の水源

  • 頸静脈(jugular veins)〜心臓の解剖(概略詳細)はよく知られています.しかし内頸静脈に至る経路(つまり上流)はあまり知られていないでしょうか?
  • X(旧ツイッター)に分かりやすい図が投稿されていたので転載(cortical veins=皮質静脈,superior sagittal sinus=上矢状静脈洞,vein of Galen=ガレン大静脈,straight sinus=直(静脈)洞,transverse sinuses=横静脈洞)
  • 脳静脈に関してもっと知りたい方は脳静脈の機能解剖(Jpn J Neurosurg 2009;18:821-29)がオススメです.脳外科医でなければ難解かもしれませんが超絶詳細です.

(by @sargsyanz

松下記念病院 川崎達也)

2023-12-07

フィジカル所見の注意点

先週から急に出現した動悸を訴える症例

😎 解説
  • 左側の肘部〜前腕にかけて明瞭な拍動を認める
  • 触診で動脈性の拍動 ➜ 上腕動脈のコリガン脈
  • 爪床のクインケ徴候は圧迫法で僅かに陽性??
  • ライト法を追加したがこちらでもはっきりせず
  • この症例の最終的な診断は急性の大動脈弁逆流

👿 臨床現場
  • 実は本例は初診時のフィジカルで大動脈弁逆流と診断できませんでした.ギャロップがあり心不全とは思いましたが,明らかな心雑音を聴取しませんでした.よって肘部の動脈拍動は,高齢者によくある偽コリガン脈と判断してしまいました.今から思うとその拍動は直線状であるため本物のコリガン脈っぽいのですが...
  • 慢性ARと比較して急性ARでは一回拍出量の増加が少ないため,クインケ脈が出現しにくいのではと思われます(ただし関連論文は見つかりませんでした).同様に急性大動脈弁逆流では心雑音が出現しにくく,おまけに心エコー図でも逆流シグナルが描出しにくい症例があるので要注意です(特に頻脈時:自験例).

👀 クインケ徴候に関する過去の投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2023-12-04

番外編

  • 循環器疾患ではありませんが,興味深い症例を見かけたので本ページにもアップしておきます(松下ERランチ・カンファレンスとのマルチポストです 🎶)

🏀 頭部脳回転状皮膚(Cutis Verticis Gyrata: CVG)
  • 頭皮軟組織の過剰肥厚で脳のような外観を呈する病態
  • 初報は1837年にフランスの皮膚科医であるJLM Alibert
  • 隆起部は硬く圧を加えても平らにすることはできない
  • 頭皮の中央〜後部に多いが頭皮全体に及ぶこともある
  • 頻度は1/10万人以下で男女比6:1,好発は思春期〜30歳
  • 脳性麻痺やてんかん,精神神経疾患と関連する可能性
  • 二次性CVGは先端巨大症,母斑,炎症過程などと関連
  • 通常は良性疾患で治療不要(二次性では原疾患の治療)
  • 美容的に外科切除,皮膚充填剤,ヒアルロニダーゼ注射


- 頭部脳回転状皮膚を呈した先端巨大症の60歳男性 -

松下記念病院 川崎達也)