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2021-05-31

ギャロップ音辞典

  • 救急室で心拍数が100bpm以上の時は心音の詳細は判定は循環器専門医でも容易ではない
  • 収縮期と拡張期の鑑別すら難しいから,「ギャロップの有無」の記載だけでも十分である
  • ギャロップは4種類:Ⅲ音,Ⅳ音,Ⅲ音+Ⅳ音(四部調律),両者の重なり(重合奔馬調)
  • 上記の正確な鑑別は心音図と心機図を用いなければ困難(それでも分からないことあり)
  • ただしギャロップの診断はあくまでも聴診であり心音図は不要(耳で慣れることが大切)

🐎 自験5例 🐎
馬が駆ける音であるが決して一様ではない点に注目










💁 心音に関連する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら右欄からも選択可能)

※ 以前に松下ERランチカンファレンスに投稿した内容の更新版です 🎶

松下記念病院 川崎達也)

2021-05-27

心臓番外編

おせんべいを食べていて何か違和感に気づいた症例


フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2021-05-24

Always 呼吸負荷!

倦怠感を訴える症例

🐧 解説
  • 顎下に周期的な隆起あり(矢印) ➜ 触診から動脈性(コリガン脈
  • 深吸気の保持で拍動は変化せず ➜ 拍動が動脈性であることに合致
  • 頸静脈拍動(陥凹など)は視認せず ➜ 中心静脈圧の著明上昇なし
  • クスマウル徴候も陰性 ➜ 潜在的な中心静脈圧の上昇もないと判断
  • 本例はクインケ徴候も陽性 ➜ その後に高度の大動脈弁逆流を確認
  • 心音は左室駆出流の増加による往復雑音(フリント雑音は認めず)

🐦 つぶやき
  • 頸部の陽性波では頸動脈のコリガン脈(大動脈弁逆流)と頸静脈のランチージ(ランチシ)徴候(三尖弁逆流)を考えることは何度か投稿してきました(コチラ).
  • 両者の鑑別には触診が一番ですが,触れずに診断がカッコいいと思います.体位変換(実例)に加えて,呼吸負荷も有用です.特に呼吸負荷は簡便なので常に追加しておきたいです.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2021-05-20

力加減が大切です

倦怠感を訴える症例(指先を少しテーブルに押し当ててもらいました)

👉 解説
  • 押し当て過ぎのビデオ前半では爪床の近位と遠位部が各々,赤と白に固定
  • 程よい力加減になったビデオ後半では,爪床の赤部分が周期的に白く変化
  • これはクインケ脈(Quincke's pulse)で脈圧の開大した大脈・速脈を反映
  • 心エコー図では高度の大動脈弁逆流が観察された(甲状腺機能亢進なし)

😶 独り言
  • クインケ脈(Quincke pulse)が何もせずに観察できることは極めて稀で(個人的には経験なし),通常は患者さんの爪先を自分の指で少し抑えて観察する(自験例).本例のように患者さん自ら指先を机に押し付けても観察できるが,力が一定しないと偽陽性になることもあるため要注意(偽クインケ脈).
  • ドイツの医師 Heinrich Quincke 先生が約150年前に発見したこの所見は有名であるが,臨床的意義は微妙.高度の大動脈弁逆流でも出現しない症例が多く,偽陽性も稀ではない(Ann Intern Med 2003;138:736-42).身体所見の超人サパイラ先生も臨床的には有用でないと結論づけている(South Med J 1981;74:459-67).
  • サパイラ先生の名著”Sapira's Art and Science of Bedside Diagnosis"には大動脈逆流で有名だけど無意味な身体所見(useless signs)として,クインケ徴候とMayne's sign(メイン?徴候:腕の挙上による拡張期血圧の15mmHgを超える低下)の二つが記載されている(312ページ).
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2021-05-17

🔔 ベルは押してみようパート2

検診で心電図異常を指摘された無症状の症例

🐰 解説
  • 聴診器の膜部はしっかり押し当て使う ➜ 過剰心音はなし
  • 聴診器のベルは軽く乗せる感じで使う ➜ Ⅰ音前に過剰音
  • ベルを押し込むと膜部と同じく低音消失 ➜ 過剰音が消失
  • 本例の過剰な心音は心尖部の低調音 ➜ Ⅳ音と考えられる
  • 心エコー図で非対称性中隔肥厚があり肥大型心筋症と診断

🐭 復習
  • Ⅰ音周辺の過剰心音にはⅣ音の他に,駆出音Ⅰ音の分裂などがあります.
  • 出現タイミングだけで鑑別するのことは難しいので音調の意識が大切です.
  • Ⅳ音以外は中調〜高調成分も含むため,聴診器の膜部でも聴取が可能です.
  • ベルの過剰心音が押込みで消失なら低調音(つまりⅣ音)と考えられます.
  • 同じテクニックがⅢ音(過去の投稿)やギャロップ(奔馬調)でも使用可

🉐 聴診器のおさらい ➜ コチラ
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2021-05-13

あっ!

心不全に対して加療した症例の左眼


フィジカル 広場 心臓 physical exam examination クスマール
松下記念病院 川崎達也)

2021-05-10

喉仏サイン Adam's apple sign

薬剤を自己中断して増悪した慢性心不全症例

🍏 所見の解説
  • 通常呼吸時には座位で頸静脈拍動を視認しない(座位陰性).一方,深吸気保持では外頸静脈の怒張が出現(クスマウル徴候陽性)するため,中心静脈圧は潜在的にある程度上昇していることが推察される.
  • よく見ると前頸静脈(Anterior jugular vein)も密かに怒張している.個人的には喉仏サイン(Adam's apple sign)陽性と呼んでいる.頸静脈といえば内頸と外頸だけど,正面にいるのに目立たないシャイな前頸静脈も忘れないように.

🍎 独り言
  • 喉仏(Adam's apple)は俗称で,正式には喉頭隆起(laryngeal prominence?) です.なぜなのかですが,仏教では火葬時に喉仏が綺麗に焼き上がると四十九日を待たずに極楽浄土行きが決まるといわれているからだそうです.軟骨部だけを取り出すと,座禅したお坊さんやお釈迦さん,阿弥陀さんの結跏趺坐(けっかふざ)した姿に見えるという説もあるようです().しかし喉仏がうまく焼け残るには骨密度と火加減が重要だそうです.現在の火葬では喉頭隆起は焼けてしまい残らないので,仏事では第二頸椎を喉仏と呼んでいるようです().

💁 クスマウル徴候に関する過去の投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2021-05-06

👴 歴史クイズ

(Public Domain)


松下記念病院 川崎達也)

2021-05-03

凹 ➜ 凸 ➜ 凹

息切れが辛くて受診した症例

🐶 解説
  • 内頸静脈の周期的な陥凹が額下まで観察可 ➜ 中心静脈圧の高度上昇
  • 深吸気止めで内頸静脈の拍動は陥凹から隆起に変化 ➜ ランチシ徴候
  • 深吸気の息止め終了後には内頸静脈拍動は隆起から陥凹に戻っている
  • ちなみに外頸静脈の怒張は深吸気止めの終了後に拍動が出現している

🐷 おまけ発言
  • 内頸静脈の収縮期陽性波(巨大v波あるいはcv merger)を意味するランチシ徴候(ランチージ徴候)は高度の三尖弁逆流を示唆します.よって本例の呼吸負荷による内頸静脈の反応(凹 ➜ 凸)は,肺高血圧が容易に(さらに)上昇する病態が考えられます.肺高血圧の増悪は負荷心エコー図の専売特許ではありません.
  • 内頸静脈の巨大v波にも関わらず,三尖弁逆流がほとんど観察されない症例も少なからず経験します(特に開心術後症例).その理由は不明ですが,stiff LA syndromeが背後にあるためと思っています.開心術中に切開された心房がコンプライアンスを失うことは想像に難くありません.右房も含むためstiff RA syndromeまたはstiff atrial syndromeと呼ぶ方が正確かもしれません.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)