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2025-04-21

感染性心内膜炎:末梢サインの頻度

  • 感染性心内膜炎の身体所見では心雑音と末梢サインに注目します.心雑音や音質変化は感染性心内膜炎を示唆しますが,初診の症例でその判定は困難です.心雑音を認めない症例も3~4割あります(Eur Heart J 2023;44:3948-4042).
  • 一方,末梢サインの感度は低めですが,とても高い特異度を有しています.月間心エコーで原稿依頼を受けたときに,その出現頻度を調べたのでここに記載しておきます(調査した論文は心エコー 2025;26:22-6を参照してください).

末梢サイン 出現頻度
点状出血 0.6~30%
オスラー結節 1.9~10%
ジェインウェイ病変 1.6~10%
スプリンター出血 10~26%

😊 おまけ
  • 感染性心内膜炎のDuke診断基準が2023年に更新(Duke ISCVID基準:Clin Infect Dis 2023;77:518-26)され,末梢サインは臨床診断の小基準として今回も明記されています.心雑音に関しては新規の逆流性雑音に限ると記載
  • 末梢サインは,出現や消退が病期や病勢に影響され,塞栓に由来する所見は左心系の病態に限られますが,高い特異性を有しています.鑑別診断に感染性心内膜炎が含まれる病態ではエコー前に是非,確認したい所見です


松下記念病院 川崎達也)

2025-04-14

フィジカル検定

  • 第22回循環器Physical Examination講習会(2025.3.22-23)で実施した特別企画『フィジカル検定』の解答ホームをリンクします(主催者の許諾を取得済).
  • 実際の問題(身体所見)は供覧できませんが,解答フォームだけでも役立つかと思います(正答と簡単なフィードバックあり).よろしければご覧ください.



松下記念病院 川崎達也)

2025-03-06

診る練習ビデオ

心雑音で来院した症例

👀 解説
  • 安静では指先に特記すべき所見なし
  • 圧迫時の爪床の中部~遠位部に注目
  • 白色とピンク色の色調変化に気づく
  • 最終診断は二尖弁の大動脈弁逆流症

👂 独り言
  • 心音(特にⅢ音やⅣ音などの低調音)は,何度も聴いて耳に覚え込まします.視覚も同じです.何度も見ていると僅かな変化にも気が付きます.
  • この動画はそういった眼の練習に最適と思われます.本例は中等度の大動脈弁逆流ですが,中等度以上なら,ほぼクインケ徴候は観察できます.
  • 本コンテンツには大動脈弁逆流例の爪床変化が多くアップされています(コチラから).爪圧迫以外の描出ワザも是非,マスターしてください.

松下記念病院 川崎達也)

2024-04-11

今週の一枚 🎯

肥大型心筋症で通院中の患者さんから相談を受けました

💅  爪甲そうこう剥離症(Onycholysis)
  • 爪剥離は冬に基部から始まり上方へ進行
  • 夏には自然に治癒(この数年繰り返し)
  • 服用薬はなくⅣ音を除き身体所見は正常
  • 栄養や甲状腺機能を含む血液検査は正常
  • 皮膚科的には爪甲剥離を除いて異常なし
  • 職業は通常デスクワークで寒冷刺激なし

👋 本態性爪甲剥離症(Idiopathic onycholysis)
  • 爪甲剥離症の原因としては,感染症(真菌など),乾癬,外傷または損傷,薬物反応(テトラサイクリンなど),栄養不良,甲状腺疾患,紫外線暴露,刺激性反応などがある.
  • 本例は特発性爪甲剥離症(Idiopathic onycholysis)と診断したが,爪甲剥離症が季節的なことから,冬の低温多湿などの環境条件が病状の悪化に関連している可能性がある.
  • 爪甲剥離には下図に示すように様々な型があるが,いずれも爪の先端~中央に生じていることに注目.本例は爪床基部から生じているようであるが,その原因は不明であった.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎達也)

2024-03-25

指先拍動徴候 Throbbing fingertip sign

息切れと心雑音で受診した症例

😀 解説
  • 無負荷の状態では爪床の色調変化(クインケ徴候)は陰性
  • 爪床圧迫で僅かにQuincke's pulseを認める?(動画中の*)
  • そこでスマホ光源法を追加したがクインケ脈はやはり陰性
  • しかし指先拍動徴候(throbbing fingertip sign)あり(→)
  • 最終診断は中等症MR+軽症〜中等症ARによる慢性心不全

    😄 追加コメント
  • 指先拍動徴候(throbbing fingertip sign)は指先の容積変化で,大脈を反映していると考えられます.非常にわずかな変化なので通常の肉眼で視認することは難しいと思われますが,ライトアップすれば本例のようにわかりやすくなります.
  • 本例の指先拍動徴候は非圧迫で観察できている点がポイントかもしれません(圧迫法で出現したthrobbing fingertip sign).つまりクインケ徴候よりも感度が高い可能性があります.経験された方はコメント欄に記載してもらえると嬉しいです😊

松下記念病院 川崎達也)

2024-03-07

AR:指先拍動徴候(throbbing fingertip sign)

重症の大動脈弁逆流例(症状なし)

💅 解説
  • 無負荷状態ではクインケ徴候陰性(陽性例
  • 爪床圧迫を追加したがそれも陰性(陽性例
  • そこでスマホ法を追加したが陰性(陽性例
  • さらにスマホ法に圧迫法を追加したが陰性
  • しかし照明の境界部分が明瞭に拍動(矢印)

 😎 解釈
  • 大動脈弁逆流症は一回拍出量が増大する大脈です.これが指先の大きな容積変化を生じ,拍動として観察されているのではと推測します.
  • 被検者ではなくて検者(つまり指を抑えている本人)の拍動が伝わっているのかなとも思いましたが,自分の拍動とは異なるリズムでした.
  • この症例は個人的に指先拍動(throbbing fingertip)と呼んでいます.ARの新たな(?)身体所見として有用かは症例の集積が必要ですが...

松下記念病院 川崎達也)

2023-12-14

今週の一枚 🎯

多量の利尿薬でも息切れが続く慢性心不全症例



松下記念病院 川崎達也)

2023-12-07

フィジカル所見の注意点

先週から急に出現した動悸を訴える症例

😎 解説
  • 左側の肘部〜前腕にかけて明瞭な拍動を認める
  • 触診で動脈性の拍動 ➜ 上腕動脈のコリガン脈
  • 爪床のクインケ徴候は圧迫法で僅かに陽性??
  • ライト法を追加したがこちらでもはっきりせず
  • この症例の最終的な診断は急性の大動脈弁逆流

👿 臨床現場
  • 実は本例は初診時のフィジカルで大動脈弁逆流と診断できませんでした.ギャロップがあり心不全とは思いましたが,明らかな心雑音を聴取しませんでした.よって肘部の動脈拍動は,高齢者によくある偽コリガン脈と判断してしまいました.今から思うとその拍動は直線状であるため本物のコリガン脈っぽいのですが...
  • 慢性ARと比較して急性ARでは一回拍出量の増加が少ないため,クインケ脈が出現しにくいのではと思われます(ただし関連論文は見つかりませんでした).同様に急性大動脈弁逆流では心雑音が出現しにくく,おまけに心エコー図でも逆流シグナルが描出しにくい症例があるので要注意です(特に頻脈時:自験例).

👀 クインケ徴候に関する過去の投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2023-11-30

身体所見普及委員会:循環器部門 担当

  • 心エコー図が臨床応用されたのは,たかだかこの50年です.一方,身体所見(特に循環器領域)は紀元前から活用されてきました(例:アリストテレス).画像診断学の目覚ましい発展を見れば,身体所見学の衰退は致し方ないのかもしれません.しかしフィジカルの知識は日常臨床を色彩豊かな楽しいものに変えてくれます.
  • 以下の表に示すような人名の冠されたフィジカル所見(人名フィジカル)はなおさらです.幾つ知っているのか是非,確認してみてください.自信のない所見はネットで検索してみてください.本ページにも多くの所見がすでにアップされています.これらの人名所見は,明日からの循環器診療を艶やかなものに変えてくれます.


😀 皆で盛り上げよう
  • 勝手に身体所見普及委員会を設立して,勝手に循環器部門担当を宣言しています(X:旧ツイッター @jsbtk).協賛いただける方のご参加をお待ちしております(笑)許可は不要なので自由に宣言して活動を開始してください 😀

松下記念病院 川崎達也)

2023-07-20

クインケ脈のスマホ法

無症状の大動脈弁逆流例(中等症〜重症)の爪床

👶 解説
  • 明らかな拍動(クインケ脈/Quincke's pulse)はなかった
  • 爪床の圧迫でも出現せず(動画なし:陽性になった自験例
  • ただしスマホのライトに爪床を置くと明瞭な拍動が顕性化

🔦 診察室実況
  • スマホのライトを用いたクインケ徴候の検出方法はtwitterなどでも有名です.用指的な爪床圧迫とは異なり,微妙な力加減が一切不要でオススメです.
  • 実は頸静脈拍動を見るためのペンライトでもやってみました.僕のライト(下図)は巨匠のお薦めで,ペンライト界のメルセデス・ベンツだそうです.
  • 爪床拍動はペンライトの方がスマホよりはるかに明瞭でしたが,患者さんが指の違和感を訴えました.自分でやってみると数秒後にかなりの熱感 😱


💅 爪に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2023-07-06

いつも患者さんから教えてもらっています 🙇

中等度の大動脈弁閉鎖不全の症例

😀 解説
  • 爪床が僅かながら周期的な色調変化(クインケ脈
  • 自ら指先を机に押し付けてもらうと色調変化消失
  • ただし押し付けを解除後の数拍は色調変化が明瞭

😅 臨床現場
  • 患者さんに大動脈弁逆流で出現する身体所見を説明しながら,一緒に爪を見ていました.僕は陰性かなと思っていたけど,患者さんが「先生,拍動が見えるよ」と逆に教えてくれました.確かによく見たらわずかに拍動がありました.指先を机に押し付けて解除時に拍動が出現することも教えてくれました.
  • クインケ脈にも程度があると思っています.その程度(負荷不要>他動的圧迫>自動的圧迫)と部位(指先全体>爪床のみ)の組み合わせから,ある程度は大動脈弁逆流の重症度判定が可能でしょうか(過去の投稿).本ページには多数のクインケ徴候が投稿されていますのでよろしければご確認ください(コチラ).

松下記念病院 川崎達也)

2022-12-05

👴 歴史クイズ




松下記念病院 川崎達也)

2022-09-29

番外編:ボー線条 Beau's line

  • すべての指趾の爪甲表面のほぼ同位置に認める短軸方向の溝(隆起とくぼみ)
  • 機序は爪甲を作っている爪母の機能の一時的な低下によると考えられている
  • 名前の由来は初報のフランス人医師 Joseph Honoré Simon Beau (1806–1865)
  • 原因は麻疹,手足口病,川崎病など発熱性疾患や感染症,亜鉛欠乏,薬剤他
  • 爪溝の幅は原因疾患の罹病期間と相関し,その位置から罹病時期も推測可能



💁 に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下ERランチカンファレンスとのマルチポストです 🎶

松下記念病院 川崎達也)

2022-06-23

爪から重症度判定?

検診で心雑音を指摘された症例

😄 解説
  • テーブル上に置いた右示指に特記すべき異常なし(傷は小石を扱う職業)
  • 指先を下方に押し付けると爪床に周期的な色調変化が出現(クインケ脈
  • よく見ると爪床だけでなくて指先端にも色調変化あり(動画中の矢印)
  • 指先圧迫を解除すると爪床〜指先全体に認めた色調変化も消失している
  • 拡張期雑音があり(ランブルなし),エコーでは中等度は大動脈弁逆流

😎 つぶやき
  • 大動脈弁逆流症によるクインケ脈(Quincke pulse)は本ページに何度も登場しています.大動脈弁逆流では肘の水槌脈と同じくらいよく認める身体所見と思います.
  • クインケ脈はそのまま認めることもありますが(自験例),通常は他動的な爪の圧迫(自験例)や自動的な指先の圧迫(本例)を加えると検出感度が上昇します.
  • 誘発方法(負荷不要>他動的圧迫>自動的圧迫)と出現部位(指先全体>爪床のみ)の組み合わせから,大動脈弁逆流の重症度判定がある程度可能と思っています.

松下記念病院 川崎達也)

2022-06-09

🎯 今週の一枚

心臓MRのため来院した症例

💅 ジェルネイル(Gel nails) 
  • ウレタンアクリル樹脂などジェル状素材を用いたネイルアートの一つ
  • 紫外線灯を用いてジェルを硬化/デザインが多彩で長持ち(3週間〜)
  • 施術に1〜3時間を要して,ベーシックカラーなら5000円~7000円程度
  • 除光液では落とせないためMRI検査が施行できない(本例も中止した)

追加コメント
  • 本症例はジェルネイルをネイルサロンではなくて自宅で自ら行っていた.その日は帰宅し,ジェルリムーバーでネイルをオフしてもらった翌日にMRI検査を行った.リムーバーをコットンに含ませアルミホイルで巻いて10分ほど放置すると装飾部分が浮いてくる様である.
  • MRI検査の説明用紙にはネイルアートを前もってオフしておく必要があることは記載されている.マニキュア(手爪)だけでなくペディキュア(足爪)も含まれるが,前者だけと思い込んでいる方が少なくない(説明書には両方記載).もちろん刺青も不可(過去の投稿

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナーです)

松下記念病院 川崎達也)

2022-05-16

🏆 論文

  • 当院の初期研修医である土橋先生が循環器内科で経験した症例が出版されました
  • 労作時の胸痛で紹介受診して身体所見のばち指から肺癌合併の診断に至りました
  • 肺癌 ➜ 狭心症の順に治療を行い,バチ指も経時的に改善しています(下の写真)


😀 追加コメント
  • 本例は右肺尖部の肺癌で,パンコースト腫瘍として胸痛を生じることがあります(パンコースト症候群).しかし本例の胸痛は典型的な労作性でした.実際に肺癌切除後も胸痛は続き,冠動脈の治療後に消失しました.
  • バチ指(Clubbed finger)を生じる機序として,「肺内シャントを通過した凝集血小板や巨核球から放出される血小板由来増殖因子で爪床下の軟部組織が増殖する」ことが推測されています(J Pathol 2004;203:721-8
  • 本例のばち指改善は肺癌の術後から始まりました.しかし冠動脈治療に関連して開始された抗血小板による効果もあったのかもしれません.両者の関係に言及した論文 ➜ J Am Acad Dermatol 2005;52:1020-8

🎉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2022-04-28

番外編

人名が冠された身体所見3つとは?



松下記念病院 川崎達也)

2021-12-13

視覚は意外と頼りない?

拡張期の心雑音を指摘され来院した症例



松下記念病院 川崎達也)

2021-11-04

爪には爪を A nail for a nail

数ヵ月前から労作時の息切れを感じるようになった症例



松下記念病院 川崎達也)

2021-10-21

フィジカル三原則 🙈 🙉 🙊

下腿浮腫で受診した高齢者の指爪



松下記念病院 川崎達也)