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2026-07-02

👀これから眼にも着目

  • 重度の三尖弁逆流(TR)による眼球の収縮期突出の報告を読みました(Open Med (Wars) 2026 Mar 20;21(1):20261395)。これまでの文献上の報告はわずか7例で、本稿では新たに2例を報告しています。
  • この所見の初報は、エモリー大学のJ. Willis Hurst(1920 – 2011)らのようです(Am J Cardiol 1970 Oct;26(4):351-4)。重鎮ハースト先生は心臓病学のテキスト(通称Hurst's The Heart)などで高名
  • 同眼球所見の機序は、頚静脈の収縮期陽性波(Lancisi徴候)と同様に、TRによるCV波と思われます。大動脈弁逆流症に伴う収縮期眼球突出(Pulsatile pseudo-proptosis)の方が少しだけ有名?
  • 個人的にはTRに伴う”こめかみ”の拍動を経験しています(勝手に命名:こめかみサイン)。論文で前額静脈の拍動を見たことがあります(過去の投稿)。これからはTRがあれば眼にも着目しなくては…

心不全で入院した44歳男性(平均右房圧23 mmHg)

Open Med (Wars) 2026 Mar 20;21(1):20261395/残念ながら動画なし)

💁 三尖弁に関する過去の投稿は コチラ(PCなら右欄からも選択可能)

松下記念病院 川崎達也)

2026-01-22

心拍出量のFick法



問題:心拍出量を測定する際,熱希釈法よりFick法が望ましい病態はどれか. 2つ選べ







判定


😐 解説:正解 d, e
  • 心拍出量の測定に関する問題である.心拍出量は酸素消費量を動脈血と混合静脈血の酸素含量差で除して求めるFick法と指示薬希釈法があり,後者ではSwan-Ganzカテーテルが開発されてからは冷水を指示薬とする熱希釈法が一般的に用いられている.
  • Fick法の原理は,肺での血液の酸素摂取速度と肺静脈と肺動脈の酸素含量差から肺血流量は決定され,定常状態では血液の酸素摂取速度と肺による室内空気からの酸素取り込み速度は等しくなることから,肺血流量=酸素消費量÷肺静脈と肺動脈の酸素含量差で求められる.心臓内短絡(シャント)がなければ肺血流量は体血流量に等しくなることから心拍出量も測定することになる.通常は混合静脈血として肺動脈血を用いるが,肺静脈血のサンプリングは困難なため左室あるいは動脈血で代用している.心臓内シャントがあった場合には混合静脈血として肺動脈血の代わりにシャント直前の心腔内でサンプリング行う必 要がある.
  • 熱希釈法は肺動脈内に先端を留置したカテーテル近位部(右房)のポートから冷たい生理食塩水を注入し,血液の温度変化をカテーテル先端のサーミスターで測定し,経時的な温度変化から肺血流量が計算される.Fick法と同様に心臓内シャントがなければ心拍出量を表すが,Fick法と比べて動脈穿刺を行っての血液サンプル採取が不要なことや速やかに結果がわかる利点がある.しかしながら,三尖弁逆流が存在すると注入した冷水がカテーテル先端のサーミスターに到達しにくくなるため温度が低下せずに心拍出量を過大評価することや,心臓内シャントが存在すると肺血流量と心拍出量が一致しなくなる.
  • よって,熱希釈法よりFick法での心拍出量測定が望ましいのは d.心房中隔欠損症と e.重症三尖弁閉鎖不全症の患者である.
  • a, c.心房細動や僧帽弁狭窄症があっても熱希釈法で心拍出量は測定可能である.
  • b. 肺動静脈瘻は心臓外短絡であり,奇異性塞栓症や脳膿瘍の原因にはなるが,熱希釈法による心拍出量の測定に支障はない.


松下記念病院 川崎)

2026-01-19

ChatGPT(GPT-5.2)の返答

  • AIを仕事で利用する頻度がとても増えました.とんでもない嘘を自信満々で答えるときがあるため,返答を鵜吞みにすることはできません.しかし大いに参考になります(特に基本的な知識がある領域)
  • AIは進化がとても早い領域です.その変化を知るため現時点のレベルをまとめておきます.各設問に対するAIの答えをそのまま記載します.忘れなかったら😅1年後に同じことを最新AIに問うてみます

 
Q1 心尖拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 心尖拍動は左心室収縮により生じる胸壁の拍動で、心機能評価に重要な身体所見である。正常では左第5肋間・鎖骨中線上に触知され、範囲は限局する。外側・下方への偏位は心拡大を示唆し、びまん性で強い拍動は左心室肥大や容量負荷を考える。触知困難な場合は肺気腫や肥満が原因となることがある。このように心尖拍動は心疾患の存在や重症度推定に有用である。

Q2 心音の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 心音は心臓の弁運動や血流変化により生じ、心機能や弁膜症評価に重要な身体所見である。第Ⅰ音は房室弁閉鎖を反映し、増強は頻脈や僧帽弁狭窄、減弱は心筋障害を示唆する。第Ⅱ音は半月弁閉鎖音で、分裂の変化は肺高血圧や右脚ブロックなどの診断に有用である。第Ⅲ音は容量負荷や心不全、第Ⅳ音は心室拡張障害を示すことが多い。さらに心雑音の有無や性状から弁膜症や先天性心疾患の推定が可能であり、心音聴診は非侵襲的に循環器疾患を評価できる基本かつ重要な診察手技である。

Q3 頚静脈拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 頚静脈拍動は右心系の圧・容量状態を反映する重要な身体所見である。内頚静脈の拍動を観察することで中心静脈圧を推定でき、右心不全、容量負荷、脱水の評価に有用である。正常では半坐位で鎖骨上に軽度の拍動を認める程度であり、明らかな怒張は右心不全、三尖弁閉鎖不全、心タンポナーデ、収縮性心膜炎などを示唆する。波形の観察も重要で、a波増高は右房圧上昇、v波増高は三尖弁閉鎖不全を考える。Kussmaul徴候(吸気時の頚静脈怒張増強)は収縮性心膜炎や右室梗塞に特徴的である。頚静脈拍動は非侵襲的かつ迅速に右心機能を評価でき、循環動態把握に欠かせない所見である。

Q4 頚動脈拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 頚動脈拍動は左心室からの駆出血流を直接反映する重要な身体所見であり、心拍出量や大動脈弁疾患の評価に有用である。正常では立ち上がりが速く、なだらかに下降する拍動を触知する。拍動の減弱や遅延(parvus et tardus)は大動脈弁狭窄を示唆し、逆に強く跳ねるような拍動(bounding pulse)は大動脈弁閉鎖不全や高拍出状態で認められる。二峰性拍動は肥大型心筋症を、拍動の左右差は頚動脈狭窄や大動脈解離を疑う所見となる。また、頚動脈雑音の聴取は動脈硬化性病変のスクリーニングとして重要である。頚動脈拍動の触診・聴診は簡便かつ非侵襲的に全身循環や弁膜症の手がかりを得られるため、循環器診察における基本かつ不可欠な所見である。

Q5 傍胸骨拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 傍胸骨拍動は胸骨左縁で触知される心拍動で、主に右心系や心室負荷の状態を反映する重要な身体所見である。正常では明瞭に触知されないが、持続的で強い傍胸骨拍動は右心室肥大や右心系圧負荷を示唆する。肺高血圧、肺動脈弁狭窄、慢性肺疾患に伴う肺性心などで認められることが多い。また、胸骨左縁下部での拡張期に強い拍動は右心室容量負荷や三尖弁閉鎖不全を考える手がかりとなる。心室中隔欠損などでは拍動が増強する場合もある。傍胸骨拍動は視診・触診のみで評価可能であり、右心機能や肺循環異常を推定するうえで有用な、基本的かつ重要な循環器身体所見である。


松下記念病院 川崎達也)

2025-12-08

フィジカルクイズ(No. 33 & 34)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週末に循環器に関するフィジカルクイズをX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらのページには2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2025-12-04

これは世界記録

  • びっくりする論文を眼にしたので本ページで共有します(N Engl J Med 2025;393:e33
  • インフルエンザの感染後に悪化した心房細動を伴う心不全(HFpEF)の89歳女性です
  • 三尖弁逆流による前額静脈の拍動(ランチシ徴候)には驚き(特に動画がすごい😮)


💀 独り言
  • 上記報告では体位が記載されていないため中心静脈圧の推定値は不明ですが,半坐位としても30㎝水柱は超えていそうです.右心不全が主体でなければ出現しない身体所見?
  • 自験例で静脈拍動の最上縁記録は側頭部(立位)です(こめかみサイン/Temple sign of JVP).同症例を臥位にしてもNEJM症例のような前額での拍動はありませんでした.
  • 前額静脈の拍動はTRの長い病歴や皮下組織のルーズさなど様々な要因が組み合わされないと出現しないのではと思います.頭部の表在静脈の解剖を引用しておきます(下図).


松下記念病院 川崎達也)

2025-11-10

フィジカルクイズ(No. 29 & 30)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週末に循環器に関するフィジカルクイズをX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらのページには2週分ずつまとめてアップします.



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松下記念病院 川崎達也)

2025-10-30

誤診やむなし❓

増悪する息切れで来院した症例(座位)

😐 解説
  • 頚部に内頚静脈の拍動を認める(矢印)
  • 不規則なので心房細動 AF?(時折大?)
  • 安静で陽性なので吸気などの負荷は不要
  • 隆起性 ➜ v波なら重症三尖弁逆流 TR
  • その後の精査で予想通り非代償性心不全
  • ただしAFではなくて3度房室ブロック 😮

😓 独り言
  • 完全房室ブロックの頚静脈所見では間欠的に出現する巨大a波(キャノンa波)が有名です(自験例)。その機序は右房収縮時に三尖弁が閉鎖しているためです。よって期外収縮でも出現することがあります(自験例
  • 本例はもともと活動性が低いためか、房室ブロックによる立ち眩みやふらつきはなかったようです。しかし徐脈が暫く(1-2週間以上?)続き非代償性心不全に至り、床上でも症状が出現するようになって来院と予想
  • 本例の頚静脈拍動は陽性波なのでa波に加えv波も見えていると思われます(よって視診で徐脈を見抜くのは困難)。a波の大きさがQRSとのタイミングで変化し絶対不整に見えるので、AF+高度TRの誤診もやむなし?

松下記念病院 川崎達也)

2025-10-27

フィジカルクイズ(No. 27 & 28)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週末に循環器に関するフィジカルクイズをX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらのページには2週分ずつまとめてアップします.



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松下記念病院 川崎達也)

2025-08-28

教育ビデオ 📺 収縮期逆流性雑音(Systolic regurgitant murmur)

僧帽弁逆流症(Mitral regurgitation: MR)の一例

🎶 解説
  • Ⅰ音とⅡ音の間にある心雑音なので収縮期雑音
  • 雑音の音量は漸増や漸減に欠く箱型(長方形)
  • Ⅰ音とⅡ音は心雑音に埋没するため認識が困難
  • 僧帽弁逆流,三尖弁逆流,心室中隔欠損の3疾患

🎵 コメント
  • フィジカルの巨匠からのアドバイス(過去の投稿)を元に作成した,心音図をなぞりながら音を聴く教育ビデオです(版権放棄かつ利用時の引用記載も不要)
  • 最初は「実際の心音と心音図上の線の動きをあわせるのが大変だな~」と思いましたが,パワーポイントを用いてやってみると意外に簡単に作成できました.

松下記念病院 川崎達也)

2025-03-03

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


👻「フィジカル講習会」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2024-10-10

広義の耳ウインク・サイン

慢性心不全増悪で入院中の症例(座位)

👿 解説
  • 頸部に明瞭な拍動(陥凹ではなく隆起)を視認する
  • 下から上への緩徐な陽性波 ➜ 静脈性(ランチシ徴候)
  • 外頚より内頚静脈の拍動上縁が高い(内頚を信頼!)
  • 左上肢の挙上に伴い内頸静脈の拍動上縁は上昇
  • 耳垂に揺れはないがその背面には拍動あり(矢印)
  • 本例の心エコー図は重症の三尖弁逆流+肺高血圧

💀 広義の耳ウインクサイン
  • 狭義の winking earlobe sign といえば耳たぶの揺れが必要です(英語の文言通り).でも本例のように耳朶後方の皮膚面が拍動していれば広義の耳ウインクサインとしてもいいと思います.
  • 本例には明瞭な三尖弁逆流がありました.しかし三尖弁逆流がほとんどないにも関わらず,明瞭な内頸静脈の陽性波を認めることが少なからずあります.特に開心術後の症例に多く経験します.
  • 心臓病診断学の実際(吉川純一著)には,その機序として「心膜の閉鎖にからんだ三尖弁輪下降の制限」が提案されています.左心膜完全欠損でも同様の所見が観察されると記載されています.
  • 個人的には,静脈コンンプライアンスの低下あるいは静脈キャパシティーの限界を反映している症例も散見されるのではと思います.よってv波が容易に圧上昇につながるのではないのかな~😐

🉐 上肢挙上負荷の過去投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2024-06-06

第21回 循環器Physical Examination講習会より


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松下記念病院 川崎達也)

2024-05-27

頚静脈波曲線と三尖弁逆流:覚書

  • TRの頚静脈波曲線はLancisiが初記載(De Motu Cordis et Anetlryslnatibus. Roma,1728)
  • 軽症はx谷浅化+v波増高(共に早期出現),中等症は収縮期波(s波),重症は心室化
  • ただし頚静脈波曲線のTRパターンは心房細動ならTRがなくても30%以上に出現(下図)
  • 開心術後の症例では三尖弁逆流が存在しなくても通常的に三尖弁逆流パターンが出現
  • 原因として心膜の影響?(左心膜完全欠損例では典型的な三尖弁逆流パターンが出現)
  • 術後の心室中隔奇異性運動や右房(切開に伴うコンプライアンス低下)なども関与?

参考)循環器フィジカルイグザミネーションの実際(文光堂),他

- AF例の頚静脈波曲線 -

松下記念病院 川崎達也)

2024-04-18

座位定性法:より深淵へ

息切れで来院した症例

👉 解説
  • 内頸静脈に陽性波(触診で静脈性:ランチシ徴候)
  • 拍動の上縁は顎下以上であるため定量評価は困難
  • 左上肢の挙上で陽性波の持続時間が延長している
  • 本例の最終診断は高度TRを伴った非代償性心不全

👍 追加コメント
  • 頸静脈の座位定性法は拍動上縁の位置から半定量的な評価も可能です.しかし本例のように内頸静脈の拍動上縁が顎下まで達している症例では,各種負荷に対する反応を上縁変化から判断することは困難です.
  • しかし位置の変化に時間の変化(例:短時間隆起→長時間隆起)も加味するとより深い評価が可能です.もっとも負荷前の所見から中心静脈圧は極めて上昇しているので,それで十分かもしれませんが...😅

松下記念病院 川崎達也)

2024-04-08

フィジカル忘備録:第21回循環器Physical Examination講習会より

  • 心房中隔欠損では肺高血圧がなくてもⅡ音の肺動脈成分が亢進する(肺動脈の基部が拡大し胸壁に近づく+肺血流が増加するため)
  • 心房中隔欠損では相対的PSによる収縮期駆出性雑音に加えて三尖弁拡張期ランブルを聴取することがある
  • 循環器フィジカルイグザミネーションの実際(2005/9/1,吉川純一編集,文光堂)は青本と言われている
  • Dr.水野のうたう♪心音レクチャー /ケアネットDVD(ケアネット,2017/1/1)がいい
  • 心不全の心機能分類 NYHA ではⅡ度はⅡs(slight limitation of physical activity)とⅡm(moderate limitation of physical activity)に細分するが,Ⅲ度はⅢa(慢性)とⅢb(最近の症状出現:Patients in NYHA class IIIb closely resemble those with a recent history of dyspnea at rest)
  • 心不全の身体所見の要は低還流,肺うっ血,体液貯留の3つである
  • 敗血症の低灌流は膝を見るとより(一番冷たい)
  • 下肢挙上は自己輸血(補液500mlと同じCRT改善効果)
  • 大動脈のRCCとLCCの間に左脚枝があるので手術時には慎重に行う
  • Prosthesis-patient mismatch (PPM) は患者の体格に対して不適切に小さい人工弁が留置され十分な有効弁口面積(EOA)が得られない状態
  • functional MRは雑音が聞こえにくい


当日の風景(少数の現地聴講+全国にWEB配信)

👻「忘備録」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2023-11-30

身体所見普及委員会:循環器部門 担当

  • 心エコー図が臨床応用されたのは,たかだかこの50年です.一方,身体所見(特に循環器領域)は紀元前から活用されてきました(例:アリストテレス).画像診断学の目覚ましい発展を見れば,身体所見学の衰退は致し方ないのかもしれません.しかしフィジカルの知識は日常臨床を色彩豊かな楽しいものに変えてくれます.
  • 以下の表に示すような人名の冠されたフィジカル所見(人名フィジカル)はなおさらです.幾つ知っているのか是非,確認してみてください.自信のない所見はネットで検索してみてください.本ページにも多くの所見がすでにアップされています.これらの人名所見は,明日からの循環器診療を艶やかなものに変えてくれます.


😀 皆で盛り上げよう
  • 勝手に身体所見普及委員会を設立して,勝手に循環器部門担当を宣言しています(X:旧ツイッター @jsbtk).協賛いただける方のご参加をお待ちしております(笑)許可は不要なので自由に宣言して活動を開始してください 😀

松下記念病院 川崎達也)

2023-10-02

楽音様雑音 Musical murmur

😀 先日の学会で...
  • 友人のフィジカル匠からナイスな論文を教えてもらったのでまとめておきます

🎼 楽音様雑音(Musical murmur)
  • 心エコー図と心音図を行った3,255例中93例(2.9%,男49例・女44例,平均55歳)
  • 出現時相は収縮期が77例(83%)で,拡張期が16例(17%)(拡張早期雑音は8例)
  • 大動脈弁由来が43例:31例が弁の石灰化で,その他には疣腫,術後の変化,弁逸脱
  • 僧帽弁由来が26例:17例が弁逸脱,他は弁輪石灰化,疣腫,術後変化,弁輪拡大
  • 三尖弁由来が10例:弁石灰化1例,2次性閉鎖不全5例,ペーシングリード関連4例
  • 弁膜症はAS 14.3%,AR 8.7%,A弁石灰化 5.0%,MR 6.3%,連合弁膜症3.1%,MSなし
  • 先天性心疾患ではVSD 4.7%のみで,他はHCM 5.1%,ペースメーカ植込み例が10.5%



😃 追加コメント
  • 本論文内の楽音様雑音の定義は「聴診上純音で,楽器の音や鳥の鳴き声に代表されるような特徴的な雑音を聴取し,心音図で規則正しい正弦波形を呈したもの」です.なお正常心に認められる若年者の Still's murmur(収縮期前半の低調なブンという無害性(機能性)雑音)は除外されています.
  • 楽音様雑音でも比較的短い雑音なら"honk"(自動車のクラクション)や"whoop"(フクロウなどのホーホーと鳴く声),大動脈弁逆流雑音の長い持続なら"seagull cry"(カモメの鳴き声)などと称されているとも記載されています."seagull cry"は"dove-coo murmur"(ハトのクークー鳴く音)や"cooing murmur"(乳児のア〜 or ウ〜という発語)とも言われます.

松下記念病院 川崎達也)

2023-09-25

第102回(2013)看護師国家試験より

問題 心音の聴取部位を図に示す。肺動脈弁領域の聴診部位はどれか。ただし、点線は心臓を示す。

 
 
 
 
 

判定

😉 聴診部位(覚え方は ➜ コチラ
  1. 第2肋間胸骨右縁(2RSB)は大動脈弁領域
  2. 第2肋間胸骨左縁(2LSB)は肺動脈弁領域
  3. 第3肋間胸骨左縁(3LSB)はErb領域
  4. 第4肋間胸骨左縁(4LSB)は三尖弁領域
  5. 心尖部は僧帽弁領域

😳 独り言
  • 上記領域は単なる命名で個人差もあるから特にこだわる必要はないと思うけど、肺動脈領域とErb領域がごっちゃになっている方も少なくないのでは...
  • 聴診順は ① ➜ ⑤ でも ⑤ ➜ ① でもどちらでもOKです。心尖部に多い重要音(過剰音やランブル)をすぐ聞きたいか後に取っておきたいかの違いかな

松下記念病院 川崎達也)

2023-02-13

カルチノイド心疾患 Carcinoid Heart Disease

👽 カルチノイド症候群(Carcinoid syndrome)
  • 概念 カルチノイド腫瘍(神経内分泌腫瘍)から活性物質の放出(同腫瘍の約10%)
  • 機序 活性アミン(セロトニン・ヒスタミン),タキキニン,プロスタグランジンなど
  • 部位 消化管に発生することが多く,次いで肺や気管支,稀に卵巣や胸腺にも発生
  • 疫学 世界的なカルチノイド年齢調整発生率は10万人当たり約2人(小児期は極稀)
  • 症状 下痢や皮膚潮紅,喘鳴,ペラグラ症状(rough scaly skin,舌炎,口角炎)など
  • 心臓 稀に右心系の心内膜や弁の線維化で三尖弁逆流や狭窄など(カルチノイド心疾患) 
  • 診断 セロトニンの代謝産物である尿中5-HIAAの測定(24時間蓄尿)+各種画像検査
  • 治療 大原則はリンパ節郭清を伴う外科手術による根治的切除(有効な化学療法なし)

カルチノイド心疾患の72歳男性
顔面の潮紅+(心不全による)チアノーゼ+毛細血管拡張

松下記念病院 川崎達也)

2022-03-17

鎖骨上のピコピコ

CTで悪性腫瘍の右心系転移が疑われた症例

🐳 巨大a波(Prominent or Giant a wave)
  • 右鎖骨の頭側(鎖骨上窩)に周期的に隆起する拍動を視認(前半矢印)
  • 手指で容易に圧迫され,時相は動脈拍動やⅠ音の直前 ➜ 頸静脈のa波
  • 深吸気時に右内頸静脈の拍動が出現(クスマウル徴候陽性:後半矢印)     
  • 心エコー図で三尖弁周囲に腫瘍を認め,三尖弁狭窄の病態が疑われた

💣 おまけ
  • ご本人に自覚症状はなく,心音にも特記すべき異常はありませんでした.また座位で頸静脈は視認できず,クスマウル徴候も陰性でした.
  • 同様のa波は不整脈(完全房室ブロック心室期外収縮)で有名です.この場合はCannon a waveと呼ばれます(キャノン音と要区別
  • 日常臨床では頸静脈の大きなa波は肥大型心筋症で視認することが多く,同疾患のフィジカル診断にも有用です(典型例
  • a波は本例のような三尖弁狭窄症など右房圧が上昇した病態で目立ちますが,日常臨床でお目にかかることは稀(他の自験例:心房中隔欠損
  • 頸部の陽性波と言えば一発診断可能なコリガン脈ランチシ徴候(巨大v波)ですが,個人的には地味なa波が大好きです 😊

松下記念病院 川崎達也)