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2023-04-06

巨大と言われる小波

検診の心電図で異常を指摘された症例  問題  心電図異常とは?



松下記念病院 川崎達也)

2021-05-03

凹 ➜ 凸 ➜ 凹

息切れが辛くて受診した症例

🐶 解説
  • 内頸静脈の周期的な陥凹が額下まで観察可 ➜ 中心静脈圧の高度上昇
  • 深吸気止めで内頸静脈の拍動は陥凹から隆起に変化 ➜ ランチシ徴候
  • 深吸気の息止め終了後には内頸静脈拍動は隆起から陥凹に戻っている
  • ちなみに外頸静脈の怒張は深吸気止めの終了後に拍動が出現している

🐷 おまけ発言
  • 内頸静脈の収縮期陽性波(巨大v波あるいはcv merger)を意味するランチシ徴候(ランチージ徴候)は高度の三尖弁逆流を示唆します.よって本例の呼吸負荷による内頸静脈の反応(凹 ➜ 凸)は,肺高血圧が容易に(さらに)上昇する病態が考えられます.肺高血圧の増悪は負荷心エコー図の専売特許ではありません.
  • 内頸静脈の巨大v波にも関わらず,三尖弁逆流がほとんど観察されない症例も少なからず経験します(特に開心術後症例).その理由は不明ですが,stiff LA syndromeが背後にあるためと思っています.開心術中に切開された心房がコンプライアンスを失うことは想像に難くありません.右房も含むためstiff RA syndromeまたはstiff atrial syndromeと呼ぶ方が正確かもしれません.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examinationランチシ
松下記念病院 川崎達也)

2021-02-15

簡易定性法 プラス Part 2

息切れの増悪で来院した症例

🐸 所見の解説
  • 鎖骨上〜頸部中央に内頸静脈の規則正しい陥凹 ➜ 心不全+洞調律
  • 拍動はおそらく二峰性でx谷>y谷 ➜ 心不全あるが超重症ではない
  • 深吸気で内頸静脈の隆起が出現している ➜ クスマウル徴候が陽性
  • 深吸気中には耳下まで内頸静脈の陽性拍動が出現 ➜ ランチシ徴候
  • 耳垂に約45度の皺が存在(フランク徴候)➜ 虚血性心疾患の疑い

🐨 独り言
  • 本例には冠動脈バイパス術の既往があり,今回は慢性左心不全の増悪と診断しました.座位で内頸静脈の拍動が視認できるから(座位陽性),心不全は十分には代償されていないと判断するだけではちょっと寂しい気がします.ぜひ頸静脈の簡易定性法にフィジカルの知識をどんどんプラスしていってください( 簡易定性法 プラス).その応用はほぼ無限かも…
  • 深吸気で内頸静脈の拍動が出現することはあっても,陥凹が陽転化することは珍しいと思います.なお本ページではGiovanni Maria Lancisiが発見した(三尖弁逆流時に出現する)頸静脈の巨大v波(cv merger)をランチージ徴候と記載してきました.しかし本邦ではランチシと記載されることが多いようなので,今回から変更しようと思います.もっともイタリア人の発音ではランチーシと聞こえますが…
フィジカル 広場 心臓 physical exam examinationランチシ
松下記念病院 川崎達也)

2021-05-24

Always 呼吸負荷!

倦怠感を訴える症例

🐧 解説
  • 顎下に周期的な隆起あり(矢印) ➜ 触診から動脈性(コリガン脈
  • 深吸気の保持で拍動は変化せず ➜ 拍動が動脈性であることに合致
  • 頸静脈拍動(陥凹など)は視認せず ➜ 中心静脈圧の著明上昇なし
  • クスマウル徴候も陰性 ➜ 潜在的な中心静脈圧の上昇もないと判断
  • 本例はクインケ徴候も陽性 ➜ その後に高度の大動脈弁逆流を確認
  • 心音は左室駆出流の増加による往復雑音(フリント雑音は認めず)

🐦 つぶやき
  • 頸部の陽性波では頸動脈のコリガン脈(大動脈弁逆流)と頸静脈のランチージ(ランチシ)徴候(三尖弁逆流)を考えることは何度か投稿してきました(コチラ).
  • 両者の鑑別には触診が一番ですが,触れずに診断がカッコいいと思います.体位変換(実例)に加えて,呼吸負荷も有用です.特に呼吸負荷は簡便なので常に追加しておきたいです.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examinationランチシ
松下記念病院 川崎達也)

2021-07-08

👴 歴史クイズ



松下記念病院 川崎達也)

2023-02-23

言うは易く行うは難し Easier said than done  

労作時の息切れで来院した症例(端座位)

🐤 解説
  • 端座位の状態で頸部の下1/2に周期的は拍動(隆起)を認める
  • 陽性波 ➜ 頸動脈(コリガン脈)または頸静脈(ランチシ徴候
  • 頸部下端の用手的圧迫で同拍動は消失した ➜ 内頸静脈の拍動
  • 本例は最終的に慢性左心不全の増悪によるランチシ徴候と診断

 🐦 つぶやき
  • 頸部で陽性波を見た時,静脈性か動脈性かの鑑別が必要です.そのポイントとして,①触診による拍動の強さ,②呼吸性変動の有無,③脈触知を併用した時相判定,④圧迫による消失の有無,などが知られています.
  • しかしこの鑑別は"Easier said than done"(言うは易く行うは難し)と思っています.陽性波を示すほど高度に上昇した中心静脈圧の拍動はまるで動脈です(自験例).もちろん呼吸変動なんてありません.
  • 本ビデオでは圧迫で消失していますが,強く抑え込まないと消えてくれませんでした(3度撮り直し😅).時相の違いも僅かだし...動脈性なら収縮期 vs 静脈性(巨大v波/cv merger)ならⅡ音ピーク(収縮後期〜拡張早期)

松下記念病院 川崎達也)

2026-01-01

三徴候の共存 🎍 元旦

労作時の息切れで来院例(座位)

😐 解説
  • 頚部の上1/3(顎下)に陥凹(右向き矢印)
  • 吸気負荷で別の部位に隆起(左向き矢印)
  • 拍動はいずれも不規則 ➜ 心房細動の疑い
  • 外頚静脈の怒張 ➜ クスマウル徴候(矢頭)
  • 内頚静脈の陥凹+外頚静脈怒張 ➜ 心不全
  • 頚動脈隆起(コリガン脈)➜ 大動脈弁逆流
  • 心エコー図では中等度の大動脈弁逆流あり
  • 最終的にARとAFを伴った心不全と診断した

💟 現場実況
  • 本例で初診時に身体所見を確認したときには,安静時の内頚静脈の陥凹が吸気後には隆起(ランチシ徴候)へ変化しました.もちろんこれで,中心静脈圧が高度に上昇した非代償性心不全と診断できました.
  • その後,看護師さんと車いすで検査に回ってもらいました(心電図や胸部X線,採血).その後の結果説明時(←この時に上記動画を記録)には,ランチシ徴候はなく代わりにクスマウル徴候を認めました.
  • 本例は吸気後に頚動脈拍動(コリガン脈)を認めます.よく見ると安静時にもすでにありそうです.通常,吸気で頚動脈所見は変化しません.本例は筋緊張などが加わり拍動が顕性化したと考えられました.

松下記念病院 川崎達也)

2022-02-07

せめてマフラーは取ろう

慢性左心不全でフォロー中の方の定期受診時


ランチシ
松下記念病院 川崎達也)

2024-02-08

頸静脈の陽性波:a波 vs v波

転居に伴い当科を紹介受診した症例(座位)

🐤 解説
  • 陽性波あり(矢印)➜ 動脈または静脈(a波 or v波)
  • この陽性波は吸気で消失している ➜ 動脈性ではない
  • 吸気で外頸静脈怒張(クスマウル徴候陽性)(矢頭)
  • 橈骨動脈の触診による時相判定で同波形をa波と診断
  • 本例は虚血性心疾患による慢性心不全状態であった

🐦 追加コメント
  • 頸静脈拍動が呼吸性に変化すれば動脈性よりも静脈性を考えます(過去の投稿:twitter).吸気で胸腔内圧は低下しますが,本例のようにクスマウル徴候が陽性になる症例では頸静脈拍動の所見はまず正常化しません(ほとんどの症例で悪化:過去の投稿).よって本例では視認するv波(ランチシ徴候,CV merger)はおおむね否定できると思います.
  • 座位でa波を視認するということは,心室コンプライアンスが相当低下していることを意味します(肥大型心筋症でも10%程度:過去の投稿).しかしこのa波が吸気で消失することを少なからず経験します.おまけ 🐧 クスマウル徴候を発見したドイツ人医師のAdolf Kussmaul(1822-1902)は1869年に金属管を用いて生きた人の胃内を世界で初めて観察

松下記念病院 川崎達也)

2024-10-10

広義の耳ウインク・サイン

慢性心不全増悪で入院中の症例(座位)

👿 解説
  • 頸部に明瞭な拍動(陥凹ではなく隆起)を視認する
  • 下から上への緩徐な陽性波 ➜ 静脈性(ランチシ徴候)
  • 外頚より内頚静脈の拍動上縁が高い(内頚を信頼!)
  • 左上肢の挙上に伴い内頸静脈の拍動上縁は上昇
  • 耳垂に揺れはないがその背面には拍動あり(矢印)
  • 本例の心エコー図は重症の三尖弁逆流+肺高血圧

💀 広義の耳ウインクサイン
  • 狭義の winking earlobe sign といえば耳たぶの揺れが必要です(英語の文言通り).でも本例のように耳朶後方の皮膚面が拍動していれば広義の耳ウインクサインとしてもいいと思います.
  • 本例には明瞭な三尖弁逆流がありました.しかし三尖弁逆流がほとんどないにも関わらず,明瞭な内頸静脈の陽性波を認めることが少なからずあります.特に開心術後の症例に多く経験します.
  • 心臓病診断学の実際(吉川純一著)には,その機序として「心膜の閉鎖にからんだ三尖弁輪下降の制限」が提案されています.左心膜完全欠損でも同様の所見が観察されると記載されています.
  • 個人的には,静脈コンンプライアンスの低下あるいは静脈キャパシティーの限界を反映している症例も散見されるのではと思います.よってv波が容易に圧上昇につながるのではないのかな~😐

🉐 上肢挙上負荷の過去投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2020-10-05

🎯 一発診断

心臓リハビリテーション目的に当院を紹介受診した症例(頸部拍動は橈骨拍動に遅れていた)




松下記念病院 川崎達也)

2026-07-09

フィジカルでここまで分かる

息切れを訴える症例(座位)

🔎 推理
  • 座位で右頚部に周期的な隆起を認める(矢頭)。左側ではあまり隆起が目立たないことより、頸動脈の拍動(コリガン脈)よりも頚静脈の拍動(ランチシ徴候)と考えられる。よって中心静脈圧は高度に上昇しているため、非代償性心不全と診断できる。
  • 次に心尖部を確認すると複数の肋間で心尖拍動を視認するため(矢印)、心拡大が疑われる。さらに男性であるにも関わらず、乳房が発達している(女性化乳房の疑い)。つまりスピロノラクトンなどミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の服用が疑われる。
  • さらに左前胸部に埋め込まれているデバイスは通常よりも大きいため、CRTD(両室ペーシング機能付き植込み型除細動器)等と思われる。これらすべてに合致するのはHFrEFで、肋間筋の萎縮も考慮すると悪液質に陥ったステージDの重症心不全の疑い。

🎩 独り言
  • 上記の予想はすべて正解です。まるでシャーロック・ホームズの推理でしょうか? 彼の推理は微細な事実の観察と、そこから論理を組み立てる推論の組み合わせです(AI解説)。
  • 身体所見も少し慣れれば、同じことができるかもしれません。以前にもフィジカルでここまで分かったという症例をアップしているので、よろしければご覧ください(ココ)。

松下記念病院 川崎達也)

2025-12-04

これは世界記録

  • びっくりする論文を眼にしたので本ページで共有します(N Engl J Med 2025;393:e33
  • インフルエンザの感染後に悪化した心房細動を伴う心不全(HFpEF)の89歳女性です
  • 三尖弁逆流による前額静脈の拍動(ランチシ徴候)には驚き(特に動画がすごい😮)


💀 独り言
  • 上記報告では体位が記載されていないため中心静脈圧の推定値は不明ですが,半坐位としても30㎝水柱は超えていそうです.右心不全が主体でなければ出現しない身体所見?
  • 自験例で静脈拍動の最上縁記録は側頭部(立位)です(こめかみサイン/Temple sign of JVP).同症例を臥位にしてもNEJM症例のような前額での拍動はありませんでした.
  • 前額静脈の拍動はTRの長い病歴や皮下組織のルーズさなど様々な要因が組み合わされないと出現しないのではと思います.頭部の表在静脈の解剖を引用しておきます(下図).


松下記念病院 川崎達也)

2022-03-17

鎖骨上のピコピコ

CTで悪性腫瘍の右心系転移が疑われた症例

🐳 巨大a波(Prominent or Giant a wave)
  • 右鎖骨の頭側(鎖骨上窩)に周期的に隆起する拍動を視認(前半矢印)
  • 手指で容易に圧迫され,時相は動脈拍動やⅠ音の直前 ➜ 頸静脈のa波
  • 深吸気時に右内頸静脈の拍動が出現(クスマウル徴候陽性:後半矢印)     
  • 心エコー図で三尖弁周囲に腫瘍を認め,三尖弁狭窄の病態が疑われた

💣 おまけ
  • ご本人に自覚症状はなく,心音にも特記すべき異常はありませんでした.また座位で頸静脈は視認できず,クスマウル徴候も陰性でした.
  • 同様のa波は不整脈(完全房室ブロック心室期外収縮)で有名です.この場合はCannon a waveと呼ばれます(キャノン音と要区別
  • 日常臨床では頸静脈の大きなa波は肥大型心筋症で視認することが多く,同疾患のフィジカル診断にも有用です(典型例
  • a波は本例のような三尖弁狭窄症など右房圧が上昇した病態で目立ちますが,日常臨床でお目にかかることは稀(他の自験例:心房中隔欠損
  • 頸部の陽性波と言えば一発診断可能なコリガン脈ランチシ徴候(巨大v波)ですが,個人的には地味なa波が大好きです 😊

松下記念病院 川崎達也)

2023-02-16

拍動する怒張

心不全と診断され入院した症例

😄 解説
  • 臥床で外頸静脈が怒張している ➜ 中心静脈圧の上昇あり?
  • 吸気負荷で外頸静脈怒張は改善なし(クスマウル徴候陽性)
  • よく見ると👀怒張した外頸静脈に拍動あり(周期的な隆起)
  • 外頸静脈の下にある胸鎖乳突筋の拍動 ➜ 内頸静脈の拍動!
  • 端座位で内頸静脈の陽性波(ランチシ徴候/Lancisi's sign
  • 座位で吸気負荷 ➜ 内頸静脈の陽性波+外頸静脈の隆起出現

😃 コメント
  • プレゼンで多用されている表現「頸静脈の怒張」は,拍動や呼吸性変化を伴わないパンパンに張った状態と考られます.この表現は頸静脈にのみ適応されるべきです(実例).頸静脈が怒張するような病態では循環動態を保てません(生存困難).
  • 本例の外頸静脈は拍動していますが,今回は怒張と表現してもいいと思います.これは外頸静脈自らの拍動ではなくて,他の要因(内頸静脈の拍動)を反映しているに過ぎないからです.ただし怒張は仰臥位でのみで,座位は単なるクスマウル徴候です.

松下記念病院 川崎達也)

2022-07-21

前屈は意外に高負荷?

労作時の息切れを訴える症例

🐦 解説
  • 座位の安静時に右鎖骨上に頸静脈の拍動を視認しない(座位陰性)
  • 吸気負荷を追加後も頸静脈拍動の出現なし(クスマウル徴候陰性)
  • しかし少し前かがみになると内頸静脈の拍動が出現(前屈負荷陽性)
  • 拍動は陽性波(ランチージ徴候陽性)かつ不規則(心房細動を示唆)
  • 最終的に本例は,持続性心房細動を伴った慢性左心不全と診断した

🐤 臨床現場
  • 安静端座位で頸静脈拍動がないため著明な中心静脈圧の上昇(目安は15cm水柱)はないと判断.吸気負荷(クスマウル徴候)も陰性であるため「中等度の上昇もなさそうだな〜」と思っていました.
  • しかし症状が心不全のまさしく”short of breath”であったため,前かがみ(頭部前方位姿勢)になってもらったら陽性波が出現してびっくり 😮 前屈による胸腔内圧上昇は(僕が)思っているより高負荷?
  • 蹲踞は前負荷増大+後負荷増大でかなりの負荷量です.蹲踞+前屈負荷は旧最強負荷でいわゆるトリプル負荷.蹲踞+前屈負荷+吸気負荷が新最強負荷でいわゆる負荷の四重奏.すべて勝手に命名ですが...😅
ランチシ
松下記念病院 川崎達也)

2020-11-16

ランチージ徴候 vs クスマウル徴候

労作時の胸部症状がニトロで改善する症例

👌 解説
  • 陽性波なので頸動脈のコリガン脈(大動脈弁逆流)or 頸静脈のランチージ徴候(三尖弁逆流)
  • 通常は,頸静脈には呼吸性変動が存在し頸動脈には存在しない ➜ 本例には呼吸性変動はない
  • 拍動は圧迫で容易に消失 ➜ 内頸静脈と判断(触診や聴診を併用した視診もその鑑別に有用)
  • 最終的に高度の三尖弁逆流によるランチージ徴候を伴った慢性左心不全の増悪と診断された

😸 独り言
  • ランチージ徴候陽性の高度の三尖弁逆流では持続性の心房細動になっていることが多いと思う.そして三尖弁に対する外科的介入の至適時期をすでに逃していることが少なくない.本例では陽性波が規則正しいため洞調律の疑い ➜ 実際に心電図で正常洞調律を確認
  • ランチージ徴候を認める症例では吸気負荷でも頸静脈拍動に変化を認めることは少ないと思う.本例でも変化なしと判定(クスマウル徴候陰性と表記すべし?).これは中心静脈圧はすでに十分上昇しているため前負荷の増加をもはや反映しないためであろうか?
  • 本例の症状はニトロ製剤で改善した.硝酸薬が狭心症の症状緩和に有効であることは有名(表在冠動脈の拡張).ただ心不全の症状緩和にも有用:低用量で静脈系容量血管を拡張(前負荷軽減効果)+高用量で動脈系抵抗血管も拡張(後負荷軽減).本例の冠動脈はまだ評価していないが,臨床現場では虚血と心不全の両者が並存することも少なくない ➜ 自験例
フィジカル 広場 心臓 physical exam examinationランチシ
松下記念病院 川崎達也)

2023-08-31

バンザイはダメでした 😓

慢性左心不全の増悪が疑われる症例

🐥 解説
  • 座位で頸部に内頸静脈の2峰性陥凹(中心静脈圧の高度上昇)
  • 吸気で内頸静脈の陥凹は隆起(ランチシ徴候)に変化(矢印)
  • 両側の上肢を挙上するとシャツの襟が頸部を隠してしまった
  • 慌てて襟元を覗いてみたがやはり頸静脈の拍動は確認できず

🐤 コメント
  • 上肢挙上は吸気よりも強い負荷になることが少なくありません.吸気負荷は前負荷の増大が中心ですが,上肢挙上負荷は上肢の静脈血液の還流(前負荷増大)に加え,挙上という仕事(心拍数増加を含む),呼気時間の延長(胸腔内圧上昇)などが加わるためと思われます(過去の投稿).
  • 本例では吸気負荷で陽性波(巨大v波/cv merger)が出現したため,過剰負荷にならないか少しヒヤヒヤしながら上肢挙上を追加しました.しかし両手をバンザイしてもらったら服がせり上がって頸静脈が見えなくなりました.急いで服をずらしましたが頸静脈の拍動は確認できませんでした.
  • 単なる視界不良でなく,ペンバートン徴候(Pemberton's sign)と同様の機序が働いているのかもしれません.拡大した両側の頸静脈が万歳ポーズで圧迫された結果,頭部からの静脈還流が減少しそうです.顔面うっ血が生じないのは甲状腺腫大や縦隔腫瘍と異なり完全閉塞にならないため?

松下記念病院 川崎達也)

2019-06-20

視診で診断!

  • 心電図異常を指摘された胸部症状のない症例の頸静脈(仰臥位で枕あり)


フィジカル 広場 心臓 physical exam examinationランチシ
松下記念病院 川崎達也)

2021-11-29

視診による重症度診断:大動脈弁逆流

拡張期雑音を指摘され来院した症例(症状なし)

📡 視診にこだわった実況中継
  • 臥床で頸部の周期的な隆起があり,静脈性なら巨大v波(三尖弁逆流など)で動脈性ならコリガン脈(大動脈弁逆流)と考えられる.外頸静脈の拍動は臥床+枕ありで頸部中央であるため,明らかな中心静脈圧の上昇はなさそう.つまり静脈性の巨大v波(ランチシ徴候)は否定的.しかし端座位でその陽性波は,臥床よりも不明瞭になっている.コリガン脈であれば通常,重力による虚脱増強のため臥床より座位の方が分かりやすいことが多い(自験例).少し悩んだが肘部内側の反跳脈を確認して,最終的に大動脈弁逆流と視診フィジカル診断した.その後に行った触診では明らかに動脈性拍動で,心エコー図で中等度の大動脈弁逆流を確認した.

本例では体位と陽性波の関係で,フィジカル診断に迷いが生じました.触診あるいは呼吸負荷に対する反応,聴診の併用などで両者の鑑別(動脈性 vs 静脈性)は容易と考えられます.しかし脈に触れたい想いをぐっと我慢して,あくまでも視診にこだわってみました.本例はコリガン脈でありながら臥位でより明瞭であった理由は不明ですが,大動脈弁逆流の程度が一因であった可能性があります.重症であれば重力に抗して大きな陽性波が形成されますが,中等症ではそこまでの拍出量はないのかもしれません.大動脈弁狭窄ではフィジカルで重症度の診断技術が(ある程度)確立されています(過去の投稿).是非,大動脈弁逆流でも挑戦していきたいと思います.

    松下記念病院 川崎達也)