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2020-11-16

ランチージ徴候 vs クスマウル徴候

労作時の胸部症状がニトロで改善する症例

👌 解説
  • 陽性波なので頸動脈のコリガン脈(大動脈弁逆流)or 頸静脈のランチージ徴候(三尖弁逆流)
  • 通常は,頸静脈には呼吸性変動が存在し頸動脈には存在しない ➜ 本例には呼吸性変動はない
  • 拍動は圧迫で容易に消失 ➜ 内頸静脈と判断(触診や聴診を併用した視診もその鑑別に有用)
  • 最終的に高度の三尖弁逆流によるランチージ徴候を伴った慢性左心不全の増悪と診断された

😸 独り言
  • ランチージ徴候陽性の高度の三尖弁逆流では持続性の心房細動になっていることが多いと思う.そして三尖弁に対する外科的介入の至適時期をすでに逃していることが少なくない.本例では陽性波が規則正しいため洞調律の疑い ➜ 実際に心電図で正常洞調律を確認
  • ランチージ徴候を認める症例では吸気負荷でも頸静脈拍動に変化を認めることは少ないと思う.本例でも変化なしと判定(クスマウル徴候陰性と表記すべし?).これは中心静脈圧はすでに十分上昇しているため前負荷の増加をもはや反映しないためであろうか?
  • 本例の症状はニトロ製剤で改善した.硝酸薬が狭心症の症状緩和に有効であることは有名(表在冠動脈の拡張).ただ心不全の症状緩和にも有用:低用量で静脈系容量血管を拡張(前負荷軽減効果)+高用量で動脈系抵抗血管も拡張(後負荷軽減).本例の冠動脈はまだ評価していないが,臨床現場では虚血と心不全の両者が並存することも少なくない ➜ 自験例
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

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