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2022-06-30

🎯 今週の一枚 (ちょっと番外編ですが胸痛なので...)

定期薬を服用後に胸痛を自覚した症例



松下記念病院 川崎/杉原)

2022-06-27

傍胸骨拍動の呼吸負荷

息切れで紹介受診した症例の傍胸骨拍動

🐦 解説
  • 第3肋間胸骨左縁に置いた聴診器の周期的な上下運動を確認
  • 隆起は待機時間の長い抬起性(容量負荷より圧負荷を示唆)
  • 深吸気保持を追加しているが傍胸骨拍動の所見に著変はない
  • 心エコー図で推定された肺動脈の収縮期圧は60mmHg程度

🐤 つぶやき
  • 頸静脈評価では吸気負荷(クスマウル徴候の有無の判定)が汎用されています(多分😅).しかし傍胸骨拍動の評価では,呼吸負荷の追加は一般的ではないと思います.個人的には時々行っていますが,あまり有用性を実感することはありません(本例でもそうでした).
  • 吸気負荷では中心静脈圧に加えて肺動脈圧や体血圧も上昇することが知られています(下図).よって理論上は吸気負荷で傍胸骨拍動も増強されるはずです.問題は吸気時に胸腔容積が増大して右室と胸骨の密着度が低下することです.きっと相殺されるのでしょうね.


松下記念病院 川崎達也)

2022-06-23

爪から重症度判定?

検診で心雑音を指摘された症例

😄 解説
  • テーブル上に置いた右示指に特記すべき異常なし(傷は小石を扱う職業)
  • 指先を下方に押し付けると爪床に周期的な色調変化が出現(クインケ脈
  • よく見ると爪床だけでなくて指先端にも色調変化あり(動画中の矢印)
  • 指先圧迫を解除すると爪床〜指先全体に認めた色調変化も消失している
  • 拡張期雑音があり(ランブルなし),エコーでは中等度は大動脈弁逆流

😎 つぶやき
  • 大動脈弁逆流症によるクインケ脈(Quincke pulse)は本ページに何度も登場しています.大動脈弁逆流では肘の水槌脈と同じくらいよく認める身体所見と思います.
  • クインケ脈はそのまま認めることもありますが(自験例),通常は他動的な爪の圧迫(自験例)や自動的な指先の圧迫(本例)を加えると検出感度が上昇します.
  • 誘発方法(負荷不要>他動的圧迫>自動的圧迫)と出現部位(指先全体>爪床のみ)の組み合わせから,大動脈逆流の重症度判定がある程度可能と思っています.

松下記念病院 川崎達也)

2022-06-20

🏆 論文

🎉 当院の循環器内科で行われた臨床研究が出版されました 🎉 

  • 対象は心不全で松下記念病院に入院した138例です.退院前に簡易定性法による頸静脈評価に加えて,吸気負荷を追加しました.
  • 退院後の予後は,安静時に拍動を認めた症例(下図の)で心事故(死亡または心不全再入院)が有意に高率でした(予想通り).
  • さらに安静時には視認しなくても吸気負荷で拍動が出現する症例(クスマウル徴候陽性)も同様に予後不良でした(下図の).


😀 負荷頸静脈
  • 循環器疾患は負荷することで診断の感度と特異度を改善することができます.負荷心電図,負荷心エコー図,負荷心筋シンチグラフィしかりです.最近は心臓カテーテル検査時にも負荷を行う機会が増えてきました(冠血流予備量比など)
  • もちろん身体所見にも負荷はありますが,臨床現場ではあまり用いられていないように思います.当院では2020年に6分間歩行後の頸静脈所見が心不全症例のリスク評価に有用であることを報告しました(Am J Cardiol 2020;125:1524-8).
  • 6分間歩行は運動可能な症例に限定かつ診察室での施行は不可能です.本論文はこれらの問題点を克服するために実施されました.クスマウル徴候が陽性の症例は,安静時に拍動が視認できる症例と同程度に予後不良であることは驚きです.

💁 論文の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2022-06-16

油断せずに朝晩聴診!

急性前壁心筋梗塞に対してPCIを施行した数日後

💣 心室中隔穿孔(VSP: ventricular septal perforation) 
  • 3LSBに明瞭な汎収縮期雑音(全収縮期雑音,収縮期逆流性雑音)
  • 通常は雑音に隠れるⅡ音がちゃんと聞こえる(肺動脈成分の亢進)
  • 雑音は心尖部の方が大きい(病変は心基部より心尖部よりを示唆)
  • 心尖部ではこの雑音直後に小さな音(膜では聞こえないためⅢ音)
  • 心エコー図では,心尖部よりの心室中隔にL➜Rシャントを認めた
  • 心室中隔穿孔を伴う非代償性心不全と診断して,準緊急外科手術

💀 心筋梗塞の機械的合併症
  • 心室中隔穿孔,乳頭筋断裂,左室自由壁破裂が3大機械的合併症です.発生頻度は心筋梗塞のおよそ1〜10%で,発症時期は24時間以内および3〜5日が多いと報告されています(過去のまとめ).
  • 本例に生じた心室中隔穿孔の発症リスクは,高齢・女性・前壁梗塞(前下行枝)・初回梗塞です.また穿孔部位は前下行枝病変なら心尖部寄り(本例),非前下行枝なら心基部寄りになります.
  • 機械的合併症では血行動態が急激に悪化します.心室中隔穿孔の自然予後は1月以上の生存率20%以下()で早期の外科的修復術が必要.一刻を争うならIABPやPCPS,Impellaなども考慮.
  • 心室中隔穿孔と乳頭筋断裂では,粗い汎収縮期雑音(と前胸部の振戦)が診断契機になります.冠インターベンション(PCI)が成功しCKが順調に下がってきても,油断せず毎日朝晩の聴診が必須です 👂

松下記念病院 川崎達也)

2022-06-13

吸気ならぬ呼気負荷

労作時の息切れで来院した症例

🍘 解説
  • 深吸気の保持で右鎖骨上窩に陥凹(矢印)あり(クスマウル徴候陽性)
  • よくみると通常呼吸時にも吸気時に陥凹(広義のクスマウル徴候陽性
  • 内頸静脈の陥凹はx谷とy谷が同じ深さで優位性なし(y谷優位の症例
  • 興味深いのは深呼気保持では内頸静脈拍動は不明瞭(表在静脈は隆起)

🍙 独り言
  • 個人的には内頸静脈の簡易定性法(座位で鎖骨上に拍動の有無を視覚的に判定)では吸気負荷を追加するようにしています(クスマウル徴候の確認).簡易定性法では軽度(〜中等度)の中心静脈圧上昇を見逃すことがあるためです.
  • このクスマウル徴候ですが,逆に吸気時に頸静脈拍動が消失する症例は経験したことがありません.逆クスマウル徴候(paradoxical or reversal Kussmaul's sign)という用語もヒットしません.報告したら世界初になるかも...
  • 同様に内頸静脈の呼気負荷(jugular venous response to expiration)に関する報告もほとんどないようです.あまり役立つとは思えませんが,特定の疾患に対する有用性は否定しません.発見したら歴史に名を残せるかも...😳

松下記念病院 川崎達也)

2022-06-09

🎯 今週の一枚

心臓MRのため来院した症例

💅 ジェルネイル(Gel nails) 
  • ウレタンアクリル樹脂などジェル状素材を用いたネイルアートの一つ
  • 紫外線灯を用いてジェルを硬化/デザインが多彩で長持ち(3週間〜)
  • 施術に1〜3時間を要して,ベーシックカラーなら5000円~7000円程度
  • 除光液では落とせないためMRI検査が施行できない(本例も中止した)

追加コメント
  • 本症例はジェルネイルをネイルサロンではなくて自宅で自ら行っていた.その日は帰宅し,ジェルリムーバーでネイルをオフしてもらった翌日にMRI検査を行った.リムーバーをコットンに含ませアルミホイルで巻いて10分ほど放置すると装飾部分が浮いてくる様である.
  • MRI検査の説明用紙にはネイルアートを前もってオフしておく必要があることは記載されている.マニキュア(手爪)だけでなくペディキュア(足爪)も含まれるが,前者だけと思い込んでいる方が少なくない(説明書には両方記載).もちろん刺青も不可(過去の投稿

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナーです)

松下記念病院 川崎達也)

2022-06-06

見たことはありませんが…

💠 尿素霜(Uremic frost) 
  • 血中尿素の増加に伴って汗中の尿素濃度が上昇して皮膚に尿素が付着した状態
  • 末期腎不全を反映する皮膚所見で古くから知られている(Hirschsprung, 1865)
  • 頻度は極めて稀(1%未満)(出典)で尿素窒素が200 mg/dl以上と関連(出典


🚑 カッコいい状況
  1. 病歴と身体所見(頸静脈怒張Ⅲ音聴取)などから心不全と診断
  2. 体毛部分を確認して尿素霜を見つけ心不全の原因は腎不全と判断
  3. さりげなく リンジー爪 や 心膜摩擦音(尿毒症性)の有無も確認

松下記念病院 川崎達也)

2022-06-02

🎯 今週の一枚

倦怠感で入院した症例の足底



松下記念病院 川崎達也)