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2022-05-30

番外編:主治医のナイスプレイ!

🚑 現場中継
  1. 強い腹痛を訴える若者が深夜ER室に搬入された
  2. 本例には癒着性イレウスで複数の開腹歴があった
  3. 採血や腹部CTに特記すべき異常所見はなかった
  4. 試験開腹は見合わせて,その日は観察入院した
  5. 翌朝の採血にも特記すべき異常は認めなかった
  6. 自覚症状と臨床データの乖離から詐病を疑った
  7. 関連者の病歴聴取から過去の詐病歴が判明した
  8. 最終的に本人も詐病であったことを認めて退院

👹 つぶやき

松下ERランチカンファレンスとのマルチポストです 🎶

松下記念病院 川崎達也)

2022-05-26

🎯 今週の一枚

労作時の胸痛で来院した症例



松下記念病院 川崎達也)

2022-05-23

座位心尖拍動の呼吸負荷

肥大型心筋症に発作性心房細動が発症した症例

🐳 解説
  • 左乳輪の下に心尖拍動を認める(矢印).その拍動は早く不規則であり,頻脈性の心房細動と矛盾しない.興味深いのは深吸気では拍動が不明瞭になること.吸気で胸腔が拡大するため心尖拍動が不明瞭になることは直感的にわかりやすい.しかし吸気時に右室拍動が明瞭化する症例があるため要注意(自験例).また肺疾患によるフーバー徴候が合併することもある(自験例). 

🐋 ひとり言
  • 端座位で心尖拍動を観察している時に,深呼吸や深吸気保持をよく行ってもらいます.これは心尖拍動の観察が意外に難しいからです.深吸気で心尖拍動をリセットしておくと,呼気時に出現した微妙な拍動に気がつきやすいと個人的に思っています.僕の好きな「天然とんこつラーメン一蘭」のゆで卵と同じ 🍜 ラーメンをいただく前に味覚を一旦リセットして美味に集中 😁

松下記念病院 川崎達也)

2022-05-19

呼吸反応+拍動パターン:判定量的評価

慢性左心不全で加療中の症例が息切れの悪化を訴えた

🐦 解説
  • 深吸気保持で鎖骨上窩に陥凹(矢印)が出現(クスマウル徴候が陽性)
  • よくみると通常呼吸時にも吸気時に陥凹(広義のクスマウル徴候陽性
  • さらによく見ると,内頸静脈の陥凹はy谷が優位(通常ではx谷が優位)
  • 慢性左心不全の増悪と診断して内服薬の調整を行なった(利尿薬追加)

🐤 追加コメント
  • 内頸静脈拍動は二峰性の陥凹が基本です(復習).通常はx谷>y谷で,中心静脈圧の上昇に伴いx谷<y谷収縮期陽性波と変化することが多いと思います.
  • 座位で鎖骨上に内頸静脈拍動の有無を視覚的に判定する簡易定性法はあくまでも定性法ですが,上記の拍動様式を評価すれば半定量的な評価もできます.
  • さらに呼吸に対する反応も追加可能(例:通常呼吸の吸気時に認めれば,通常のクスマウル負荷陽性よりも重症で,拍動パターンがx谷の閉塞ならより重症)

松下記念病院 川崎達也)

2022-05-16

🏆 論文

  • 当院の初期研修医である土橋先生が循環器内科で経験した症例が出版されました
  • 労作時の胸痛で紹介受診して身体所見のばち指から肺癌合併の診断に至りました
  • 肺癌 ➜ 狭心症の順に治療を行い,バチ指も経時的に改善しています(下の写真)


😀 追加コメント
  • 本例は右肺尖部の肺癌で,パンコースト腫瘍として胸痛を生じることがあります(パンコースト症候群).しかし本例の胸痛は典型的な労作性でした.実際に肺癌切除後も胸痛は続き,冠動脈の治療後に消失しました.
  • バチ指(Clubbed finger)を生じる機序として,「肺内シャントを通過した凝集血小板や巨核球から放出される血小板由来増殖因子で爪床下の軟部組織が増殖する」ことが推測されています(J Pathol 2004;203:721-8
  • 本例のばち指改善は肺癌の術後から始まりました.しかし冠動脈治療に関連して開始された抗血小板による効果もあったのかもしれません.両者の関係に言及した論文 ➜ J Am Acad Dermatol 2005;52:1020-8

🎉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2022-05-12

聴診だけで分かると言えば分かるが…

息切れで来院した症例

🐔 解説
  • 収縮期雑音は駆出性が疑われⅡ音が不明瞭なため重症の大動脈弁狭窄?(復習
  • 4拍目〜RR間隔が延長しているが,雑音の音量に変化ないため逆流性?(復習
  • 心エコー図では重症の僧帽弁逆流であった(後尖の短縮があり逸脱は目立たず)
  • 心音図ではⅣ音(矢頭)とⅢ音(矢印)が記録されているが聴診での認識は難

🐓 追加コメント
  • 僧帽弁逆流と言えば,汎収縮期雑音(全収縮期雑音,収縮期逆流性雑音)でⅠ音とⅡ音が不明瞭.特にⅡ音の聴診の有無が,駆出性雑音(大動脈弁狭窄)との鑑別に有用(自験例).
  • ただし僧帽弁逆流でも重症ならダイヤモンド型の漸増漸減雑音になることは有名.さらに本例ではⅢ音を減弱したⅡ音と誤認して,重症の大動脈弁狭窄と判断してしまうかも…
  • 幸いRR間隔の変動があったため,雑音の音量が影響されていないことから逆流性雑音+Ⅲ音と予想可能.もっとも頸動脈拍動を確認すれば,大動脈弁狭窄との鑑別には悩まない 😊

👿 僧帽弁に関する過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2022-05-09

頸動脈拍動と体位

他科で施行した心エコー図で異常を指摘され循環器内科を紹介受診

🍙 解説
  • 端座位で左頸部に異常なし(ただし頸静脈は通常,右側で評価 ➜ 復習
  • 仰臥位では頸部に明瞭な周期性の隆起 ➜ 触聴診で動脈性(コリガン脈)
  • クインケ徴候はなく肘部内側に明瞭な動脈拍動(別名は水槌脈・反跳脈)
  • 本例は重症の大動脈弁逆流+中等症の大動脈弁狭窄+重症の僧帽弁逆流

🌰 独り言
  • 重症の大動脈弁逆流によるコリガン脈は通常,重力による虚脱増強のため臥床より座位の方が分かりやすいことが多いと思います(自験例).しかし本例では臥床の方が明瞭に観察できました.
  • 以前に中等症の大動脈弁逆流で同様の経験をしたことがあります(自験例).本例は重症の大動脈弁逆流でしたが,他の弁膜症も合併していたため,このような体位に対する反応を示したのかも…

松下記念病院 川崎達也)

2022-05-05

もう季節は春ですが…

倦怠感でERに搬入/座位で内頸静脈拍動+PaO2 150mmHg(酸素下)

問題 急性左心不全の重症度分類 ノリア・スティーブンソンで予想されるのは?





判定

🚑 現場実況
  • 酸素濃度は保持されているが爪床のチアノーゼあり ➜ 低心拍出量を反映
  • 実際に本例では手指冷感が著明で,末梢循環不全と診断(いわゆるcold)
  • 内頸静脈は座位陽性つまり中心静脈圧の著増が示唆される(いわゆるwet)
  • 以上よりNohria-Stevenson 分類のプロファイルCに分類(一番予後不良)
  • 本例は低左心機能例で electrical storm(incessant VT)に陥った状態
治療後に末梢循環は改善

💙 チアノーゼ
  • 低心拍出量による末梢循環不全のチアノーゼは見た目も冷たそう他の自験例).一方,末梢循環が保たれた心不全増悪による低酸素血症なら冷感なし(自験例
  • 末梢チアノーゼは先天性心疾患でも出現し,この場合はばち指を伴うことが多い(自験例).逆にチアノーゼを伴わないバチ指なら肺癌など肺疾患を疑う(自験例
🉐 関連投稿 ➜ 末梢(※PC版なら画面右にあるラベル一覧からも選択可能です)

松下記念病院 川崎達也)

2022-05-02

頸静脈のついでに...

労作時の動悸で来院した症例



松下記念病院 川崎達也)