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2026-09-24

心不全の頚静脈評価:レアケース

息切れを訴える非閉塞性の肥大型心筋症(座位)

🔎 解説
  • 安静座位で頚部に周期的な拍動あり(矢頭)
  • 用手的に容易に圧迫可→動脈ではなく静脈
  • 時相は前収縮期(橈骨拍動前)→頚静脈a波
  • 吸気後はa波が消失(他の陥凹や隆起なし)
  • 本例は最終的にHCMの心不全と診断された

😐 追加コメント
  • 肥大型心筋症では、頚静脈のa波を半数以上の症例で視認できます。これは心房収縮時に硬い心室に血流がスムースに流入できずに、頚静脈に逆流するからです。右室肥大がなくても左室肥大の硬さが、心室中隔を介して右心系にも伝わります(ベルンハイム効果)。
  • HCMの約7割にa波を認めますが、これは臥位であって、座位で視認できる症例は稀です(その頻度)。座位で認めるためには、中心静脈圧がある程度、上昇している必要があるためと思われます。よって座位でa波を認めるHCMでは、心不全の合併を疑います。
  • 本例は吸気後にはa波の拍動が不明瞭です。通常、a波は視認することが難しい弱い波で、吸気負荷など筋肉(胸鎖乳突筋など)の緊張時には、まず見えないと思います。もっとも、重症心不全ならHCMでも、x谷やy谷の陥凹あるいはv波の隆起を座位で視認します。

(松下記念病院 川崎達也)

2026-08-20

浮腫の部位


 寝たきりの高齢者で浮腫の判断に適した部位はどこか. 2つ選べ.







判定


😐 解説
  • 水分は重力によって低い位置に集まるため、常に仰臥位なら背部や仙骨部に浮腫が生じやすい。

(松下記念病院 川崎達也)

2026-03-30

座 vs 坐

  • 先日執筆した頚静脈のレビュー論文(日本語)で,出版社から「坐位」を「座位」に統一していいかと連絡がありました.
  • 個人的に頚静脈「座位」定性法の推奨者なので,頻回に使用してきた用語でしたが,意識したことはありませんでした.
  • 今回の自分の総説を見直してみると,一ヵ所だけ「坐位」になっていました(他の20ヵ所余りはすべて「座位」でした)

  • Google Scholar 座位=約22,400件,坐位=約14,600件
  • 循環器学用語集(第4版) 座位=5件,坐位=ゼロ

  • Google Scholar 起座呼吸=約1,220件,起坐呼吸=約1,510件
  • 循環器学用語集(第4版) 起座呼吸=収載(orthopnea),起坐呼吸=未収載

📟 AIの解答:「座」と「坐」の違い(ChatGPT:装飾は投稿者が追加)
  • 「座」と「坐」はどちらも「すわる」という意味を持つ漢字ですが、現代日本語では使い分けがあります。「座」は現在の標準的な表記で、日常生活から公用文、学術文章まで広く用いられます。正座、座席、講座、星座など、多くの一般語や医学・教育分野の用語でも基本的に「座」が使われます。そのため、通常の文章を書く場合は「座」を選べば問題ありません。
  • 一方、「坐」は古い字体(異体字)で、漢文調や仏教用語などに限定的に残っている表記です。例えば「坐禅」や「結跏趺坐」のように、歴史的・宗教的背景を持つ言葉では慣用的に用いられますが、現代の一般的な日本語では使用頻度は高くありません。したがって、特別な理由がない限り、現代文では「座」を使うのが自然です。

(松下記念病院 川崎達也)

2026-03-16

蹲踞負荷は古典ではない?

  • 最近,気になる論文を眼にしたので共有します.Javadi N, Galazka P, Peters M, Tajik AJ. Squat in Obstructive Hypertrophic Cardiomyopathy. JACC Case Rep. 2026 Feb 12:106920 (Epub ahead of print)
  • 「古典的な内容の視覚化だね」と読んでいると "This is to our knowledge the first documentation of confirmation of the hemodynamic changes associated with prompt squat." と記載がありました😮
  • Corresponding authorは,なんとメイヨー・クリニックに長年おられたDr. A. Jamil Tajik…タジク先生がそうおっしゃるならそうかもしれませんが…本ブログにも蹲踞負荷はしばしば登場(ココ)

図1 スクワット動作によるLVOT勾配の変化を示す心エコー図
閉塞性肥大型心筋症の(A)50歳男性と(B)33歳女性の左室流出路における連続波ドップラー心エコー図。1)安静時、2)バルサルバ法実施中、3)立位時、4)スクワット時、5)スクワットから立位への変化を示す。安静時から立位にかけての勾配増強とスクワット時の消失が示され、閉塞性肥大型心筋症に対する動的な生理学的影響が強調されている。LVOT = 左室流出路。(AI訳)


閉塞性肥大型心筋症におけるベッドサイド手技の血行動態への影響の視覚的要約
この模式図は、ベッドサイドでの動的操作中の前負荷、後負荷、LVOT勾配、および収縮期駆出性雑音の変化を示しています。バルサルバ法と立位は前負荷を軽減し、LVOT勾配と雑音の強度を増加させます。しゃがみ姿勢は前負荷と後負荷を増加させ、LVOT勾配と雑音の強度を低下させます。しゃがみ姿勢から立位に移行すると、前負荷と後負荷が急激に減少し、LVOT勾配と雑音の強度が著しく増大します。矢印の大きさは変化の相対的な大きさを示しています。LVOT = 左室流出路。(AI訳)


(松下記念病院 川崎達也)

2025-11-24

フィジカルクイズ(No. 31 & 32)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週末に循環器に関するフィジカルクイズをX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらのページには2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(松下記念病院 川崎達也)

2025-11-13

手抜きダメ

10年前にペースメーカ植込み術を受けた症例
ひと月前から息切れ(座位ですべて吸気後)

😐 解説
  • 頚静脈の拍動なし(ただし下部は見えず)
  • 吸気後の鎖骨上窩にわずかに陥凹あり?
  • 立ち上がって診察室内を2周してもらった
  • すると頚部の中央に明瞭な陽性波(矢印)
  • 触診にて動脈拍動でなく静脈拍動を確認
  • 本例は最終的に心不全と診断(HFpEF)
  • ペースメーカ本体も確認したが問題なし

😞 現場実況
  • 長年安定している症例でありシャツの襟を立てたまま観察(反省)
  • 安定しているというバイアスで鎖骨上窩の拍動もスルー(反省2)
  • 患者さんの訴えが強くしぶしぶ歩行負荷を追加で陽性波(反省3)

(松下記念病院 川崎達也)

2025-11-03

なるほどの説得力

  • ちょっと面白い論文を眼にしたので本ページでも共有します(US Cardiol 2025:19:e16)
  • 座位から前屈すると内頚静脈のサイズが拡大することをエコーで確認(下の図と動画)
  • 臨床的意義がある心不全症例ではエコーを使わなくても身体所見で判定可能(自験例)


(松下記念病院 川崎達也)

2025-07-28

リンカーン徴候 Lincoln sign

  • 大動脈弁逆流症による大脈のため膝窩動脈が過度に拍動して下肢が周期的に動く現象
  • 同疾患で頭部が心拍に一致し前後にゆれるド・ミュッセ徴候(de Musset sign)の足版
  • 命名はこの所見を示した第16代アメリカ合衆国の大統領 Abraham Lincoln(1809-1865)
  • 1863年にガードナーが有名な写真 ビッグフット を撮影し左足のぼやけを指摘(下図)
  • ジャーナリストのブルックスが膝窩動脈の拍動で脚が僅かに動いた可能性を提唱した
  • 1961年医師ゴードンが身体的特徴からリンカーンはマルファン症候群であったと推測
  • 1964年シュワルツは彼のマルファン症候群の特徴に関する更なる系譜学的証拠を提示


左足先のみピントがぼけている点に注目

💀 追加コメント
  • リンカーンがマルファン症候群であったかどうかは今もって不明だそうです(DNAは未公表).著名な遺伝学者ビクター・マキュージックは、その確率を50:50としています(Nature 1991;352:279-81).ちなみに彼は暗殺された初めての米大統領です.
  • 本徴候は膝をうまく組んで(体側の膝の真上に膝窩動脈),下肢の力を抜くよう指導など,一定の条件を満たさないと出現しないと予想します.以前に大動脈弁逆流での足背動脈のコリガン脈を記録したことがありますが,とても微妙な所見でした(ココ)
  • 骨シンチグラフィにもリンカーン徴候と呼ばれる所見があるようです.下顎骨への核種の取り込みが過剰に亢進した(まるで黒ひげ)状態で,SAPHO症候群や骨パジェット病,悪性腫瘍転移,薬剤性顎骨壊死,副甲状腺機能亢進症などで認めるようです.

(松下記念病院 川崎達也)

2025-07-14

もし座位で認めれば…(フィジカルの高み)

心電図異常+労作時の息切れ(座位)

👼 解説
  • 安静呼吸時には頚部に拍動を視認せず
  • ただし稀に陽性波? ➜ キャノンa波?
  • 深吸気保持で陽性波が連続出現(矢印)
  • 脈触診併用で同波は収縮期直前(a波)
  • 本例の最終診断は両心室肥大型心筋症

👳 独り言
  • 肥大型心筋症ではa波が明瞭になることが多いと思います.当院の研究でも7割以上の症例でa波を視認しています.ただしこの数値は臥床であって(典型的な自験例),座位でa波を認める症例は10%にすぎません.座位のa波視認は,HCMのフィジカル診断に対して感度10%ながら特異度は100%
  • 座位でa波を認める他疾患は3度房室ブロック(自験例)や期外収縮(自験例)によるキャノンa波です.その機序は右房収縮時に三尖弁が閉鎖しているためです(この場合はa波が規則正しく出現しないので視診でも鑑別可能).三尖弁狭窄では規則正しいa波ですが超稀(腫瘍による類似病態の自験例)
  • HCMでa波が目立つ機序は右房の後負荷増大(≒右室のコンプライアンス低下)です.よって右室肥大を有する肥大型心筋症ではa波が目立ちやすいと思います(左室肥大のみでもベルンハイム効果のため右室コンプライアンスは低下).右室肥大を伴うHCMの頻度は1~2%と稀ですが(PLoS One 2017;12:e0174118),ぜひ右心系HCMのフィジカル診断に挑戦してみてください.

(松下記念病院 川崎達也)

2025-06-30

夢叶う2 Dreams come true 2

  • 心不全臨床では負荷を併用した頚静脈の座位定性法がとても有用です
  • 5-ステップで学ぶ無料アプリ「シンプル頚静脈」を昨年公開しました
  • 日本語版は総説やSNS,講演などで宣伝する機会がある程度ありました
  • 実は海外展開を念頭に英語版も同時にリリースしていました(コチラ)
  • 今回,国際誌にアプリが掲載されました(ESC Heart Fail 2025 May 27)

😎 舞台裏
  • はじめに米国の雑誌に投稿しましたが,あっさりreject.でもこれは想定内でした.(内容はともかく)アプリの掲載はとてもリスクがあるからです(スパムを組み込むことも技術的に可能).今回の雑誌にも期待せずに投稿しました.3日後に返事があったので「やっぱりダメだな」と思っていたら,ともて高評価.実際にその1週間後(投稿10日後)に出版されました.
  • 本邦の心不全ガイドライン(2025.3更新)への収載が一つ目の「夢叶う Dreams come true」で,今回の海外展開が二つ目の「夢叶う Dreams come true」です.そしていつか,海外のガイドライン収載へ…これは三つ目の「夢叶う Dreams come true」になるでしょうか😃

(松下記念病院 川崎達也)

2025-06-02

心尖拍動の呼吸負荷(座位)

心機能の評価目的で来院(座位)

👉 解説
  • 座位で明瞭な心尖の拍動を認める(矢印)
  • 持続時間の長い抬起性拍動で心肥大の疑い
  • 拍動の最外側部は左乳輪外で心拡大の疑い
  • 矢印の上下肋間にも拍動あり心拡大に合致
  • 拍動は吸気で不明瞭化,呼気で明瞭化した
  • 本例はLVEF 20%で遠心性心肥大を認めた

👍 現場実況
  • 患者さんとの初診時の挨拶前,頚静脈に注目していたが拍動を視認しなった.「心不全であっても代償されているのかな~」と思っていた.実際にご本人も,「日常生活では息切れなどの自覚症状はない」と述べた.
  • しかし(動画から分かるように)荒い息遣いが気になった.こういう場合は,日常生活を無意識に制限しているか,認知症を合併してることが多い(非代償性心不全でも自覚症状がないという認知症の自験例 → ココ)
  • 本例には明らかな認知機能障害はないようなので,極めて狭い範囲での生活が予想された.心不全(HFrEF)に対するGDMT(guideline-directed medical therapy/診療ガイドラインに基づく標準的治療)を開始
  • 本例の心尖拍動は吸気時に不明瞭化し,呼気時に(少し?)明瞭化している.これは呼吸に伴う胸郭容積の変化を考慮すれば納得いく変化.心尖拍動の評価時には,頚静脈と異なり呼吸負荷は不要(と思っています)

(松下記念病院 川崎達也)

2025-03-27

負荷の組み合わせ

心筋梗塞後の症例(座位)

🐔 解説
  • 安静では頚部に明らかな拍動なし
  • 吸気保持で拍動が出現?(矢印)
  • 吸気を保持したまま座位➜立位へ
  • 微妙な頚部の拍動は完全に消失!

    🐙 コメント
  • 本例は治療によってHFrEFからHFpEFに改善したHFrecEF症例です.深吸気保持(前負荷増加)で拍動が出現しているなら,中心静脈圧(≒右房圧)は軽度~中等度に上昇していると考えられます.しかし座位から立位への体位変換(前負荷減少)では中心静脈圧は低下しています. 実際に本例はテニスを楽しんでいます.
  • 吸気負荷などで頚静脈拍動が出現しても,立位で消失する症例は日常生活に支障が少ないと思います(自験例).逆に立位になっても拍動が持続する症例は,労作時の息切れが問題になることが多いようです(自験例).さまざまな負荷が可能なシンプル頚静脈©は,心不全管理管理で無限の可能性を秘めているかも...😁

(松下記念病院 川崎達也)

2025-03-13

立位負荷と日常生活

慢性心不全例(HFpEFでEF=60%)

💁 解説
  • 頚部に血管の隆起あり(外頚静脈)
  • 吸気時虚脱(クスマウル徴候陰性)
  • 鎖骨上窩の周期的陥凹は呼吸性変動
  • 吸気負荷で頚部に拍動出現(矢印)
  • 内頚静脈の拍動であり心不全の状態
  • 座位から立位の体位変換で拍動消失

👻 補足
  • 本例は様々は治療を行っても内頚静脈の座位所見が陰転化しない慢性心不全例です.ただし日常生活には支障はなく,長年安定しています.
  • 座位から立位という体位変換はもちろん心臓にとっての大きな仕事です.しかし立位による前負荷(静脈還流)の低下は心負担を減らします.
  • 本例のように立位で内頚静脈所見が悪化しないあるいは陰性である症例は自覚症状に乏しいことが多いと思います(立位でも陽性の自験例)

(松下記念病院 川崎達也)

2025-01-02

負荷心尖拍動

慢性左心不全の増悪例

😐 解説
  • 乳房下に抬起性心尖拍動 → 左室の拡大・肥大
  • 心窩部にも明瞭な抬起性拍動 → 右室負荷の疑い
  • 座位から立位の体位変換で左室の拍動は変化なし
  • 心窩部の拍動は減弱~消失(右室負荷の減少?)

💟 追加コメント
  • 本例の心尖拍動の変化をどう解釈するかは難しい.心窩部の拍動が立位に伴い目立たなくなったことは,前負荷の減少による右室負荷の低下で説明できそう.一方,心尖拍動(左室)の所見は,前負荷の減少が立ち上がりという仕事で相殺されたと考えるのがいいかもしれない.
  • 心臓の検査では負荷を積極的に併用している(心電図や心エコー,核医学,MRI,心カテなど).身体所見でも然り.負荷を併用した頚静脈評価法(負荷頚静脈)はかなり解明されてきたと個人的には思っている.今後は負荷心尖拍動の臨床的意義も調べていく必要があるかも...

(松下記念病院 川崎達也)

2024-12-26

Ehlers–Danlos syndrome エーラス・ダンロス症候群

エーラスダンロス症候群に関する論文が先日,出版されました(Med Genet 2024 Dec 3;36:225-234).図鑑のような体裁で臨床医にはとても分かりやすいと感じました.本ページでも取り上げておきます(全文がネットで読めます)

💚 抄録訳
  • 単一遺伝子性エーラスダンロス症候群(EDS)は、関節過可動性、皮膚過伸展性および/または脆弱性、および全身組織脆弱性を臨床的に特徴とする遺伝性結合組織疾患のグループです。現在、単一遺伝子性EDSタイプの診断を確定するためのゴールドスタンダードは、大規模並列シーケンシングによる遺伝子パネル検査です。遺伝子検査の可能性は大きく進歩しているものの、病歴、家族歴、身体検査を含む徹底した臨床評価が診断プロセスにおいて依然として重要であるため、私たちは、単一遺伝子性EDSタイプの臨床的特徴(の組み合わせ)をテキストと写真で報告し、臨床診断に役立てることを目指しています。さらに、分子診断が不可能な場合でも、臨床診断によって管理と監視を導くことができます。



- 骨格筋の特徴 -



- 皮膚の特徴 -



- その他の臨床的特徴 -

💙 命名までの遍歴
  • エーラス・ダンロス症候群という名称は,オランダの皮膚科医 Edvard Laurits Ehlers (1863-1937) とフランスの皮膚科医 Henri-Alexandre Danlos (1844-1912) に由来しています.しかしヒポクラテスは紀元前400年にこの疾患の特徴に言及し,van Meek'ren が1682年に医学的記述を残しています.1892年には Tschernogubow が発表していますが,ロシア語だったためか西ヨーロッパではほとんど見過ごされたようです.そして1901年と1908年にそれぞれ影響を受けた患者を記述した Ehlers と Danlos にちなんで,1936年に Weber がこの疾患を Ehlers–Danlos syndrome(EDS)と命名したようです.


👉 エーラス・ダンロス症候群に関するの過去の投稿は コチラ

(松下記念病院 川崎達也)

2024-10-31

ベンドニア Bendopnea 

前かがみが苦しいと訴える緻密化障害例

🐤 前屈時呼吸困難症
  • 安静座位で鎖骨上に頸静脈の拍動なし
  • 吸気負荷を追加したが拍動は出現せず
  • 前屈位で頚静脈の拍動が出現(矢印)
  • それと同時に主訴の苦しさが出現した
🐥 系統的レビュー(6研究/891名)
  • ベンドプネアは呼吸困難 [オッズ比(OR)69.70(17.35-280.07); p <0.001],起座呼吸 [OR 3.02(2.02-4.52); p <0.001],発作性夜間呼吸困難 [OR 2.76(1.76-4.32); p <0.001],腹部膨満感 [OR 7.50(4.15-13.58); p <0.001] と関連
  • ニューヨーク心臓協会(NYHA)機能クラスIVは.ベンドプネア患者でより多く [OR 7.58(4.35-13.22); p <0.001],下図の様に死亡率の上昇とも関連 [OR 2.21(1.34-3.66); p <0.002].2つの研究では頸静脈圧の上昇とも関連あり.


(松下記念病院 川崎達也)

2024-07-18

コリガンのコツ

心電図異常を指摘され受診した症例

😋 解説
  1. 座位で上腕動脈に特記すべき所見なし
  2. 肘部の屈曲に伴い拍動が出現(矢印)
  3. 触診で動脈性の拍動であることを確認
  4. エコーで中等度~重症の大動脈弁逆流
  5. 本例で明らかな拡張期雑音はなかった

💁 ちょっとしたコツ?
  • ご存じのように水槌脈(Water-hammer pulse),反跳脈(Bounding pulse),コリガン脈(Corrigan pulse)などと呼ばれています.大脈(速脈)を反映する所見ですが,大動脈弁逆流以外で見かけることはあまりないと思います.
  • ただし動脈の蛇行(+表在化)で偽コリガン脈を呈する高齢者が少なくありません.本例の様に肘関節の屈曲で拍動が目立つ症例は本物が多い気がします(自験例1・自験例2).一方,肘伸展で拍動が目立つ症例は偽が...(自験例)

(松下記念病院 川崎)

2024-07-04

頸静脈の立位負荷②

拡張型心筋症(CRTD)例が息切れで来院(座位)

🐤 解説
  • 座位で鎖骨上に周期的な陥凹(内頸静脈)
  • 中心静脈圧はかなり上昇していると判断
  • 座位→立位で拍動パターンの変化に注目
  • 拍動は一旦消失するもその後に再び出現
  • しかもパターンは陥凹ではなく隆起(→)
  • 症状も強く(血圧は低めも)利尿薬追加
🐥 追加コメント
  • 通常は,座位から立位の体位変化で頚静脈拍動パターンが改善します(陥凹→消失または隆起→陥凹など).この場合は労作時の息切れの訴えはあまり強くなく,日常生活はなんとか送れいていることが多いと思います(自験例).
  • しかし本例のように立位で改善が乏しい症例ではやはり辛そうです.本例はスピロノラクトン25 mgの追加で体重が3 kg低下して,座位で頚静脈拍動も消失しました(ただし吸気負荷後やトレッドミル負荷中は僅かに陽性)
  • 本例では長年,患者さん自身がいつも頚静脈を確認されています.自覚症状との関連も確かなので,担当医(投稿者)のみならず患者さんもとても信頼しているフィジカル所見です.毎回BNP値を確認する必要もありません.

(松下記念病院 川崎達也)

2024-06-10

🏆 論文

  • 当院の専攻医の野口先生の臨床研究が出版されました 🎉
  • 慢性心不全症例に対する各種負荷頚静脈の比較検討です
  • 実際の負荷法は吸気・5回立ち上がり・蹲踞の3種類です
  • いずれの負荷も予後予測に有用で予後予測能に大差なし
  • ただ5回立上がりと蹲踞は膝痛や腰痛で実施不能例あり
  • 最終的には負荷頸静脈は吸気が最も実用的な方法と結論


😎 つぶやき
  • これは当院で行ってきた一連の負荷頚静脈研究(①6分間歩行,②吸気負荷,③PEF vs REFなど)の最終報告です.臨床で生じた疑問に対する研究を行い,新たな疑問に対する追試を行うということの繰り返しでした.最終的に「吸気による頚静脈負荷は様々なタイプの心不全で予後予測に有用」というゴールにたどり着けました.
  • 本論文の査読者から負荷の様子を追加するよう指摘されました.実際の動画よりもピクトグラムの方がいいのではと考え,無料画像を検索しました.しかしふさわしいものなかったので自作しました(上記のFigure 1).思ったより簡単で,今ではあらゆる体位や動作を表現できるようになりました.やっぱ何事も挑戦ですね.

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(松下記念病院 川崎達也)

2024-05-30

e-casebook「心不全のフィジカル」

  • 先日,e-casebookで「心不全のフィジカル」についてお話をさせていただきました.心不全症例が呈する様々な身体所見の中から,頚静脈の座位定性法に特化した内容です.
  • 目標は心不全の共通言語として「座位で頚静脈が見えます」の普及です.本人~家族,救急隊員,訪看スタッフ,診療所,病院の各間で,より迅速かつ円滑な対応が望めます.
  • 登録(無料)が必要ですが,よろしければご覧ください(視聴サイト).貴重な機会なので新アプリ「シンプル頚静脈」も作成し,講演中に公開しました(QRコードを提示).


e-casebook(© Heart Organization.Co.,Ltd.)は、循環器内科(Cardiology)・整形外科(Orthopedics)・脳神経外科・内科(NS , Neuro)・消化器外科・内科(GI Surgery , GI)をはじめとするいろいろな分野の医師が知⾒を深める支援をしています。トップレベル医師による⼿術・手技、レクチャーなど実践的な内容で専門医が学べるライブ・ビデオ配信サービス「e-casebook LIVE」やDICOM画像をもとにWeb上で症例検討ができるディスカッションプラットフォーム「e-casebook FORUM」を運営しています。(e-casebook HPより文言そのまま)

(松下記念病院 川崎達也)