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2023-08-31

バンザイはダメでした 😓

慢性左心不全の増悪が疑われる症例

🐥 解説
  • 座位で頸部に内頸静脈の2峰性陥凹(中心静脈圧の高度上昇)
  • 吸気で内頸静脈の陥凹は隆起(ランチシ徴候)に変化(矢印)
  • 両側の上肢を挙上するとシャツの襟が頸部を隠してしまった
  • 慌てて襟元を覗いてみたがやはり頸静脈の拍動は確認できず

🐤 コメント
  • 上肢挙上は吸気よりも強い負荷になることが少なくありません.吸気負荷は前負荷の増大が中心ですが,上肢挙上負荷は上肢の静脈血液の還流(前負荷増大)に加え,挙上という仕事(心拍数増加を含む),呼気時間の延長(胸腔内圧上昇)などが加わるためと思われます(過去の投稿).
  • 本例では吸気負荷で陽性波(巨大v波/cv merger)が出現したため,過剰負荷にならないか少しヒヤヒヤしながら上肢挙上を追加しました.しかし両手をバンザイしてもらったら服がせり上がって頸静脈が見えなくなりました.急いで服をずらしましたが頸静脈の拍動は確認できませんでした.
  • 単なる視界不良でなく,ペンバートン徴候(Pemberton's sign)と同様の機序が働いているのかもしれません.拡大した両側の頸静脈が万歳ポーズで圧迫された結果,頭部からの静脈還流が減少しそうです.顔面うっ血が生じないのは甲状腺腫大や縦隔腫瘍と異なり完全閉塞にならないため?

松下記念病院 川崎達也)

2023-08-28

‘Reverse-Namaskar’ sign 逆ナマスカー徴候

  • Namaskar(ナマスカー)はインドの典型的な挨拶方法
  • 通常は前腕を胸の前で組み手掌を向かい合わせにする
  • 逆ナマスカー徴候は背中で手掌を合わせる動作(下図)
  • エーラス・ダンロス症候群などの関節の過伸展で陽性
  • 日本風なら”後ろの人にもお礼”サインでしょうか?😉
Ehlers-Danlos Syndrome (EDS) と考えられる65歳女性

松下記念病院 川崎達也)

2023-08-24

今週の一枚 🎯

ペースメーカ外来を定期受診した症例



松下記念病院 川崎達也)

2023-08-21

🏆 論文:心アミのフィジカル

  • 当院初期研修医の平野先生が循環器内科で経験した症例が出版されました🎉
  • 身体所見が診断契機になったトランスサイレチン型心アミロイドーシスです
  • このATTR型は高齢者に多く簡便なマーカーがないため診断が遅れがちです
  • 本例は著明肥大にも関わらずⅣ音(S4)なし+ポパイ徴候が診断契機でした

非外傷性の上腕二頭筋腱断裂(ポパイ徴候)がら15年後にATTR型心アミロイドーシスと診断された70歳男性

😀 追加コメント
  • 本例の左室駆出率は55%で左室はびまん性に肥厚し(15 mm程度),左室心筋重量係数は111.9 g/ms2(基準: 56〜92 ms2)でした.ドプラ指標はE/A 2.66,E/e' 32.0とグレードⅢの高度拡張障害でした.しかし通常なら存在が予想されるⅣ音を聴取せず,心音図でも記録されませんでした.
  • 心臓アミロイドでは肥大があるのにⅣ音を欠くことは従来から論文に記載されてきました(Am J Cardiol 2000;86:244-6Clin Cardiol 2021;44:322-31).しかしこれらはエキスパートオピニオンです.友人のフィジカル巨匠が実データを現在投稿中と聞いています(出版がとても楽しみです 😄)
  • 心アミ症例でⅣ音(S4)を欠く機序は心房へのアミロイド沈着と考えられます.本例でもピロリン酸が両心室のみならず両心房に集積していました(下図).以前の投稿「問題硬い左室+Ⅳ音なし=?」はいつも頭の片隅に置いておきたい事です.なお肥大型心筋症の心房の辛抱も忘れずに 😁


👉「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2023-08-17

フロッグサイン

数日前から動悸が続く症例(体位は座位)

🐸 解説
  • 座位で頸静脈は視認しないが吸気後には出現(矢印)
  • 拍動はとても早い(まるでハチドリの羽ばたきの様)
  • 最終診断は心房頻拍(2:1伝導)による心不全の増悪
  • DCを予定したがジギタリス点滴で洞調律に回復した

🐝 独り言
  • 頸静脈の早い拍動としては,房室結節回帰性頻拍(AVNRT)のフロッグサイン(frog sign)が有名です.フロッグサインの拍動は140回/分前後の周期ですが,本例は240回/分程度で一見静止している様にみえます(勝手に命名:ハチドリ徴候/Hummingbird sign).
  • このハチドリサインは頻脈誘発性の非代償性心不全になれば,吸気負荷を行わなくても観察できる様になります(自験例).一方,フロッグサインは心不全を伴わなくても観察できることが多いと思います.心拍数がそれほど早くないので拍動自体が大きくなるためでしょうか...
  • 進行性核上性麻痺(PSP)では中脳被蓋が萎縮するため,そのMRI像をハミングバード徴候と言うそうです(下図).頸静脈Hummingbird signの命名は,あまりにも素早い翼の羽ばたき(ホバリング中は約3,000回/分)からなので,厳密には被ってはいないと思いますが...😅

松下記念病院 川崎達也)

2023-08-14

これもフィジカル:虚血顔 

  • 先日の研究会でフィジカルの匠から教えてもらった論文です。その師匠は「コロナリー顔」と言っていました😊
  • 先日報告された胸部X線から糖尿病予測(Nat Commun 2023;14:4039)など、AIの進歩はとても楽しみです

  • デジタルカメラ(2000万画素以上)による顔の正面像、60度像、頭頂像を撮影
  • ディープラーニングアルゴリズムによる冠動脈狭窄(50%以上)の検出能を検証
  • アルゴリズムは感度0.80、特異度0.54、AUC 0.730(95%信頼区間 0.699-0.761)
  • AUCはDiamond-ForresterモデルやCADコンソーシアム臨床スコアより高値(下図)


  • AIが用いた判定基準()は理解不能ですが、下図のように示されるとなるほどかもしれません。
  • 耳垂皺(earlobe crease、フランク徴候)が含まれていて一安心(外耳道毛はないようですが…😒)




松下記念病院 川崎達也)

2023-08-10

上肢挙上で中心静脈圧 ⏫

自覚症状が悪化した心不全症例(体位は座位)

🐦 解説
  • 外頸静脈を視認可能 ➜ その上縁は頸部中央あたり
  • 上下変動があるため中心静脈圧は上昇と判断可能
  • 内頸静脈も鎖骨上窩で僅かに陥凹を認めると判断
  • 左上肢挙上で外頸静脈の拍動上縁は5cm程アップ
  • 慢性左心不全の増悪と考えて内服調整を行なった

 🐤 診察室中継
  • 上肢挙上のみでも中心静脈圧って結構(5cm水柱くらい)上がるんだと思いながら頸部を見ていました.その後に患者さんの顔を見たら真っ赤になっていたので驚きました(ビデオでは少し分かりにくいと思いますが...).
  • 上肢挙上のみで明瞭な息切れが出現した症例(動画中の音声に注目!)を経験したこともあります.この様な強い反応は,吸気負荷ではあまり経験したことがありません.理由は不明ですが機序は過去に考察(ココ

🉐 上肢挙上負荷の過去投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2023-08-07

🏆 論文:HCMのフィジカル意義

  • 肥大型心筋症は多くのユニークな身体所見が知られています
  • 本研究では HCM 症例で身体所見の臨床的意義を検討しました
  • 診断能は臥位の頸静脈a波+Ⅳ音聴診で特異度94%、感度57%
  • Ⅳ音の消失が死亡または入院の増加に繋がることも示しました
典型例(論文の動画 ➜ コチラから下スクロール)

😎 独自路線
  • 肥大型心筋症は心室の肥大が特徴的ですが,フィジカルでは心房が主役です.これは硬い心室に血液を無理やり押し込んでいる心房の頑張り(心房の辛抱)です.この頑張りが続かなくなったとき(例:Ⅳ音の消失)が運動耐容能の低下や心血管事故の増加(本論文)に関係することは理にかなっています.
  • 身体所見から肥大型心筋症を疑い,その後に画像検査で確認する臨床スタイルは,充分に可能で楽しいと思います.「忙しい新患外来でそんなめんどくさいことできないよ~」という意見にも大いに同意しますが...😅 いずれにしても遅ればせながらライフワークの1つが形になって本当に良かったです.

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2023-08-03

やはり外頸静脈は要注意

慢性心不全症例が下腿浮腫で来院(体位は座位)

🐤 解説
  • 外頸静脈は膨隆して呼吸性変動はなし ➜ まさに怒張
  • 頭部を上下左右に動かしてもらったが怒張は変化なし
  • 内頸静脈は視認せず吸気時(クスマウル徴候)も陰性
  • 胸部X線やBNP値を確認したが以前の所見と変化なし
  • 下腿痛でNSAIDsを多用していたことが判明(Na貯留)
  • 現行の内服薬は変更せずに鎮痛薬少し控えるよう依頼

🐦 独り言
  • 当ホームページでは「頸静脈の怒張なし」の乱用に以前から警笛を鳴らしています(過去の投稿) .「頸静脈の怒張」とは呼吸性などの変動が消失した状態を意味するため,「頸静脈の怒張なし」は「中心静脈圧がめちゃくちゃ上昇してるわけではない」を表します.またこの怒張は外頸静脈には稀に出現しますが,内頸静脈には出現しないはずです(血行動態が破綻して死亡)
  • 本例で外頸静脈が怒張していた理由は不明です(圧迫する腫瘤等もなし).しかし先日,頸静脈膨隆の原因が「重複した内頸静脈の一方が瘤化」であった症例報告をたまたま眼にしました(J Surg Case Rep 2023;2023:rjad366).中にはこういう患者さんもおられるのかもしれません.もっとも今回の動画の患者さんは初診だったため,以前から存在したか否かは不明です.

松下記念病院 川崎達也)