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2025-08-07

頚静脈の座位定性法の弱点

労作時の息切れで来院した症例(座位)


🐝 解説
  • 右頚部腫瘍(30年著変なし)
  • 安静座位で頚静脈は視認せず
  • 深吸気負荷後も頚静脈は陰性
  • 心音は明瞭なギャロップあり
  • BNPは著増(>1000 pg/ml)
  • 心エコー図で左室駆出率18%

🐙 頚静脈の座位定性の弱点

身体所見は診断特異度は高いのですが,感度が少し劣るという共通した問題点があります(評価者のばらつきもですが😑).一方,頚静脈の座位定性(シンプル頚静脈)は感度も特異度も臨床的には十分すぎるくらい高いと思われます.ただし特定の病態では役立たないと感じることもあるので,以下に列記してみます.

松下記念病院 川崎達也)

2025-07-28

リンカーン徴候 Lincoln sign

  • 大動脈弁逆流症による大脈のため膝窩動脈が過度に拍動して下肢が周期的に動く現象
  • 同疾患で頭部が心拍に一致し前後にゆれるド・ミュッセ徴候(de Musset sign)の足版
  • 命名はこの所見を示した第16代アメリカ合衆国の大統領 Abraham Lincoln(1809-1865)
  • 1863年にガードナーが有名な写真 ビッグフット を撮影し左足のぼやけを指摘(下図)
  • ジャーナリストのブルックスが膝窩動脈の拍動で脚が僅かに動いた可能性を提唱した
  • 1961年医師ゴードンが身体的特徴からリンカーンはマルファン症候群であったと推測
  • 1964年シュワルツは彼のマルファン症候群の特徴に関する更なる系譜学的証拠を提示


左足先のみピントがぼけている点に注目

💀 追加コメント
  • リンカーンがマルファン症候群であったかどうかは今もって不明だそうです(DNAは未公表).著名な遺伝学者ビクター・マキュージックは、その確率を50:50としています(Nature 1991;352:279-81).ちなみに彼は暗殺された初めての米大統領です.
  • 本徴候は膝をうまく組んで(体側の膝の真上に膝窩動脈),下肢の力を抜くよう指導など,一定の条件を満たさないと出現しないと予想します.以前に大動脈弁逆流での足背動脈のコリガン脈を記録したことがありますが,とても微妙な所見でした(ココ
  • 骨シンチグラフィにもリンカーン徴候と呼ばれる所見があるようです.下顎骨への核種の取り込みが過剰に亢進した(まるで黒ひげ)状態で,SAPHO症候群や骨パジェット病,悪性腫瘍転移,薬剤性顎骨壊死,副甲状腺機能亢進症などで認めるようです.

松下記念病院 川崎達也)

2025-07-14

もし座位で認めれば…(フィジカルの高み)

心電図異常+労作時の息切れ(座位)

👼 解説
  • 安静呼吸時には頚部に拍動を視認せず
  • ただし稀に陽性波? ➜ キャノンa波
  • 深吸気保持で陽性波が連続出現(矢印)
  • 脈触診併用で同波は収縮期直前(a波)
  • 本例の最終診断は両心室肥大型心筋症

👳 独り言
  • 肥大型心筋症ではa波が明瞭になることが多いと思います.当院の研究でも7割以上の症例でa波を視認しています.ただしこの数値は臥床であって(典型的な自験例),座位でa波を認める症例は10%にすぎません.座位のa波視認は,HCMのフィジカル診断に対して感度10%ながら特異度は100%
  • 座位でa波を認める他疾患は3度房室ブロック(自験例)や期外収縮(自験例)によるキャノンa波です.その機序は右房収縮時に三尖弁が閉鎖しているためです(この場合はa波が規則正しく出現しないので視診でも鑑別可能).三尖弁狭窄では規則正しいa波ですが超稀(腫瘍による類似病態の自験例
  • HCMでa波が目立つ機序は右房の後負荷増大(≒右室のコンプライアンス低下)です.よって右室肥大を有する肥大型心筋症ではa波が目立ちやすいと思います(左室肥大のみでもベルンハイム効果のため右室コンプライアンスは低下).右室肥大を伴うHCMの頻度は1~2%と稀ですが(PLoS One 2017;12:e0174118),ぜひ右心系HCMのフィジカル診断に挑戦してみてください.

松下記念病院 川崎達也)

2025-06-19

今週の一枚 🎯

心不全で入院中の男性



松下記念病院 川崎)

2024-07-08

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


👻「フィジカル講習会」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2024-06-03

今週の一枚 🎯 下腿浮腫

3週前より下腿浮腫と体重増加(直近10日で10㎏)を訴える高齢男性
2週前のかかりつけ医で施行した採血や胸部X線に特記すべき異常なし

👽 解説
  • 頚部や鼠径部のリンパ節が腫脹していた
  • CTでは大腿静脈をリンパ節が圧迫(*)
  • LDHは513 U/Lと増加,CRPは0.42 mg/dL
  • 頚部LNの生検でリンパ腫(DLBCL)診断
  • 本例にB症状(発熱・盗汗・体重↓)なし

💀 独り言
  • 下腿浮腫の鑑別診断は日常臨床で頻出です.両側なら心不全・腎不全・肝硬変・ネフローゼ・低栄養状態など,片側なら深部静脈血栓症・蜂窩織炎・骨盤内腫瘍などでしょうか.本例は意外なところに答えがありました.今後は両側鼠径にリンパ節の累々とした腫脹がないかも見るようにします.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎達也)

2023-08-31

バンザイはダメでした 😓

慢性左心不全の増悪が疑われる症例

🐥 解説
  • 座位で頸部に内頸静脈の2峰性陥凹(中心静脈圧の高度上昇)
  • 吸気で内頸静脈の陥凹は隆起(ランチシ徴候)に変化(矢印)
  • 両側の上肢を挙上するとシャツの襟が頸部を隠してしまった
  • 慌てて襟元を覗いてみたがやはり頸静脈の拍動は確認できず

🐤 コメント
  • 上肢挙上は吸気よりも強い負荷になることが少なくありません.吸気負荷は前負荷の増大が中心ですが,上肢挙上負荷は上肢の静脈血液の還流(前負荷増大)に加え,挙上という仕事(心拍数増加を含む),呼気時間の延長(胸腔内圧上昇)などが加わるためと思われます(過去の投稿).
  • 本例では吸気負荷で陽性波(巨大v波/cv merger)が出現したため,過剰負荷にならないか少しヒヤヒヤしながら上肢挙上を追加しました.しかし両手をバンザイしてもらったら服がせり上がって頸静脈が見えなくなりました.急いで服をずらしましたが頸静脈の拍動は確認できませんでした.
  • 単なる視界不良でなく,ペンバートン徴候(Pemberton's sign)と同様の機序が働いているのかもしれません.拡大した両側の頸静脈が万歳ポーズで圧迫された結果,頭部からの静脈還流が減少しそうです.顔面うっ血が生じないのは甲状腺腫大や縦隔腫瘍と異なり完全閉塞にならないため?

松下記念病院 川崎達也)

2023-02-13

カルチノイド心疾患 Carcinoid Heart Disease

👽 カルチノイド症候群(Carcinoid syndrome)
  • 概念 カルチノイド腫瘍(神経内分泌腫瘍)から活性物質の放出(同腫瘍の約10%)
  • 機序 活性アミン(セロトニン・ヒスタミン),タキキニン,プロスタグランジンなど
  • 部位 消化管に発生することが多く,次いで肺や気管支,稀に卵巣や胸腺にも発生
  • 疫学 世界的なカルチノイド年齢調整発生率は10万人当たり約2人(小児期は極稀)
  • 症状 下痢や皮膚潮紅,喘鳴,ペラグラ症状(rough scaly skin,舌炎,口角炎)など
  • 心臓 稀に右心系の心内膜や弁の線維化で三尖弁逆流や狭窄など(カルチノイド心疾患) 
  • 診断 セロトニンの代謝産物である尿中5-HIAAの測定(24時間蓄尿)+各種画像検査
  • 治療 大原則はリンパ節郭清を伴う外科手術による根治的切除(有効な化学療法なし)

カルチノイド心疾患の72歳男性
顔面の潮紅+(心不全による)チアノーゼ+毛細血管拡張

松下記念病院 川崎達也)

2023-02-02

ミノサイクリンによる色素沈着

👤 Minocycline-induced hyperpigmentation
  • 頻度:有病率は2.4〜41%で,治療期間や累積投与量と相関(顔面を除く)
  • 病理:基底ケラチノサイトでのメラニンの増加および真皮メラノファージ
  • 鑑別:アジソン病,甲状腺機能亢進,ヘモクロマトーシス,悪性腫瘍など
  • 治療:ミノサイクリン中止,日光への露出回避,色素特異的レーザーなど


繰り返す創部感染症でミノサイクリン200 mg/日を6年服用していた症例

👹 追加情報
  •  薬剤性色素沈着にはミノサイクリン以外にも,アミオダロンやブレオマイシン,プロスタグランジン,経口避妊薬,フェノチアジン,抗マラリア薬などが知られています.
  • 特にアミオダロンによる色素沈着は”Blue man”として知られています(下図).ちなみに”Red man”といえばバンコマイシンによる過敏反応のレッドマン症候群です.


松下記念病院 川崎達也)

2022-11-03

論文 🏆 if you miss the goiter…😱

  • 当院の初期研修医 熊田先生が循環器内科で経験した症例が出版されました
  • 労作時の息切れで受診 ➜ 心エコー図で肺高血圧(推定収縮期圧50 mmHg)
  • 頻脈はないが甲状腺の軽度びまん性腫脹あり ➜ 最終的にバセドウ病と診断
  • 心肺疾患や血栓症なし ➜ 肺高血圧症のダナポイント分類第1群または第5群
  • 本例は甲状腺治療のみで肺動脈収縮期圧は経時的に低下して最終的に正常化


😀 臨床現場
  • 肺高血圧のガイドラインには第5群として①血液疾患(慢性溶血性貧血,骨髄増殖性疾患,脾摘出),②全身性疾患(サルコイドーシス,肺組織球増殖症,リンパ脈管筋腫症),③代謝性疾患(糖原病,ゴーシェ病,甲状腺疾患),④その他(腫瘍塞栓,線維性縦隔炎,慢性腎不全,区域性肺高血圧)の4つが記載されています.
  • 本例では「甲状腺疾患をたまたま合併した第1群肺高血圧」(共に若い女性に多い)と「甲状腺疾患が誘発した第5群肺高血圧」が考えられました.甲状腺の治療と並行して,肺高血圧の特異的薬物治療(プロスタサイクリン経路・エンドセリン受容体拮抗薬・一酸化窒素経路)の導入の要否を判断する必要があります.
  • 本例では(患者さんと協議の上)甲状腺治療のみを開始しました.肺高血圧が特異的薬物治療なく消失したため,「甲状腺疾患が誘発した第5群肺高血圧」と考えられました.肺高血圧と甲状腺疾患が合併した場合,17症例中16例で甲状腺治療のみで肺高血圧が正常化したという(すごい😮)報告があります(Angiology 2006;57:600-6).

👿「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2022-10-13

頸静脈と頸動脈の組み合わせ

消化器系の悪性腫瘍の術後症例

💛 解説
  • 座位の頸部に周期的な拍動(動画の矢印) ➜ 触診で動脈性=コリガン
  • 内頸静脈の拍動なし ➜ 中心静脈圧の高度(目安 >15cm水柱)上昇なし
  • しかし吸気時や深吸気保持中には鎖骨上窩に陥凹性拍動(動画中の*)
  • 大動脈弁逆流があり,なんとか代償されている慢性心不全状態と予想
  • 実際に心エコー図で中等度の大動脈弁逆流症があり,BNP値は200台

💜 ひとり言
  • 頸部の動脈と静脈の組み合わせから,基礎心疾患とその重症度を判定できることがあります.つまり頸動脈拍動から大動脈弁疾患(逆流あるいは狭窄)や閉塞性肥大型心筋症を疑い,頸静脈拍動から心不全の有無や重症度を判定することができます.
  • この動脈と静脈の共演は今まで何度か報告してきました(自験例1自験例2自験例3).しかし目立つ方に気を取られ両者を同時に認識することは稀でしたが(個人的にはスマホの動画を見直し後で気づく),今回は診察室で診断できました 😀

松下記念病院 川崎達也)

2022-05-26

🎯 今週の一枚

労作時の胸痛で来院した症例



松下記念病院 川崎達也)

2022-05-16

🏆 論文

  • 当院の初期研修医である土橋先生が循環器内科で経験した症例が出版されました
  • 労作時の胸痛で紹介受診して身体所見のばち指から肺癌合併の診断に至りました
  • 肺癌 ➜ 狭心症の順に治療を行い,バチ指も経時的に改善しています(下の写真)


😀 追加コメント
  • 本例は右肺尖部の肺癌で,パンコースト腫瘍として胸痛を生じることがあります(パンコースト症候群).しかし本例の胸痛は典型的な労作性でした.実際に肺癌切除後も胸痛は続き,冠動脈の治療後に消失しました.
  • バチ指(Clubbed finger)を生じる機序として,「肺内シャントを通過した凝集血小板や巨核球から放出される血小板由来増殖因子で爪床下の軟部組織が増殖する」ことが推測されています(J Pathol 2004;203:721-8
  • 本例のばち指改善は肺癌の術後から始まりました.しかし冠動脈治療に関連して開始された抗血小板による効果もあったのかもしれません.両者の関係に言及した論文 ➜ J Am Acad Dermatol 2005;52:1020-8

🎉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2022-03-17

鎖骨上のピコピコ

CTで悪性腫瘍の右心系転移が疑われた症例

🐳 巨大a波(Prominent or Giant a wave)
  • 右鎖骨の頭側(鎖骨上窩)に周期的に隆起する拍動を視認(前半矢印)
  • 手指で容易に圧迫され,時相は動脈拍動やⅠ音の直前 ➜ 頸静脈のa波
  • 深吸気時に右内頸静脈の拍動が出現(クスマウル徴候陽性:後半矢印)     
  • 心エコー図で三尖弁周囲に腫瘍を認め,三尖弁狭窄の病態が疑われた

💣 おまけ
  • ご本人に自覚症状はなく,心音にも特記すべき異常はありませんでした.また座位で頸静脈は視認できず,クスマウル徴候も陰性でした.
  • 同様のa波は不整脈(完全房室ブロック心室期外収縮)で有名です.この場合はCannon a waveと呼ばれます(キャノン音と要区別
  • 日常臨床では頸静脈の大きなa波は肥大型心筋症で視認することが多く,同疾患のフィジカル診断にも有用です(典型例
  • a波は本例のような三尖弁狭窄症など右房圧が上昇した病態で目立ちますが,日常臨床でお目にかかることは稀(他の自験例:心房中隔欠損
  • 頸部の陽性波と言えば一発診断可能なコリガン脈ランチシ徴候(巨大v波)ですが,個人的には地味なa波が大好きです 😊

松下記念病院 川崎達也)

2022-01-03

動脈並みの静脈拍動?

肺性心による右心不全症例(在宅酸素中)

🐼 解説
  • 座位で右側頸部に腫瘤あり(精査は未ですが長年変化がないようです)
  • 腫瘍が周期性に拍動している ➜ 頸動脈の拍動を反映した腫瘍の拍動?
  • よく見ると腫瘍上部の皮膚面が周期的に陥凹 ➜ 拍動は動脈でなく静脈
  • 吸気保持で頸静脈に怒張の出現はない ➜ 狭義のクスマウル徴候は陰性
  • 左側にも腫瘍あり,こちらは拍動していない(頸静脈陥凹は視認可能)
  • 右側と異なり,左側の頸静脈拍動は吸気時に少し不明瞭になっている

🐶 独り言
  • 右頸部を見て腫瘍があったので頸静脈評価を早々に諦めました.左側で評価しようと思い反対を見たら反対にも腫瘍があってビックリしました.しかしよく見ると右側で腫瘍が拍動していたため,見直して内頸静脈の陥凹に気がついた次第です.
  • 内頸静脈の拍動が腫瘍を振動させていることにチョット驚きました.動脈拍動に比べて静脈拍動は弱々しいと勝手に思っていたことを反省 😑 もっとも左側の腫瘍は拍動していませんでした.おそらく腫瘍が後頭部よりに位置していたためと思います.
  • 右側に比べて左側で,吸気時に内頸静脈の拍動が少し分かりにくくなりました.正確な機序は不明ですが,吸気保持で肺が過膨張して上大静脈と左内頸静脈の間に存在する2つの屈曲(解剖図はココ)が強くなったためと(勝手に)解釈しています.

松下記念病院 川崎達也)

2021-09-13

へグリン症候群 Hegglin syndrome

  • QT延長とQ-IIA(Ⅱ音の大動脈成分)短縮(その差≧40 msec:下図)を示す病態(≒II音の早期出現)
  • 原発性の心筋エネルギー代謝障害に由来する心不全でHegglinらが提唱した観念(Klin Wschr 1937;16:1146-7)
  • 同病態では心筋線維の"Adynamie"のために心室の力学的・電気的収縮の終了を待たずに半月弁が閉鎖する
  • 様々な疾病(特に末期)で出現:悪性腫瘍,肝疾患,代謝性疾患,腎不全,重症の薬物中毒,下痢など


😲 独り言
  • 時代を反映した病態で,現在ではその診断意義は乏しいように思われます.しかし心音図や心機図が大活躍した時代で,心臓の代謝まで評価しようという試みにはとても驚かされます.心音の奥深さを再認識しました.

松下記念病院 川崎達也)

2021-04-19

👻 循環器内科は胸痛外来ですが…

胸痛で循環器内科を紹介受診した症例


松下記念病院 川崎達也)

2021-04-01

🔔 ベルは押してみよう!

息切れで救急外来を訪れた症例

🐣 解説
  • 聴診器の膜部はしっかり押し当て使う ➜ 過剰心音はなし
  • 聴診器のベルは軽く乗せる感じで使う ➜ Ⅱ音後に過剰音
  • ベルを押し込むと膜部と同じく低音消失 ➜ 過剰音が消失
  • 本例の過剰な心音は心尖部の低調音 ➜ Ⅲ音と考えられる
  • 本例の最終診断は拡張型心筋症による非代償性左心不全

🐥 復習
  • Ⅱ音直後の過剰心音にはⅢ音の他に,Ⅱ音の分裂解放音心膜ノック音腫瘍プロップなどがあります.
  • いずれの音もⅢ音より早く出現しますが,この出現タイミングだけで鑑別するのことは難しいと思います.
  • よって音調の意識が大切です.Ⅲ音以外は中調〜高調成分も含むため,聴診器の膜部でも聴取が可能です.
  • ベルで聴取した過剰心音が,ベルをグッと押し込むことで消失したら低調音(つまりⅢ音)と考えられます.
🉐 聴診器のおさらい ➜ コチラ
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-10-22

大きなギャップ

増悪する左下腿の浮腫で来院した症例




フィジカル 広場 心臓 physical exam examination 身体所見
松下記念病院 川崎達也)

2020-06-15

下腿浮腫 Leg edema

下腿浮腫で循環器内科を受診した症例


🔎 解説
  • 圧痕性浮腫(pitting edema)である ➜ リンパ浮腫や甲状腺機能低下症,蜂窩織炎,血腫は否定的
  • 脛骨前面の圧痕の回復が40秒未満(fast edema) ➜ 低アルブミン血症(概ね2.5g/dL以下)を示唆?
  • 本例は最終的にIgG4関連疾患による浮腫が疑われた(本例の血清アルブミン値は3.1g/dLであった)

🏈 コメント
  • fast edemaの原因は多彩(肝硬変・低栄養・ネフローゼ症候群・蛋白漏出性胃腸症・悪性腫瘍など)であるが,病態はほぼ低アルブミン血症とされている.しかし本例のような反例が日常臨床では少なくない.
  • 圧痕性浮腫の正式な判定方法:脛骨前面を5~10秒間,約5mmの深さで圧迫し,回復時間に40秒未満ならfast edema,40秒以上ならslow edema (日内会誌 2018;107:195-201)
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)