古典的クスマウル徴候

慢性左心不全の1例に座位で深呼吸負荷

😎 所見の解説

• 通常呼吸時には鎖骨上に内頸・外頸静脈を視認しない
• 深吸気後には外頸静脈が怒張（クスマウル徴候陽性）
• 前負荷増加で中心静脈圧が容易に上昇することを示唆
• 本例は労作時の息切れもあり，BNP値も300台と上昇
• 重症化する前に利尿薬の追加など何らかの対応が必要

😈 クスマウル徴候

1. 古典的な（狭義の）クスマウル徴候陽性は吸気時に頸静脈が怒張する病態．この場合の頸静脈は外頸静脈を意味する
2. 一方，深吸気負荷に内頸静脈の拍動が出現することもあるが，これも広義のクスマウル徴候陽性と考えていい（実例）．
3. 内頸静脈は吸気で怒張（つまり拍動なくパンパンに隆起）することはまずない．実際に超重症の心不全でも内頸静脈拍動は残る（自験例1／自験例2）
4. 両者の違いは解剖学的な差に起因？（外頸静脈は逆流防止の静脈弁があるが，内頸静脈にある静脈弁は有効には働いていない）
5. クスマウル徴候陽性は，右心不全や収縮性心膜炎，重症左心不全，肺性心で出現すると教科書には記載されている．
6. しかし本例のように重症ではない左心不全でもしばしば認める．左室肥大があると出現しやすいと思う（極端な例が肥大型心筋症）

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（松下記念病院 川崎達也）