このブログを検索

2022-11-28

🏆 論文:ちょっとフィジカルとは違いますが…

🎉 当院の循環器内科で経験した症例が NEJM に掲載 🎉

  • ウェレンス症候群の1例ですがポイントは心カテ待機中にST上昇
  • 緊急カテーテル検査では前下行枝近位部の完全閉塞でした(下図)
  • 最近では高度狭窄よりも血栓が関与した病態と考えられています

😀 追加コメント
  • 命名はオランダの循環器内科医 Wellens らの報告に由来します(Am Heart J 1982;103:730-6).よって英語表記はWellen's syndromeではなくてWellens' syndromeあるいはWellens syndromeが正しいと思われます.しかしWellen's syndromeの誤記も散見されます(一流誌の実例:Circulation 2019;140:1851-2).
  • 日本語の発音ではェレンスと呼ばれることが多いと思います.でもオランダ語ではヴェレンスと濁ることを友人から教えてもらいました(例:).それ以降,当院でも研修医に濁音のェレンス症候群と教えていました.しかしNEJMのAudio Summaryではェレンスと濁っていないことを同じ友人から教えてもらいました.よって最近は再度ェレンスと指導しています.
  • 本論文は今年の2月に投稿して4月に修正の返事がありました.たった150語なのに文言の修正を計3回,図の修正を計3回(解像度など)も指示されました.8月に採択の連絡があり9月に掲載です.当院の戦績(NEJMイメージ論文)は25戦して3勝22敗で採択率🏆12%です.大学病院や有名病院でないわりには善戦かも...😅

💁 論文の過去投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(投稿者 川崎)

2022-11-24

🎯 今週の一枚

倦怠感で来院した慢性心不全症例



松下記念病院 川崎達也)

2022-11-21

結膜環蒼白 👀 Conjunctival rim pallor

  • 貧血の有無は眼瞼結膜の蒼白で判断することが多いが,主観に大きく影響される.そこで推奨されるのが眼瞼結膜の手前(縁=rim)と奥を比較する客観的手法
  • 正常例では眼瞼結膜は手前(縁)は赤で,奥はやや薄い(下の図1).結膜環蒼白とは眼瞼結膜の手前(縁)と奥の色が同じ状態(下の図2)で,貧血の存在を示唆

(図1:正常例=結膜の手前が赤くて奥が薄い)

(図2:貧血例=結膜の手前と奥が同じ色調)

🉐 関連投稿(貧血編:松下ERランチ・カンファレンスに移動します)

※ 以前に松下ERランチカンファレンスに投稿した内容の更新版です 🎶

松下記念病院 川崎達也)

2022-11-17

耳:変幻自在

胸痛症例(仰臥位)


🚑 現場実況
  1. ERで看護師さんが心電図を記録中 ➜ 問診しながら素早く頸部と耳をチェック
  2. 頸静脈から中心静脈圧の上昇を示唆する所見なし ➜ 非代償性心不全は否定的
  3. 両側に耳垂皺を確認(念のため左側はマスクを外す) ➜ 虚血性心疾患の疑い
  4. 心電図はST上昇 ➜ 急性心筋梗塞と診断 ➜ 緊急カテーテルで閉塞部位を治療

😎 変幻自在
  • PCIが成功してカテ台の上にいる患者さんに説明時に耳をチラ見すると皺は消失
  • 「そんなアホな...」と思いマスクを外すと皺が出現(ただし左側のみで右側なし)
  • 耳垂皺は体位で変化するが(過去の投稿),暫く臥床で耳垂浮腫(特にマスク時)?

松下記念病院 川崎)

2022-11-14

😱 恐怖の上肢挙上負荷試験:頸静脈

慢性心不全 (HFpEF) の増悪が疑われる症例

👴 解説
  • 安静時には座位で外頸静脈を明瞭に視認可能(ただし上縁は拍動あり)
  • よく見ると内頸静脈の陥凹も確認できるため中心静脈圧はかなり上昇
  • 左上肢を肩上まで挙上 ➜ 外頸静脈の拍動消失+内頸静脈の陥凹出現
  • 左上肢を垂直に挙上 ➜ 呼吸困難感が出現(患者さんの荒い息切れ!

👵 ひとり言
  • 座位で内頸静脈の拍動が見えない時には吸気負荷を行いクスマウル徴候の有無を確認するようにしています.これは中等度までの中心静脈圧上昇を見逃さないためです.
  • 最近は左上肢の挙上負荷を併用しています(肩痛で無理なことも少なくありませんが).前負荷の増加程度は上肢挙上 ≒ 吸気負荷と思っていました(以前の投稿).
  • ただし本例では急に息遣いが荒くなり少し怖くなりました.上肢挙上負荷は,少なくとも座位で内・外頸静脈が全く視認できない症例に限定する方が安全かも...😑

松下記念病院 川崎達也)

2022-11-10

🎯 今週の一枚

端座位の慢性左心不全例(ステージD)




松下記念病院 川崎達也)

2022-11-07

あなたは猫派? 犬派?

  • 循環器内科医にはネコ派が多い気がします.飼い主が忙しくて散歩に連れて行かなくても文句を言わないから?
  • ネコの心音で興味深い論文が最近,2編出版されたのでまとめておきます.ネコを飼っておられる方は挑戦?

Ferasin L, et al. Prevalence and Clinical Significance of Heart Murmurs Detected on Cardiac Auscultation in 856 Cats. Vet Sci. 2022 Oct 13;9(10):564.

  • 結語 心雑音特性 (タイミング・音量・および最大強度のポイント) が潜在的に心疾患の存在を予測できる.
  • 個人的感想 仰せの通り 🙇 もっと精進せねば


Howell KL, et al. Prevalence of iatrogenic heart murmurs in a population of apparently healthy cats. J Small Anim Pract. 2022 Aug;63(8):597-602.

  • 結語 Iatrogenic heart murmurs(おそらく臨床的な意義のない雑音)は猫によくみられる所見であり,高齢のやせた猫で有病率が増加しいる.特に胸壁を少し押して発生する柔らかい収縮期の右心系雑音では医原性雑音を考慮
  • 個人的感想 聴診の一致率がすごい 😲 下図


松下記念病院 川崎)

2022-11-03

論文 🏆 if you miss the goiter…😱

  • 当院の初期研修医 熊田先生が循環器内科で経験した症例が出版されました
  • 労作時の息切れで受診 ➜ 心エコー図で肺高血圧(推定収縮期圧50 mmHg)
  • 頻脈はないが甲状腺の軽度びまん性腫脹あり ➜ 最終的にバセドウ病と診断
  • 心肺疾患や血栓症なし ➜ 肺高血圧症のダナポイント分類第1群または第5群
  • 本例は甲状腺治療のみで肺動脈収縮期圧は経時的に低下して最終的に正常化


😀 臨床現場
  • 肺高血圧のガイドラインには第5群として①血液疾患(慢性溶血性貧血,骨髄増殖性疾患,脾摘出),②全身性疾患(サルコイドーシス,肺組織球増殖症,リンパ脈管筋腫症),③代謝性疾患(糖原病,ゴーシェ病,甲状腺疾患),④その他(腫瘍塞栓,線維性縦隔炎,慢性腎不全,区域性肺高血圧)の4つが記載されています.
  • 本例では「甲状腺疾患をたまたま合併した第1群肺高血圧」(共に若い女性に多い)と「甲状腺疾患が誘発した第5群肺高血圧」が考えられました.甲状腺の治療と並行して,肺高血圧の特異的薬物治療(プロスタサイクリン経路・エンドセリン受容体拮抗薬・一酸化窒素経路)の導入の要否を判断する必要があります.
  • 本例では(患者さんと協議の上)甲状腺治療のみを開始しました.肺高血圧が特異的薬物治療なく消失したため,「甲状腺疾患が誘発した第5群肺高血圧」と考えられました.肺高血圧と甲状腺疾患が合併した場合,17症例中16例で甲状腺治療のみで肺高血圧が正常化したという(すごい😮)報告があります(Angiology 2006;57:600-6).

👿「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)