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2024-12-19

ブルブルブル

数日前から動悸が持続する症例

🐝 ハミングバード徴候
  • 吸気時に拍動があり?(呼気時なし)
  • 深吸気で内頚静脈の早い拍動が明瞭
  • 左上肢挙上で拍動明瞭化+上縁上昇
  • 最終診断は2:1伝導の心房頻拍(PAT)
  • 再発だったので後日アブレーション

 🐦 追加コメント
  • 本例は発症数日で来院されたため心不全には至っていませんでした.しかしこの状態が2週間ほど持続すると頻拍誘発性心筋症から心不全になります.その時には中心静脈圧が上昇するので安静時でもハミングバード徴候(フロッグ徴候の亜型)が明瞭に観察できると思います(自験例
  • 初期のハミングバード徴候(Hummingbird sign)を見逃さないためにも頻脈を呈する症例では負荷頚静脈評価が重要です.本例では左上肢挙上の方が,深吸気時より拍動が明瞭でした.もっとも負荷前でも吸気時には拍動が見えますが...(今回はすぐ気付きました 😤 プチ自慢)

松下記念病院 川崎達也)

2024-12-16

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


👻「フィジカル講習会」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2024-11-14

キャノンは見えずとも...

ふらつきを訴える症例

🚑 現場実況
  • 本例は前医の心電図を持参されていたため,診察時には3度房室ブロックが既に分かっていました.さっそく大砲A波(Cannon a wave)を確認しようとしましたが,予想に反してあまりはっきりしません.
  • そこで吸気負荷(前負荷増大)を行ってみました.すると頚部がみるみる膨らんできて(通常のクスマウル徴候よりもはるかに大)ちょっとびっくり 😧 患者さんも苦悶の表情だったので慌てて負荷を解除

 👽 つぶやき
  • 本例でキャノン波が不明瞭であった理由は不明ですが,やはり心房機能の低下でしょうか(特にブースター機能>リザーバー機能の障害?)
  • 完全房室ブロックになると,通常では聞こえないような小さいⅣ音が認識できることが少なくありません(Ⅰ音と分離するため:自験例).
  • しかし本例ではⅣ音は聴取されませんでした(心房の機能低下に合致).心房細動の既往はありませんが,将来発生する確率が高いかも...

松下記念病院 川崎達也)

2024-11-04

👴 歴史クイズ

CC BY 4.0



松下記念病院 川崎達也)

2024-10-24

頻脈は止めたいが...

動悸を訴える症例(モニター音に注目

😎 解説
  • 座位で鎖骨上に周期の短い陥凹(外頚静脈)
  • モニター音と拍動が一致(陥凹は多分 x谷
  • 吸気負荷で静脈膨隆(クスマウル徴候陽性)
  • 突然生じた動悸が約2週間持続していた様子
  • 本例の最終診断は頻脈の持続による心不全
😑 独り言
  • PSVTなど頻脈性不整脈を停止すること自体はそれほど難しいことはありません.しかし本例のように頻脈誘発性心筋症などから心不全に至った例には注意が必要です.徐脈化に伴い血行動態が破綻することがあります(ショックに陥った自験例あり).
  • よって本例のように中心静脈圧の上昇が疑われる症例(座位で頚静脈視認あるいはクスマウル徴候陽性など)では不整脈の停止よりも心不全加療が優先されると思われます.もちろん類似した頻脈の心房粗動などでは左房血栓の有無の検索も重要です.
  • 頚静脈拍動から各種不整脈の診断は可能です(a波=P波,x谷=収縮期など:過去の報告).ただし頻脈時にはフロック・サインを除き不整脈の鑑別は容易ではありません.むしろ中心静脈圧上昇の有無に注視してもいいように個人的には思っています 😐

松下記念病院 川崎達也)

2024-08-01

S字状+α

息切れと動悸を自覚する症例

😋 反跳脈(Bounding pulse)+心室四段脈(Ventricular quadrigeminy)
  1. 上腕にS字状の周期的な隆起(矢印)
  2. 触診で動脈性拍動であることを確認
  3. 3回拍動+期外収縮+代償性休止期
  4. 心電図では予想通りPVC(四段脈)
  5. エコーでは重症の大動脈弁逆流 AR

💁 本例の経過
  • 本例は数年前に検診で心雑音を指摘され医療機関を初めて受診されました.この時は往復雑音で息切れなどの自覚症状は全くなかったようです.
  • 心エコー図で重症の大動脈弁逆流(おそらく右冠尖の屈曲 bending)を指摘されました.上記の反跳脈はその数年前から自覚されていたようです.
  • 初診から5年ほどして息切れと動悸感が出現し,心電図でPVC頻発+BNP値上昇(それまでは正常範囲内).ご本人も弁置換術に同意されました.

松下記念病院 川崎)

2024-06-27

サンプル心音

💓 つぶやき
  • 先日,TV業界の方から心音のデータ提供の依頼がありました(TBSの健康カプセル!ゲンキの時間 😄).
  • サンプルとして,正常・期外収縮・心房細動の3パターンの心音(心電図と心音図付き)を用意しました.
  • 何か役に立つかもしれないのでネットに置いておきます.ご自由にお使いください(商業目的を除き版権放棄)

正常(Normal)

期外収縮(PVC)

心房細動(AF)

👻 心音の高みを目指す方へ
  • 正常サンプル ➜ Ⅰ音よりⅡ音の方が大きいので心基部での記録
  • 期外収縮サンプル ➜ Ⅰ音がⅡ音より大きく心尖部での記録.期外収縮および代償性休止期後のⅠ音の音量変化に注目
  • 心房細動例 ➜ 先行するRR間隔によってⅠ音の変化に注目(心音図).ただしこの程度のRR間隔の揺らぎでは音の変化として認識することは困難

松下記念病院 川崎達也)

2024-04-04

今週の一枚 🎯

倦怠感があるため紹介された超高齢者


松下記念病院 川崎達也)

2024-03-04

🔍 最新論文:流し読み

📍 Cannon A wave validation as a diagnostic tool in paroxysmal supraventricular tachycardias



  • 背景 房室結節回帰性頻拍(AVNRT)のフロッグ徴候(キャノン A波)は伝統的に知られているが体系的評価はされていない
  • 対象 短いVA間隔(AVNRT+中隔副経路AVRT)と長いVA間隔(非定型AVNRT+左自由壁副経路AVRT)に分類した100名
  • 結果 キャノンA波はAVNRTと関連しないが(p = 0.058),短いVA間隔と関連(p<0.001).CVPはVA間隔と反比例(p<0.001)
  • 結論 キャノンA波の存在は短いVA間隔の頻脈という最終診断と関連する

CVPとVA間隔は逆相関
CE-542-03(同グループの発表抄録)

👽 追加コメント
  • フロッグ徴候の機序(房室弁の閉鎖時に右房収縮)を考えれば本研究の結果は理にかなっています.きっと症例数が増えればフロッグサインとAVNRTは有意に関連してくると推測します(本研究では100症例の検討でp = 0.058).
  • 中心静脈圧の上昇は頻脈期間や基礎心疾患とも関連しそうです.心不全を伴えば中心静脈圧が上昇し頸静脈拍動がより明瞭になるからです(自験例).このカエルサインハミングバード徴候(当院提唱)の普及に期待しています.

松下記念病院 川崎達也)

2024-02-01

ハミングバード徴候 Hummingbird sign

ひと月前に突然出現した動悸とその後の息切れ(座位)

👶 解説
  • よく見ると右側の頸部が細かく振動している
  • 深い吸気の保持中に外頸静脈が怒張(矢頭)
  • 病歴+フィジカル診断は頻拍誘発の心不全
  • 最終診断は2:1伝導のAT+頻拍誘発性心筋症

🐝 ハミングバード徴候(Hummingbird sign)
  • 同徴候はハチドリの激しい羽ばたきを想定して命名しました(当科論文).房室結節回帰性頻拍(AVNRT)によるフロッグサイン(frog sign)のおよそ2倍の周期で振動します.
  • 頸部の拍動では動脈性か静脈性かの鑑別が必要ですが,このような早い拍動(>200 bpm)なら静脈性と考えられます.安静時に生じる超頻脈では動脈圧が低下するためです.
  • 静脈性拍動には隆起と陥凹の二通りありますが,本例のように周期が極めて短い場合は隆起が多いと思います.x谷とy谷の2峰性陥凹は早ても100 bpm程度でしょうか(自験例).

松下記念病院 川崎達也)

2024-01-18

🏆 論文:ハミングバード徴候

  • 当院で実習された医学部6年生の方が経験した症例が出版 🎉
  • 主訴は1月前から持続する動悸感と継時的に増悪する息切れ
  • 心拍数は123 bpmで頸静脈から判定した中心静脈圧は上昇
  • ユニークなのは頸静脈拍動が肘動脈拍動の倍程あり(動画
  • 脈波図はキャノンa波(下図C矢頭)と通常a波(*)の疑い
  • 最終的な診断は2:1伝導の心房頻拍による頻脈性心不全です


🐝 ハチドリ徴候/Hummingbird sign
  • 本例の頸静脈所見のようにすごい速さの振動を,当院ではハミングバード・サインと呼んでいました(過去の投稿).このフィジカル所見にはまだ名前はない様なので,本論文のタイトルを”Hummingbird-like cannon a-waves”としました.フロッグ・サインの亜型として普及するといいのですが...
  • 身体所見に興味を有する医師にとって,新たなフィジカルを発見し報告することは何事にも勝る喜びだと思います(命名できればなおのこと).当院が関与できた新報告には"Atrial cannon sound"や"Diastolic paradoxical jet flow murmur"などがあります.もっともこの命名が普及しているとは思えませんが...

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2023-09-04

電紋 Lichtenberg figure

  • 落雷直撃で体表を這う沿面放電による皮膚の樹枝状所見(下図)
  • 英名は分岐放電を研究した独の物理学者 リヒテンベルク に由来
  • 機序は体表面の放電で血管透過性が亢進して血液の血管外漏出
  • 落雷は雷雲と地表の間に2百万V/m以上の電圧差の形成時に発生
  • 本体は数ns以内に最高値3万Aに達して,約40nで半減する衝撃波
  • 世界中で100万人あたり0.2〜1.7人/年間の頻度で雷撃死が発生
  • 発生頻度は女性よりも男性が5倍ほど多く,好発年齢は10〜29歳
  • 雷撃症の瞳孔散大や対光反射消失は予後と無関係で蘇生が必要
  • 雷撃症の死亡率は10〜30%で生存者でも約70%に重大な合併症


左即腹部の電紋(リヒテンベルク図形)

雷撃症による皮膚病変のイメージ図
線状熱傷(左):点状熱傷(中, 矢印):樹枝状電紋(右)

💔 心臓への影響
  • 脱分極による心停止,不整脈,心筋挫傷,心筋梗塞,心膜炎,たこつぼ心筋症など
  • 原因は冠動脈攣縮,血中カテコラミン上昇,直接温熱障害,不整脈に伴う虚血など
  • 不整脈では心房細動や心室性不整脈が出現しやすいが通常24時間以内に正常化する


松下記念病院 川崎達也)

2023-08-17

フロッグサイン

数日前から動悸が続く症例(体位は座位)

🐸 解説
  • 座位で頸静脈は視認しないが吸気後には出現(矢印)
  • 拍動はとても早い(まるでハチドリの羽ばたきの様)
  • 最終診断は心房頻拍(2:1伝導)による心不全の増悪
  • DCを予定したがジギタリス点滴で洞調律に回復した

🐝 独り言
  • 頸静脈の早い拍動としては,房室結節回帰性頻拍(AVNRT)のフロッグサイン(frog sign)が有名です.フロッグサインの拍動は140回/分前後の周期ですが,本例は240回/分程度で一見静止している様にみえます(勝手に命名:ハチドリ徴候/Hummingbird sign).
  • このハチドリサインは頻脈誘発性の非代償性心不全になれば,吸気負荷を行わなくても観察できる様になります(自験例).一方,フロッグサインは心不全を伴わなくても観察できることが多いと思います.心拍数がそれほど早くないので拍動自体が大きくなるためでしょうか...
  • 進行性核上性麻痺(PSP)では中脳被蓋が萎縮するため,そのMRI像をハミングバード徴候と言うそうです(下図).頸静脈Hummingbird signの命名は,あまりにも素早い翼の羽ばたき(ホバリング中は約3,000回/分)からなので,厳密には被ってはいないと思いますが...😅

松下記念病院 川崎達也)

2023-06-29

フロッグサイン

突然生じた動悸でERを受診した症例(仰臥位)

🚑 現場実況
  • 血圧低下はないが頻脈(動画中のモニター音に注目)
  • 内頸静脈は視認できないが外頸静脈(陥凹)は明瞭
  • 拍動パターン解析は困難であるが静脈圧上昇はなし
  • 頸動脈の拍動(もちろん隆起)も僅かに観察できる
  • 吸気負荷で外頸静脈は怒張(隆起して拍動が消失)
  • PSVTと診断:修正バルサルバ法は無効でATPで停止

🐸 追加コメント
  • 本例はおそらく房室回帰性頻拍(AVRT/WPW症候群)と考えられました.外頸静脈の拍動であるため,単なる洞頻脈でも同様の所見になると思われます.房室結節回帰性頻拍(AVNRT)で有名なフロッグサイン(frog sign)とは少し異なる身体所見です(右房と右室がほぼ同時に収縮するため内頸静脈に出現).ただしこのカエル徴候はAVRTや心房頻拍(AT)でも出現することがあるので(自験例),AVNRTとイコール関係ではありませんが...

松下記念病院 川崎達也)

2023-05-15

カエル徴候 🐸 Frog sign

😊 興味深い報告J Innov Card Rhythm Manag 2022;13:5184-7
  • 房室結節回帰性頻拍(AVNRT)でアブレーションを予定した78歳の男性.発作中にカエル徴候(Frog sign)が明瞭だったため,電気生理学的検査中に右房圧も同時測定.

上室性頻脈発作中の12誘導心電図

発作開始(VA = 0 ms)直後から右房圧に大砲波(Cannon a waves)が出現

発作終了後は右房圧の大砲波(Cannon a waves)が消失

💁 カエル徴候(Frog sign)の過去投稿は コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2023-04-06

巨大と言われる小波

検診の心電図で異常を指摘された症例  問題  心電図異常とは?



松下記念病院 川崎達也)

2022-05-05

もう季節は春ですが…

倦怠感でERに搬入/座位で内頸静脈拍動+PaO2 150mmHg(酸素下)

問題 急性左心不全の重症度分類 ノリア・スティーブンソンで予想されるのは?





判定

🚑 現場実況
  • 酸素濃度は保持されているが爪床のチアノーゼあり ➜ 低心拍出量を反映
  • 実際に本例では手指冷感が著明で,末梢循環不全と診断(いわゆるcold)
  • 内頸静脈は座位陽性つまり中心静脈圧の著増が示唆される(いわゆるwet)
  • 以上よりNohria-Stevenson 分類のプロファイルCに分類(一番予後不良)
  • 本例は低左心機能例で electrical storm(incessant VT)に陥った状態
治療後に末梢循環は改善

💙 チアノーゼ
  • 低心拍出量による末梢循環不全のチアノーゼは見た目も冷たそう他の自験例).一方,末梢循環が保たれた心不全増悪による低酸素血症なら冷感なし(自験例
  • 末梢チアノーゼは先天性心疾患でも出現し,この場合はばち指を伴うことが多い(自験例).逆にチアノーゼを伴わないバチ指なら肺癌など肺疾患を疑う(自験例
🉐 関連投稿 ➜ 末梢(※PC版なら画面右にあるラベル一覧からも選択可能です)

松下記念病院 川崎達也)

2022-04-25

心尖拍動:仰臥位 vs 左半側臥位 vs 座位

突然の動悸で来院した症例

😀 解説
  • 仰臥位では心尖拍動を認めないが,左半側臥位では視認可能(一つ目の矢印)
  • 拍動が不規則で心房細動の疑い(左半側臥位では心拡大の有無の判定は困難)
  • 座位でも心尖拍動は明瞭(二つ目の矢印)で,心拡大なしと判断(乳輪内側)
  • 頻脈であり抬起性か否かの視覚的判断は難しいが,触診ではチカラ強い隆起
  • 最終診断は心尖部肥大型心筋症例に合併した発作性の頻脈性心房細動でした

😎 独り言
  • 心尖拍動の評価は伝統的に仰臥位で行われますが,検出率が低いため左半側臥位を併用することが常です(過去の投稿).しかし臨床現場では座位で心尖拍動を評価することが少なくありません(過去の投稿例).
  • 座位での評価は何と言っても簡便で,起座呼吸を呈している症例などにも適応できます.座位での頸静脈評価(簡易定性法)が普及してきたように,座位での心尖拍動評価がもっと普及することを期待しています.


松下記念病院 川崎達也)

2022-03-14

自覚症状と身体所見の乖離:パート2

慢性左心不全で加療中の症例が息切れで来院



松下記念病院 川崎達也)

2021-10-28

😤 緊急以外は病歴と身体所見で!

当院の検診センターから心電図異常で当日紹介(座位の頸部所見)



松下記念病院 川崎達也)