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2026-08-27

嚥下負荷:新たな心不全評価法

心不全の悪化から改善中の症例(座位)

🔎 解説
  • 安静座位では内頚静脈の拍動は不明瞭
  • 偶然、患者さんが自発的に唾液を嚥下
  • 直後に内頚静脈の拍動が出現(矢頭)
  • その隆起は暫くすると見えなくなった

😋 独り言
  • 嚥下はとても複雑な生理現象で、胸腔内圧は相(口腔期・咽頭期・食道期)によって異なる変動を示します。ただし胸腔内圧は概ね陰圧になるため、静脈灌流が増加して中心静脈圧(あるいは右房圧)が上昇するようです。
  • もっとも胸腔内圧の陰圧程度は、吸気と比較すると嚥下では少ないようです(右下の図Cのグラフを参照)。吸気などの指示が入らない症例では、上肢挙上前屈に加えて、嚥下負荷も心不全評価に有用…世界初の報告?

松下記念病院 川崎達也)

2026-07-30

時には外頚静脈も活用

体重が少し増加した心不全例(座位)

😐 解説
  • 外頚静脈の明瞭な上下運動あり(矢頭)
  • 吸気保持で拍動は消失し膨隆(=怒張)
  • 当日のBNPは前回の700から1300に増加
  • 本症例はDCMで心不全の悪化と診断した
  • 利尿薬を追加して早めに再診を予定した

😶 追加コメント
  • 心不全の評価で用いる頚静脈は、外頚静脈ではなくて、内頚静脈です(もちろん右側)。これは解剖学的な理由です(外頚静脈は右房と直線的関係でなく、有効な逆流防止弁があり、胸鎖乳突筋の緊張の影響を受ける)。
  • ただし本例のように心周期に伴う拍動が明瞭な場合は、中心静脈圧の推定(心不全判定)に用いてもOKです。あるいは呼吸変動(自発呼吸に伴う変動あるいは深吸気負荷に伴う変化)がある場合も、判定可能と思われます。
  • 本例では外頚静脈に目が行きますが、よく見ると内頚静脈の拍動も十分に視認できます。通常呼吸時には鎖骨上窩で陥凹があり、吸気負荷後は頚部の中央(外頚静脈を含む)が面として周期的に陥凹しています。

松下記念病院 川崎)

2026-07-23

奇脈(Pulsus Paradoxus)の生理学

📧 N Engl J Med 2026;394:2487 に掲載されたレターより
  • 奇脈は吸気時に収縮期血圧が10mmHgを超えて低下する現象と定義され、しばしば重篤な疾患を疑う手がかりである。収縮性心膜炎心タンポナーデといった心疾患との関連でよく知られているが、喘息やCOPDなどの肺疾患でも見られる。
  • その機序として、吸気時の全身静脈還流増加、肺血管系への血液プーリング、心室間相互依存性、胸腔内圧の変動の誇張など、複数の要因が示唆されている。なおこの現象は奇脈という名称にもかかわらず、正常な生理反応の誇張に過ぎない
  • 奇脈は、他に異常のない肥満患者でもよく見られる所見である。これは腹囲増大が胸壁・横隔膜を圧迫し、呼吸仕事量を増加させる効果によるものと考えられている。従来からストロー呼吸(気道閉塞の模擬)を用いて、教育されてきた。
  • しかし呼吸速度を遅くするだけで奇脈は有意に増大する。特に注目すべき点として、10秒/呼吸という遅い呼吸だけで、ストローなしでも血圧低下が20mmHgを超えた(下図)。再現性の高いこのプロトコルは教育的に有用である。
  • 肥満や心肺疾患のない健常者でも、遅い呼吸だけで容易に10mmHgを超える奇脈が生じうるということは、呼吸速度の変化が、重篤な疾患を見分けるトリアージツールとしての奇脈の臨床的有用性に影響しうる可能性を示唆している。

- 奇脈に対する呼吸の影響 -
@NEJM

松下記念病院 川崎達也)

2026-06-25

安静陽性なら負荷は必須ならず

先天性心疾患術後例の息切れ

🔒 解説
  • 胸部正中に手術瘢痕(問診でファロー四徴症と判明)
  • 座位で内頚静脈の陥凹(矢頭)→ 非代償性心不全
  • 吸気負荷で鎖骨上窩の内頚静脈拍動は一見、不明瞭
  • しかしよく見ると頚部中央に拍動が出現(矢印群)
  • 下腿浮腫はなく、心音は汎収縮期逆流性雑音+Ⅲ音
  • 最終診断は亜急性の僧帽弁逆流(腱索断裂の疑い)

🔓 独り言
  • 安静座位で頚部に視認する内頚静脈の拍動は高度の中心静脈圧の上昇を示唆します。この代償が破綻した状態が、吸気で改善することは(経験的にも)ないと考えます。
  • しかし本例のように、吸気で拍動が不明瞭になる症例を稀ながら経験します。その多くは頚部の筋肉(特に胸鎖乳突筋)の緊張に伴う静脈拍動の不明瞭化と考えます。
  • ご存じのように下腿浮腫は心不全で出現する身体所見の一つですが、特異性はありません。また本例のように比較的急な経過で増悪した心不全では、下腿浮腫は稀です。

松下記念病院 川崎達也)

2026-05-21

バルサルバ負荷(⽇本⼼エコー図学会)

  • バルサルバ負荷はシンプルですが実に奥が深い手技です(下の表).日常臨床でルーチンに行っていますが,その方法は必ずしも統一されていません(多分)
  • 今回,⼀般社団法⼈ ⽇本⼼エコー図学会から負荷⼼エコー図検査実施のための⼿引き「バルサルバ負荷⼼エコー図検査」が発⾏されました(2026年3⽉13日)
  • 詳細は原本参照ですが,簡単には「バルサルバ負荷を行いながら血流速波形を観察 → いきみを開始した第Ⅱ相の状態で10~12秒間ほどで評価」(下の図3)


💁 バルサルバ負荷に関する過去投稿は コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2026-03-16

蹲踞負荷は古典ではない?

  • 最近,気になる論文を眼にしたので共有します.Javadi N, Galazka P, Peters M, Tajik AJ. Squat in Obstructive Hypertrophic Cardiomyopathy. JACC Case Rep. 2026 Feb 12:106920 (Epub ahead of print)
  • 古典的な内容の視覚化だね」と読んでいると "This is to our knowledge the first documentation of confirmation of the hemodynamic changes associated with prompt squat." と記載がありました😮
  • Corresponding authorは,なんとメイヨー・クリニックに長年おられたDr. A. Jamil Tajik…タジク先生がそうおっしゃるならそうかもしれませんが…本ブログにも蹲踞負荷はしばしば登場(ココ

図1 スクワット動作によるLVOT勾配の変化を示す心エコー図
閉塞性肥大型心筋症の(A)50歳男性と(B)33歳女性の左室流出路における連続波ドップラー心エコー図。1)安静時、2)バルサルバ法実施中、3)立位時、4)スクワット時、5)スクワットから立位への変化を示す。安静時から立位にかけての勾配増強とスクワット時の消失が示され、閉塞性肥大型心筋症に対する動的な生理学的影響が強調されている。LVOT = 左室流出路。(AI訳)


閉塞性肥大型心筋症におけるベッドサイド手技の血行動態への影響の視覚的要約
この模式図は、ベッドサイドでの動的操作中の前負荷、後負荷、LVOT勾配、および収縮期駆出性雑音の変化を示しています。バルサルバ法と立位は前負荷を軽減し、LVOT勾配と雑音の強度を増加させます。しゃがみ姿勢は前負荷と後負荷を増加させ、LVOT勾配と雑音の強度を低下させます。しゃがみ姿勢から立位に移行すると、前負荷と後負荷が急激に減少し、LVOT勾配と雑音の強度が著しく増大します。矢印の大きさは変化の相対的な大きさを示しています。LVOT = 左室流出路。(AI訳)


松下記念病院 川崎達也)

2026-01-01

三徴候の共存 🎍 元旦

労作時の息切れで来院例(座位)

😐 解説
  • 頚部の上1/3(顎下)に陥凹(右向き矢印)
  • 吸気負荷で別の部位に隆起(左向き矢印)
  • 拍動はいずれも不規則 ➜ 心房細動の疑い
  • 外頚静脈の怒張 ➜ クスマウル徴候(矢頭)
  • 内頚静脈の陥凹+外頚静脈怒張 ➜ 心不全
  • 頚動脈隆起(コリガン脈)➜ 大動脈弁逆流
  • 心エコー図では中等度の大動脈弁逆流あり
  • 最終的にARとAFを伴った心不全と診断した

💟 現場実況
  • 本例で初診時に身体所見を確認したときには,安静時の内頚静脈の陥凹が吸気後には隆起(ランチシ徴候)へ変化しました.もちろんこれで,中心静脈圧が高度に上昇した非代償性心不全と診断できました.
  • その後,看護師さんと車いすで検査に回ってもらいました(心電図や胸部X線,採血).その後の結果説明時(←この時に上記動画を記録)には,ランチシ徴候はなく代わりにクスマウル徴候を認めました.
  • 本例は吸気後に頚動脈拍動(コリガン脈)を認めます.よく見ると安静時にもすでにありそうです.通常,吸気で頚動脈所見は変化しません.本例は筋緊張などが加わり拍動が顕性化したと考えられました.

松下記念病院 川崎達也)

2025-11-13

手抜きダメ

10年前にペースメーカ植込み術を受けた症例
ひと月前から息切れ(座位ですべて吸気後)

😐 解説
  • 頚静脈の拍動なし(ただし下部は見えず)
  • 吸気後の鎖骨上窩にわずかに陥凹あり?
  • 立ち上がって診察室内を2周してもらった
  • すると頚部の中央に明瞭な陽性波(矢印)
  • 触診にて動脈拍動でなく静脈拍動を確認
  • 本例は最終的に心不全と診断(HFpEF)
  • ペースメーカ本体も確認したが問題なし

😞 現場実況
  • 長年安定している症例でありシャツの襟を立てたまま観察(反省)
  • 安定しているというバイアスで鎖骨上窩の拍動もスルー(反省2)
  • 患者さんの訴えが強くしぶしぶ歩行負荷を追加で陽性波(反省3)

松下記念病院 川崎達也)

2025-11-03

なるほどの説得力

  • ちょっと面白い論文を眼にしたので本ページでも共有します(US Cardiol 2025:19:e16
  • 座位から前屈すると内頚静脈のサイズが拡大することをエコーで確認(下の図と動画)
  • 臨床的意義がある心不全症例ではエコーを使わなくても身体所見で判定可能(自験例


松下記念病院 川崎達也)

2025-10-16

診療室内で運動負荷

無理すると息切れがあるという男性(座位)


👀 解説
  • 安静座位で内頚静脈の拍動なし
  • 吸気負荷で一瞬,僅かに拍動?
  • 診察室内を2周歩いてもらった
  • すると座位で明瞭な拍動(➢)
  • 最終診断は非代償性の心不全

👶 コメント
  • 頚静脈の座位定性法の可能性は無限です.様々な負荷が追加できるからです.吸気負荷が最も簡便ですが,前屈負荷蹲踞負荷左上肢挙上負荷立位負荷なども可能です.そしてそれらを組み合わせることも有用です.
  • 当院で最初に行った負荷頚静脈法は6分間歩行でした(論文).しかし診察室やベットサイドでは実施が困難で活用範囲が限定されます.今回行った診察室内を少し歩きまわってもらう負荷はベットサイドでも可能です.

松下記念病院 川崎達也)

2025-10-09

無塩食

長年安定していた心不全例(座位)


🍟 現場実況
  • 通常は安静時も吸気時も頚静脈は陰性
  • 今回は安静時に鎖骨上窩で陥凹(矢印)
  • 深吸気保持で外頚静脈が怒張している
  • 内頚静脈の拍動の上縁も上昇(矢頭)
  • しかも拍動パターンは陥凹から隆起へ
  • 予定していた心エコー図には著変なし
  • 問い直すと自覚症状は悪化していたと

🍙 追加コメント
  • 安定していた心不全が悪化した原因を尋ねたら「継続していた無塩食を少し前に辞めた」ことを教えてくれました.
  • 無塩食は思っているよりも簡単なようです.自宅で無塩調理(食塩や醤油,味噌などの調味料を使用しない)だけ
  • 無塩食だから外食不可も古い考えだそうです.現在では無塩を依頼すれば多くのお店で対応してもらえるようです.
  • 無塩(かつ無糖)の食生活を20年以上も継続されている循環器内科専門医が霧島記念病院におられます(コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2025-07-24

本例は中等症~重症の心不全

下腿浮腫で来院した大動脈弁置換術後例(座位)

😋 解説
  • 安静座位で頚部中央に陥凹を認める
  • 深吸気の負荷で一見、拍動が消失?
  • よく見ると顎下に明瞭な陥凹(矢印)
  • 非代償性心不全と考え利尿薬を追加

😎 コメント
  • 心不全の「シンプル頚静脈©」は,拍動を視認するか否かの定性法ですが,慣れてくれば定量法にも挑戦してみてください.
  • 本例は中心静脈圧(≒右房圧)の上昇が中等症~重症の心不全と判定できるでしょうか.大まかな目安は下表をご参考に💁

軽症 中等症 重症
拍動の上縁 鎖骨上窩 頚部中央 顎下
負荷の有無 吸気保持で早期のみ拍動 吸気保持で拍動持続 安静時に拍動
拍動の様式 二峰性の陥凹 一峰性の陥凹 隆起



松下記念病院 川崎達也)

2025-07-03

シンプル頚静脈の半定量評価:時間編

心不全で通院中の症例(座位)

😋 解説
  • 安静で頚部に拍動なし(重症心不全なし)
  • 深吸気負荷で鎖骨上窩に拍動出現(矢印)
  • 深吸気を保持したが拍動は速やかに消失
  • 本例はHFpEFで症状は長年安定している

😎 コメント
  • 心不全の「シンプル頚静脈©」では,拍動を視認するか否かの定性法を採用しています.しかし拍動上縁の位置を考慮した半定量評価も可能です(鎖骨上窩=軽症,頚部中央=中等症,顎下=重症:過去の投稿
  • 上記の位置に基づく半定量法に加えて,本例のように拍動の持続時間を考慮した半定量法も可能です.つまり安静時に拍動=重症,深吸気後に拍動持続=中等症,深吸気持続で早期のみ拍動=軽症(本例)です.

松下記念病院 川崎達也)

2025-06-30

夢叶う2 Dreams come true 2

  • 心不全臨床では負荷を併用した頚静脈の座位定性法がとても有用です
  • 5-ステップで学ぶ無料アプリ「シンプル頚静脈」を昨年公開しました
  • 日本語版は総説やSNS,講演などで宣伝する機会がある程度ありました
  • 実は海外展開を念頭に英語版も同時にリリースしていました(コチラ
  • 今回,国際誌にアプリが掲載されました(ESC Heart Fail 2025 May 27

😎 舞台裏
  • はじめに米国の雑誌に投稿しましたが,あっさりreject.でもこれは想定内でした.(内容はともかく)アプリの掲載はとてもリスクがあるからです(スパムを組み込むことも技術的に可能).今回の雑誌にも期待せずに投稿しました.3日後に返事があったので「やっぱりダメだな」と思っていたら,ともて高評価.実際にその1週間後(投稿10日後)に出版されました.
  • 本邦の心不全ガイドライン(2025.3更新)への収載が一つ目「夢叶う Dreams come true」で,今回の海外展開が二つ目の「夢叶う Dreams come true」です.そしていつか,海外のガイドライン収載へ…これは三つ目の「夢叶う Dreams come true」になるでしょうか😃

松下記念病院 川崎達也)

2025-06-26

「とりあえず吸気負荷」

久しぶりに外来を受診した心不全例(座位)

🐤 解説
  • 息遣いが荒く頚部拍動の有無は判定難
  • 吸気で鎖骨上窩に明瞭な拍動(矢印)
  • 本例はHFrEFで怠薬後に息切れを自覚
  • その後の精査で心不全増悪を確認した
🐣 独り言
  • 負荷を併用した頚静脈の座位定性法(シンプル頚静脈)では,安静時に拍動を認めれば負荷を追加する必要はありません.ただし本例のように頚静脈の拍動なのか呼吸に伴う変化なのか分からない症例を時々経験します.そのようなときには「とりあえず負荷をかけてみる」のがいいと思います.特に吸気負荷なら手間もかからず,負荷に対するリスクもほとんどありません.


松下記念病院 川崎達也)

2025-04-07

2024年度SNS解析:循環器Physical Examination講習会

  • 2024年3月に開催された循環器Physical Examination講習会の動画切り抜きを毎週リリースしてきました.その一年間のデータを解析しました.
  • SNSの4大プラットフォームで,計139,786再生されていました.1動画あたりでは平均2,589再生(最小1,125~最大11,877)でした.
  • ニッチな領域であるためSNSアルゴリズムにハマってバズることはないと思われますが,多くの方にご覧いただけたことに感謝いたします. 

😀 SNSごとの解析
  • X (Twitter)➜ 計93,664再生 平均1,735(523~11,000)
  • Instagram ➜ 計6,763再生 平均125(22~808)
  • TikTok ➜ 計27,051再生 平均501(37~1,211)
  • YouTube ➜ 計12,308再生 平均228(22~618)

- 2024年度の最多再生数動画:計11,877再生 -

松下記念病院 川崎達也)

2025-04-03

\負荷頚静脈法:新たな心不全評価/

  • 日本医事新報に総説を執筆させていただく機会を得ました(感謝)。頚静脈を用いた心不全診療で、私の知識と経験のすべてを盛り込みました。
  • 選び抜いた動画19点と図15点(自作)を含む全24ページの温故知新です。同時に電子書籍としても発行されました。よろしければぜひご覧ください。


(電子書籍⭐️コチラ) 

😊 追記 
  • 日本医事新報は1921年(大正10年)創刊で、毎週土曜日に発行されています(定価1,100円)。現在する商業医学誌では最古の一つで、発行部数はなんと39,500部(週刊)
  • ちなみに日本内科学会雑誌の第1巻は1913年発行で、毎月10日に刊行(臨時増刊号を含め年間13回の刊行)。発行部数は2022年2月10日時点で10万9,300部だそうです。

松下記念病院 川崎達也)

2025-03-27

負荷の組み合わせ

心筋梗塞後の症例(座位)

🐔 解説
  • 安静では頚部に明らかな拍動なし
  • 吸気保持で拍動が出現?(矢印)
  • 吸気を保持したまま座位➜立位へ
  • 微妙な頚部の拍動は完全に消失!

    🐙 コメント
  • 本例は治療によってHFrEFからHFpEFに改善したHFrecEF症例です.深吸気保持(前負荷増加)で拍動が出現しているなら,中心静脈圧(≒右房圧)は軽度~中等度に上昇していると考えられます.しかし座位から立位への体位変換(前負荷減少)では中心静脈圧は低下しています. 実際に本例はテニスを楽しんでいます.
  • 吸気負荷などで頚静脈拍動が出現しても,立位で消失する症例は日常生活に支障が少ないと思います(自験例).逆に立位になっても拍動が持続する症例は,労作時の息切れが問題になることが多いようです(自験例).さまざまな負荷が可能なシンプル頚静脈©は,心不全管理管理で無限の可能性を秘めているかも...😁

松下記念病院 川崎達也)

2025-03-20

医療は人文学

陳旧性心筋梗塞の既往がある症例(座位)

💦 現場実況
  • 患者さんは特に体調変化はないと言う
  • 今日は頚を確認しにくい服を着ている
  • 安静座位で明らかな頚部の拍動はない
  • しかし深吸気の保持で拍動出現(矢印)
  • BNPは200台から400台に増加していた

😐 独り言
  • 患者さんの主治医に対する心理には二通りある(と思う).一つは過剰に心配して体調の変化を伝えようとする姿勢.もう一つは逆に症状の悪化時にはなるだけ隠そうとする姿勢.
  • 本例は駆出率が低下したHFrEFであったが,心不全入院はなく,状態は長年安定した.しかし今日に限って頚部を確認しにくい(首元が締まった)シャツを着ている(と感じた).
  • 毎回,頚部を確認しその意義をご本人にも伝えていたことを考慮すると,なんとなく患者さんの心理が伝わってきた.心不全の悪化を主治医に悟られたくなかったのだろう
  • あえてシャツのボタンをはずしてもらうことはしなかった.症状に変わりはないと主張するが,心不全が悪化している可能性をそっと伝えた.減塩指導と早めの再診を指示した.

松下記念病院 川崎達也)

2025-03-13

立位負荷と日常生活

慢性心不全例(HFpEFでEF=60%)

💁 解説
  • 頚部に血管の隆起あり(外頚静脈)
  • 吸気時虚脱(クスマウル徴候陰性)
  • 鎖骨上窩の周期的陥凹は呼吸性変動
  • 吸気負荷で頚部に拍動出現(矢印)
  • 内頚静脈の拍動であり心不全の状態
  • 座位から立位の体位変換で拍動消失

👻 補足
  • 本例は様々は治療を行っても内頚静脈の座位所見が陰転化しない慢性心不全例です.ただし日常生活には支障はなく,長年安定しています.
  • 座位から立位という体位変換はもちろん心臓にとっての大きな仕事です.しかし立位による前負荷(静脈還流)の低下は心負担を減らします.
  • 本例のように立位で内頚静脈所見が悪化しないあるいは陰性である症例は自覚症状に乏しいことが多いと思います(立位でも陽性の自験例

松下記念病院 川崎達也)