頸静脈クイズ

便秘と急激な体重増加で消化器内科を受診した症例（座位で記録）

😀 解説

• 外頸静脈が明瞭に視認でき拍動は完全に消失 ➜ まさしく頸静脈の怒張（※）
• 外頸静脈の怒張は深い吸気でさらに悪化している ➜ 広義のクスマウル徴候
• 目立つ外頸静脈に比して内頸静脈は座位でほとんど視認できない（座位陰性）
• 心タンポナーデと診断して心膜液のドレナージを施行（おそらく肺癌に関連）
• 血清の心膜液（下図）を200mlほど廃液後は外頸静脈の怒張は消失（下動画）

🐤 追加コメント

• 頸静脈の怒張は中心静脈圧が極めて上昇した病態です．よって学会などで乱発されている定番表現「頸静脈の怒張なし」は「中心静脈圧はメチャクチャには上昇していません」と言っている変な記載になります．
• 極めて重篤な心不全では座位で外頸静脈が怒張することがあります．この場合，内頸静脈は隆起性拍動（いわゆるcv mergerや巨大V波，ランチシ徴候）を示すことがほとんどです（実際の症例）．内頸静脈が怒張する病態はおそらくないと思います（多分，死んでしまう）．
• 本例のような外頸静脈の怒張＋内頸静脈の不明瞭は心タンポナーデでよくみられるパターンです（他の自験例）．ただし本例ではドレナージ後（下動画）に内頸静脈の拍動（おそらく陽性波）が観察できるので，まだ中心静脈圧は上昇してると判断できます．患者さんはとても楽になったようですが...

（松下記念病院 川崎達也）