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2020-09-28

関西風命名:触ってナンボの法則

心電図異常で来院した症例(持続する胸痛の既往あり)

🐧 解説
  • 収縮期に持続時間の長い外方運動=抬起性 ➜ 心肥大の疑い
  • その隆起は後半(収縮中期〜後期)が大 ➜ 収縮期バルジ
  • 収縮期バルジの存在 ➜ 心室瘤あるいは左脚ブロックを示唆
  • 本例の最終診断は陳旧性前壁心筋梗塞+心尖部瘤であった

🐦 コツ
  • 収縮早期の隆起+収縮中期〜後期の大きい隆起(収縮期バルジ)は,まるでふたコブラクダ🐫です.しかし視認で気がづくことは稀です.Atrial kickやventricular kickの視認が難しいのと同じ現象です.是非,触診で感じてください(個人的に関西風に命名:触ってナンボの法則).収縮期バルジは時相判定が必要であるため,動脈触診や頸静脈視診を併用した心尖部触診がおすすめです.

🐤 おまけ
  • 心尖拍動を用いた心拡大の評価は通常,仰臥位で行われます(実際の方法).しかし臨床では座位で評価しても問題ないと思います(実例).実際に胸部X線では心拡大の判定は立位像で行っています.
  • 本例のように心尖拍動が左乳輪の外側にあれば心拡大が強く疑われます.2肋間以上での拍動も心拡大を示唆します.座位の頸静脈評価(簡易定性法)が普及してきたのと同様に,座位の心尖拍動評価が現場でもっと活用されることを期待します.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-09-24

さぁ,次の一手は?

下腿浮腫と倦怠感を主訴に来院した高齢女性の前胸部(座位)

 😕 臨床現場 😕
前胸部の表在静脈が怒張している.索状硬結や圧痛はないためモンドール病は否定的.
中心静脈圧の上昇が予想されるが,座位で鎖骨上に頸静脈拍動はない.次の一手は?


松下記念病院 川崎達也)

2020-09-21

心臓番外編

陳旧性心筋梗塞で通院中の男性から左示指痛の相談を受けた


松下記念病院 川崎達也)

2020-09-17

命名:こめかみサイン Temple sign of JVP

増悪する息切れで来院した症例

😲 解説
  • 外頸静脈の怒張に加えて,内頸静脈の収縮期陽性波(ランチージ徴候)が目立つ.その拍動は耳垂を超えてこめかみ(側頭部)まで達している.内頸静脈は外耳孔の内側にある頸静脈孔から頭蓋内に入るため,本例で認める側頭部の拍動は拡張した下顎後静脈の拍動と考えられる.また拍動は絶対不整であり心房細動が疑われる.本例の最終診断は心房細動を合併したアルコール性心筋症による重篤な両心不全であった.

😨 独り言
  • 頸静脈の拍動の上縁が高位であるほど,中心静脈圧は高値であると考えられます.例えば頸静脈の拍動と同期して耳たぶが動く現象はwinking earlobe sign(ウインクサイン/耳朶サイン)と呼ばれ,重症の心不全を示唆します.同所見は日常臨床で稀ならず認めますが,多くは臥床(自験例)あるいは半坐位(実例)であり,座位ではあまり見かけません.本例の様に,座位で耳たぶを超えてこめかみの拍動を観察できることは極めて稀と思います.個人的には こめかみサイン(Temple sign)と呼んでいます.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-09-14

ダブル・キャノン

1週間前から急に増悪した倦怠感で来院した症例

😊 解説
  • 正中寄りの左鎖骨上に内頸静脈の間欠的隆起(巨大a波/cannon a wave)を観察
  • 心音ではⅠ音の大きさが心拍毎に異なり4拍目に最大(大砲音/cannon sound)である
  • いずれの所見も房室解離時に認めることで有名であるが,心室期外収縮でも出現する
  • 本例は心臓サルコイドーシスによる3度房室ブロックを生じたときに記録された所見

😙 独り言
  • いずれの所見もcannonと記載されるが,そのメカニズムは異なることに要注意.巨大a波(cannon a wave)の出現機序は,三尖弁閉鎖中に心房収縮が生じるため.一方,大砲音(cannon sound)の機序は,心房収縮直後(房室弁の最大開放時)に心室収縮が生じるため.実際の本例の心音図でも,大砲音ではP波がQRS直前に生じている点に注目.
  • 注意深い聴診あるいは心音図(本例では低音と低中音を表示)ではP波の後に過剰心音(Ⅳ音)が観察される.このⅣ音も音量が変化して,心室急速流入期に合致すれば大きくなることが知られている(我々はatrial cannon soundと呼んでいます).

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-09-10

🏆 論文:頸静脈を見てみよう!

  • 手前味噌で恐縮ですが投稿者のフィジカル論文が出版されました.心臓リハビリテーション学会誌の循環器教育講座であるため,あまり堅苦しくならない論調を心がけました.イラストも自前で,英語タイトルはフィジカルの温故知新を考慮して”Jugular venous pulsation revisited”としてみました.無料アプリのポケット・フィジカルや本ページ(心臓フィジカル広場)のようなweb上での身体所見の共有にも触れています.よければご覧ください.

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(心臓リハビリテーション JJCR 2020;26:291-3)

👿 身体所見に関する「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-09-07

心尖拍動クイズ





松下記念病院 川崎達也)

2020-09-03

🏆 論文:Cannon Sounds

  • 当院の張本先生が執筆された論文です.少し前の出版(2018年)ですが,面白いと思うのでアップしておきます.ポイントはタイトルがSoundsと複数形になっている点です.



👽 解説
  • 3度房室ブロックで大砲音(cannon sound:上図の大きい赤矢頭)を認めます.P波後のⅣ音(矢印)にも注目すると,一カ所だけ大きくなっています(小さい赤矢頭).これはⅣ音が心室急速流入のタイミング(つまりⅢ音の時相)で生じたためと考えられます.我々の検索範囲では,この現象にはまだ名前がないようなのでatrial cannon soundと名付けてみました.通常のcannon soundとこのatrial cannon soundの2種類が観察されるため,論文のタイトルをCannon Soundsと複数形にしています.実際の音声はココで聞けるので楽しんでみてください.

👿 身体所見に関する「論文」の過去投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)