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2021-03-29

患者さんがベットに寝ていたら…

冠動脈バイパス術の既往がある心不全例/入院数日後の仰臥位(枕あり)

😄 所見の解説
  • 内頸静脈は視認できず ➜ 中心静脈圧の上昇はなし(心不全は改善)
  • ただし外頸静脈は視認できる ➜ 過剰な利尿で脱水には陥っていない
  • 右季肋部の圧迫で頸静脈拍動の顕性化なし ➜ 肝頸静脈逆流は陰性
  • 負荷がかかっても中心静脈圧は安定していそう ➜ そろそろ退院可能

😎 独り言
  • 頸静脈所見(特に座位)から心不全の改善は判定できるが,安静時の所見だけでは少し不安が残る.負荷に伴う頸静脈拍動の出現は心事故と関連(コチラ
  • 呼吸負荷(クスマウル徴候)が簡便であるが(自験例),訪床時に患者さんがベットに寝ていたら肝頸静脈逆流(Hepatojugular reflux test)も可能
  • 本テストは肝臓(右季肋部あるいは腹部全体)を10秒ほど圧迫すると良いようです.なおreflux(逆流)であって,reflex(反射)ではないことに要注意
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2021-03-25

目くじらを立てないように

検診で脂質異常を指摘された症例の右眼


フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2021-03-22

🏭 トリプル負荷

右室肥大が疑われる症例

😊 解説
  • 立位(ビデオ開始時)では頸静脈を視認しない(カルテには立位陰性とシンプルに記載)
  • しかしスクワッティング後(ビデオ後半)では頸静脈の拍動が出現(カルテ記載は蹲踞陽性)
  • よく見ると頸静脈拍動は陽性波 ➜ a波(前収縮期/Ⅰ音直前)あるいは巨大v波(収縮期)
  • 両者の鑑別には触診(=動脈触知)または聴診が有用 ➜ 本例の陽性波はa波と判断した
  • 心エコー図で右室肥大+どこでもⅣ音 ➜ 右室肥大型心筋症の疑いで現在フォロー中

😶 独り言
  • 蹲踞負荷は膝痛などで施行できないことも少なくないが,前負荷増大(静脈還流の増加)かつ後負荷増大(下肢血管抵抗の上昇)のため心負荷は大きい.
  • さらに本例のビデオでも分かるように,多くの人は蹲踞時にバランスを取るため前かがみになる.これは胸腔内圧の上昇からbendopnea(前屈時呼吸困難症)の誘発にも繋がる(実例).
  • つまり蹲踞は前負荷増大後負荷増大胸腔内圧上昇トリプル負荷とも言える.個人的にはベットサイドで行える最強の負荷と思う(まるでトリプル・ドム 😉).

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2021-03-18

👴 歴史クイズ

(Public Domain)


松下記念病院 川崎達也)

2021-03-15

ちょっとした工夫

心電図異常で来院した中年男性

😛 所見の解説
  • (左) 傍胸骨に置かれた聴診器のヘッドがわずかに動いている?
  • しかし聴診器のヘッドよりもチューブ中央を見ると拍動が明瞭
  • 本例は抬起性(圧負荷)よりもタッピング(容量負荷)と判定
  • 実際に心エコー図でも右室の拡大を認めた(肺高血圧はなし)

😜 復習
  • 視診より触診の方が分かりやすいことは言うまでもない(関西風命名:触ってナンボの法則再登場:触ってナンボの法則
  • しかし抬起性かタッピングが迷うことも少なくない.このような時には視診の活用も悪くない.抬起性拍動ではチューブの動きは全く異なる(実例
  • 胸壁の薄い健常若者では正常でもタッピングを認めるから,普段から確認してタッピングの触診や視診(チューブ)に慣れておくことも重要と思う
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2021-03-11

眼クイズ

目薬で改善がないと訴える症例の左眼


フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2021-03-08

ボクサーのように…

労作時の息切れで来院した症例

🐧 解説
  • 鎖骨上に陽性波 ➜ 触知で動脈拍動と診断(コリガン脈ではなくて蛇行疑い)
  • 顎下に陥凹あり ➜ 触知で静脈であることを確認(中心静脈圧の上昇を示唆)
  • 頸動脈の隆起や内頸静脈の陥凹はいずれも不規則 ➜ 心房細動の存在を示唆
  • スロー再生で隆起(収縮期)の後に陥凹出現 ➜ 頸静脈拍動はy谷x谷閉塞
  • 最終的に心房細動と左室肥大を伴う収縮力の保たれた左心不全と診断した

🐤 独り言
  • スロー再生するまで,内頸静脈の陥凹がy谷(拡張期)とは意識しませんでした.同様のことを以前にも経験しています(過去の投稿).動体視力のトレーニングはボクサー選手だけではなく,循環器内科医にも必要だったりして…
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2021-03-04

フィジカル達人の講演から

Physical Examでほとんどの心疾患はほぼ診断可能である
  • 心電図,レントゲン,心エコーなどの検査はPhysical Examの確からしさを検証するためにあると考えること
  • 精密検査の結果とPhysical Examが食い違っても直ちにそれを受け入れず,その理由を考えること
  • そうでなけれがPhysical Examの腕は上がらない
  • 精密検査の方が正しくないことも少なくはない

🉐 関連投稿(名言編:松下ERランチ・カンファレンスに移動します)
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2021-03-01

マズローの金槌 Maslow's hammer

  • 米国の心理学者であるマズロー (Abraham Harold Maslow: 1908–1970)によって提唱された観念
  • 認知バイアスの一つで,law of the hammerやMaslow's hammer, golden hammerとも呼ばれる
  • If all you have is a hammer, everything looks like a nail. ハンマーを持てばすべてが釘に見える
  • 臨床現場では特定の知識や技術を持っていると診断や治療が偏ってしまうことがあることを意味

実例 😶 専攻医から相談を受けた息切れ症例の心尖拍動(左頭で白タオルは乳房をカバー)


😮 解説
  • 心尖部が周期的に陥凹している(systolic retraction of the apex)➜ 収縮性心膜炎の身体所見として有名!
  • 「収縮性心膜炎が強く疑われる」とアドバイスして心エコー図を指示 ➜ しかし同病態を示唆する所見なし
  • 身体所見を見直すと収縮性心膜炎を示唆する他の所見はなかった(例:心膜ノック音フリードライヒ徴候
  • 最終的には拡張不全による慢性左心不全と診断(相談に来てくれた専攻医の先生...混乱させてゴメンね 🙇)
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)