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ラベル 胸部 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
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2026-07-09

フィジカルでここまで分かる

息切れを訴える症例(座位)

🔎 推理
  • 座位で右頚部に周期的な隆起を認める(矢頭)。左側ではあまり隆起が目立たないことより、頸動脈の拍動(コリガン脈)よりも頚静脈の拍動(ランチシ徴候)と考えられる。よって中心静脈圧は高度に上昇しているため、非代償性心不全と診断できる。
  • 次に心尖部を確認すると複数の肋間で心尖拍動を視認するため(矢印)、心拡大が疑われる。さらに男性であるにも関わらず、乳房が発達している(女性化乳房の疑い)。つまりスピロノラクトンなどミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の服用が疑われる。
  • さらに左前胸部に埋め込まれているデバイスは通常よりも大きいため、CRTD(両室ペーシング機能付き植込み型除細動器)等と思われる。これらすべてに合致するのはHFrEFで、肋間筋の萎縮も考慮すると悪液質に陥ったステージDの重症心不全の疑い。

🎩 独り言
  • 上記の予想はすべて正解です。まるでシャーロック・ホームズの推理でしょうか? 彼の推理は微細な事実の観察と、そこから論理を組み立てる推論の組み合わせです(AI解説)。
  • 身体所見も少し慣れれば、同じことができるかもしれません。以前にもフィジカルでここまで分かったという症例をアップしているので、よろしければご覧ください(ココ)。

(松下記念病院 川崎達也)

2026-06-04

非典型的胸痛

労作とは関係ない胸痛を訴えて来院した高齢者

💀 解説
  • 左写真:耳垂に皺あり(フランク徴候が陽性)
  • 右写真:「胸部症状はどこですか?」の質問後
  • 手掌で心臓のあたりを指すパームサイン陽性
  • 緊急カテで左回旋枝に高度狭窄を認めPCI施行

💫 臨床裏話
  • 本症例は他院で肥大型心筋症として長年フォローされていた方でした.来院時の心電図では著明な左室肥大を認めました(ST上昇はなし).心エコー図では不均一な左室肥大がありましたが,明らかな壁運動異常はないと判断.高感度トロポニンも陰性
  • 非発作時には心電図のST低下が少しだけ改善しました.しかし派手な左室肥大を呈する肥大型心筋症例では,後負荷や前負荷,心拍数の変化でST-T部分が変わることは稀ではありません.我々もこの時点では積極的に冠動脈疾患を疑っていませんでした.
  • 一旦,入院で経過観察しつつ,かかりつけ医からの情報提供を待つことにしました.しかし,その後も断続的に5-10分持続する胸部症状が出現しました.フランクサインとパームサイン(いずれも虚血性心疾患と関連)もありCAGに踏み切りました.

(松下記念病院 川崎達也)

2026-06-01

エワルト徴候 Ewart sign

  • 大量の心膜液が貯留した時にみられることがある局所的な肺の聴打診所見
  • 心膜液で左肺底部が圧迫され左肩甲骨下角下方に打診上の濁音域が生じる
  • 通常は左側(稀に右側)に触覚振盪の増強と吹鳴呼吸音(blowing sound)
  • 英医師 William Ewart (1848-1929) の報告に由来(Br Med J 1896;1:717–21) 
  • 別名はBamberger–Pins–Ewart徴候(循環器学用語集に収載)やPins症候群


(Dr. Ewartの実際の報告より ← 130年前の論文が読めます)

💁 打診に関する過去の投稿は コチラ

(松下記念病院 川崎達也)

2026-02-23

フィジカルクイズ(No. 41 & 42)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週金に循環器に関するフィジカルクイズをX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらのページには2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

(松下記念病院 川崎達也)

2025-10-06

心音クイズ(Q11・Q12)

  • 持田製薬さんと作成している心音クイズのシーズン2 第二弾です(GROUP T inc.さんにも感謝 🙏).今回はちょっと珍しい右心系の心雑音を呈した2症例です.ココで経験しておけば実際の臨床現場で遭遇した時にも迷わずフィジカル診断?
  • 今後も3ヵ月毎に2症例ずつアップする予定です(次回は2025年11月の予定).無料なのでよろしければご覧ください(※Q3以降は初回のみ簡単な登録が必要).一緒に聴診学の楽しさと奥深さを共有できれば作成者としては嬉しい限りです 😁


(松下記念病院 川崎達也)

2025-09-04

今週の一枚 🎯

松下ERランチ・カンファレンスの症例ですがフィジカルが関連するのでこちらにもアップしておきます
 
前日からの胸痛を訴える若者(突然発症で吸気時に増悪/気胸の既往歴あり)



(松下記念病院 川崎達也)

2025-01-30

今週の一枚 🎯

胸痛で来院した中年男性



(松下記念病院 川崎)

2025-01-02

負荷心尖拍動

慢性左心不全の増悪例

😐 解説
  • 乳房下に抬起性心尖拍動 → 左室の拡大・肥大
  • 心窩部にも明瞭な抬起性拍動 → 右室負荷の疑い
  • 座位から立位の体位変換で左室の拍動は変化なし
  • 心窩部の拍動は減弱~消失(右室負荷の減少?)

💟 追加コメント
  • 本例の心尖拍動の変化をどう解釈するかは難しい.心窩部の拍動が立位に伴い目立たなくなったことは,前負荷の減少による右室負荷の低下で説明できそう.一方,心尖拍動(左室)の所見は,前負荷の減少が立ち上がりという仕事で相殺されたと考えるのがいいかもしれない.
  • 心臓の検査では負荷を積極的に併用している(心電図や心エコー,核医学,MRI,心カテなど).身体所見でも然り.負荷を併用した頚静脈評価法(負荷頚静脈)はかなり解明されてきたと個人的には思っている.今後は負荷心尖拍動の臨床的意義も調べていく必要があるかも...

(松下記念病院 川崎達也)

2024-12-26

Ehlers–Danlos syndrome エーラス・ダンロス症候群

エーラスダンロス症候群に関する論文が先日,出版されました(Med Genet 2024 Dec 3;36:225-234).図鑑のような体裁で臨床医にはとても分かりやすいと感じました.本ページでも取り上げておきます(全文がネットで読めます)

💚 抄録訳
  • 単一遺伝子性エーラスダンロス症候群(EDS)は、関節過可動性、皮膚過伸展性および/または脆弱性、および全身組織脆弱性を臨床的に特徴とする遺伝性結合組織疾患のグループです。現在、単一遺伝子性EDSタイプの診断を確定するためのゴールドスタンダードは、大規模並列シーケンシングによる遺伝子パネル検査です。遺伝子検査の可能性は大きく進歩しているものの、病歴、家族歴、身体検査を含む徹底した臨床評価が診断プロセスにおいて依然として重要であるため、私たちは、単一遺伝子性EDSタイプの臨床的特徴(の組み合わせ)をテキストと写真で報告し、臨床診断に役立てることを目指しています。さらに、分子診断が不可能な場合でも、臨床診断によって管理と監視を導くことができます。



- 骨格筋の特徴 -



- 皮膚の特徴 -



- その他の臨床的特徴 -

💙 命名までの遍歴
  • エーラス・ダンロス症候群という名称は,オランダの皮膚科医 Edvard Laurits Ehlers (1863-1937) とフランスの皮膚科医 Henri-Alexandre Danlos (1844-1912) に由来しています.しかしヒポクラテスは紀元前400年にこの疾患の特徴に言及し,van Meek'ren が1682年に医学的記述を残しています.1892年には Tschernogubow が発表していますが,ロシア語だったためか西ヨーロッパではほとんど見過ごされたようです.そして1901年と1908年にそれぞれ影響を受けた患者を記述した Ehlers と Danlos にちなんで,1936年に Weber がこの疾患を Ehlers–Danlos syndrome(EDS)と命名したようです.


👉 エーラス・ダンロス症候群に関するの過去の投稿は コチラ

(松下記念病院 川崎達也)

2024-12-12

今週の一枚 🎯

心不全でフォロー中の男性(他科でホルモン治療中)



(松下記念病院 川崎)

2024-06-20

漏斗胸:V1 ≒ aVR

検診で心電図異常を指摘された男性(無症状)

👶 解説
  • 前胸部に陥凹があり漏斗胸と判断
  • 心窩部に周期的陥凹もあり(矢印)
  • 橈骨動脈の拍動と一致し右室拍動
  • 本例は無症状で心エコー図も正常

😃 追加コメント
  • 漏斗胸では胸郭の前後径が小さくなり,右心系の異常がなくても明瞭な右室拍動をしばしば経験します(他の自験例:コチラ).三尖弁や僧帽弁の逆流を伴うこともありますが,本例くらいの漏斗胸で問題になることは少ないと思います.
  • 本例の受診契機は心電図異常でした.漏斗胸26例の手術前後での心電図検討:II誘導のP振幅とV1のP陰性振幅が減少,平均QRS幅の減少,Sokolow-Lyon指数の減少,V4-V6のJ波が増加(J Electrocardiol 2016;49:174-81)   
  • 漏斗胸の心電図にはもっとピンポイント判定法があるようです.それはV1の陰性P+Qrパターン+陰性T波です(北海道医報 第1249号).V1電極がaVRと同じ角度になるからだそうです(なるほど&何事もその道の匠はすごい😳)


(松下記念病院 川崎達也)

2023-12-18

鳩胸 Pectus carinatum

先日,SNSで高度の鳩胸の症例を見かけたので少しまとめてみました.

  • 概略 前胸壁が前方に突出した胸壁の先天異常(漏斗胸とは逆)
  • 原因 肋軟骨の伸長欠陥の疑い(25~33%で遺伝的要素あり?)
  • 疫学 発生率は約1000人に1人(漏斗胸の約1/10)で男:女は5:1
  • 合併 稀に側弯症,マルファン,僧帽弁逸脱,骨形成不全など
  • 経過 通常出生直後には確認されず成長で加速(10代で顕性化)
  • 症状 多くは無症状(稀に突出部位の圧痛や運動耐容能の低下)
  • 予後 良好で通常は長期的な健康への悪影響もないと思われる
  • 対応 矯正器具,外科的修復,隠蔽(ボディビル,女:豊胸術)


😉 なんでも探偵団
  • pectusはラテン語で胸(chest),carina(or keel)は古代ローマの船の竜骨(船底中央を縦に通す強度部材)から名付けられたようです(※).発音はココで,別名はkeel chestやpigeon chest
  • 逆の病態である漏斗胸の英名はpectus excavatumで,excavatumはラテン語でhollowed(空洞の)を意味するようです(#).発音はココで,sunken chestなどとも呼ばれることがあります.

(松下記念病院 川崎達也)

2023-11-16

今週の一枚 🎯

1週間続く胸背部の内部痛(大動脈弁置換術の既往あり)
(左側胸部:少しボケていて🙇)




(松下記念病院 川崎達也)

2023-11-06

👴 歴史クイズ

(CC BY 4.0)



(松下記念病院 川崎達也)

2023-10-23

心不全の診断

  • 心不全の本態:左室拡張期圧の上昇(心臓が広がりきったときにかかる圧を逃がしきることができない状態)
  • 診断時にアクセスの容易な所見:①心尖拍動,②両肺ラ音,③傍胸骨拍動
  • 経験を要するが特異性の高い所見:①III音,②頸静脈怒張





😗 独り言
  • 「心不全かも?」と思った時に心尖拍動や傍胸骨拍動がアクセス容易な所見であることにはとても同意します.しかし残念ながら心不全診療の現場で活用されているとは(全く)思えません.とにかく触ってみるという一歩を踏み出してみることが大切でしょうか(難しいことは考えずに)
  • 本論文では頸静脈所見が経験を有する所見に分類されています.これは従来から行われてきた方法論に起因する問題だと思っています(ルイス法).例えば45度の半座位なんて臨床現場では困難です.是非とも簡易定性法(座位で鎖骨上に見えるか否か)を試してください.ハマります😊

(松下記念病院 川崎達也)

2023-08-24

今週の一枚 🎯

ペースメーカ外来を定期受診した症例



(松下記念病院 川崎達也)

2023-06-08

時々,聞かれます

患者さん 「これ(青矢印)って何ですか?」


🔗 剣状突起(Xiphoid process)
  • 胸郭前面の正中部にある扁平骨=胸骨(Sternum)の足側部分(他は頭側から胸骨柄と胸骨体)
  • ギリシア語由来のxiphoidとそれに相当するラテン語のensiformの意味はいずれも「剣のような」
  • 剣状突起は通常,第9胸椎およびT7 dermatome(皮膚分節)のレベルにあると考えられている
  • 15〜29歳頃に剣状突起は線維性関節で胸骨の本体(胸骨体)に融合するためその可動性は消失
  • 40歳頃に剣状突起の骨化が生じるため本例のように「コレなんですか?」と聞かれることあり
  • ちなみに剣状突起に生じうる分岐や穿孔には遺伝性があり遺骨と家族の推定に有用らしい 😮

📎 臨床的意義
  • 剣状突起は横隔膜を含む多くの筋肉の付着に関与し,腹直筋を固定しています.よって心肺蘇生(CPR)時の胸骨圧迫では剣状突起に圧力をかけないようにする必要があります.横隔膜裂傷や肝損傷(致命的内出血)に至ることがあるからです.
  • 剣状突起に関連して生じた痛みは剣状突起痛(Xiphodynia)と呼ばれています.筋骨格障害で明瞭な圧痛を認めるため,その診断に困ることは稀でしょうか.胸骨と剣状突起の間の接合部の炎症によって引き起こされると考えられているようです.

(松下記念病院 川崎達也)

2023-05-18

扁平胸郭とフーバー徴候

激しい運動時に息切れを訴える症例

👾 解説
  • 漏斗胸ではないが胸板は薄くで呼吸は腹式
  • 吸気(腹部が膨らむ)時に肋間陥凹(矢印)
  • 心機能や冠動脈に問題はなくCOPDも認めず
  • 最終的に自覚症状は扁平胸郭に関連と判断

独り言 💤
  • フーバー徴候(Hoover's sign)は吸気時に下位肋間が内方に陥凹する現象で,通常はCOPDなどの肺疾患を示唆します(自験例).
  • 心不全でも出現することがありますが(自験例),その頻度は息切れ症例の3%程度と稀です(Rev Clin Esp 2005;205:113-5)
  • 本例では扁平胸郭があり吸気時の胸郭の拡張が不十分であるため,本人が以前から無意識に腹式呼吸を行っていたのかもしれません.
  • ただし自転車エルゴメータでは運動耐容能は年齢相応に保たれていたため,特に追加加療(呼吸指導を含む)は行いませんでした.

(松下記念病院 川崎達也)

2023-03-13

女性化乳房 & ディスコ

DISCO:女性化乳房を引き起こす代表的な薬物 
  • Digitalis(ジギタリス)
  • INH(イソニアジド)
  • Spironolactone(スピロノラクトン)
  • Cimetidine(シメチジン)
  • Oestrogen(エストロゲン)

🐦 AntiandrogensとMetoclopramide(プリンペラン他)を加えDISCO AMなどのバリエーションあり

重症度分類(Plast Reconstr Surg 1973;51:48-52)
  • Grade I ➜ 皮膚過剰を伴わない小さな腫脹
  • Grade IIa ➜ 中程度の腫大で皮膚に余剰がないもの
  • Grade IIb ➜ 中程度の腫大で軽度の皮膚過剰を伴う
  • Grade III ➜ 女性特有の乳房下垂のような皮膚過剰の著しい腫脹

🐤上記分類は一例で計10種類以上の分類法あり(ココ)

(松下記念病院 川崎達也)

2023-02-06

COPD+るい痩

COPD症例ではるい痩が目立(%IBWはideal body weight=基準体重比)

👽 るい痩が目立つ理由
  1. 呼吸筋のエネルギー消費増大(健常者36~72kcal/日,COPD 430~720kcal/日)
  2. TNF-αなど炎症性サイトカインでエネルギーの消費量増加(健常者の1.3~1.5倍)
  3. 肺過膨張による腹部臓器の押し下げや咀嚼や嚥下に伴う呼吸困難感による食欲減弱
  4. レプチン(満腹中枢刺激)やグレリン(食欲中枢刺激)など食欲関連ホルモン異常


💀 追加コメント
  • COPD症例では糖尿病や心疾患がなければ積極的なカロリー摂取を推奨.例えば間食(1日5食),高脂肪食(蛋白質や炭水化物より呼吸商が少ない),プルモケアExなど
  • COPDでは栄養障害が非常にゆっくり進行するため,体重や脂肪,筋肉の減少に比べて,血清アルブミンなど血液データの異常遅延に要注意(典型的なマラスムス型栄養障害)


※ 以前に松下ERランチカンファレンスに投稿した内容の更新版です 🎶

(松下記念病院 川崎達也)