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2022-10-31

耳垂皺の病理

  • 耳たぶの皺(フランク徴候/Frank's sign)と動脈硬化の関連を検討した報告は散見されます(過去の投稿).しかし耳垂の病理学的に検討した論文はほとんど見かけません.
  • 先日たまたま "The Histological Basis of Frank's Sign" という魅力的なタイトルの研究を見つけました.あまりクリアカットな結果ではなかったようですがまとめておきます.

フランク徴候(白矢印)部分には,間質の線維化はないが筋弾性線維症を伴うコルク栓抜き様のねじれた動脈血管がある(黒矢印).A:HE染色(×200),BとC:その拡大

皺部分の組織学では末梢神経は好酸球性封入体を伴うウォーラー様の変性を示す.A:HE染色(×40),B;拡大(×400)

本論文の結語(日本語訳)
  • 我々のデータは,心筋の形態学的変化と耳たぶのしわの存在との間に有意な相関関係があることを示唆する.心不全における低酸素/再酸素化の提案されたモデルと,観察された変化の原因である耳小葉の生理学的に低い酸素飽和度と発生学的発達は,フランク徴候の発達と臨床的に観察可能な変化との相関を説明する最初のモデルである.

松下記念病院 川崎達也)

2024-02-29

今週の一枚 🎯

昨夜からの胸痛でERに搬入された症例

👂 解説
  • 座位で右耳垂に45度の皺あり(フランク徴候
  • 耳垂の皺は二本あり(double earlobe crease
  • よくみると外耳道の毛(ear-canal hair)あり
  • 心電図にはST変化なし(後壁誘導 V7-9 含む)
  • 心エコー図では下壁に軽度の壁運動低下あり
  • 緊急CAGで回旋枝(#13)に99%の狭窄を確認
  • 引き続きPCIで治療(治療中もST-T変化なし)

👀 フランク徴候あれこれ
  • 45度の耳垂皺(フランク徴候/Frank's sign)が冠動脈疾患と関連することはメタ解析でも確認されています(Int J Cardiol 2014;175:171-5).
  • 本例のように外耳道毛が合併した耳垂皺例では冠動脈疾患の確率がより上昇するという報告もあり(Indian Heart J 1989;41:86-91 ➜ 典型自験例
  • しかし「座位皺 vs 臥位皺」や「片側皺 vs 両側皺」の差異はあまり検討されていません.本例のように同一側に複数本ある耳垂皺の追加意義も不明

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎達也)

2022-12-22

耳ウインクサイン Winking earlobe sign

下腿浮腫とBNP上昇で紹介受診した症例(端座位)

💛 解説
  • 顎下に周期的な拍動(陥凹)を認める ➜ 内頸静脈の拍動
  • 耳朶も拍動あり(winking earlobe sign,耳ウインクサイン)
  • 座位であることを考慮すると中心静脈圧は高度上昇の疑い
  • 耳垂に45度の皺(earlobe crease,フランク徴候)もあり
  • 心エコー図で心肥大と肺高血圧あり ➜ 最終診断はHFPEF

💜 追加情報
  • 身体所見はマスクの着用で過小評価されることがあります(マスクでマスクと勝手に命名:自験例1自験例2).本例ではマスクを外しても,あまり変わりませんでした.マスクのゴム紐などには影響を受けない「強い静脈拍動」と思われます.
  • 本例ではフランク徴候を認めましたが,その後の精査で冠動脈狭窄はありませんでした.耳垂皺の3万例以上のメタ解析(Int J Cardiol 2014;175:171-5)では冠動脈疾患に対する感度は62%,特異度は67%と報告(臨床的には今ひとつ😐)
  • ちなみに本例は息切れなどの心不全症状は乏しかったのですが,これは認知症によると思われました.システマティックレビュー(J Card Fail 2017;23:464-75)では,心不全患者の認知機能障害の合併頻度は43%(95%信頼区間30~55)

松下記念病院 川崎達也)

2020-11-19

格言:胸痛時には耳も?

胸痛で来院した症例


松下記念病院 川崎達也)

2019-06-03

耳垂皺と体位

  • 耳垂の皺(フランク徴候/earlobe crease)は動脈硬化/冠動脈疾患と関連 ➜ 復習
  • 両側に認めれば冠動脈疾患の特異度がさらに上昇(Dermatology 2004;209:271-5
  • しかし耳垂皺は体位によって大きく変化(下図は陳旧性下壁梗塞を有する自験例)


💫 おまけ
耳珠(じじゅ:外耳道にある耳介反対側の突起物)の短毛にも気づきたい.これも動脈硬化に関連するという報告あり ➜ Indian Heart J 1989;41:86-91.ただし耳毛は散髪時にカットしてもらっていることが多いようです.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2025-04-17

今週の一枚 🎯

大動脈瘤を指摘された男性



松下記念病院 川崎)

2020-12-21

簡易定性法 プラス

  • 中心静脈圧を推定する従来定量法(例:45度座位で拍動上縁と胸骨角の垂直距離)は不便
  • 近年,鎖骨上の内頸静脈拍動の有無を座位で判定する簡易定性法が少しずつ普及してきた
  • この簡易定性法にわずかな工夫を加えるとより多くの情報が得られる ➜ 簡易定性法プラス

実例:息切れで来院した症例

😗 解説
  • 座位で鎖骨上に内頸静脈の拍動あり ➜ 非代償性心不全
  • 拍動上縁は耳垂(耳ウインクサイン)➜ 重篤な心不全
  • 右内頸静脈の拍動は絶対不整である ➜ 心房細動の疑い
  • 耳垂皺あり(フランクサイン)➜ 虚血性心疾患の疑い
  • 実際に本例は心房細動かつ冠動脈バイパス術の既往あり

😙 独り言
  • 簡易定性法 プラスのプラスに何を加えられるかはあなた次第だよ.面白い症例があったら是非,この心臓フィジカル広場に投稿してネ(投稿方法).このページは元々,心臓フィジカルの共有サイトとしてスタートしたんだし...
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2023-08-14

これもフィジカル:虚血顔 

  • 先日の研究会でフィジカルの匠から教えてもらった論文です。その師匠は「コロナリー顔」と言っていました😊
  • 先日報告された胸部X線から糖尿病予測(Nat Commun 2023;14:4039)など、AIの進歩はとても楽しみです

  • デジタルカメラ(2000万画素以上)による顔の正面像、60度像、頭頂像を撮影
  • ディープラーニングアルゴリズムによる冠動脈狭窄(50%以上)の検出能を検証
  • アルゴリズムは感度0.80、特異度0.54、AUC 0.730(95%信頼区間 0.699-0.761)
  • AUCはDiamond-ForresterモデルやCADコンソーシアム臨床スコアより高値(下図)


  • AIが用いた判定基準()は理解不能ですが、下図のように示されるとなるほどかもしれません。
  • 耳垂皺(earlobe crease、フランク徴候)が含まれていて一安心(外耳道毛はないようですが…😒)




松下記念病院 川崎達也)

2022-09-22

耳クイズ

時折,胸痛を自覚する症例



松下記念病院 川崎)

2022-05-02

頸静脈のついでに...

労作時の動悸で来院した症例



松下記念病院 川崎達也)

2024-12-30

外頚静脈も大切です

息切れで来院した症例

😐 解説
  • 外頚静脈の隆起が明瞭(ほぼ怒張)
  • 深吸気負荷後は拍動が出現(矢印)
  • 心エコーで心膜液貯留+右心虚脱
  • 心膜液のドレナージを実施(血清)
😀 追加コメント
  • 心不全で重視すべきは内頚静脈で,この場合は怒張という表現は避けるべきです(内頚静脈の怒張→循環停止→死亡).しかし心タンポナーデや緊張性気胸など特殊な病態に対して,外頚静脈の怒張はいまだ有効な身体所見です.
  • 重症の心タンポナーデでは吸気負荷でも外頚静脈の怒張は消失しないことが多いと思います(むしろ悪化:自験例).しかし本例のように軽症例(血圧低下が僅かで頻脈も目立たない)では,吸気負荷で怒張は解除されるようです.
  • 本例の症状は息切れで右心不全よりも左心不全が疑われました.頚部をよくよく観察すると,顎下~頚部中央の皮膚面全体的が拍動していることに気がつきます(きっと内頚静脈の拍動).おまけ 😙 耳垂にフランク徴候もあり

👉 心タンポナーデに関するの過去の投稿は コチラ(PC版なら右下欄から選択可能)

松下記念病院 川崎達也)

2019-02-21

耳もチラ見 👂

循環器外来で遭遇した3症例

  • 症例1(左)➜ 耳垂に45度の皺(別名はフランク徴候やearlobe crease)
  • 症例2(中)➜ 外耳道からはみ出す毛がとても目立つ(ear-canal hair)
  • 症例3(右)➜ 耳垂皺と外耳道毛が共存(症例1もよく見ると外耳道毛あり)

いずれの所見も動脈硬化(主に冠動脈疾患)と関連することが報告されている
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2023-01-26

光と影の活用

肺炎のため総合診療科に入院中の症例:心不全の合併が疑われたため朝に訪床した

🌅 現場実況
  • 患者さんがベットに腰掛けている状態でお話を伺い始めた.対側(患者さんの左側)にある大きな窓から入ってくる朝日がとても眩しかった.
  • ほどなくして,頸部の影が上下に拍動していることに気がついた(動画前半の矢印).もちろん内頸静脈の拍動で中心静脈圧は相当に上昇
  • 今度は逆向きに座り直してもらった(動画後半).眩しさはなくなったが,頸静脈の拍動が不明瞭になってしまった(よくみるとあるのだが...)
  • ちなみに右耳朶皺(フランク徴候/Frank's sign)を認める.冠動脈造影は未施行であったが安静心筋シンチグラフィからは虚血が疑われた.

🌇 独り言
  • ペンライトを用いると頸静脈拍動の評価が容易になることは以前から知られています(自験例).部屋の灯を消さなくてもペンライト点灯のみで十分なコントラストが得られることは覚えておいて損はないとおもいます.
  • 個人的にはペンライトを携行していないため,頸静脈拍動の評価目的に用いることほとんどありません.しかし本例のように,太陽光や部屋のライトでできる自然の影をうまく使えないかと常に意識はしています.

松下記念病院 川崎達也)

2022-01-06

耳寄りなお話

循環器内科に通院している男性

👂 解説
  • 両側の耳垂に45度の皺(earlobe crease)あり(別名はフランク徴候
  • 外耳道毛(ear-canal hair)はないが耳珠(外耳道の突起物)に短毛!
  • 耳垂皺(特に両側)や外耳道毛は動脈硬化と関連(過去投稿典型例
  • 実際に本症例は虚血性心疾患で以前に冠動脈バイパス術を受けている

👅 こぼれ話
  • 本例は若い頃から耳朶が大きく,60歳を超えたあたりからシワが出てきたそうです.耳垂皺は体位によって異なり(座位で消失あり:自験例),診断能も感度・特異度が60%台()と今ひとつですが,お手軽なのでちらっと診ておきたい所見です.
  • 外耳道毛の診断能は,耳垂皺ほど検討されてないようです().しかし耳垂皺のついでに要確認です.本例では耳珠の毛がよく伸びるので,月に2回ほどシェーバーで剃っていたようです.ちなみに僕は女性の外耳道毛例を経験したことがありません.

👻 の関連投稿 ➜ コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2023-06-01

今週の一枚 🎯 耳毛

労作時の胸痛で来院した男性の両耳



松下記念病院 川崎達也)

2019-05-09

ランチージ徴候+α

  • 心筋梗塞後で最近,息切れの増悪を訴えている症例の頸部(座位で呼吸調整なし)

🔎 解釈
  • 頸部の陽性波 ➜ 本例では呼吸性変動があり軽い圧迫で消失 ➜ 巨大v波(ランチージ徴候)と判断
  • 変動上縁が顎下まで及んでいる ➜ 中心静脈圧はかなり上昇していると考えられる(>20cm水柱)

😈 頸部の観察時には耳も忘れずにね
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2023-12-21

動脈 vs 静脈:マイスターへの道

労作時の息切れで来院:拍動は動脈? 静脈??

👻 解説
  • 右頸部に周期性に隆起あり(左側も観察可能)
  • 一見,コリガン脈(動脈性拍動)に思われる
  • 吸気保持で外頸静脈の怒張が出現した(矢頭)
  • ARなどによる高心拍出状態で心不全の状態?
  • ただよくみると吸気で隆起上縁が上昇(矢印)
  • やはり拍動は静脈性で中心静脈圧は著明上昇
  • 最終診断は虚血性心疾患の非代償性左心不全

💚 マイスターへの道
  • 上記の動画をよく見ると,吸気負荷前からすでに吸気時の外頸静脈隆起を認めます(クスマウル徴候陽性).またVネックの上に開心術を思わせる手術創も確認できます(本例は冠動脈バイアス術後).さらに耳朶を確認すると45度の皺(フランク徴候)もあったので重症虚血性心疾患を予想しました(…と書きたいところですが実は耳は確認していません 😅 すいません).
  • 先日,日本不整脈心電学会が開催している心電図検定2023を初めて受けてきました.個人的には初期研修医と長年,心電図の勉強会(松下心電塾)を開催していることもあり,ある程度の知識は有していると思っていました.しかし試験対策では,12誘導心電図でここまで読めるのかと驚きの連続でした(忘備録).本ページでは心臓フィジカル・マイスターを目指してください.

松下記念病院 川崎達也)

2023-03-30

チラ見ならぬチラ耳

労作時の胸部圧迫感で来院した男性

😀 現場中継
  1. オープンクエスチョンで患者さんに胸の症状を表現してもらう
  2. 聴きつつ頸静脈確認 ➜ 座位陰性で非代償性心不全はなさそう
  3. 視線をそっと頸部から耳に移す ➜ 明瞭な外耳道毛の剃り跡😲
  4. 臥床で頸静脈に問題はないが耳垂に斜線(フランク徴候陽性)
  5. 虚血性心疾患の可能性大(ACSではない)➜ 早めのCAG選択


😊 臨床経過
  • 冠動脈造影では右冠動脈と左前下行枝の高度狭窄でした.ちなみに本例の心電図や採血,心エコー図には異常所見はありませんでした.
  • 狭心症の診断では問診がとても重要であることは今更述べるまでもありません.非発作時の基本検査には異常がないことが常だからです.
  • 患者さんの様々な情報から次の検査法(冠動脈CT・負荷シンチグラフィ・負荷心エコー図・冠動脈MRI・冠動脈造影)を選択します.
  • 個人的には外耳道毛や耳垂皺が診断にとても有効だとは思っていませんが,問診ついでに耳をチラ見(チラ耳 😅 勝手に命名)はお薦め
  • 本例は外耳道毛の成長がとても早く,数日毎に電気シェーバーでカットしている様です(鼻下〜顎の毛はあまり濃くありませんでした)
ちら耳
松下記念病院 川崎達也)

2021-02-15

簡易定性法 プラス Part 2

息切れの増悪で来院した症例

🐸 所見の解説
  • 鎖骨上〜頸部中央に内頸静脈の規則正しい陥凹 ➜ 心不全+洞調律
  • 拍動はおそらく二峰性でx谷>y谷 ➜ 心不全あるが超重症ではない
  • 深吸気で内頸静脈の隆起が出現している ➜ クスマウル徴候が陽性
  • 深吸気中には耳下まで内頸静脈の陽性拍動が出現 ➜ ランチシ徴候
  • 耳垂に約45度の皺が存在(フランク徴候)➜ 虚血性心疾患の疑い

🐨 独り言
  • 本例には冠動脈バイパス術の既往があり,今回は慢性左心不全の増悪と診断しました.座位で内頸静脈の拍動が視認できるから(座位陽性),心不全は十分には代償されていないと判断するだけではちょっと寂しい気がします.ぜひ頸静脈の簡易定性法にフィジカルの知識をどんどんプラスしていってください( 簡易定性法 プラス).その応用はほぼ無限かも…
  • 深吸気で内頸静脈の拍動が出現することはあっても,陥凹が陽転化することは珍しいと思います.なお本ページではGiovanni Maria Lancisiが発見した(三尖弁逆流時に出現する)頸静脈の巨大v波(cv merger)をランチージ徴候と記載してきました.しかし本邦ではランチシと記載されることが多いようなので,今回から変更しようと思います.もっともイタリア人の発音ではランチーシと聞こえますが…
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2019-03-04

頸静脈の怒張

  • 学会発表やカルテ記載でおきまりの表現といえば 「頸静脈の怒張なし」 
  • ただしこの表現の意味=中心静脈圧がメチャクチャには上昇していない

実際に頸静脈が怒張している症例 ➜ 顎下まで隆起して呼吸性変動はゼロ

💫 おすすめの表記例 💨
  • 座位で頸静脈は確認できない(中心静脈圧の上昇はなく正常)
  • 座位で頸静脈の上縁が顎下(中心静脈圧は高度に上昇している)
  • 45度座位で頸静脈の上縁が胸骨角の4cm上(少し静脈圧上昇)
  • 臥位枕ありで頸静脈の上縁が額下+呼吸性変動あり(少し上昇)
  • 臥位枕なしで頸静脈の上縁が頸部の中央あたり(静脈圧は正常)

👹 耳垂のフランク徴候にも注目 ➜ 実際に本例には冠動脈バイパス術後の既往あり
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)