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2023-05-29

フィジカル匠の特別講演より

  1. 通常の左心不全症例では右房圧(RAP)は左房圧(LAP)の凡そ半分,肺動脈楔入圧(PCWP)も肺動脈収縮期圧(PASP)の半分程度
  2. 明瞭なⅢ音を聴取したら左房圧(LAP)は25mmHg以上と予想される
  3. 臥床では右房から耳垂までの垂直距離は約10㎝(臥床で頸静脈拍動が顎下なら中心静脈圧は7-8㎝以下で正常)
  4. カルディオメムス(CardioMEMS)というワイヤレス肺動脈圧モニターがある
  5. 右房は通常,右第4肋間あたりに位置している
  6. Bernheim effect学会用語集でベルンハイム効果と訳されているが,正しくはバーンハイム音声) /フランス語風ならベルナイム(音声
  7. 圧上昇の身体所見:右心系 ➜ 脈管内=頸静脈,脈管外=下腿浮腫/左心系 ➜ 脈管内=Ⅲ音,脈管外=湿性ラ音

忘備録ですが聞き間違いがあったらすいません 😅

💁 忘備録に関する過去投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2023-05-25

論文 🏆 HOCMの身体所見

  • 当院の循環器内科専攻医である野口先生が経験した症例が出版されました
  • 典型的なフィジカル所見を示した閉塞性肥大型心筋症(HOCM)の1例です
  • 頸動脈は二峰性拍動(pulsus bisferiens)でspike and dome型の波形でした
  • 心尖もatrial kickと抬起性拍動のダブルインパルス(double apical impulse)
  • 心音は収縮中期の過剰音(偽駆出音/SAM音)およびそれに続く収縮期雑音


😀 追加コメント
  • 僧帽弁が収縮期に前方運動(SAM; systolic anterior motion)して非対称性中隔肥大と接触する時に生じる偽駆出音は是非とも覚えておきたい過剰音です.駆出性雑音が続く音感は独特であり,フィジカル診断の大きな武器になります.
  • 僕自身も外来でフォロー中のHOCM例で心音をもう一度注意して聞きなおしてみると,この音が決して稀でないことが分かりました.論文には音声ファイルが添付されていますが,ダウンロードや解凍が手間なので下記にアップしておきます.

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2023-05-22

二分口蓋垂 Bifid uvula

👄 二分口蓋垂(Bifid uvula)
  • 分岐した口蓋垂のうち二分した状態で,口蓋棚の不完全な融合に起因する.通常の口蓋垂よりも筋肉量が少ないため、中耳感染症を繰り返したり,食物が鼻腔に入る可能性がある.
  • その頻度は一般人口の0.42%()であるが,ネイティブ アメリカンでは10%と高率().ロイス・ディーツ症候群(Loeys-Dietz syndrome: LDS)に合併が多い(90〜92%:引用

Loeys-Dietz syndromeの症例で認めた二分口蓋垂

🔎 臨床現場での活用
  • 遺伝性大動脈疾患(マルファン症候群,ロイス・ディーツ症候群,エーラス・ダンロス症候群:血管型など)は類似した臨床所見です.ただしロイス・ディーツ症候群(特にタイプ1)は眼間解離,口蓋裂・口蓋垂裂,動脈ねじれ,頭蓋縫合の早期閉鎖,動脈管開存・心房中隔欠損などからマルファン症候群とは鑑別できるようです.
  • またロイス・ディーツ症候群タイプ2は皮膚異常 (あざができやすい半透明のビロード様皮膚),関節の緩み,および内臓破裂などを伴います.一方,マルファン症候群の半数近くに認める水晶体亜脱臼などの眼症状は,LDSには見られないようです.
  • ちなみにマルファン症候群,ロイス・ディーツ症候群,エーラス・ダンロス症候群:血管型はいずれも常染色体顕性(優性)遺伝(autosomal dominant inheritance)形式であるため子孫には性別に関係なく50%の確率で遺伝します.

ロイス・ディーツ症候群の男児

松下記念病院 川崎達也)

2023-05-18

扁平胸郭とフーバー徴候

激しい運動時に息切れを訴える症例

👾 解説
  • 漏斗胸ではないが胸板は薄くで呼吸は腹式
  • 吸気(腹部が膨らむ)時に肋間陥凹(矢印)
  • 心機能や冠動脈に問題はなくCOPDも認めず
  • 最終的に自覚症状は扁平胸郭に関連と判断

独り言 💤
  • フーバー徴候(Hoover's sign)は吸気時に下位肋間が内方に陥凹する現象で,通常はCOPDなどの肺疾患を示唆します(自験例).
  • 心不全でも出現することがありますが(自験例),その頻度は息切れ症例の3%程度と稀です(Rev Clin Esp 2005;205:113-5
  • 本例では扁平胸郭があり吸気時の胸郭の拡張が不十分であるため,本人が以前から無意識に腹式呼吸を行っていたのかもしれません.
  • ただし自転車エルゴメータでは運動耐容能は年齢相応に保たれていたため,特に追加加療(呼吸指導を含む)は行いませんでした.

松下記念病院 川崎達也)

2023-05-15

カエル徴候 🐸 Frog sign

😊 興味深い報告J Innov Card Rhythm Manag 2022;13:5184-7
  • 房室結節回帰性頻拍(AVNRT)でアブレーションを予定した78歳の男性.発作中にカエル徴候(Frog sign)が明瞭だったため,電気生理学的検査中に右房圧も同時測定.

上室性頻脈発作中の12誘導心電図

発作開始(VA = 0 ms)直後から右房圧に大砲波(Cannon a waves)が出現

発作終了後は右房圧の大砲波(Cannon a waves)が消失

💁 カエル徴候(Frog sign)の過去投稿は コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2023-05-11

今週の一枚 🎯 フィジカルとは少し違いますが...😅

他科で加療中の担癌症例(胸痛なし)



松下記念病院 川崎達也)

2023-05-08

復習

  • Twitterで特徴的な画像を見たのですが(下図),病名を思い出せませんでした.調べてみると前回眼にしたのは2020年秋の循環器内科地方会でした(ココ).ちょっと反省を込めてまとめておきます.

- 息切れで来院した91歳男性 -

⚔ シミター症候群(Scimitar syndrome)
  • 右肺静脈が下大静脈に流出する部分肺静脈還流異常(PAPVR)
  • 初報は1836年のCooperとChassinatであるが命名は1960年(
  • シミターとは,かつてトルコ軍が使用した剣でサーベルの原型
  • 命名は胸部X線で異常肺静脈が刀身と柄のように見えるため
  • 頻度は10万出生あたり1-3人で男女比は2対1,全PAPVRの3〜6%
  • 心房中隔欠損(80%),動脈管開存症,心室中隔欠損症など合併
  • 症状は無症状〜右心系の負荷(心不全),再発性肺感染症など


- 解剖学的シェーマ -

松下記念病院 川崎達也)

2023-05-04

首の回しすぎに要注意

息切れを訴える症例(端座位)

🐦 解説
  • 顔がほぼ90度左側を向いている ➜ 各種頸静脈にも影響あり
  • 内頸静脈 ➜ 拍動を視認し吸気後は上縁上昇(頸部の上1/3)
  • 外頸静脈 ➜ 胸鎖乳突筋までは怒張(吸気負荷への反応なし)
  • 前頸静脈 ➜ 安静時に周期的拍動が明瞭(上縁は内頸と同じ)
  • ただ吸気では前頸静脈上縁はあまり変わらない(内頸と乖離)

😀 ショート動画は多くを語る
  1. 安静時の前頸静脈の心周期に伴う明瞭な拍動(上縁の上下運動)を考えると,外頸静脈にも同様の拍動が観察されてしかりです.よって本例は顔を左方に強く向けたことで外頸静脈が胸鎖乳突筋に圧排されていると考えられます.つまり「頸静脈拍動の評価時には首の回転はほどほどに」
  2. 内頸静脈の拍動上縁は吸気負荷後にかなり上昇しています(広義のクスマウル徴候が陽性).一方,明瞭な拍動を認めた前頸静脈の上縁は,吸気負荷でもさほど上昇していません.つまり「中心静脈圧の推定に,内頸静脈以外はあまり頼ってはいけない(特に周期的拍動を欠く時)」
  3. 「内頸静脈が座位で視認できる時に,吸気負荷で拍動が消失する症例があるのでは...」という意見があるようです.一見もっともらしく聞こえますが,個人的にはあまり経験したことがありません.つまり「座位で陽性ならクスマウルで悪化(吸気陽性)」😑 これは現在,調査中です

松下記念病院 川崎達也)

2023-05-01

フィジカル忘備録

先週に開催された『第20回 循環器 Physical Examination 講習会』より

  • 拍動しない外頸静脈は評価に用いない(首を回転させると変化もする)
  • 心尖拍動は指先全体,雑音のスリルは手掌遠位部,胸骨拍動は手掌近位部
  • 楽音用雑音は dove-coo や seagull cry でレバイン分類は4度以上が多い
  • 僧帽弁逆流では軽度なら高調音(blowing),重症なら低調音が加わる
  • 僧帽弁逆流でも音が小さいときにはⅠ音とⅡ音の聴取は可能である
  • YouTubeのフィジカル Stanford Medicine 25 はお薦め(例:AR)
  • MRは3分類:変性(MVP他),心室性(テザリング),心房性(弁輪部拡大)
  • 心房性MRでは左腋窩でⅢ音(S3)が聴取しやすい
  • Ⅰ音の規定因子は心収縮力・タイミング(弁の開放程度)・弁自体
  • S雑音(S murmur)は鎖骨下部~心尖部までS字状に伝播(過収縮で出現?)
  • 外傷部位や手術創の聴診を行うこと(シャントから高心拍出性心不全など)
  • 前尖の僧帽弁逸脱では背中や椎体で雑音を聴取する
  • 血液の比重は1.05
  • 息切れ+S3 ➜ 心不全(非代償性),胸痛+S4 ➜ ACS(急性冠症候群)
  • 「知りたいことはすべてオンラインにある」
  • Muehrcke line は爪下の浮腫なので爪の発育によって移動しない
  • Mees’ lineは爪自体の異常:爪の発育で移動して圧迫では消えない
  • 手掌・足底の皮疹はPHSと覚える:P 掌蹠膿疱症・H 手足口病・S 梅毒
  • 羽ばたき振戦は高CO2血症でも生じる
  • Lincoln singはARによる足の拍動(リンカーン大統領の写真で足のぶれ)
  • 拳骨テスト(Fist sign)は先端巨大症で手を握っても爪が隠れない(容積増大)
  • 胸部X線は側面像から見る(見逃しやすいところから始める)
  • 心房細動では頸静脈波のx谷が浅くなる
  • ADSの右脚ブロックは一次孔欠損なら左軸,二次孔欠損なら正常軸または右軸

聞き間違いがあるかも...😅スイマセン

💁 忘備録に関する過去投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)