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2021-12-30

👴 歴史クイズ




松下記念病院 川崎達也)

2021-12-27

🔥 脱水時の身体所見

所見 感度 特異度
腋窩の乾燥 50% 82%
口腔や鼻粘膜の乾燥 85% 58%
舌の皺 85% 58%
眼球陥没 62% 82%
(McGee S. Evidence-Based Physical DIagnosis. 2001)

👶 おまけ
  • 脱水指標として皮膚ツルゴールの低下やCRT(capillary refilling time/爪床血流充填時間)が有名
  • しかし高齢者では健常でもツルゴールの低下やCRTの延長を認めることがあるため注意が必要です


  • 中心静脈圧が正常でも臥床なら頸静脈拍動を観察できます(無料アプリ:ポケット・フィジカルの自験例).よって臥床(特に枕なし)で頸静脈拍動がなければ脱水を疑う必要があります.
  • しかし拍動が軽微な症例もあり,頸静脈所見は中心静脈圧の上昇時ほど力を発揮できません.そこで下肢挙上です.前負荷増大で頸静脈の拍動が出現すれば脱水であったことが示唆されます.
  • 頸静脈所見の変化は急速補液による輸液反応性として用いることも可能です. なお脱水なら血管内脱水(Volume depletion)と血管外脱水(dehydration)の鑑別もね(過去の投稿)😛

※ 以前に松下ERランチカンファレンスに投稿した内容の更新版です 🎶

松下記念病院 川崎達也)

2021-12-23

沈黙の臓器

息切れで受診した在宅酸素中のCOPD症例

💣 解説
  • 腹式呼吸+ビア樽状胸郭はCOPDに合致(ただしフーバー徴候はなし)
  • 右季肋部〜心窩部(付箋の貼り付け部)に拍動あり ➜ 肝拍動の疑い
  • 拍動のパターンは収縮期に隆起(付箋よりも腹壁の方が分かりやすい)
  • 肝拍動は基本的に頸静脈拍動に類似 ➜ 巨大V波(三尖弁逆流)の疑い
  • 最終的にCOPDによる肺性心に関連した重症の三尖弁逆流と診断した

  • 身体所見は「頸静脈 ➜ 傍胸骨 ➜ 心尖拍動 ➜ 心音」と進めることが多いと思います.よって循環器外来では腹部はついつい忘れがちです(😯僕だけ?)しかしお腹の診察(特に初診時)はとても大切です.これは腹部大動脈瘤を見つけるチャンスだからです(自験例).外来で長年フォローしてる心疾患の患者さんが,腹部動脈瘤の破裂で死亡する悲劇は主治医として何が何でも回避!
  • 実際に肝拍動が診断にとても有用だったケースはあまり経験しません(収縮性心膜炎の自験例).その他の身体所見(頸静脈や心音など)で診断できることが多いからかもしれません.しかしフィジカルを愛する医療従事者としては,肝臓のアピールには是非,気がついてやりたいものです.とてもおしゃべりな心臓(心音・心雑音=心臓語)と違って,肝臓は沈黙の臓器なのですから…

松下記念病院 川崎達也)

2021-12-20

心尖拍動:立ち位置は右 or 左?

労作時の息切れで来院した症例をベット右側から臥床で視診
(画面左側が患者頭側で,白タオルは乳房をカバーしている)

😗 解説
  • 接線方向で観察した心尖拍動が周期的に上方偏位
  • 心尖拍動は持続時間の長い抬起性 ➔ 心肥大の疑い
  • 拍動と胸骨正中は10cm以上離れている ➔ 心拡大
  • 心エコー図で弁膜症による遠心性肥大を確認した

🛏 独り言
  • 身体所見を臥床で評価するとき「ベットの右側から行うか左側から行うか」はちょっとした問題です.ただ心エコー図と同様にベットの右側からが主流派でしょうか?
  • 右側のメリットはなんといっても,右内頸静脈を観察しやすいことです.心尖拍動は逆サイドで少し遠くなりますが,接線方向の評価は意外に役立ちます(実例).
  • 一方,左側のメリットは何と言っても心尖拍動を目の前でくまなく観察できることです.本ページでアップしている心尖拍動の動画も多くが左側からの記録です.
  • 個人的にはまずベットの右側から身体所見を観察するようにしています.そして心尖拍動をより細かく観察したいときのみ患者さんに向きを変えてもらっています.

松下記念病院 川崎達也)

2021-12-16

👀 眼クイズ

労作と無関係の胸痛が主訴の中年男性



(投稿者 川崎)

2021-12-13

視覚は意外と頼りない?

拡張期の心雑音を指摘され来院した症例



松下記念病院 川崎達也)

2021-12-09

奇脈 Pulsus Paradoxus

  • 吸気時に収縮期血圧が10mmHg以上低下する病態(通常でも低下するが10mmHg未満である)
  • 機序:吸気 ➜ 右室への灌流増加による左室拡張制限+肺血管床拡大による左室への灌流減少
  • 心タンポナーデで有名だが,重症の肺塞栓COPD悪化緊張性気胸などでも出現することあり

実際の測定方法:スタンフォード大学(英語の勉強も兼ねて😳)


※ 以前に松下ERランチカンファレンスに投稿した内容の更新版です 🎶


松下記念病院 川崎達也)

2021-12-06

感心して感心される

冠動脈バイパス術後の慢性左心不全症例(端座位で呼吸調整なし)

💕 ただいま診察中
  • 左乳輪内側に周期的な陥凹あり ➜ 左室心尖の拍動で心拡大を積極的には疑わない
  • 心窩部の少し左にも周期的な陥凹があって吸気時により明瞭化 ➜ 右室拍動の疑い
  • 左乳輪内側の心尖拍動を見直すと呼吸性変動はない ➜ やはりこちらは左室を反映
  • スローモーション(0.2倍速)で左室心尖拍動に少し遅れて右室拍動が生じている

拍動の呼吸性変動として,吸気時の右心系への静脈還流増加が考えられます(リベロ・カルバイヨ徴候と同じ原理).しかし本例では吸気と拍動出現の時相がほぼ一致しているため,肺容積の増加に伴い右室がより胸壁に近づいているためと思います(リベロ・カルバイヨ徴候は吸気から少し遅れて出現).

左室心尖拍動に少し遅れる右室拍動は動画では分かりにくいかも知れません.しかし親指と人差し指を拍動部位に置けば,その拍動のズレは明瞭でした(触ってなんぼの法則).CRT(Cardiac Resynchronization Therapy=心臓再同期療法)でもVV delayの設定はLV firstとすることが少なくありません(過去の投稿).

このようなことを考えながら患者さんの胸壁を暫くの間じっと見つめていました.これらの所見に何か臨床的意義があるのかと問われると少し困りますが,身体所見は常に正直だな〜と感心します.(おまけ:1分ほど胸壁を凝視していたため,熱心な先生だなと患者さんに感心されました😅)

松下記念病院 川崎達也)

2021-12-02

mmHg 🔃 cmH2O

  • mmHg ➜ 血圧(体血圧),左室拡張末期圧,肺動脈圧などの単位 
  • cmH2O ➜ 身体所見での頸静脈圧の単位(正常参考値 4-8 cmH2O)
  • 脳脊髄液の単位もmmHgではなくcmH2Oを使用(正常参考値 5-18)
  • ただし厳密には水でないからmmCSFやcmCSFと表記されること有

両者の換算 🔃 1 mmHg = 1.36 cmH2O  あるいは 1 cmH2O = 0.74 mmHg
🙋 その理由はもちろん「銀の比重が水の比重より13.6倍大きいから」です

※ 以前に松下ERランチカンファレンスに投稿した内容の更新版です 🎶

松下記念病院 川崎達也)

2021-11-29

視診による重症度診断:大動脈弁逆流

拡張期雑音を指摘され来院した症例(症状なし)

📡 視診にこだわった実況中継
  • 臥床で頸部の周期的な隆起があり,静脈性なら巨大v波(三尖弁逆流など)で動脈性ならコリガン脈(大動脈弁逆流)と考えられる.外頸静脈の拍動は臥床+枕ありで頸部中央であるため,明らかな中心静脈圧の上昇はなさそう.つまり静脈性の巨大v波(ランチシ徴候)は否定的.しかし端座位でその陽性波は,臥床よりも不明瞭になっている.コリガン脈であれば通常,重力による虚脱増強のため臥床より座位の方が分かりやすいことが多い(自験例).少し悩んだが肘部内側の反跳脈を確認して,最終的に大動脈弁逆流と視診フィジカル診断した.その後に行った触診では明らかに動脈性拍動で,心エコー図で中等度の大動脈弁逆流を確認した.

本例では体位と陽性波の関係で,フィジカル診断に迷いが生じました.触診あるいは呼吸負荷に対する反応,聴診の併用などで両者の鑑別(動脈性 vs 静脈性)は容易と考えられます.しかし脈に触れたい想いをぐっと我慢して,あくまでも視診にこだわってみました.本例はコリガン脈でありながら臥位でより明瞭であった理由は不明ですが,大動脈弁逆流の程度が一因であった可能性があります.重症であれば重力に抗して大きな陽性波が形成されますが,中等症ではそこまでの拍出量はないのかもしれません.大動脈弁狭窄ではフィジカルで重症度の診断技術が(ある程度)確立されています(過去の投稿).是非,大動脈弁逆流でも挑戦していきたいと思います.

    松下記念病院 川崎達也)

    2021-11-25

    レバイン分類の7度 😊

    胸から音がすると言って来院した症例

    💣 解説
    • 収縮期雑音があり期外収縮の後に著増(概ね10倍以上)
    • 駆出性雑音では先行RR間隔が延長時に音量は増大する
    • しかし大動脈弁狭窄の増大はせいぜい2倍まで(自験例
    • 本例の様に著明に増加する症例は閉塞性肥大型心筋症!
    • 予想通り心エコー図で流出路狭窄を確認した(動画後半)

    👂 独り言
    • 本例は心室期外収縮が散発してたため,患者さん自身が述べるように時々,胸から心雑音が聞こえました.レバイン分類では最も大きい音を6度(聴診器が胸壁に触れなくても聴取可能)に分類します.本例では聴診器すら不要な巨大な雑音でした(勝手にレバイン7度と命名 😊).人工弁の機械音も聴診器なしで聞こえることがありますが,これは雑音ではないのでレバイン分類は適応されません.

    松下記念病院 川崎達也)

    2021-11-22

    レバイン分類

    🔉 世界中で使用されている心雑音の強度の分類(Levine grading scale)

    1度
     極めて弱い雑音で聴診器を当ててもすぐには認識できない
    2度
     弱い雑音であるが聴診器を当てれば即座に気がつく
    3度
     中等度の雑音で振戦(スリル)を伴わない
    4度
     強い雑音で振戦(スリル)を伴う
    5度
     とても強い雑音であるが聴診器を胸壁から離すと聞こえない
    6度
     極めて強い雑音で聴診器が胸壁に触れなくても聞こえる


    👻 おまけ
    • Samuel Albert Levine (1891–1966) はポーランド生まれで3歳で米国へ
    • Levineのオリジナル論文()には,4度に振戦(スリル)の記載はない
    • 当初は収縮期雑音の分類であったが,拡張期雑音への転用を本人も容認
    • ポリオという用語を初めて使用(正確にはPoliomyelitis/急性灰白髄炎)
    • その名は頻脈発作を生じるLGL症候群の Lown–Ganong–Levine にも残る
    • 名前の発音を聞かれた時にレッドワイン(赤ワイン)とお茶目に答えたレバイン

    ※ 以前に松下ERランチカンファレンスに投稿した内容の更新版です 🎶


    松下記念病院 川崎達也)

    2021-11-18

    挑戦は続く!

    心不全が疑われ当院を紹介受診した症例

    👾 解説
    • 収縮期駆出性雑音があり心基部でもⅡ音は不明瞭 ➜ 重症の大動脈弁狭窄の疑い
    • 音量は大きくはない(当院は統一スケール)➜ 必ずしも重症度を反映せず(
    • 頸動脈は緩徐な立上りで上昇脚に小振動(鶏冠状波形/shudder wave)➜ 確診
    • 心エコー図では最高血流速度が5.0m/s以上の超重症の大動脈弁狭窄症であった

    👽 AS vs Physical examination
    • 大動脈弁狭窄症は身体所見で診断すべきですが,その重症度判定にはやはり心エコー図に分があると思います.頸動脈波形は高い特異度(ルールイン=確定)を持っていますが(下表),本例のように明瞭に観察されることは稀です(自分の技術不足もありますが…😂).でも心エコー図には挑み続けたいと思っています.


    💁 大動脈弁狭窄に関する過去の投稿 ➜ コチラ

    松下記念病院 川崎達也)

    2021-11-15

    大動脈弁狭窄の重症度と音量

    📖 弁膜症治療ガイドライン2020年改訂版)の63ページ
    • 「なお,ASが進行して左室機能障害をきたし一回拍出量が低下すると収縮期雑音は小さくなるので,収縮期雑音の強弱で病態の重症度を判断するのは誤りである.」

    😟 呟き
    • 左室駆出率が低下してくれば,いわゆる”Low-Flow/Low-Gradient Aortic Stenosis(低流量低圧較差大動脈弁狭窄)”になるため雑音の音量が低下することは理にかなっています.しかし収縮力が保たれている症例でもあまり音量が大きくない重症例をしばしば経験します.そこで手持ちの心音図を比較してみました(当院の心音図はすべて同一のスケールで記録/選択バイアスは否定できませんが作為的な操作は一切なし/左室駆出率は全症例で正常)


    松下記念病院 川崎達也)

    2021-11-11

    🏆 論文

    • 当院の循環器内科に勤務されている車古先生が執筆した論文が出版されました
    • 人名が冠せられた複数のフィジカル所見を有した大動脈弁逆流症例の一例です
    • 網膜動脈の拍動であるベッカー徴候(Becker's sign)が美しく記録できました
    • 速脈(pulsus celer)を反映し大動脈弁逆流以外に甲状腺機能亢進などで出現


    👀 おまけ
    • ベッカー徴候は有名な身体所見の割には,論文やYouTubeを検索しても動画を見つけることができませんでした.眼底動脈をムービーとして記録する方法が確立されていないことが一因かもしれません.
    • 本例ではOCTを撮影する装置のモニター画面をスマホで動画として記録しています(OCT像ではありません).世界初(?!)かもしれない動画なので,よければご覧ください ➜ ココのVideo 2をクリック
    • 眼底鏡でも眼底動脈のダイナミックな拍動がカラー像で観察できましたが,こちらはうまく記録できませんでした(接眼部とスマホカメラのピントが合わず 😥).協力していただいた眼科の皆様には本当に感謝

    👿「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

    松下記念病院 川崎達也)

    2021-11-08

    意外に都合よく出ています

    息切れで来院した症例の心音(心尖部

    🐤 解説
    • 高調な収縮期雑音(楽音様)でⅡ音は不明瞭 ➜ 僧帽弁逆流?
    • 先行RRが長い3つ目の音は音量が少し大きい ➜ 駆出性の雑音
    • よって本例はガラヴァルダン現象を伴う大動脈弁狭窄の疑い
    • 実際にその後の心エコー図で重症の大動脈弁狭窄を確認した

    🐦 独り言
    • 聴診で大動脈弁狭窄と僧帽弁逆流の鑑別に悩むケースが少なくありません.Ⅱ音の有無が最大のポイント(前者では明瞭で後者では不明瞭:実例)ですが,例外も散見されます.
    • 重症の僧帽弁逆流症では収縮期雑音がダイアモンド型になり,Ⅲ音も高調化してⅡ音に似ることがあります.そのような症例ではますます大動脈弁狭窄と鑑別が難しくなります.
    • そんな時には下図で示す様に期外収縮後の音量変化が鑑別診断には有用です.収縮期雑音は,駆出性なら音量が増加しますが,逆流性雑音では変化しません(心房細動症例で耳を訓練😊)
    • 洞調律例では「そんなにタイミングよくPVCはでないよ」という声も聞こえてきそうですが,来院するような症例では意外に出ています(むしろ気づいてないほうが多いのでは…😗)


    松下記念病院 川崎達也)

    2021-11-04

    爪には爪を A nail for a nail

    数ヵ月前から労作時の息切れを感じるようになった症例



    松下記念病院 川崎達也)

    2021-11-01

    ココでは聴診より触診

    胸痛で来院した症例の心音(心尖部)と心尖拍動

    🍘 臨床現場
    • 収縮期に雑音があり明瞭なⅡ音を認識できるため,逆流性雑音ではなくて駆出性雑音と判断.雑音が鎖骨や頸部にも放散しているため,閉塞性肥大型心筋症ではなくて大動脈弁狭窄と予想.引き続き行った心エコー図で大動脈弁狭窄(中等度)を確認して一安心(僧帽弁逆流であることは稀でない).
    • ただし心音図をみてビックリ.大きなⅣ音(赤四角)と心尖拍動のA波増高(赤矢印)が記録されていた.もう一度聴診をやり直したが,Ⅳ音はうまく聞き取れなかった.一方,心尖部を丹念に探ると二峰性拍動が指先に伝わってきた.Ⅳ音はしばしば聴診より触診である(いわゆる触ってナンボの法則
    • このダブルインパルス(A波+抬起性拍動)は触知するⅣ音+左室肥大を反映する所見で,肥大に伴った心筋コンプライアンスの低下を生じる病態で出現しやすいことが知られている.その代表疾患は肥大型心筋症(自験例)であるが,大動脈弁狭窄に加えて高血圧性心疾患(自験例)などでも認める.

    🍙 独り言
    • 大動脈弁狭窄のような大きな駆出性雑音では耳に(勝手に)フィルターがかかります.音柱の宇髄天元になったつもりで全集中しても,Ⅳ音の有無の判定は困難です(Ⅰ音すら不明瞭 😅)
    • こんな時は聴診にこだわらずに,触診に切り替えてください.指先は超高感度の圧センサーです.二峰性心尖拍動なら触診>舌圧子>視診の順に分かりやすいと思います(個人的感想 😋)
    • 一方,閉塞性肥大型心筋症のⅣ音は,心雑音があっても大動脈弁狭窄より認識しやすいと思います(自験例).雑音の直前に引っ掛かりがあります(これも個人的な感覚ですが 😤)

    松下記念病院 川崎達也)

    2021-10-28

    😤 緊急以外は病歴と身体所見で!

    当院の検診センターから心電図異常で当日紹介(座位の頸部所見)



    松下記念病院 川崎達也)

    2021-10-25

    👥 動脈と静脈の共演

    横になると苦しいと訴える症例の頸部(端座位で呼吸調整なし)

    😐 解説
    • 外頸静脈上縁の上下運動が明瞭 ➜ 外頸静脈で中心静脈圧の測定が可能
    • その拍動上縁は鎖骨上(Tシャツの丸首内)➜ 中心静脈はおそらく上昇
    • その拍動にばらつきあり ➜ 呼吸性変動に加えて不整脈(心房細動)?
    • 内側に一瞬で上方まで伝わる鋭い隆起あり ➜ 動脈性(コリガン脈)?
    • 動脈拍動の直後に上方に向かう外頸静脈隆起 ➜ v波(ランチシ徴候)?
    • 短い先行RR(動画内の★)では,動脈拍動は小さく静脈拍動は大きい
    • 本例は複数弁の中等度逆流と心房細動による非代償性の心不全でした

    😋 追加コメント
    • 駆出性雑音は先行RR時間に応じて音量がすることが知られています(短いと小さく長いと大きい).一方,逆流性雑音の音量は,先行RR時間には(ほとんど)影響を受けません.本例では,この先行RR時間が血行動体に及ぼす影響を,頸静脈と頸動脈の視認を通じて確認できた面白い症例だと思われます.
    • 頸静脈と頸動脈の共演は本コンテンツでも何度か触れてきました(例:自験例1自験例2).ただし診察室でその共演に気がつくことは意外に稀かもしれません.僕はいつも主役(目立つ方)に気が取られてしまいます.スマホに記録した動画を後で確認して,その共演に気がつく次第です…単に修行不足😅

    松下記念病院 川崎達也)

    2021-10-23

    👴 歴史クイズ




    松下記念病院 川崎達也)

    2021-10-21

    フィジカル三原則 🙈 🙉 🙊

    下腿浮腫で受診した高齢者の指爪



    松下記念病院 川崎達也)

    2021-10-18

    👴 歴史クイズ





    松下記念病院 川崎達也)

    2021-10-14

    👀 眼クイズ

    意識レベル低下と発熱で総合診療科に入院した症例



    松下記念病院 川崎達也)

    2021-10-11

    ダ・ヴィンチと大動脈二尖弁

    • 大動脈二尖弁を初めて記載したのはルネサンス期を代表するイタリアの芸術家レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci; 1452-1519)
    • ちなみにダ・ヴィンチはヴィンチ村出身を意味するため,個人名としてはレオナルドを用いる(類例はOccam's razorで有名なオッカム

    🆀 では実際のスケッチではどこに二尖弁がある?  
    🔮 おまけ
    • レオナルド・ダ・ヴィンチと言えばモナリザや最後の晩餐などの絵画です.しかし67歳という当時としては長寿にも関わらず,僅か15作品(11作品説もあり)しか残していません.一方,上記の解剖図などのスケッチは1万ページにも達します.これは彼が完璧主義者で,徹底的に調査するまで妥協しなかった性格のためだと言われているようです.もっともページの隅に記載された大動脈二尖弁は,あまり精密ではありませんが…😅

    💁 大動脈弁に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

    松下記念病院 川崎達也)

    2021-10-07

    身体所見 vs 理学的所見 vs 現症

    1. 「〜様々な身体所見(従前の理学的所見)を教授され〜」(心音ふしぎ探検. 南行堂.坂本二哉著
    2. 身体所見:医師が五感を用いて患者の異常の有無を調べる方法。理学所見ともいうが、これは英語の 'physical examination' に対する誤訳である(Wikiの診察)/理学とは基本的に自然科学の別名であり、特に物理学・化学・天文学などを指す(Wikiの理学
    3. Physicは古い英語で「医学」を指し、Physicsは「物理学」をさすと指摘した上で、理学所見はphysicとphysicsを訳し間違えたことによる誤訳(日野原重明.日本語の医学用語と英語の医学用語の違い.日本医学教育学会会誌 2011;10:44-9)
    4. 循環器学用語集(第4版)➜ physical examination=身体検査、身体診察
    5. 日本医学会医学用語辞典 ➜ physical examination=診察,体格検査,生体観察,身体的検査,身体的診察/physical finding physical sign=身体所見,身体的徴候(ただし1975年の『医学用語辞典』ではPhysical examinationに対して「身体検査」「理学的所見」と二つ併記されている:引用

    😭 個人的な嘆き
    • 日本内科学会の病歴要約 作成と評価の手引きJ-OSLER版では,この身体所見を【入院時現症】として記載するように指導しています.同ファイルの中には,現症という表記が17回も登場しますが,身体所見という表現はたったの1度です(実際の文言:高熱や視力障害などの疑わしい徴候があれば身体所見がない場合でも側頭動脈生検を考慮する必要がある).なにゆゑ...

    👮 このテーマに関しては超絶調査😱ページがあり ➜ その1その2
    松下記念病院 川崎達也)

    2021-10-04

    心音での大動脈弁狭窄の重症度

    中等度



    高度



    💣 有意な大動脈弁狭窄を示唆する心音の特徴
    1. Ⅱ音の不明瞭化(心基部で判断すること)
    2. 雑音のピークが収縮期の後半に移動する
    3. 音の大きさは必ずしも重症度と関連しない

    ※ 以前に松下ERランチカンファレンスに投稿した内容の更新版です 🎶

    松下記念病院 川崎達也)

    2021-09-30

    こだわらない方も多いと思いますが…

    😗 確認事項
    • ローマ数字 = I, II, III, IV, V, VI, VII, VIII, IX, X...
    • アラビア数字 = 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10...

    😅 マイルール
    • 心音の表記は基本的にローマ数字 ➜ I音,II音,III音,IV音
    • 心音でアラビア数字を使いたい時 ➜ 第1音,第2音,第3音,第4音
    • 心雑音のレバイン分類はアラビア数字 ➜ 1度,2度,3度,4度,5度,6度

    ※ 以前に松下ERランチカンファレンスに投稿した内容の更新版です 🎶

    松下記念病院 川崎達也)

    2021-09-27

    頸静脈クイズ

    便秘と急激な体重増加で消化器内科を受診した症例(座位で記録)



    松下記念病院 川崎達也)

    2021-09-23

    👴 歴史クイズ

    (Public Domain)



    松下記念病院 川崎達也)

    2021-09-20

    ギャロップ=襲歩

    🐎 馬のには基本的に4種類の 歩法 ほほう があります

    英名 邦名 速度(平均)
    Walk 常歩(なみあし) 6 km/h
    Trot 速歩(はやあし) 13 km/h
    Canter 駈歩(かけあし) 20 km/h
    Gallop 襲歩(しゅうほ) 69 km/h

    (Public Domain: Horse gait in Wiki)

    🐴 独り言
    • ギャロップは通常,過剰心音を伴った頻脈時に聴取されますが,頻脈は必須でないという方も少なくないと思います.したし馬の一歩法であるgallopの邦訳が襲歩(しゅうほ)であることを考慮すると,個人的にはギャロップに頻脈は必要だと思っています.
    • 臨床現場ではあまり耳にしませんが,比較的遅い脈拍で過剰心音を伴うときはcanter(キャンター)と言うことがあるようです.いわゆる三部調ですが,これはまさに上記表の駈歩です.様々な心音を聞いて自分基準を持ってください ➜ ギャロップ音辞典

    ※ 以前に松下ERランチカンファレンスに投稿した内容の更新版です 🎶

    松下記念病院 川崎達也)

    2021-09-16

    😩 心電図前に診断できたらカッコよかったのに...

    突然発症の胸痛でERに搬入された症例



    松下記念病院 川崎達也)

    2021-09-13

    へグリン症候群 Hegglin syndrome

    • QT延長とQ-IIA(Ⅱ音の大動脈成分)短縮(その差≧40 msec:下図)を示す病態(≒II音の早期出現)
    • 原発性の心筋エネルギー代謝障害に由来する心不全でHegglinらが提唱した観念(Klin Wschr 1937;16:1146-7)
    • 同病態では心筋線維の"Adynamie"のために心室の力学的・電気的収縮の終了を待たずに半月弁が閉鎖する
    • 様々な疾病(特に末期)で出現:悪性腫瘍,肝疾患,代謝性疾患,腎不全,重症の薬物中毒,下痢など


    😲 独り言
    • 時代を反映した病態で,現在ではその診断意義は乏しいように思われます.しかし心音図や心機図が大活躍した時代で,心臓の代謝まで評価しようという試みにはとても驚かされます.心音の奥深さを再認識しました.

    松下記念病院 川崎達也)

    2021-09-09

    心+肺=心配です

    消化器疾患の術前症例:端座位の左前胸部(通常呼吸)

    🐌 解説
    • 左乳輪下に周期的な心尖拍動 ➜ 2肋間にわたるため心拡大(基準
    • 心尖拍動(本例は陥凹)の持続時間が長く抬起性 ➜ 心肥大もあり
    • よく見ると心尖とは独立した肋間の陥凹(矢印)➜ フーバー徴候
    • 本例の最終的な診断は陳旧性心筋梗塞+高血圧性心疾患+肺気腫
    • 周術期リスクは低くないが十分に説明し同意を得た上で手術施行

    🐑 独り言
    • 心尖拍動が収縮期の陥凹(systolic retraction)であったため収縮性心膜炎が一瞬頭をよぎりました.しかし頸静脈にフリードライヒ徴候クスマウル徴候典型的な自験例)はなく,ノック音も聴取したなかったため今回は冷静でした(前回の失敗
    • COPDに心疾患が合併する場合,心尖拍動は収縮期陥凹が稀ではないかもしれません.肺が過拡張しているため陥凹として視認される方が理にかなっています.ただしCOPDでは心尖拍動は観察されない or 心窩部へ移動していることが基本です(

    松下記念病院 川崎達也)