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2021-12-06

感心して感心される

冠動脈バイパス術後の慢性左心不全症例(端座位で呼吸調整なし)

💕 ただいま診察中
  • 左乳輪内側に周期的な陥凹あり ➜ 左室心尖の拍動で心拡大を積極的には疑わない
  • 心窩部の少し左にも周期的な陥凹があって吸気時により明瞭化 ➜ 右室拍動の疑い
  • 左乳輪内側の心尖拍動を見直すと呼吸性変動はない ➜ やはりこちらは左室を反映
  • スローモーション(0.2倍速)で左室心尖拍動に少し遅れて右室拍動が生じている

拍動の呼吸性変動として,吸気時の右心系への静脈還流増加が考えられます(リベロ・カルバイヨ徴候と同じ原理).しかし本例では吸気と拍動出現の時相がほぼ一致しているため,肺容積の増加に伴い右室がより胸壁に近づいているためと思います(リベロ・カルバイヨ徴候は吸気から少し遅れて出現).

左室心尖拍動に少し遅れる右室拍動は動画では分かりにくいかも知れません.しかし親指と人差し指を拍動部位に置けば,その拍動のズレは明瞭でした(触ってなんぼの法則).CRT(Cardiac Resynchronization Therapy=心臓再同期療法)でもVV delayの設定はLV firstとすることが少なくありません(過去の投稿).

このようなことを考えながら患者さんの胸壁を暫くの間じっと見つめていました.これらの所見に何か臨床的意義があるのかと問われると少し困りますが,身体所見は常に正直だな〜と感心します.(おまけ:1分ほど胸壁を凝視していたため,熱心な先生だなと患者さんに感心されました😅)

松下記念病院 川崎達也)

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