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2023-10-12

今週の一枚 🎯

労作時の息切れで来院した男性(座位)

😎 解説
  1. 吸気時の肋間陥凹(フーバー徴候:矢印)➜ 後に慢性閉塞性肺疾患 COPD と診断
  2. 男なのに乳房の発達(女性化乳房:矢頭)➜ 前立腺ガンでホルモン療法中が判明
  3. 心尖拍動の外方偏位+抬起性拍動(○)➜ 肥大型心筋症による慢性心不全と診断

😁 追加コメント
  • COPDでは肺容積が増加して滴状心になるので,心拡大は一般的ではありません.しかし心不全(NT-proBNP上昇や肺水腫,胸水貯留)を合併するようになると心胸郭比(CTR: cardio thoracic ratio)は増加してきます(Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2018;13:217-29).
  • 肥大型心筋症では硬い心室が特徴のため心室拡大は稀です(拡張相・エンドステージHCMを除く).しかし心不全を伴うHCMでは心房拡大の結果,心拡大を呈することが決して少なくありません.左房容積は心尖拍動の左方偏位に最も関連する因子です(J Cardiol 2021;78:136-41).

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎達也)

2023-09-11

🏆 論文

  • 当院初期研修医の間瀬先生が循環器内科で経験した症例が出版されました🎉
  • 薬剤性体液貯留による過収縮から流出路狭窄を伴う心不全を生じた症例です
  • LVOTの改善にはベータ遮断薬ですが,著明な全身浮腫もあり躊躇しました
  • トルバプタンは効果なし ➜ 最終的には利尿薬の調整で徐々に改善しました

🚀 告白
  • 本例では身体所見から心不全であることは容易に診断できました(推定の中心静脈圧は18 cmH2O).しかし心エコー図のレポートを見てびっくり 😳 なんと左室流出路狭窄が記載されているではありませんか.
  • 改めて身体所見を取り直すと頸動脈拍動はスパイク&ドームで,座位から立位で音量が増加する収縮期雑音でした.超反省 😰 その後は(主治医ではなかったのですが)毎日聴診してエコー(連日計測)と対比

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2023-07-03

心尖拍動も体位依存

肥大型心筋症でフォロー中の症例(症状なし)

🐤 解説
  • 左半側臥位では明瞭な抬起性心尖拍動あり
  • よく見ると付箋の振動から二峰性心尖拍動
  • ただし仰臥位では心尖拍動は不明瞭になる
  • もちろん本例では巨大Ⅳ音を聴取かつ触知

🔗 復習
  • 心尖拍動は,その位置(心拡大と関連)や様式(心肥大と関連)などを評価することが大切です.ただし頸静脈と同様に,体位によってその所見が変化します(視認性や触知率も含む)
  • 感度的には左半側臥位がベストですが,座位も簡便で悪くないと思います(必要に応じて呼吸調整).最も分かりにくい(感度が低い)のは仰臥位ですが,逆に特異度は良好でしょうか

松下記念病院 川崎達也)

2023-06-22

プルプル心尖部

端座位の肥大型心筋症例

👀 解説
  • 心尖拍動を視認 ➜ 左乳輪内側で心拡大はなさそう
  • 心尖拍動はとても明瞭 ➜ 抬起性(心肥大)の疑い
  • よくみるとプルプルっとなっていて単峰性ではない
  • 触診でダブルインパルスがあり聴診では巨大Ⅳ音
  • 本例では剣状突起が目立っている(病的意義なし)

👶 独り言
  1. 通常の心尖拍動の他に拍動を認める場合(二峰性心尖拍動)は,心房性隆起(前収縮期)と心室性隆起(拡張早期)が考えられます.前者は聴診のIV音に相当し, 左室のコンプライアンスが低下していると考えられます(例:肥大型心筋症).後者は増大した左室への急速流入波あるいはIII音を反映します(例:高度の僧帽弁逆流).
  2. 個人的な経験では,視認で気づく二峰性心尖拍動の大部分は肥大型心筋症によるatrial kick(心房性隆起)です.マイ感度は触診≧聴診>視診の順です(過去の投稿).一方,ventricular kick(心室性隆起)はともて小さいので触知はできても視認することは極めて稀です.僕の感度は聴診>触診≫視診の順でしょうか?

松下記念病院 川崎達也)

2022-10-06

端座位の心尖拍動から…

弁膜症による慢性左心不全の評価目的で当院を紹介受診した症例

🐤 解説
  • 端座位で心尖拍動の最外側は左乳輪の左外側へ偏位 ➜ 心拡大の疑い
  • 乳輪下の心尖拍動は2肋間以上で観察可能(本例は3肋間)➜ 心拡大
  • 拍動は抬起性で吸気保持で少し明瞭化(ただ呼気保持でも観察可能)
  • 本例は胸部X線で心胸郭比は増加して,心エコー図で遠心性肥大あり

🐦 つぶやき
  • 心窩部にも拍動があり右室の反映と考えられます.よく見ると乳輪下の拍動(左室拍動)よりも右室拍動が少し遅れています(通常でも左室収縮は右室収縮に僅かに先行).
  • 吸気時には左室ー右室のタイムラグが拡大しているようです.おそらく吸気に伴う静脈還流の増加で右室の前負荷が増えて,収縮開始が少し遅延するのかな〜と考えます.
  • さらに吸気時に心拍数(拍動数)が低下しています.バルサルバ負荷で胸腔内圧が上昇すると心拍数は低下しますが,本例では吸気保持早期から心拍数の低下が目立ちます.
  • 吸気時(肺に酸素が多い時)には通常,心拍数が上昇します(より多くの酸素を血中に取り込むため).圧受容体を介する反応ですが,心不全例ではしばしば障害されています.


松下記念病院 川崎達也)

2022-07-04

心尖拍動:凹と凸

労作時の息切れで来院した女性の心尖拍動(白タオルは乳房上)

🐤 解説
  • 持続時間の長い心尖拍動+外側偏位の疑い(≒ 心肥大+心拡大)
  • 心尖拍動は収縮期に陥凹(systolic retraction)➜ 収縮性心膜炎?
  • よく見ると内側陥凹(↓)と同じタイミングで外側は隆起(▽)
  • 本例の最終診断は複数の弁膜症による慢性心不全(肺高血圧あり)

🐦 独り言
  • 本例は右室拡大や右室肥大はなく,左室の心尖拍動(隆起=凸)の牽引による右心尖周囲の偏位(陥没=凹)かな〜と考えました.
  • 凹と凸の時間関係に注目すると,先に凸が生じて少し遅れて凹が続いているようです 😳 心室収縮は左心ファーストが基本ですし...

松下記念病院 川崎達也)

2022-06-27

傍胸骨拍動の呼吸負荷

息切れで紹介受診した症例の傍胸骨拍動

🐦 解説
  • 第3肋間胸骨左縁に置いた聴診器の周期的な上下運動を確認
  • 隆起は待機時間の長い抬起性(容量負荷より圧負荷を示唆)
  • 深吸気保持を追加しているが傍胸骨拍動の所見に著変はない
  • 心エコー図で推定された肺動脈の収縮期圧は60mmHg程度

🐤 つぶやき
  • 頸静脈評価では吸気負荷(クスマウル徴候の有無の判定)が汎用されています(多分😅).しかし傍胸骨拍動の評価では,呼吸負荷の追加は一般的ではないと思います.個人的には時々行っていますが,あまり有用性を実感することはありません(本例でもそうでした).
  • 吸気負荷では中心静脈圧に加えて肺動脈圧や体血圧も上昇することが知られています(下図).よって理論上は吸気負荷で傍胸骨拍動も増強されるはずです.問題は吸気時に胸腔容積が増大して右室と胸骨の密着度が低下することです.きっと相殺されるのでしょうね.


松下記念病院 川崎達也)

2022-04-25

心尖拍動:仰臥位 vs 左半側臥位 vs 座位

突然の動悸で来院した症例

😀 解説
  • 仰臥位では心尖拍動を認めないが,左半側臥位では視認可能(一つ目の矢印)
  • 拍動が不規則で心房細動の疑い(左半側臥位では心拡大の有無の判定は困難)
  • 座位でも心尖拍動は明瞭(二つ目の矢印)で,心拡大なしと判断(乳輪内側)
  • 頻脈であり抬起性か否かの視覚的判断は難しいが,触診ではチカラ強い隆起
  • 最終診断は心尖部肥大型心筋症例に合併した発作性の頻脈性心房細動でした

😎 独り言
  • 心尖拍動の評価は伝統的に仰臥位で行われますが,検出率が低いため左半側臥位を併用することが常です(過去の投稿).しかし臨床現場では座位で心尖拍動を評価することが少なくありません(過去の投稿例).
  • 座位での評価は何と言っても簡便で,起座呼吸を呈している症例などにも適応できます.座位での頸静脈評価(簡易定性法)が普及してきたように,座位での心尖拍動評価がもっと普及することを期待しています.


松下記念病院 川崎達也)

2021-12-20

心尖拍動:立ち位置は右 or 左?

労作時の息切れで来院した症例をベット右側から臥床で視診
(画面左側が患者頭側で,白タオルは乳房をカバーしている)

😗 解説
  • 接線方向で観察した心尖拍動が周期的に上方偏位
  • 心尖拍動は持続時間の長い抬起性 ➔ 心肥大の疑い
  • 拍動と胸骨正中は10cm以上離れている ➔ 心拡大
  • 心エコー図で弁膜症による遠心性肥大を確認した

🛏 独り言
  • 身体所見を臥床で評価するとき「ベットの右側から行うか左側から行うか」はちょっとした問題です.ただ心エコー図と同様にベットの右側からが主流派でしょうか?
  • 右側のメリットはなんといっても,右内頸静脈を観察しやすいことです.心尖拍動は逆サイドで少し遠くなりますが,接線方向の評価は意外に役立ちます(実例).
  • 一方,左側のメリットは何と言っても心尖拍動を目の前でくまなく観察できることです.本ページでアップしている心尖拍動の動画も多くが左側からの記録です.
  • 個人的にはまずベットの右側から身体所見を観察するようにしています.そして心尖拍動をより細かく観察したいときのみ患者さんに向きを変えてもらっています.

松下記念病院 川崎達也)

2021-07-26

ダブルリトラクション(二峰性陥凹) Double retraction

健診で心電図異常を指摘された無症状の症例

💞 解説
  • 坐位で窩部左側に周期的な皮膚面の陥凹(心尖周囲には拍動なし)
  • 時相解析から収縮期陥凹と判断 ➜ 収縮性心膜炎で有名であるが…
  • よくみると陥凹は二峰性で小さい凹が抬起性の陥凹に先行(付箋)
  • 収縮性心膜炎を示唆する所見なく最終診断は非閉塞性肥大型心筋症

💕 迷?探偵
  • 本例の拍動は部位からも左室心尖の拍動とは考えられず,右室の拍動を見ているものと推測した.実際に本例では明瞭なⅣ音を聴取したが,心尖以外の広い範囲でも確認できた(つまり右心系Ⅳ音の疑い:いわゆるどこでもⅣ音).
  • この聴診所見は,本例のダブルインパルスならぬダブルリトラクション(収縮期の二峰性陥凹)が右心系の由来という推測を支持する.ちなみに本例は右室拡大や右室肥大はなく,左室の心尖拍動の牽引(?)による右心尖周囲の偏位と思われる.

松下記念病院 川崎達也)

2021-04-26

♒ ブルブル症例

健診で心電図異常を指摘された無症状の症例

👯 二峰性心尖拍動(Double apical impulse)
  • 触知できるⅣ音(atrial kick)+心肥大による抬起性拍動で構成されている.ダブルインパルスは触診では分かりやすいが,視診ではなかなか伝わりにくい(触ってナンボの法則 症例1症例2
  • 当院の最新データでは,二峰性心尖拍動は肥大型心筋症では83例中22例(27%)に観察できるが,他疾患では104例中2例(2%)とかなり稀.同所見の循環器外来での肥大型心筋症に対する診断能は感度27%,特異度98%,正診度66%

👬 独り言
  • 二峰性心尖拍動のように身体所見には様々な”二峰”があります.見て聴き触るブル+ブル=ブルブル=ダブルです.心臓フィジカル広場には多数のブルブル症例がアップされているので確認してみてください(コチラ
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination クスマール
松下記念病院 川崎達也)

2021-04-05

昔,よく公園で遊びました

心電図異常で来院した症例の座位左前胸部(以前に半日間持続する胸痛あり)

📏 解説
  • 拍動の最外側点が左乳房より外側 ➜ 心拡大
  • 拍動の観察が2肋間で可能である ➜ 心拡大
  • 隆起の持続時間が長い(抬起性) ➜ 心肥大
  • 隆起または陥凹が不規則 ➜ 心房細動の疑い
  • 外側拍動の隆起が陥凹の時相で内側が隆起!
  • シーソー運動 ➜ 収縮期バルジ(心室瘤?)
  • 本例の最終診断は身体所見の通りであった
  • つまり前壁心筋梗塞+心尖部瘤+心房細動

🐙 独り言
  • 広い範囲で胸壁の拍動を認める場合,内側拍動は右室のことがある.通常は左室収縮が右室収縮よりも少し先行するが(実例),本例のように隆起がシーソーのように観察されることはないと思う.
  • 心尖拍動図で駆出点(E)後に続く収縮後期の小隆起(end-systole shoulder, ESS)の増大はbulge(出っ張りや膨らみの意味)と呼ばれ, 出現時相で収縮中期と収縮後期に分類できる.
  • 収縮期バルジは虚血性心疾患や圧負荷(大動脈弁狭窄や高血圧性心疾患など),左脚ブロック,閉塞性肥大型心筋症,僧帽弁逆流などで生じるが,本例のような心室瘤によるlate systolic bulgeが分かりやすい.
  • 収縮期バルジは狭心症の症例でも認められることが報告されている(Chest 1974;65:169-75).たこつぼ心筋症でも出現すると思われるが,まだ経験したことはない.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-10-26

再登場:触ってナンボの法則

心電図異常を指摘された無症状の症例

🔗 肥大型心筋症
  • 触診では典型的な二峰性の抬起性心尖拍動であった.しかし視診や舌圧子(収縮期に左方移動)では分かりにくい.抬起性拍動は明瞭であるが,その直前にあるatrial kickはあまり伝わらない.
  • これも”触ってナンボの法則”が当てはまる.右手の第2〜3指腹を拍動部に当ててみる.ダブルインパルスは肥大型心筋症の特徴であるが,視診で明瞭に認識できる例は決して多くない(自験例).
  • 視診はわずかな色調差の認識は得意であるが,微妙な凹凸の判定は苦手である.一方,指腹は超高精度の圧センサーである.フィジカルをとるときには,視診・聴診・触診をうまく使い分けたい.

🉐 関連投稿(ダブルインパルス編)

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-09-28

関西風命名:触ってナンボの法則

心電図異常で来院した症例(持続する胸痛の既往あり)

🐧 解説
  • 収縮期に持続時間の長い外方運動=抬起性 ➜ 心肥大の疑い
  • その隆起は後半(収縮中期〜後期)が大 ➜ 収縮期バルジ
  • 収縮期バルジの存在 ➜ 心室瘤あるいは左脚ブロックを示唆
  • 本例の最終診断は陳旧性前壁心筋梗塞+心尖部瘤であった

🐦 コツ
  • 収縮早期の隆起+収縮中期〜後期の大きい隆起(収縮期バルジ)は,まるでふたコブラクダ🐫です.しかし視認で気がつくことは稀です.Atrial kickやventricular kickの視認が難しいのと同じ現象です.是非,触診で感じてください(個人的に関西風に命名:触ってナンボの法則).収縮期バルジは時相判定が必要であるため,動脈触診や頸静脈視診を併用した心尖部触診がおすすめです.

🐤 おまけ
  • 心尖拍動を用いた心拡大の評価は通常,仰臥位で行われます(実際の方法).しかし臨床では座位で評価しても問題ないと思います(実例).実際に胸部X線では心拡大の判定は立位像で行っています.
  • 本例のように心尖拍動が左乳輪の外側にあれば心拡大が強く疑われます.2肋間以上での拍動も心拡大を示唆します.座位の頸静脈評価(簡易定性法)が普及してきたのと同様に,座位の心尖拍動評価が現場でもっと活用されることを期待します.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-04-27

座位での心尖拍動

心尖部肥大型心筋症例の座位での心尖拍動

😀 解説
  • 左乳頭の下方内側寄りに心尖拍動を認める ➜ 心拡大はなさそう(ただし正確には仰臥位で判定
  • 拡大&スロー再生ではタッピングであるが二峰性? ➜ 実際の触診では抬起性の二峰性であった
  • 仰臥位で明瞭なダブルインパルスを確認 ➜ 二峰性の有無は座位より臥位・視診より触診実例

😳 独り言
  • 面白かったのは患者さんが「お風呂で胸まで浸かると湯面に輪っかが広がる」って教えてくれたこと.次回の診察までにその輪っかが一重なのか二重なのかを確認してもらうよう頼みました👀いつも患者さんがいろいろ教えてくれます🙇
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-03-30

心尖拍動クイズ

息切れで救急室に搬入された症例(約70度座位)


フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2019-12-19

肺動脈拍動

  • 息切れで来院した中年女性の胸部(第2肋間胸骨左縁に付箋)
  • 抬起性の傍胸骨拍動やⅡ音肺動脈成分の亢進+往復雑音あり


🐥 解説
  • 黄色付箋が周期的に拍動(隆起)している(左右の動画は同時相)
  • 隆起は2LSB〜Erb領域に限局し時相は収縮期 ➜ 肺動脈拍動の疑い
  • 聴診+触診でⅡ音の時相で僅かな振動 ➜ Ⅱ音肺動脈成分の触知
  • 本例の最終的な診断は心房中隔欠損症肺高血圧症+肺動脈拡大

👶 Erbの謎
  • Erb's point (cardiology)は第3肋間胸骨左縁付近でⅡ音が最も聴取しやすい場所として知られています.ドイツの神経内科医 Wilhelm Heinrich Erb (1840–1921)に由来しますが,彼は頸神経叢の皮枝が頸筋膜浅葉を貫通して胸鎖乳突筋の後縁から表層に出現する部位Erb's point (neurology)としての方が有名
  • 意外なことにErb自身の出版物としてErb's point (cardiology)に関する記載はないようです.しかし1890年代にErb自身がドイツのハイデルベルグで行った講義でErb's point (cardiology)について説明し,それ耳にした米国の医師の記録が最近発見されました(Dtsch Med Wochenschr 2018;143:1852-7
  • Erbと書いてエルと発音すると長年信じてきました(ただしエル派も少なくありません).循環器用語集には未登録で,Google Scholarでも同数(エル領域+心臓は4件,エル領域+心臓も4件).米国や英国の発音はアープスと聞こえるし,母国ドイツ人の発音は多様です.是非 ココ で確認してみて下さい.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2019-11-04

肥大型心筋症の心尖拍動図


😶 解説
  • 駆出波(E波)の後に収縮期膨隆が続く ➜ 持続時間の長い抬起性の心尖拍動
  • よく見ると抬起性心尖拍動の直前に心房収縮波(A波)あり ➜ Ⅳ音の触知
  • P波に関連するⅣ音と二峰性心尖拍動を視診・触診・聴診でしっかり感じたい

関連投稿 👴
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2019-05-23

女性の心尖拍動

  • 慢性血栓塞栓性肺高血圧症と診断されている症例の心尖拍動(左半側臥位で呼吸調整なし)


フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2019-05-13

心尖拍動のおさらい

👻 心尖拍動から以下の所見の有無が予想できる
  • 心拡大 ➜ 心尖拍動の最外側点が鎖骨中線より外側(男性なら乳房より外側)➜ 実例
  • 心肥大 ➜ 心尖拍動が抬起性(読み方:たいきせい)➜ 実例
  • Ⅲ音 ➜ 心尖拍動後に小さな拍動(ventricular kick)➜ 実例
  • Ⅳ音 ➜ 心尖拍動が二峰性(atrial kick/ダブルインパルス)➜ 実例

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)