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2020-08-10

高血圧性心疾患 HHD: hypertensive heart disease

難治性高血圧を有する症例(呼吸調整なし)


🔎 解説
  • 仰臥位では心尖拍動はほぼ確認できない ➜ 心拡大の有無は判定できない
  • 左半側臥位では乳輪の外側下方に抬起性の心尖拍動あり ➜ 心肥大の疑い
  • 心尖付近の紙付箋の拍動はよく見ると二段の動き ➜ 二峰性心尖拍動の疑い
  • 心エコー図で遠心性左室肥大を確認 ➜ 最終的に高血圧性心疾患と診断した

😗 独り言
  • 二峰性心尖拍動と言えば肥大型心筋症が有名である.しかし肥大を呈する他の疾患(高血圧性心疾患や大動脈弁狭窄症など)でも出現することがある.本例は「ベットで左を下にして寝るとマットのスプリングがいつもギュギュと軋み始める」ことを教えてくれた.「お風呂で胸まで浸かると湯面に輪っかが広がる」と教えてくれた患者さんも経験済み(コチラ).視診では少し分かりにくいが,触診ではその力強さにいつも驚かされる.侮るなかれ二峰性心尖拍動.

🉐 関連投稿(二峰性心尖拍動編)
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2021-06-03

怠け者? Definitely No!

労働現場で「気合が足らん」と言われていた症例

👹 所見の解説
  • 舌圧子の上方移動が二段である ➜ 二峰性拍動(pulsus bisferiens/biphasic pulse)
  • 同所見は閉塞性肥大型心筋症(spike and dome型)または大動脈弁逆流(鋭い2峰)
  • 本例の二峰性拍動は後半が前半より小さいが後半のフレも鋭い(dome型ではない)
  • 心エコー図で大動脈弁輪拡張と高度大動脈弁逆流を認めた(大動脈弁は三尖あり)
  • 肥大型心筋症の二峰性拍動は通常,後半成分が鋭くならない(自験例1自験例2

👺 独り言
  • 本例は舌圧子を用いなくても頸動脈の鋭い拍動(コリガン脈)を認めることに注目(頸部の中央を注視すれば二峰性も見えてくる).コリガン脈は座位の方がより明瞭に観察できることが多い(重力による虚脱増強のため:自験例).一方,肥大型心筋症であれば頸部の陽性波は通常,頸静脈のa波である(自験例).
  • 本例は労働現場ですぐに休みたがるため職場仲間から「気合が入っとらん!」と言われていたようである.一方,診察室に入って来られた瞬間にコリガン脈から診断したため患者さんと家族にとても驚かれた.「いままでいくつかの医療機関を受診したのに…」と聞いて逆にこっちが驚いた.

松下記念病院 川崎達也)

2023-06-26

分かりにくかった頸動脈二峰性拍動

全身浮腫と息切れで受診した化学療法中の担癌症例(臥床)

👶 解説
  • 左側の頸動脈拍動を伝える舌圧子に明瞭な上下運動あり
  • その動きは二峰性拍動(pulsus bisferiens/biphasic pulse)
  • 心エコーでは左室流出路狭窄,僧帽弁逆流,左室過収縮
  • 抗がん剤による体液貯留で生じた高拍出性心不全と診断

😅 診察室実況
  • 収縮期駆出性雑音(3度)があったため流出路狭窄も鑑別診断には含めたが,初回の頸動脈診察で二峰性拍動とは診断できなかった.心エコー図の結果(左室流出路圧格差>60 mmHg)に驚いて,頸動脈の診察をやり直した時の動画が上記である.
  • 頸動脈の2峰性拍動といえば閉塞性肥大型心筋症(spike and dome型:自験例)と大動脈弁逆流(鋭い2峰:自験例)が有名である.本例の様に反応性の過収縮から生じた左室流出路狭窄による2峰性拍動はあまり明瞭にはならないのだろうか?

松下記念病院 川崎達也)

2021-04-26

♒ ブルブル症例

健診で心電図異常を指摘された無症状の症例

👯 二峰性心尖拍動(Double apical impulse)
  • 触知できるⅣ音(atrial kick)+心肥大による抬起性拍動で構成されている.ダブルインパルスは触診では分かりやすいが,視診ではなかなか伝わりにくい(触ってナンボの法則 症例1症例2
  • 当院の最新データでは,二峰性心尖拍動は肥大型心筋症では83例中22例(27%)に観察できるが,他疾患では104例中2例(2%)とかなり稀.同所見の循環器外来での肥大型心筋症に対する診断能は感度27%,特異度98%,正診度66%

👬 独り言
  • 二峰性心尖拍動のように身体所見には様々な”二峰”があります.見て聴き触るブル+ブル=ブルブル=ダブルです.心臓フィジカル広場には多数のブルブル症例がアップされているので確認してみてください(コチラ
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination クスマール
松下記念病院 川崎達也)

2020-04-27

座位での心尖拍動

心尖部肥大型心筋症例の座位での心尖拍動

😀 解説
  • 左乳頭の下方内側寄りに心尖拍動を認める ➜ 心拡大はなさそう(ただし正確には仰臥位で判定
  • 拡大&スロー再生ではタッピングであるが二峰性? ➜ 実際の触診では抬起性の二峰性であった
  • 仰臥位で明瞭なダブルインパルスを確認 ➜ 二峰性の有無は座位より臥位・視診より触診実例

😳 独り言
  • 面白かったのは患者さんが「お風呂で胸まで浸かると湯面に輪っかが広がる」って教えてくれたこと.次回の診察までにその輪っかが一重なのか二重なのかを確認してもらうよう頼みました👀いつも患者さんがいろいろ教えてくれます🙇
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2021-07-26

ダブルリトラクション(二峰性陥凹) Double retraction

健診で心電図異常を指摘された無症状の症例

💞 解説
  • 坐位で窩部左側に周期的な皮膚面の陥凹(心尖周囲には拍動なし)
  • 時相解析から収縮期陥凹と判断 ➜ 収縮性心膜炎で有名であるが…
  • よくみると陥凹は二峰性で小さい凹が抬起性の陥凹に先行(付箋)
  • 収縮性心膜炎を示唆する所見なく最終診断は非閉塞性肥大型心筋症

💕 迷?探偵
  • 本例の拍動は部位からも左室心尖の拍動とは考えられず,右室の拍動を見ているものと推測した.実際に本例では明瞭なⅣ音を聴取したが,心尖以外の広い範囲でも確認できた(つまり右心系Ⅳ音の疑い:いわゆるどこでもⅣ音).
  • この聴診所見は,本例のダブルインパルスならぬダブルリトラクション(収縮期の二峰性陥凹)が右心系の由来という推測を支持する.ちなみに本例は右室拡大や右室肥大はなく,左室の心尖拍動の牽引(?)による右心尖周囲の偏位と思われる.

松下記念病院 川崎達也)

2019-09-12

肥大型心筋症の二峰性心尖拍動

  • 心室中部閉塞性肥大型心筋症の心尖拍動(左半側臥位)

🔎 解説
  • 心尖拍動は小さな振れ(atrial kick=A波=心房収縮波)の後に大きな振れ(抬起性)が続く二峰性のダブルインパルス(舌圧子は収縮期に画面右方に移動)
  • 左半側臥位での心尖拍動が左乳房下あたりなので心拡大はなさそう(心尖拍動は左半側臥位では仰臥位よりも左外側に1-2横指以上移動するため注意を要する)

  • ダブルインパルスの分かりやすさ ➜ 触診>舌圧子>視診(👴 個人的意見です)
  • 肥大型心筋症の抬起性および二峰性心尖拍動の頻度は以下(当院自験例より)
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2019-10-10

二峰性拍動 Biphasic pulse

  • 検診で心電図異常を指摘された症例の頸動脈(舌圧子は収縮期に上方に移動)

😶 解説
  • 舌圧子の鋭い上昇(spike)➜ 急峻な衝撃波(percussion wave)
  • その後の小さな隆起(dome)➜ 二峰性拍動(spike and dome型)
  • 同波形は閉塞性肥大型心筋症に特徴的 ➜ 心エコー図で確定診断
(本例の心機図:頸動脈波 👶 各要素の時間的な関連がとても美しい)

おまけ 👅 Pulsus bisferiensはBiphasic pulse(二峰性拍動)の別名です
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2023-11-09

今週の一枚 🎯 ゴニョゴニョ

心電図異常(洞調律・ST-T変化)で来院した男性(座位)

😎 診察室中継
  1. 呼吸時の大きな胸壁の動きにめげずに心尖の拍動を探す
  2. 心尖拍動(矢印)を認識したら次はその位置を確認する
  3. 拍動が左乳輪外側とは言えないため心拡大はないと判断
  4. 次に拍動様式を分析:なにか”ごにょごにょ”している?
  5. 触るってみると二峰性拍動(ダブルインパルス)の疑い
  6. 拍動部位で大きなⅣ音を聴診して肥大型心筋症を疑った
  7. その後に心エコー図で心尖部肥大を確認しAPHと診断

😁 楽しい臨床
  • 二峰性心尖拍動(ダブルインパルス)と言えば肥大型心筋症です(特異度98%:当院の臨床研究).心尖部肥大型心筋症に限らず,巨大Ⅳ音を示唆する所見です.視診・触診・聴診のいずれでも診断できますが慣れが必要でしょうか?
  • 最近は,二峰性またはダブルにはあまりこだわらなくていいのではと思っています.リアルの臨床現場では本例の様に胸壁の動きも加わるため細かい判定はより難しく成ります.「なにかゴニョゴニョしているな〜」程度で十分です.
  • 先月に経験した症例はHCMでギクシャクしている心尖拍動でした.視診から肥大型心筋症を疑い,心エコー図で確認する臨床スタイルは机上の空論ではありません.誰にでも可能で,かつ日常臨床を楽しくする知識だと思います.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎達也)

2024-04-25

今週の一枚 🎯 一発診断

心電図異常の無症候例(座位)

👭 二峰性心尖拍動(double apical impulse)
  • 左乳輪の下内側に心尖の拍動を視認
  • 健常者のタッピングとは異なる動き
  • ”グニョ グニョ”とした不思議な動き
  • 付箋では二段階モーション(矢印)
  • 最終的に心尖部肥大型心筋症と診断

👶 追加コメント
  • HCMは拡張相に移行しなければ,通常は心拡大を来たしません.よって男性なら本例のように左乳輪の内側に拍動があります(女性では正中より10 cm以内).
  • 肥大型心筋症に対する二峰性心尖拍動の診断感度・特異度・正診率は各々27%,98%,66%です(当院研究).これは心尖部型(APH)に限りません.
  • 2峰性心尖拍動は大きなA波と抬起性拍動(左室肥大を示唆)によって構成されます.よってこの部位では明瞭なⅣ音が聴診できます(もちろん触診も可能).
  • Ⅳ音は聴診よりも触診の方が気付きやすいと言われることがありますが(触ってナンボの法則),個人的には大きな雑音がなければ聴診の方が簡単...(雑音症例

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎達也)

2018-12-11

Pulsus bisferiens

  • 頸部で観察される二峰性の動脈性拍動のこと 📉 pulsus bisferiensの発音 ➜ コチラ
  • 閉塞性肥大型心筋症(spike and dome型)や大動脈弁逆流(鋭い2峰型)で認めることあり

閉塞性肥大型心筋症の自験例

舌圧子の鋭い上昇(spike)とそれに続く小さな隆起(dome)の二峰性パターンに注目.動的左室流出路狭窄を伴う閉塞性肥大型心筋症に特徴的なspike and dome型である.肥大型心筋症では流出路狭窄の有無に関わらず駆出分画が亢進しているため,頸動脈の立ち上がり(衝撃波/percussion wave)は急峻になる.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2023-06-22

プルプル心尖部

端座位の肥大型心筋症例

👀 解説
  • 心尖拍動を視認 ➜ 左乳輪内側で心拡大はなさそう
  • 心尖拍動はとても明瞭 ➜ 抬起性(心肥大)の疑い
  • よくみるとプルプルっとなっていて単峰性ではない
  • 触診でダブルインパルスがあり聴診では巨大Ⅳ音
  • 本例では剣状突起が目立っている(病的意義なし)

👶 独り言
  1. 通常の心尖拍動の他に拍動を認める場合(二峰性心尖拍動)は,心房性隆起(前収縮期)と心室性隆起(拡張早期)が考えられます.前者は聴診のIV音に相当し, 左室のコンプライアンスが低下していると考えられます(例:肥大型心筋症).後者は増大した左室への急速流入波あるいはIII音を反映します(例:高度の僧帽弁逆流).
  2. 個人的な経験では,視認で気づく二峰性心尖拍動の大部分は肥大型心筋症によるatrial kick(心房性隆起)です.マイ感度は触診≧聴診>視診の順です(過去の投稿).一方,ventricular kick(心室性隆起)はともて小さいので触知はできても視認することは極めて稀です.僕の感度は聴診>触診≫視診の順でしょうか?

松下記念病院 川崎達也)

2020-12-07

👀 時間分解能に挑戦

ヒントなしで挑戦!




松下記念病院 川崎達也)

2019-10-21

脈拍:虎の巻

邦名 英名 代表的な疾患
交互脈 pulsus alternans 重症心不全
二峰性脈 pulsus bisferiens 閉塞性肥大型心筋症,大動脈弁閉鎖不全
重複脈 dicrotic pulse 重症心不全(特に若者,低血圧)
遅脈 pulsus tardus 大動脈弁狭窄
速脈 pulsus celer 大動脈弁閉鎖不全,甲状腺機能亢進症
奇脈 pulsus paradoxus 心タンポナーデ

おまけ 👻
  • 二峰性脈=収縮期に二つのピークを触知
  • 重複脈=収縮期と拡張期にそれぞれ触知

松下ERランチ・カンファレンスとのマルチポストです 🎶
速脈 大脈 遅脈
関連投稿 🉐
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2023-10-09

これは指腹ではなく指先で!

検診で心電図異常を指摘された無症候例

👥 ダブルインパスルス(二峰性心尖拍動)
  • 左半側臥位で抬起性(持続時間の長い)の心尖拍動(矢印)
  • よく見るとグググといった(スムーズでない)隆起パターン
  • 付箋をつけるとその立ち上がりが一峰性でないことが分かる
  • 最終診断は肥大型心筋症(非閉塞性かつ非対称性中隔肥大)

👤 コメント
  • Double apical impulseとは小さな振れ(atrial kick=A波=心房収縮波)の後に大きな振れ(抬起性)が続く心尖拍動で,肥大型心筋症にかなり特異的です(感度27%・特異度98%)(当院の研究).つまりあればおそらく肥大型心筋症と確定可
  • 問題はダブルインパスルスを認識できるか否かです.視診・触診・聴診の中では視診が最も難しいと思いますが,これは慣れで克服できると思います.本ページには肥大型心筋症の二峰性拍動が多数アップされているので確認してみてください(ココ
  • 視覚の時間分解能は低いと思われますが,指先は超高感度の圧センサーです.何かギクシャクした隆起だと思ったら是非,指先で感じてみてください(触ってなんぼの法則).ポイントは指腹でなくて指先でしょうか.ズズンと伝わってくるでしょう.
  • 個人的にはⅣ音が好きかつ得意なので,ダブルインパスルスよりも巨大Ⅳ音(心房収縮波の音版)を信頼しています.ただし閉塞生の肥大型心筋症では収縮期雑音が過剰心音の聴診を難しくすることが少なくありません(自験例).この時は指先に全集中

松下記念病院 川崎達也)

2019-11-04

肥大型心筋症の心尖拍動図


😶 解説
  • 駆出波(E波)の後に収縮期膨隆が続く ➜ 持続時間の長い抬起性の心尖拍動
  • よく見ると抬起性心尖拍動の直前に心房収縮波(A波)あり ➜ Ⅳ音の触知
  • P波に関連するⅣ音と二峰性心尖拍動を視診・触診・聴診でしっかり感じたい

関連投稿 👴
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2023-02-20

閉塞性肥大型心筋症の身体所見:まとめ


😀 実際の所見

 😙 独り言
  • 頸静脈の増高a波や心尖のダブルインパルス力強い第4音の存在は(閉塞機転の有無に関わらず)肥大型心筋症の画像検査診断に間違いなく役立ちます.
  • 頸動脈のスパイク・ドーム波形は有名ですが僕は自信がありません.一方,偽駆出音は稀ですが独特のリズムなので,耳コピしておけば一発診断が可能です.

松下記念病院 川崎達也)

2020-10-26

再登場:触ってナンボの法則

心電図異常を指摘された無症状の症例

🔗 肥大型心筋症
  • 触診では典型的な二峰性の抬起性心尖拍動であった.しかし視診や舌圧子(収縮期に左方移動)では分かりにくい.抬起性拍動は明瞭であるが,その直前にあるatrial kickはあまり伝わらない.
  • これも”触ってナンボの法則”が当てはまる.右手の第2〜3指腹を拍動部に当ててみる.ダブルインパルスは肥大型心筋症の特徴であるが,視診で明瞭に認識できる例は決して多くない(自験例).
  • 視診はわずかな色調差の認識は得意であるが,微妙な凹凸の判定は苦手である.一方,指腹は超高精度の圧センサーである.フィジカルをとるときには,視診・聴診・触診をうまく使い分けたい.

🉐 関連投稿(ダブルインパルス編)

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2019-10-17

頸静脈クイズ

  • 息切れで来院した中年女性の頸静脈(臥床+枕あり)
  • 若い頃に先天性心疾患を指摘されるが放置していた


フィジカル 広場 心臓 physical exam examinationランチシ
松下記念病院 川崎達也)

2021-11-01

ココでは聴診より触診

胸痛で来院した症例の心音(心尖部)と心尖拍動

🍘 臨床現場
  • 収縮期に雑音があり明瞭なⅡ音を認識できるため,逆流性雑音ではなくて駆出性雑音と判断.雑音が鎖骨や頸部にも放散しているため,閉塞性肥大型心筋症ではなくて大動脈弁狭窄と予想.引き続き行った心エコー図で大動脈弁狭窄(中等度)を確認して一安心(僧帽弁逆流であることは稀でない).
  • ただし心音図をみてビックリ.大きなⅣ音(赤四角)と心尖拍動のA波増高(赤矢印)が記録されていた.もう一度聴診をやり直したが,Ⅳ音はうまく聞き取れなかった.一方,心尖部を丹念に探ると二峰性拍動が指先に伝わってきた.Ⅳ音はしばしば聴診より触診である(いわゆる触ってナンボの法則
  • このダブルインパルス(A波+抬起性拍動)は触知するⅣ音+左室肥大を反映する所見で,肥大に伴った心筋コンプライアンスの低下を生じる病態で出現しやすいことが知られている.その代表疾患は肥大型心筋症(自験例)であるが,大動脈弁狭窄に加えて高血圧性心疾患(自験例)などでも認める.

🍙 独り言
  • 大動脈弁狭窄のような大きな駆出性雑音では耳に(勝手に)フィルターがかかります.音柱の宇髄天元になったつもりで全集中しても,Ⅳ音の有無の判定は困難です(Ⅰ音すら不明瞭 😅)
  • こんな時は聴診にこだわらずに,触診に切り替えてください.指先は超高感度の圧センサーです.二峰性心尖拍動なら触診>舌圧子>視診の順に分かりやすいと思います(個人的感想 😋)
  • 一方,閉塞性肥大型心筋症のⅣ音は,心雑音があっても大動脈弁狭窄より認識しやすいと思います(自験例).雑音の直前に引っ掛かりがあります(これも個人的な感覚ですが 😤)

松下記念病院 川崎達也)