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2024-01-29

大動脈弁狭窄のS4

研究1Am J Cardiol 1971;28:179-82
  • 大動脈弁狭窄症124例の検討では,重症(最大収縮期勾配≧75 mmHg)ならほとんどの場合Ⅳ音が存在する.一方,成人の大動脈弁狭窄症でⅣ音の存在は,40歳未満では重症を意味する.

研究2Circulation 1975;51:324-7
  • 40歳以上の大動脈弁狭窄例では,S4ギャロップは重症(弁口面積≧0.75 cm2) の85%(65人中55人),中等症までの86%(7人中6人)であった.おそらく大動脈弁狭窄では聴診が不正確であるため,S4の有無はこの評価にはあまり役立たなかった.

研究3Circulation 1962;26:92-8
  • 大動脈弁狭窄症患者46名では,第4音が検出される場合,通常は狭窄が重症(圧較差>70 mmHg,左心室収縮期圧>160 mmHg)と結論付けることができる.

👶 個人的な思い
  • Ⅳ音を有する大動脈弁狭窄は,左室コンプライアンスがより低下しているため重症であることは理にかなっています.しかしさらに進行したステージでは左房が疲労してくるため,おそらくⅣ音は小さくなり最終的に心房細動に移行すると思います(肥大型心筋症でも同様の現象があると予想:当院の論文).
  • 大動脈弁狭窄では大きな雑音のため過剰心音を聴診することが困難です(S1ですら難しい:音響隠蔽現象).そんな時は聴診よりも触診(心尖拍動のA波増高)が有用でしょうか(過去の投稿).もっとも下図の様な極小S4は心機図では検出できても,聴診や触診で認識できるとは到底思えませんが...😐


松下記念病院 川崎達也)

2020-11-02

📣 心音クイズ:心雑音を指摘された症例





松下記念病院 川崎達也)

2021-02-08

騙されるな!

労作時の動悸で来院した症例

😮 解説
  • 鎖骨上の動脈拍動+舌圧子で大脈・速脈を示唆 ➜ 大動脈弁逆流によるコリガン脈(Corrigan pulse)の疑い
  • しかし本例では動脈の触診で振戦(シャダー/shudder)が存在+聴診では収縮期駆出性雑音 ➜ 大動脈弁狭窄の疑い
  • 心エコー図では中等度の大動脈弁狭窄+軽度の大動脈弁逆流 ➜ 加齢に伴う動脈の蛇行による偽コリガン脈と診断

😶 独り言
  • 本例ははじめに視診で有意な大動脈弁逆流と考えて,触診と聴診では高度の大動脈弁狭窄を疑ったが,いずれも正確ではなかった.
  • 頸動脈の振戦はとても明瞭であったが,舌圧子の動きには反映されず心機図でも鶏冠は描出されなかった(指腹圧センサーはやはりすごい!
  • 特徴的な身体所見が頭にこびりつくアンカリングバイアス逆アンカリングバイアスには常に気をつける必要がある(臨床推論における主要な認知バイアス).
  • 本例の息切れが大動脈弁狭窄による可能性は否定できないため,定期的に心エコー図でフォロー中(高齢であるため負荷心エコー図は未施行)

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2026-04-30

第90回 日本循環器学会学術集会より

📢 心音に関する臨床研究

演題OJ01-8 Utility of a Digital Stethoscope for Severity Assessment of Aortic Stenosis(奈良県立医科大学)
  • 経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)外来を受診した大動脈弁狭窄症(AS)患者をデジタル聴診器で評価し、デバイスで割り当てられたAS重症度と心エコー図の重症度を検討。デジタル聴診器はASの重症度を判定するのに有用であり、専門医への紹介を検討する際に、心臓専門医以外の医師にとって実用的なトリアージツールとして役立つ可能性がある。(投稿者追加:使用した聴診器名とその判定基準の記載なし)

演題PE019-6 Simple Auscultation of the Heart for Detecting Valvular Heart Disease(大阪府、松下記念病院)
  • 標準5点聴診とシンプル聴診を、心エコー検査と心音図を行った992人で検討。5点で心雑音が認められないことは、VHDを除外する特異度75.2%、感度58.9%。左胸骨第2縁と心尖部(特異度74.7%、感度59.2%)または左胸骨第3縁と心尖部(特異度74.9%、感度59.1%)に限定した場合も、同様の診断能。(投稿者追記:当院からの英語ポスター発表、演者は初期研修医で発表前に論文完成👍)

演題LBCT3-5 Evaluation of the Diagnostic Utility of Pre-Echocardiographic Digital Auscultation: A Prospective Comparative Study(香川大学)
  • 心エコー検査を受ける240人の患者で、AI分析を行うスーパー聴診器を使用して聴診を先に行い、検査者に結果が開示されるグループと、事前の聴診なしで心エコー検査を受ける対照グループに1:1で割り当て。スーパー聴診器は、収縮期駆出雑音(大動脈弁狭窄症)、逆流雑音(僧帽弁逆流症)、拡張期雑音(大動脈弁逆流症)を、なし~軽度または中等度~重度に分類した。主要評価項目全体で有意差は認められなかった。しかし、聴取可能な心雑音のある患者では、聴診先行群で大動脈弁逆流症の評価が有意に改善された。

演題CRJ27-6 Experience with the Use of an AI-Assisted Digital Stethoscope in Combination with Echocardiography(香川大学)
  • 心エコー検査の前に実施するAI支援デジタル聴診の臨床的有用性を評価。対象は心臓内科および心臓血管外科から心エコー検査のために紹介された患者。デジタル聴診によって得られた弁膜症の診断を心エコー検査の結果と比較では、僧帽弁逆流症と大動脈弁狭窄症については、デジタル聴診は心エコー検査と一致する診断結果。ただし、僧帽弁狭窄症はこの方法では検出されず。(投稿者追記:検討数や診断能などの数値は未記載)

演題PJ67-4 Detection of Moderate or Greater Aortic Stenosis Using a Deep Learning Model with Digital Phonocardiogram in a Multicenter Validation Cohort(AMI株式会社, 熊本大学病院)
  • 心音図(PCG)と単一誘導心電図(ECG)信号を利用して中等度以上の重症度のASを特定する深層学習ベースのモデル(eASモデル)の診断性能を評価。954人の患者のうち、7.3%が中等度以上のASを有していた。eASモデルはAUC 0.962(95%信頼区間:0.946~0.978)を達成。事前に指定された閾値では、感度は92.9%、特異度は87.7%であり、LR+は7.55、LR-は0.08であった。モデルから得られた確率は、心エコー図パラメータと強い相関あり。(投稿者追記:さすがに超聴診器開発元の解析👏)

演題CO1-10 次世代心不全スクリーニングツール:心音・心電図AIシステムとNT-proBNP診断能の比較検証(愛知県、あま市民病院)
  • 超聴診器AMI SSS1による検査を施行した連続347例のうち、NT-proBNP値が前後7日間以内に測定されていない、またはeGFR 30未満の症例を除外した225例が対象。心負荷判定とNT-proBNP値との関連を後方視的に解析。NT-proBNP各値(125/400/900)と心負荷判定を用いたROC曲線分析の結果、> 900 pg/mLと心負荷判定B以上(AUC=0.81)、またはA2以上(AUC=0.81)の相関が最も良好。超聴診器は心不全スクリーニングにおいてNT-proBNP値の代替ツールとして有用である可能性が示唆。

💁 学会に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2021-11-01

ココでは聴診より触診

胸痛で来院した症例の心音(心尖部)と心尖拍動

🍘 臨床現場
  • 収縮期に雑音があり明瞭なⅡ音を認識できるため,逆流性雑音ではなくて駆出性雑音と判断.雑音が鎖骨や頸部にも放散しているため,閉塞性肥大型心筋症ではなくて大動脈弁狭窄と予想.引き続き行った心エコー図で大動脈弁狭窄(中等度)を確認して一安心(僧帽弁逆流であることは稀でない).
  • ただし心音図をみてビックリ.大きなⅣ音(赤四角)と心尖拍動のA波増高(赤矢印)が記録されていた.もう一度聴診をやり直したが,Ⅳ音はうまく聞き取れなかった.一方,心尖部を丹念に探ると二峰性拍動が指先に伝わってきた.Ⅳ音はしばしば聴診より触診である(いわゆる触ってナンボの法則
  • このダブルインパルス(A波+抬起性拍動)は触知するⅣ音+左室肥大を反映する所見で,肥大に伴った心筋コンプライアンスの低下を生じる病態で出現しやすいことが知られている.その代表疾患は肥大型心筋症(自験例)であるが,大動脈弁狭窄に加えて高血圧性心疾患(自験例)などでも認める.

🍙 独り言
  • 大動脈弁狭窄のような大きな駆出性雑音では耳に(勝手に)フィルターがかかります.音柱の宇髄天元になったつもりで全集中しても,Ⅳ音の有無の判定は困難です(Ⅰ音すら不明瞭 😅)
  • こんな時は聴診にこだわらずに,触診に切り替えてください.指先は超高感度の圧センサーです.二峰性心尖拍動なら触診>舌圧子>視診の順に分かりやすいと思います(個人的感想 😋)
  • 一方,閉塞性肥大型心筋症のⅣ音は,心雑音があっても大動脈弁狭窄より認識しやすいと思います(自験例).雑音の直前に引っ掛かりがあります(これも個人的な感覚ですが 😤)

松下記念病院 川崎達也)

2021-02-22

頸動脈クイズ

心不全で入院した高齢者の頸動脈


フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2022-05-12

聴診だけで分かると言えば分かるが…

息切れで来院した症例

🐔 解説
  • 収縮期雑音は駆出性が疑われⅡ音が不明瞭なため重症の大動脈弁狭窄?(復習
  • 4拍目〜RR間隔が延長しているが,雑音の音量に変化ないため逆流性?(復習
  • 心エコー図では重症の僧帽弁逆流であった(後尖の短縮があり逸脱は目立たず)
  • 心音図ではⅣ音(矢頭)とⅢ音(矢印)が記録されているが聴診での認識は難

🐓 追加コメント
  • 僧帽弁逆流と言えば,汎収縮期雑音(全収縮期雑音,収縮期逆流性雑音)でⅠ音とⅡ音が不明瞭.特にⅡ音の聴診の有無が,駆出性雑音(大動脈弁狭窄)との鑑別に有用(自験例).
  • ただし僧帽弁逆流でも重症ならダイヤモンド型の漸増漸減雑音になることは有名.さらに本例ではⅢ音を減弱したⅡ音と誤認して,重症の大動脈弁狭窄と判断してしまうかも…
  • 幸いRR間隔の変動があったため,雑音の音量が影響されていないことから逆流性雑音+Ⅲ音と予想可能.もっとも頸動脈拍動を確認すれば,大動脈弁狭窄との鑑別には悩まない 😊

👿 僧帽弁に関する過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2024-02-19

臨床=組合せ

心雑音を指摘された症例(座位)

👻 現場実況
  • 収縮期駆出性雑音あり(鎖骨も)➜ 大動脈弁狭窄の疑い
  • 心エコー図では中等〜重症の大動脈弁狭窄と判断された
  • しかし頸動脈に明瞭な拍動あり(矢印)➜ ASは否定的?
  • エキスパートによるエコー再検で流出路狭窄狭窄と診断
  • 頸部に雑音の放散があったが本例は大動脈弁硬化も合併

💚 組み合わせ
  • 本例は明らかな非対称性中隔肥大やS字状中隔を伴わない非典型的な左室流出路狭窄であったため,診断に少し時間を要したと思われました(もっとも僧帽弁の収縮期前方運動は明瞭でしたが...)
  • 大動脈弁狭窄症の頸動脈拍動は通常,不明瞭です(厳密には緩徐な立上り+上昇脚の小振動).しかし加齢に伴う動脈蛇行で皮下に出現した動脈が明瞭な拍動を示すことがあります(自験例
  • 身体所見では常に組み合わせて考えます(例:聴診+頸動脈).聴診も組合せです(例:駆出性+部位).心エコー図も然り(例:レポート+検者?).臨床も然り(身体所見+心エコー図)

松下記念病院 川崎達也)

2021-11-08

意外に都合よく出ています

息切れで来院した症例の心音(心尖部

🐤 解説
  • 高調な収縮期雑音(楽音様)でⅡ音は不明瞭 ➜ 僧帽弁逆流?
  • 先行RRが長い3つ目の音は音量が少し大きい ➜ 駆出性の雑音
  • よって本例はガラヴァルダン現象を伴う大動脈弁狭窄の疑い
  • 実際にその後の心エコー図で重症の大動脈弁狭窄を確認した

🐦 独り言
  • 聴診で大動脈弁狭窄と僧帽弁逆流の鑑別に悩むケースが少なくありません.Ⅱ音の有無が最大のポイント(前者では明瞭で後者では不明瞭:実例)ですが,例外も散見されます.
  • 重症の僧帽弁逆流症では収縮期雑音がダイアモンド型になり,Ⅲ音も高調化してⅡ音に似ることがあります.そのような症例ではますます大動脈弁狭窄と鑑別が難しくなります.
  • そんな時には下図で示す様に期外収縮後の音量変化が鑑別診断には有用です.収縮期雑音は,駆出性なら音量が増加しますが,逆流性雑音では変化しません(心房細動症例で耳を訓練😊)
  • 洞調律例では「そんなにタイミングよくPVCはでないよ」という声も聞こえてきそうですが,来院するような症例では意外に出ています(むしろ気づいてないほうが多いのでは…😗)


松下記念病院 川崎達也)

2021-11-18

挑戦は続く!

心不全が疑われ当院を紹介受診した症例

👾 解説
  • 収縮期駆出性雑音があり心基部でもⅡ音は不明瞭 ➜ 重症の大動脈弁狭窄の疑い
  • 音量は大きくはない(当院は統一スケール)➜ 必ずしも重症度を反映せず(
  • 頸動脈は緩徐な立上りで上昇脚に小振動(鶏冠状波形/shudder wave)➜ 確診
  • 心エコー図では最高血流速度が5.0m/s以上の超重症の大動脈弁狭窄症であった

👽 AS vs Physical examination
  • 大動脈弁狭窄症は身体所見で診断すべきですが,その重症度判定にはやはり心エコー図に分があると思います.頸動脈波形は高い特異度(ルールイン=確定)を持っていますが(下表),本例のように明瞭に観察されることは稀です(自分の技術不足もありますが…😂).でも心エコー図には挑み続けたいと思っています.


💁 大動脈弁狭窄に関する過去の投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2026-01-19

ChatGPT(GPT-5.2)の返答

  • AIを仕事で利用する頻度がとても増えました.とんでもない嘘を自信満々で答えるときがあるため,返答を鵜吞みにすることはできません.しかし大いに参考になります(特に基本的な知識がある領域)
  • AIは進化がとても早い領域です.その変化を知るため現時点のレベルをまとめておきます.各設問に対するAIの答えをそのまま記載します.忘れなかったら😅1年後に同じことを最新AIに問うてみます

 
Q1 心尖拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 心尖拍動は左心室収縮により生じる胸壁の拍動で、心機能評価に重要な身体所見である。正常では左第5肋間・鎖骨中線上に触知され、範囲は限局する。外側・下方への偏位は心拡大を示唆し、びまん性で強い拍動は左心室肥大や容量負荷を考える。触知困難な場合は肺気腫や肥満が原因となることがある。このように心尖拍動は心疾患の存在や重症度推定に有用である。

Q2 心音の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 心音は心臓の弁運動や血流変化により生じ、心機能や弁膜症評価に重要な身体所見である。第Ⅰ音は房室弁閉鎖を反映し、増強は頻脈や僧帽弁狭窄、減弱は心筋障害を示唆する。第Ⅱ音は半月弁閉鎖音で、分裂の変化は肺高血圧や右脚ブロックなどの診断に有用である。第Ⅲ音は容量負荷や心不全、第Ⅳ音は心室拡張障害を示すことが多い。さらに心雑音の有無や性状から弁膜症や先天性心疾患の推定が可能であり、心音聴診は非侵襲的に循環器疾患を評価できる基本かつ重要な診察手技である。

Q3 頚静脈拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 頚静脈拍動は右心系の圧・容量状態を反映する重要な身体所見である。内頚静脈の拍動を観察することで中心静脈圧を推定でき、右心不全、容量負荷、脱水の評価に有用である。正常では半坐位で鎖骨上に軽度の拍動を認める程度であり、明らかな怒張は右心不全、三尖弁閉鎖不全、心タンポナーデ、収縮性心膜炎などを示唆する。波形の観察も重要で、a波増高は右房圧上昇、v波増高は三尖弁閉鎖不全を考える。Kussmaul徴候(吸気時の頚静脈怒張増強)は収縮性心膜炎や右室梗塞に特徴的である。頚静脈拍動は非侵襲的かつ迅速に右心機能を評価でき、循環動態把握に欠かせない所見である。

Q4 頚動脈拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 頚動脈拍動は左心室からの駆出血流を直接反映する重要な身体所見であり、心拍出量や大動脈弁疾患の評価に有用である。正常では立ち上がりが速く、なだらかに下降する拍動を触知する。拍動の減弱や遅延(parvus et tardus)は大動脈弁狭窄を示唆し、逆に強く跳ねるような拍動(bounding pulse)は大動脈弁閉鎖不全や高拍出状態で認められる。二峰性拍動は肥大型心筋症を、拍動の左右差は頚動脈狭窄や大動脈解離を疑う所見となる。また、頚動脈雑音の聴取は動脈硬化性病変のスクリーニングとして重要である。頚動脈拍動の触診・聴診は簡便かつ非侵襲的に全身循環や弁膜症の手がかりを得られるため、循環器診察における基本かつ不可欠な所見である。

Q5 傍胸骨拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 傍胸骨拍動は胸骨左縁で触知される心拍動で、主に右心系や心室負荷の状態を反映する重要な身体所見である。正常では明瞭に触知されないが、持続的で強い傍胸骨拍動は右心室肥大や右心系圧負荷を示唆する。肺高血圧、肺動脈弁狭窄、慢性肺疾患に伴う肺性心などで認められることが多い。また、胸骨左縁下部での拡張期に強い拍動は右心室容量負荷や三尖弁閉鎖不全を考える手がかりとなる。心室中隔欠損などでは拍動が増強する場合もある。傍胸骨拍動は視診・触診のみで評価可能であり、右心機能や肺循環異常を推定するうえで有用な、基本的かつ重要な循環器身体所見である。


松下記念病院 川崎達也)

2026-03-05

📢 心音クイズ4

  • 他のコンテンツで心音クイズを作成しました.本ページにもアップしておきます(内容は少し変更しています)


息切れで来院(肘部で記録).考えられる疾患はどれか.







判定


😐 正解 D
  • この鋭い音はピストル射撃音と呼ばれ,重症の大動脈弁逆流症で聴取することがある.一回心拍出量の増加による末梢動脈圧の急激な上昇に関連する音と考えられている.本例のピストル射撃音は,大動脈弁置換術後に消失した.

松下記念病院 川崎達也)

2021-11-29

視診による重症度診断:大動脈弁逆流

拡張期雑音を指摘され来院した症例(症状なし)

📡 視診にこだわった実況中継
  • 臥床で頸部の周期的な隆起があり,静脈性なら巨大v波(三尖弁逆流など)で動脈性ならコリガン脈(大動脈弁逆流)と考えられる.外頸静脈の拍動は臥床+枕ありで頸部中央であるため,明らかな中心静脈圧の上昇はなさそう.つまり静脈性の巨大v波(ランチシ徴候)は否定的.しかし端座位でその陽性波は,臥床よりも不明瞭になっている.コリガン脈であれば通常,重力による虚脱増強のため臥床より座位の方が分かりやすいことが多い(自験例).少し悩んだが肘部内側の反跳脈を確認して,最終的に大動脈弁逆流と視診フィジカル診断した.その後に行った触診では明らかに動脈性拍動で,心エコー図で中等度の大動脈弁逆流を確認した.

本例では体位と陽性波の関係で,フィジカル診断に迷いが生じました.触診あるいは呼吸負荷に対する反応,聴診の併用などで両者の鑑別(動脈性 vs 静脈性)は容易と考えられます.しかし脈に触れたい想いをぐっと我慢して,あくまでも視診にこだわってみました.本例はコリガン脈でありながら臥位でより明瞭であった理由は不明ですが,大動脈弁逆流の程度が一因であった可能性があります.重症であれば重力に抗して大きな陽性波が形成されますが,中等症ではそこまでの拍出量はないのかもしれません.大動脈弁狭窄ではフィジカルで重症度の診断技術が(ある程度)確立されています(過去の投稿).是非,大動脈弁逆流でも挑戦していきたいと思います.

    松下記念病院 川崎達也)

    2022-12-08

    首問題:動脈 vs 静脈

    収縮期雑音で循環器内科を紹介受診した症例(端座位)

    🍙 解説
    • 頸部に周期的拍動あり ➜ 動脈性あるいは静脈性の判断が必要
    • 動脈性なら頸動脈のコリガン脈 ➜ 大動脈弁逆流(拡張期雑音
    • 静脈性なら頸静脈のランチシ徴候 ➜ 三尖弁逆流(収縮期雑音
    • 外頸静脈は見えず+左側にも拍動あり(矢印)➜ 動脈性を示唆
    • 本例の最終的な診断は大動脈弁逆流による頸動脈のコリガン脈

    😗 余談
    • 頸静脈拍動は陥凹することが多いのですが,中心静脈圧が高度に上昇すると陽性波を形成することがあります(典型例).陽性波が動脈性か静脈性かは拍動の触診で鑑別できますが,なんとか視診のみで診断したいといつも思っています(本ページでは様々な方法で鑑別に挑戦しているので検索窓から探してみてください)
    • 本例のポイントは収縮期雑音として紹介受診した点です.臨床現場では,大動脈弁逆流例が拡張期雑音で紹介されてくることはむしろ稀だと思います.拡張期雑音はとても見逃しやすい音です.本例も大動脈弁狭窄はありませんが,相対的な大動脈弁狭窄によると思われる収縮期雑音が目立ちました(厳密には往復雑音でした)

    松下記念病院 川崎達也)

    2022-05-09

    頸動脈拍動と体位

    他科で施行した心エコー図で異常を指摘され循環器内科を紹介受診

    🍙 解説
    • 端座位で左頸部に異常なし(ただし頸静脈は通常,右側で評価 ➜ 復習
    • 仰臥位では頸部に明瞭な周期性の隆起 ➜ 触聴診で動脈性(コリガン脈)
    • クインケ徴候はなく肘部内側に明瞭な動脈拍動(別名は水槌脈・反跳脈)
    • 本例は重症の大動脈弁逆流+中等症の大動脈弁狭窄+重症の僧帽弁逆流

    🌰 独り言
    • 重症の大動脈弁逆流によるコリガン脈は通常,重力による虚脱増強のため臥床より座位の方が分かりやすいことが多いと思います(自験例).しかし本例では臥床の方が明瞭に観察できました.
    • 以前に中等症の大動脈弁逆流で同様の経験をしたことがあります(自験例).本例は重症の大動脈弁逆流でしたが,他の弁膜症も合併していたため,このような体位に対する反応を示したのかも…

    松下記念病院 川崎達也)

    2022-07-28

    踊る頸

    心電図異常(非特異的ST-T変化)を指摘され来院した症例

    💃 解説
    • 頸部の力強い周期的隆起(ダンシングパルス)➜ 動脈性の疑い
    • その拍動は右側だけでなく左側でも観察できる ➜ 動脈性の疑い
    • 拍動は吸気時には不明瞭になっている ➜ 静脈性の拍動は否定的
    • 触診と時相解析から動脈性拍動であることを確認(コリガン脈
    • 心エコー図では大動脈弁逆流(中等症)+僧帽弁逆流(中等症)

     🔗 つぶやき
    • 拍動が動脈性か静脈性かは触診すればすぐに区別できますが,そこはちょっと我慢するようにしています.基本ルールは呼吸性変動があれば静脈性(動脈性ではあまり変化しませんが,本例は吸気時に首に力が入ったためか拍動が不明瞭に)
    • 本例は視診のみで動脈性拍動を確信できたので,重症の大動脈弁逆流を疑いました.聴診では予想通り往復雑音(相対的な大動脈弁狭窄:他の自験例)でしたが,ランブル(オースチン・フリント雑音)はなく,爪床にクインケ徴候もなし.
    • しかし大動脈弁逆流は中等度にとどまり,息切れなどの症状もありませんでした.詳細は不明ですが,僧帽弁逆流を合併したため頸部の拍動が通常より目立ったのかもしれません.なお心エコー図後に再度行った聴診では収縮期雑音は逆流性でした.

    松下記念病院 川崎達也)

    2021-08-16

    疾患-心音 🐯 虎の巻

    👂 再確認にご利用ください(無料アプリ『ポケット心音』にも入っています)

    • 大動脈弁狭窄 ➜ 収縮期の駆出性雑音,重症例ではⅡ音が減弱


    • 大動脈弁逆流 ➜ 拡張期の灌水様雑音(前屈姿勢で聴取しやすい),重症では直ちに漸減


    • 僧帽弁狭窄 ➜ 僧帽弁開放音,Ⅰ音の亢進,拡張期ランブル


    • 僧帽弁逆流 ➜ 収縮期の逆流性雑音,Ⅰ音の減弱,重症例ではⅢ音やランブル


    • 僧帽弁逸脱 ➜ 収縮中期のクリック音(聞き逃すことが意外に多い)


    • 僧帽弁逸脱+逆流 ➜ 漸増する収縮後期の逆流性雑音,クリック音(不明瞭なことも多い)


    • 心不全 ➜ 心尖部でⅢ音や奔馬調律(別名ギャロップ,馬の駆けるような音)


    • 拡張型心筋症 ➜ Ⅱ音の後にⅢ音を聴取(Ⅰ音減弱やⅣ音聴取も少なくないが・・・)


    • 肥大型心筋症 ➜ Ⅰ音の前に明瞭なⅣ音が出現


    • 閉塞性肥大型心筋症 ➜ 収縮期駆出性雑音があり期外収縮後に増強


    • 心室中隔欠損 ➜ 汎(全)収縮期雑音(Ⅰ音とⅡ音の聴取は難しい)


    • 収縮性心膜炎 ➜ 広い範囲で心膜ノック(叩打)音


    • 急性心膜炎 ➜ 心膜摩擦音(例:シュポシュポ,カリカリ)




    ※ 以前に松下ERランチカンファレンスに投稿した内容の更新版です 🎶

    松下記念病院 川崎達也)

    2021-08-02

    心音クイズ

    息切れで来院した症例

    😀 解説
    • 聴診器の膜部で収縮期駆出雑音(赤菱形)と拡張期漸減性雑音(赤三角)➜ 往復雑音
    • 聴診器のベル部で拡張期に大きなランブルあり(これは聴診器の膜部では聴取せず)
    • このランブルはベル部の押し付けで消失する ➜ 低音成分が主体(心音図の赤矢印)
    • その後に行った心エコー図では,大動脈弁輪拡大による高度の大動脈弁逆流を認めた
    • 以上より本例の拡張期低音雑音はオースチン・フリント雑音(Austin Flint Murmur)

    🚸 臨床現場
    • 本例の往復雑音を聞いて安易に大動脈弁狭窄+大動脈弁逆流とは考えなかった.初診挨拶時にすでに頸動脈拍動(コリガン脈)に気づいていたからである.おそらく高度の大動脈逆流だろうなと予想していた😤
    • オースチン・フリント雑音があるかも…」と思いワクワクしながら聴診を行ったが,心尖部で同雑音は聞こえなかった.しかしその後に行った心音図で明瞭なランブルの記録を見てちょっとびっくり😳
    • 言い訳になるが聴診部位に問題があったと思う.通常オースチン・フリント雑音は心尖部周囲で認めるが,本例は第3肋間胸骨左縁(3LSB)に限局していた.偏位した逆流シグナルがその原因と推測...反省😪

    松下記念病院 川崎達也)

    2025-08-21

    教育ビデオ 📺 収縮期駆出性雑音(Systolic ejection murmur)

    大動脈弁狭窄症(Aortic stenosis: AS)の一例

    🎶 解説
    • Ⅰ音とⅡ音の間にある心雑音なので収縮期雑音
    • 雑音は漸増・漸減型(ダイアモンド型 or 菱形)
    • よってⅠ音とⅡ音を聴取できる(特にⅡ音!)
    • 例えば大動脈弁狭窄症やHCMの左室流出路狭窄

    🎵 コメント
    • フィジカルの巨匠から以下のような内容のメールをいただきました.「講習会では心音図が心音と一緒に動画として提示される.でも聴衆はとてもそれを目で追えない.心音図をなぞりながら音を聴かせるという風にすればとても理解しやすい.」
    • 「心音図は必ずしも実物でなくて絵でもいいですよ」とも言われましたが,せっかくなので実物を使用してみました.本動画は教育用として作成したので,商業目的を除いてご自由にご活用ください(版権放棄かつ利用時の謝辞記載も不要です)

    松下記念病院 川崎達也)

    2020-03-09

    📣 心音クイズ:息切れを訴える中年男性





    フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
    松下記念病院 川崎達也)