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2021-05-20

力加減が大切です

倦怠感を訴える症例(指先を少しテーブルに押し当ててもらいました)

👉 解説
  • 押し当て過ぎのビデオ前半では爪床の近位と遠位部が各々,赤と白に固定
  • 程よい力加減になったビデオ後半では,爪床の赤部分が周期的に白く変化
  • これはクインケ脈(Quincke's pulse)で脈圧の開大した大脈・速脈を反映
  • 心エコー図では高度の大動脈弁逆流が観察された(甲状腺機能亢進なし)

😶 独り言
  • クインケ脈(Quincke pulse)が何もせずに観察できることは極めて稀で(個人的には経験なし),通常は患者さんの爪先を自分の指で少し抑えて観察する(自験例).本例のように患者さん自ら指先を机に押し付けても観察できるが,力が一定しないと偽陽性になることもあるため要注意(偽クインケ脈).
  • ドイツの医師 Heinrich Quincke 先生が約150年前に発見したこの所見は有名であるが,臨床的意義は微妙.高度の大動脈弁逆流でも出現しない症例が多く,偽陽性も稀ではない(Ann Intern Med 2003;138:736-42).身体所見の超人サパイラ先生も臨床的には有用でないと結論づけている(South Med J 1981;74:459-67).
  • サパイラ先生の名著”Sapira's Art and Science of Bedside Diagnosis"には大動脈逆流で有名だけど無意味な身体所見(useless signs)として,クインケ徴候とMayne's sign(メイン?徴候:腕の挙上による拡張期血圧の15mmHgを超える低下)の二つが記載されている(312ページ).
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2023-07-20

クインケ脈のスマホ法

無症状の大動脈弁逆流例(中等症〜重症)の爪床

👶 解説
  • 明らかな拍動(クインケ脈/Quincke's pulse)はなかった
  • 爪床の圧迫でも出現せず(動画なし:陽性になった自験例
  • ただしスマホのライトに爪床を置くと明瞭な拍動が顕性化

🔦 診察室実況
  • スマホのライトを用いたクインケ徴候の検出方法はtwitterなどでも有名です.用指的な爪床圧迫とは異なり,微妙な力加減が一切不要でオススメです.
  • 実は頸静脈拍動を見るためのペンライトでもやってみました.僕のライト(下図)は巨匠のお薦めで,ペンライト界のメルセデス・ベンツだそうです.
  • 爪床拍動はペンライトの方がスマホよりはるかに明瞭でしたが,患者さんが指の違和感を訴えました.自分でやってみると数秒後にかなりの熱感 😱


💅 爪に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2021-12-13

視覚は意外と頼りない?

拡張期の心雑音を指摘され来院した症例



松下記念病院 川崎達也)

2023-12-07

フィジカル所見の注意点

先週から急に出現した動悸を訴える症例

😎 解説
  • 左側の肘部〜前腕にかけて明瞭な拍動を認める
  • 触診で動脈性の拍動 ➜ 上腕動脈のコリガン脈
  • 爪床のクインケ徴候は圧迫法で僅かに陽性??
  • ライト法を追加したがこちらでもはっきりせず
  • この症例の最終的な診断は急性の大動脈弁逆流

👿 臨床現場
  • 実は本例は初診時のフィジカルで大動脈弁逆流と診断できませんでした.ギャロップがあり心不全とは思いましたが,明らかな心雑音を聴取しませんでした.よって肘部の動脈拍動は,高齢者によくある偽コリガン脈と判断してしまいました.今から思うとその拍動は直線状であるため本物のコリガン脈っぽいのですが...
  • 慢性ARと比較して急性ARでは一回拍出量の増加が少ないため,クインケ脈が出現しにくいのではと思われます(ただし関連論文は見つかりませんでした).同様に急性大動脈弁逆流では心雑音が出現しにくく,おまけに心エコー図でも逆流シグナルが描出しにくい症例があるので要注意です(特に頻脈時:自験例).

👀 クインケ徴候に関する過去の投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2024-03-25

指先拍動徴候 Throbbing fingertip sign

息切れと心雑音で受診した症例

😀 解説
  • 無負荷の状態では爪床の色調変化(クインケ徴候)は陰性
  • 爪床圧迫で僅かにQuincke's pulseを認める?(動画中の*)
  • そこでスマホ光源法を追加したがクインケ脈はやはり陰性
  • しかし指先拍動徴候(throbbing fingertip sign)あり(→)
  • 最終診断は中等症MR+軽症〜中等症ARによる慢性心不全

    😄 追加コメント
  • 指先拍動徴候(throbbing fingertip sign)は指先の容積変化で,大脈を反映していると考えられます.非常にわずかな変化なので通常の肉眼で視認することは難しいと思われますが,ライトアップすれば本例のようにわかりやすくなります.
  • 本例の指先拍動徴候は非圧迫で観察できている点がポイントかもしれません(圧迫法で出現したthrobbing fingertip sign).つまりクインケ徴候よりも感度が高い可能性があります.経験された方はコメント欄に記載してもらえると嬉しいです😊

松下記念病院 川崎達也)

2023-07-06

いつも患者さんから教えてもらっています 🙇

中等度の大動脈弁閉鎖不全の症例

😀 解説
  • 爪床が僅かながら周期的な色調変化(クインケ脈
  • 自ら指先を机に押し付けてもらうと色調変化消失
  • ただし押し付けを解除後の数拍は色調変化が明瞭

😅 臨床現場
  • 患者さんに大動脈弁逆流で出現する身体所見を説明しながら,一緒に爪を見ていました.僕は陰性かなと思っていたけど,患者さんが「先生,拍動が見えるよ」と逆に教えてくれました.確かによく見たらわずかに拍動がありました.指先を机に押し付けて解除時に拍動が出現することも教えてくれました.
  • クインケ脈にも程度があると思っています.その程度(負荷不要>他動的圧迫>自動的圧迫)と部位(指先全体>爪床のみ)の組み合わせから,ある程度は大動脈弁逆流の重症度判定が可能でしょうか(過去の投稿).本ページには多数のクインケ徴候が投稿されていますのでよろしければご確認ください(コチラ).

松下記念病院 川崎達也)

2022-06-23

爪から重症度判定?

検診で心雑音を指摘された症例

😄 解説
  • テーブル上に置いた右示指に特記すべき異常なし(傷は小石を扱う職業)
  • 指先を下方に押し付けると爪床に周期的な色調変化が出現(クインケ脈
  • よく見ると爪床だけでなくて指先端にも色調変化あり(動画中の矢印)
  • 指先圧迫を解除すると爪床〜指先全体に認めた色調変化も消失している
  • 拡張期雑音があり(ランブルなし),エコーでは中等度は大動脈弁逆流

😎 つぶやき
  • 大動脈弁逆流症によるクインケ脈(Quincke pulse)は本ページに何度も登場しています.大動脈弁逆流では肘の水槌脈と同じくらいよく認める身体所見と思います.
  • クインケ脈はそのまま認めることもありますが(自験例),通常は他動的な爪の圧迫(自験例)や自動的な指先の圧迫(本例)を加えると検出感度が上昇します.
  • 誘発方法(負荷不要>他動的圧迫>自動的圧迫)と出現部位(指先全体>爪床のみ)の組み合わせから,大動脈弁逆流の重症度判定がある程度可能と思っています.

松下記念病院 川崎達也)

2026-01-15

成功体験

- 息切れで来院した症例 -

👀 解説
  • 通常時には爪床に特記すべき異常所見なし
  • 爪床の圧迫時に色調変化(クインケ徴候)
  • おまけ:検者の爪床にはクインケ徴候なし

😊 独り言
  • 本例は心音で明瞭な拡張期雑音を聴取しました.そこで循環器外来を見学していた初期研修医1年目の先生に爪床を圧迫してもらいました.
  • すると明瞭な拍動が出現したため,大動脈弁逆流と診断してくれました.その後に行った心エコー図でも高度の大動脈弁逆流を認めました.
  • その先生はとても感動していました.このような成功体験を積むことが身体所見を学ぶ近道です.ただし志望は循環器以外のようですが...

松下記念病院 川崎達也)

2019-12-23

👴 歴史クイズ

(Public Domain)


松下記念病院 川崎達也)

2021-11-04

爪には爪を A nail for a nail

数ヵ月前から労作時の息切れを感じるようになった症例



松下記念病院 川崎達也)

2021-05-24

Always 呼吸負荷!

倦怠感を訴える症例

🐧 解説
  • 顎下に周期的な隆起あり(矢印) ➜ 触診から動脈性(コリガン脈
  • 深吸気の保持で拍動は変化せず ➜ 拍動が動脈性であることに合致
  • 頸静脈拍動(陥凹など)は視認せず ➜ 中心静脈圧の著明上昇なし
  • クスマウル徴候も陰性 ➜ 潜在的な中心静脈圧の上昇もないと判断
  • 本例はクインケ徴候も陽性 ➜ その後に高度の大動脈弁逆流を確認
  • 心音は左室駆出流の増加による往復雑音(フリント雑音は認めず)

🐦 つぶやき
  • 頸部の陽性波では頸動脈のコリガン脈(大動脈弁逆流)と頸静脈のランチージ(ランチシ)徴候(三尖弁逆流)を考えることは何度か投稿してきました(コチラ).
  • 両者の鑑別には触診が一番ですが,触れずに診断がカッコいいと思います.体位変換(実例)に加えて,呼吸負荷も有用です.特に呼吸負荷は簡便なので常に追加しておきたいです.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examinationランチシ
松下記念病院 川崎達也)

2024-03-07

AR:指先拍動徴候(throbbing fingertip sign)

重症の大動脈弁逆流例(症状なし)

💅 解説
  • 無負荷状態ではクインケ徴候陰性(陽性例
  • 爪床圧迫を追加したがそれも陰性(陽性例
  • そこでスマホ法を追加したが陰性(陽性例
  • さらにスマホ法に圧迫法を追加したが陰性
  • しかし照明の境界部分が明瞭に拍動(矢印)

 😎 解釈
  • 大動脈弁逆流症は一回拍出量が増大する大脈です.これが指先の大きな容積変化を生じ,拍動として観察されているのではと推測します.
  • 被検者ではなくて検者(つまり指を抑えている本人)の拍動が伝わっているのかなとも思いましたが,自分の拍動とは異なるリズムでした.
  • この症例は個人的に指先拍動(throbbing fingertip)と呼んでいます.ARの新たな(?)身体所見として有用かは症例の集積が必要ですが...

松下記念病院 川崎達也)

2020-07-13

🎯 一発診断

心雑音と下腿浮腫を指摘された症例




フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2022-03-24

肘も語っています

二尖弁による高度の大動脈弁逆流を有する症例


💪 解説
  • 肘伸展時に左肘窩内側に拍動(矢印)➜ 肘屈曲で拍動はより明瞭になっている
  • 拍動は触知で明らかに動脈性 ➜ 水槌脈反跳脈コリガン脈と呼ばれる所見
  • 大脈・速脈を示唆し大動脈弁逆流で有名(甲状腺機能亢進症や高度貧血でも有)

😉 独り言
  • 高度の大動脈弁逆流ではほとんどの症例で観察可能だと思います.軽く曲げると描出が容易になります(別の自験例
  • 加齢に伴う動脈の蛇行+表在化による偽コリガン脈には要注意.この場合は肘なら伸展した方が見やすいと思います

🉐 関連投稿(大動脈逆流に関連する他の身体所見)

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-07-06

🔨 水槌脈 Water-hammer pulse

心雑音で来院した症例の肘部



🔎 解説

😗 独り言
  • 画像診断が発達した現代では弁膜症の診断は比較的容易です.しかし身体所見による診断は医学(特に循環器学)の醍醐味です.特に視診で診断できた時の喜びはなんとも言えません.患者さんに触れずに診断できる病態は意外に多いと思います ➜ 自験例1自験例2自験例3自験例4

🉐 関連投稿(大動脈逆流の身体所見)
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-01-27

指クイズ

息切れで来院した症例の右示指(軽く圧迫)





フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2021-01-04

ちょっとした工夫

高度の大動脈弁逆流で手術を予定している症例

🐦 解説
  • 肘を伸展していると特記すべき異常所見はない ➜ 肘を軽く屈曲すると正中動脈の拍動が出現
  • 大脈・速脈を示唆し大動脈弁逆流ARで有名/他は甲状腺機能亢進症や高度貧血,発熱時など
  • 水槌脈 (Water-hammer pulse),反跳脈 (Bounding pulse),コリガン脈 (Corrigan pulse)と呼ぶ

🐤 独り言
  • 個人的な経験では,高度の大動脈弁逆流を有するほとんどの症例で観察可能.ただし本例のように肘を軽く曲げるなどの工夫が必要.体位によっても変化する(特に頸動脈 ➜ 実例
  • このような身体所見のちょっとしたコツは成書や論文には書いていません.よって貴重な経験や知識を皆で共有する方法が望まれます(本ページを密かに宣伝 😊 是非投稿を!).
  • 加齢などに伴う動脈の蛇行+表在化による偽水槌脈には注意が必要です.この偽コリガン脈は日常臨床でしばしば遭遇しますが,聴診など他のフィジカルを組み合わせればすぐに見破れます 😊

🉐 関連投稿(大動脈逆流に関連する他の身体所見)

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2022-07-28

踊る頸

心電図異常(非特異的ST-T変化)を指摘され来院した症例

💃 解説
  • 頸部の力強い周期的隆起(ダンシングパルス)➜ 動脈性の疑い
  • その拍動は右側だけでなく左側でも観察できる ➜ 動脈性の疑い
  • 拍動は吸気時には不明瞭になっている ➜ 静脈性の拍動は否定的
  • 触診と時相解析から動脈性拍動であることを確認(コリガン脈
  • 心エコー図では大動脈弁逆流(中等症)+僧帽弁逆流(中等症)

 🔗 つぶやき
  • 拍動が動脈性か静脈性かは触診すればすぐに区別できますが,そこはちょっと我慢するようにしています.基本ルールは呼吸性変動があれば静脈性(動脈性ではあまり変化しませんが,本例は吸気時に首に力が入ったためか拍動が不明瞭に)
  • 本例は視診のみで動脈性拍動を確信できたので,重症の大動脈弁逆流を疑いました.聴診では予想通り往復雑音(相対的な大動脈弁狭窄:他の自験例)でしたが,ランブル(オースチン・フリント雑音)はなく,爪床にクインケ徴候もなし.
  • しかし大動脈弁逆流は中等度にとどまり,息切れなどの症状もありませんでした.詳細は不明ですが,僧帽弁逆流を合併したため頸部の拍動が通常より目立ったのかもしれません.なお心エコー図後に再度行った聴診では収縮期雑音は逆流性でした.

松下記念病院 川崎達也)

2022-05-09

頸動脈拍動と体位

他科で施行した心エコー図で異常を指摘され循環器内科を紹介受診

🍙 解説
  • 端座位で左頸部に異常なし(ただし頸静脈は通常,右側で評価 ➜ 復習
  • 仰臥位では頸部に明瞭な周期性の隆起 ➜ 触聴診で動脈性(コリガン脈)
  • クインケ徴候はなく肘部内側に明瞭な動脈拍動(別名は水槌脈・反跳脈)
  • 本例は重症の大動脈弁逆流+中等症の大動脈弁狭窄+重症の僧帽弁逆流

🌰 独り言
  • 重症の大動脈弁逆流によるコリガン脈は通常,重力による虚脱増強のため臥床より座位の方が分かりやすいことが多いと思います(自験例).しかし本例では臥床の方が明瞭に観察できました.
  • 以前に中等症の大動脈弁逆流で同様の経験をしたことがあります(自験例).本例は重症の大動脈弁逆流でしたが,他の弁膜症も合併していたため,このような体位に対する反応を示したのかも…

松下記念病院 川崎達也)

2025-03-06

診る練習ビデオ

心雑音で来院した症例

👀 解説
  • 安静では指先に特記すべき所見なし
  • 圧迫時の爪床の中部~遠位部に注目
  • 白色とピンク色の色調変化に気づく
  • 最終診断は二尖弁の大動脈弁逆流症

👂 独り言
  • 心音(特にⅢ音やⅣ音などの低調音)は,何度も聴いて耳に覚え込まします.視覚も同じです.何度も見ていると僅かな変化にも気が付きます.
  • この動画はそういった眼の練習に最適と思われます.本例は中等度の大動脈弁逆流ですが,中等度以上なら,ほぼクインケ徴候は観察できます.
  • 本コンテンツには大動脈弁逆流例の爪床変化が多くアップされています(コチラから).爪圧迫以外の描出ワザも是非,マスターしてください.

松下記念病院 川崎達也)