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2020-09-14

ダブル・キャノン

1週間前から急に増悪した倦怠感で来院した症例

😊 解説
  • 正中寄りの左鎖骨上に内頸静脈の間欠的隆起(巨大a波/cannon a wave)を観察
  • 心音ではⅠ音の大きさが心拍毎に異なり4拍目に最大(大砲音/cannon sound)である
  • いずれの所見も房室解離時に認めることで有名であるが,心室期外収縮でも出現する
  • 本例は心臓サルコイドーシスによる3度房室ブロックを生じたときに記録された所見

😙 独り言
  • いずれの所見もcannonと記載されるが,そのメカニズムは異なることに要注意.巨大a波(cannon a wave)の出現機序は,三尖弁閉鎖中に心房収縮が生じるため.一方,大砲音(cannon sound)の機序は,心房収縮直後(房室弁の最大開放時)に心室収縮が生じるため.実際の本例の心音図でも,大砲音ではP波がQRS直前に生じている点に注目.
  • 注意深い聴診あるいは心音図(本例では低音と低中音を表示)ではP波の後に過剰心音(Ⅳ音)が観察される.このⅣ音も音量が変化して,心室急速流入期に合致すれば大きくなることが知られている(我々はatrial cannon soundと呼んでいます).

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2023-04-06

巨大と言われる小波

検診の心電図で異常を指摘された症例  問題  心電図異常とは?



松下記念病院 川崎達也)

2022-03-28

肥大型心筋症の頸静脈a波

🔍 a波の復習
  • 頸静脈波は3つの陽性波(a,c,v)と2つの陰性波(x,y)で構成(復習
  • a波は心電図のP波直後(QRS直前)に出現する陽性波で右房の収縮を反映
  • 診断は陽性波の視診+時相を触診(動脈拍動前)や聴診(Ⅰ音直前)で確定
  • a波は通常では不明瞭:頸静脈は陥凹として視認されることが多い(特にx谷)
  • 大きなa波は完全房室ブロック心室期外収縮などで有名(Cannon a wave)
  • 三尖弁狭窄でも認めるが,日常臨床では肥大型心筋症が最多(下図:典型例

ー 肥大型心筋症での検討(自験例)ー

👶 独り言
  • 肥大型心筋症で認めるa波は,右室への流入障害(コンプライアンス低下)を反映していると予想されます.ただしこの機序には,必ずしも右室肥大を伴う必要がないことに要注意です.左室の肥大が心室中隔を介して右室の拡張能にも影響していると考えられるためです(ベルンハイム効果
  • 日常外来には,検診で心電図の左室肥大を指摘されて受診される方が少なくありません.無症状で血圧も正常なら是非,臥位で頸静脈のa波を探してみてください.肥大型心筋症をフィジカルで診断して,心エコー図で確認するスタイルは十分に可能です(たま?に失敗しますが 😅 実例

松下記念病院 川崎達也)

2022-03-17

鎖骨上のピコピコ

CTで悪性腫瘍の右心系転移が疑われた症例

🐳 巨大a波(Prominent or Giant a wave)
  • 右鎖骨の頭側(鎖骨上窩)に周期的に隆起する拍動を視認(前半矢印)
  • 手指で容易に圧迫され,時相は動脈拍動やⅠ音の直前 ➜ 頸静脈のa波
  • 深吸気時に右内頸静脈の拍動が出現(クスマウル徴候陽性:後半矢印)     
  • 心エコー図で三尖弁周囲に腫瘍を認め,三尖弁狭窄の病態が疑われた

💣 おまけ
  • ご本人に自覚症状はなく,心音にも特記すべき異常はありませんでした.また座位で頸静脈は視認できず,クスマウル徴候も陰性でした.
  • 同様のa波は不整脈(完全房室ブロック心室期外収縮)で有名です.この場合はCannon a waveと呼ばれます(キャノン音と要区別
  • 日常臨床では頸静脈の大きなa波は肥大型心筋症で視認することが多く,同疾患のフィジカル診断にも有用です(典型例
  • a波は本例のような三尖弁狭窄症など右房圧が上昇した病態で目立ちますが,日常臨床でお目にかかることは稀(他の自験例:心房中隔欠損
  • 頸部の陽性波と言えば一発診断可能なコリガン脈ランチシ徴候(巨大v波)ですが,個人的には地味なa波が大好きです 😊

松下記念病院 川崎達也)

2022-03-14

自覚症状と身体所見の乖離:パート2

慢性左心不全で加療中の症例が息切れで来院


ランチシ
松下記念病院 川崎達也)

2021-01-25

大砲(キャノン)

息切れで来院した症例

🐝 解説
  • 頸部に規則正しい隆起(画質不良ですいません 🙇)
  • 陽性波は指で容易に圧迫できた ➜ 内頸静脈の拍動
  • Ⅰ音または橈骨動脈拍動の直前に出現 ➜ 頸静脈a波
  • 座位で明瞭なa波といえば巨大a波(cannon a wave)
  • 本症例の最終診断は2:1伝導の房室ブロックであった

🐞 巨大a波
  • その機序は三尖弁の閉鎖中に心房収縮が生じて,頸静脈に逆流するためである.3度房室ブロックによる巨大a波が有名であるが(自験例),P波がQRS直前に生じる不整脈であれば,あらゆる病態で出現する(心室期外収縮の自験例
  • 巨大a波の規則性と出現頻度である程度の鑑別は可能と思う(完全房室ブロックや心室期外収縮なら不規則で稀/2:1房室ブロックなら規則的で頻).ウェンケバッハ型の2度房室ブロックも挑戦したことがあるがこれは難しい(自験例
🉐 不整脈に関する過去の投稿 ➜ コチラ(WEB版なら右欄からも選択可能)
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2019-10-03

不整脈にも応用!

  • 慢性心不全例の頸静脈(座位で呼吸調整なし)


フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2024-03-04

🔍 最新論文:流し読み

📍 Cannon A wave validation as a diagnostic tool in paroxysmal supraventricular tachycardias



  • 背景 房室結節回帰性頻拍(AVNRT)のフロッグ徴候(キャノン A波)は伝統的に知られているが体系的評価はされていない
  • 対象 短いVA間隔(AVNRT+中隔副経路AVRT)と長いVA間隔(非定型AVNRT+左自由壁副経路AVRT)に分類した100名
  • 結果 キャノンA波はAVNRTと関連しないが(p = 0.058),短いVA間隔と関連(p<0.001).CVPはVA間隔と反比例(p<0.001)
  • 結論 キャノンA波の存在は短いVA間隔の頻脈という最終診断と関連する

CVPとVA間隔は逆相関
CE-542-03(同グループの発表抄録)

👽 追加コメント
  • フロッグ徴候の機序(房室弁の閉鎖時に右房収縮)を考えれば本研究の結果は理にかなっています.きっと症例数が増えればフロッグサインとAVNRTは有意に関連してくると推測します(本研究では100症例の検討でp = 0.058).
  • 中心静脈圧の上昇は頻脈期間や基礎心疾患とも関連しそうです.心不全を伴えば中心静脈圧が上昇し頸静脈拍動がより明瞭になるからです(自験例).このカエルサインハミングバード徴候(当院提唱)の普及に期待しています.

松下記念病院 川崎達也)

2023-05-15

カエル徴候 🐸 Frog sign

😊 興味深い報告J Innov Card Rhythm Manag 2022;13:5184-7
  • 房室結節回帰性頻拍(AVNRT)でアブレーションを予定した78歳の男性.発作中にカエル徴候(Frog sign)が明瞭だったため,電気生理学的検査中に右房圧も同時測定.

上室性頻脈発作中の12誘導心電図

発作開始(VA = 0 ms)直後から右房圧に大砲波(Cannon a waves)が出現

発作終了後は右房圧の大砲波(Cannon a waves)が消失

💁 カエル徴候(Frog sign)の過去投稿は コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2024-01-18

🏆 論文:ハミングバード徴候

  • 当院で実習された医学部6年生の方が経験した症例が出版 🎉
  • 主訴は1月前から持続する動悸感と継時的に増悪する息切れ
  • 心拍数は123 bpmで頸静脈から判定した中心静脈圧は上昇
  • ユニークなのは頸静脈拍動が肘動脈拍動の倍程あり(動画
  • 脈波図はキャノンa波(下図C矢頭)と通常a波(*)の疑い
  • 最終的な診断は2:1伝導の心房頻拍による頻脈性心不全です


🐝 ハチドリ徴候/Hummingbird sign
  • 本例の頸静脈所見のようにすごい速さの振動を,当院ではハミングバード・サインと呼んでいました(過去の投稿).このフィジカル所見にはまだ名前はない様なので,本論文のタイトルを”Hummingbird-like cannon a-waves”としました.フロッグ・サインの亜型として普及するといいのですが...
  • 身体所見に興味を有する医師にとって,新たなフィジカルを発見し報告することは何事にも勝る喜びだと思います(命名できればなおのこと).当院が関与できた新報告には"Atrial cannon sound"や"Diastolic paradoxical jet flow murmur"などがあります.もっともこの命名が普及しているとは思えませんが...

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2021-10-28

😤 緊急以外は病歴と身体所見で!

当院の検診センターから心電図異常で当日紹介(座位の頸部所見)



松下記念病院 川崎達也)

2024-04-04

今週の一枚 🎯

倦怠感があるため紹介された超高齢者


松下記念病院 川崎達也)

2024-11-14

キャノンは見えずとも...

ふらつきを訴える症例

🚑 現場実況
  • 本例は前医の心電図を持参されていたため,診察時には3度房室ブロックが既に分かっていました.さっそく大砲A波(Cannon a wave)を確認しようとしましたが,予想に反してあまりはっきりしません.
  • そこで吸気負荷(前負荷増大)を行ってみました.すると頚部がみるみる膨らんできて(通常のクスマウル徴候よりもはるかに大)ちょっとびっくり 😧 患者さんも苦悶の表情だったので慌てて負荷を解除

 👽 つぶやき
  • 本例でキャノン波が不明瞭であった理由は不明ですが,やはり心房機能の低下でしょうか(特にブースター機能>リザーバー機能の障害?)
  • 完全房室ブロックになると,通常では聞こえないような小さいⅣ音が認識できることが少なくありません(Ⅰ音と分離するため:自験例).
  • しかし本例ではⅣ音は聴取されませんでした(心房の機能低下に合致).心房細動の既往はありませんが,将来発生する確率が高いかも...

松下記念病院 川崎達也)

2019-09-30

匠の業

  • 頸静脈拍動のa波は心電図のP波に対応 ➜ 下図の心房収縮(AS)
  • 頸静脈拍動のx下降は右房の拡張に対応 ➜ 下図の心室収縮(VS)
  • よって理論的には頸静脈拍動から不整脈を類推することができる


😶 頭の整理
  1. a波が消失 ➜ 心房細動や洞停止
  2. a波とx下降の関係 ➜ ウェンケバッハ型2度房室ブロックやモビッツII型2度房室ブロック,2:1房室ブロック
  3. 間欠的に巨大a波(cannon wave)➜ 3度房室ブロック

👶 おまけ
  • 頻脈になると波形解析は困難であるが,房室結節リエントリー性頻拍で出現するフロッグ・サイン 🐸 は覚えておきたい ➜ 自験例1自験例2

関連投稿 💣
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)