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2024-12-05

負荷で改善しているわけではないと思います

弁置換術後の症例(座位)

💧 解説
  • 座位で頚部中央に明瞭な拍動を視認する
  • 陥凹なので静脈拍動 ➜ 非代償性心不全
  • 深吸気負荷で胸鎖乳突筋が明瞭になった
  • それと同時に内頚静脈の拍動は不明瞭に
  • BNP:前回172 pg/ml ➜ 今回305 pg/ml
  • 過労回避と減塩指導で早めのフォローへ

💦 個人的見解
  • 吸気時には胸腔内圧が陰圧になるため,健常者では中心静脈圧が低下します.しかし安静座位で内頚静脈の拍動を視認できるほど中心静脈圧の症状した症例(例えば15 cm水柱 or 11 mmHg以上)では,その圧が正常化することはほぼないと思います.実際に圧の測定はしていませんが,頚静脈所見はほぼ悪化します(拍動上縁の上昇あるいは拍動パターンの変化[陥凹から隆起など])
  • しかし日々の臨床では,吸気負荷で内頚静脈の拍動が逆に不明瞭になる症例に稀ながら遭遇します.本例のように吸気という動作に伴い胸鎖乳突筋が明瞭になることもその一つの理由かと思います.内頚静脈は深部静脈であるがため,胸鎖乳突筋を介した皮膚面の拍動で認識する必要があります.胸鎖乳突筋が緊張すると深部の拍動を認識しにくくなるということは容易に理解できます.
  • そもそも論として「安静時に座位で内頚静脈の拍動を認める症例には負荷が必要なのか?」という問題があります.頚静脈評価の普及を願って作成したアプリ「シンプル頚静脈©」では,安静時に陽性なら負荷は不要と謳っています.負荷で重症度を細分化したいとの想いは分かりますが簡便な半定量評価で十分なのかもしれません(例えば3分割法:拍動上縁が鎖骨上窩・頚部中央・顎下)

(松下記念病院 川崎達也)

2026-09-07

心不全:体位と頚静脈

拡張型心筋症の症例

🔎 解説
  • 座位:内頚静脈の明瞭な拍動(隆起)
  • 半坐位:拍動が不明瞭になっている
  • 臥位 (枕あり):外頚静脈の怒張あり
  • 本症例は心不全の悪化のため入院中

😐 コメント
  • 本例は座位で内頚静脈の拍動上縁が、顎下まで達しています。つまり中心静脈圧(右房圧)は高度に上昇しています(おそらく20 ㎝水柱以上)。このような症例では、半坐位や臥位では内頚静脈の拍動上縁が顎下よりも上方になり、その視認が難しくなるため注意が必要です。臥床で外頚静脈が怒張していますが、心不全診療で信頼すべきは内頚静脈です。
  • 一方、座位で内頚静脈の拍動を視認するためには、その上縁が少なくとも鎖骨上窩よりも上にあることが必須です。つまり、心臓と鎖骨の垂直距離を考慮すると、15 ㎝水柱以上の中心静脈圧(右房圧)を要します(正常参考値は4-8 cm水柱)。よって、軽度から中等度の上昇を見逃さないため、負荷頚静脈法です。無料アプリ「シンプル頚静脈」で学べます。

(松下記念病院 川崎達也)

2026-07-30

時には外頚静脈も活用

体重が少し増加した心不全例(座位)

😐 解説
  • 外頚静脈の明瞭な上下運動あり(矢頭)
  • 吸気保持で拍動は消失し膨隆(=怒張)
  • 当日のBNPは前回の700から1300に増加
  • 本症例はDCMで心不全の悪化と診断した
  • 利尿薬を追加して早めに再診を予定した

😶 追加コメント
  • 心不全の評価で用いる頚静脈は、外頚静脈ではなくて、内頚静脈です(もちろん右側)。これは解剖学的な理由です(外頚静脈は右房と直線的関係でなく、有効な逆流防止弁があり、胸鎖乳突筋の緊張の影響を受ける)。
  • ただし本例のように心周期に伴う拍動が明瞭な場合は、中心静脈圧の推定(心不全判定)に用いてもOKです。あるいは呼吸変動(自発呼吸に伴う変動あるいは深吸気負荷に伴う変化)がある場合も、判定可能と思われます。
  • 本例では外頚静脈に目が行きますが、よく見ると内頚静脈の拍動も十分に視認できます。通常呼吸時には鎖骨上窩で陥凹があり、吸気負荷後は頚部の中央(外頚静脈を含む)が面として周期的に陥凹しています。

(松下記念病院 川崎)

2024-12-30

外頚静脈も大切です

息切れで来院した症例

😐 解説
  • 外頚静脈の隆起が明瞭(ほぼ怒張)
  • 深吸気負荷後は拍動が出現(矢印)
  • 心エコーで心膜液貯留+右心虚脱
  • 心膜液のドレナージを実施(血清)
😀 追加コメント
  • 心不全で重視すべきは内頚静脈で,この場合は怒張という表現は避けるべきです(内頚静脈の怒張→循環停止→死亡).しかし心タンポナーデや緊張性気胸など特殊な病態に対して,外頚静脈の怒張はいまだ有効な身体所見です.
  • 重症の心タンポナーデでは吸気負荷でも外頚静脈の怒張は消失しないことが多いと思います(むしろ悪化:自験例).しかし本例のように軽症例(血圧低下が僅かで頻脈も目立たない)では,吸気負荷で怒張は解除されるようです.
  • 本例の症状は息切れで右心不全よりも左心不全が疑われました.頚部をよくよく観察すると,顎下~頚部中央の皮膚面全体的が拍動していることに気がつきます(きっと内頚静脈の拍動).おまけ 😙 耳垂にフランク徴候もあり

👉 心タンポナーデに関するの過去の投稿は コチラ(PC版なら右下欄から選択可能)

(松下記念病院 川崎達也)

2024-06-10

🏆 論文

  • 当院の専攻医の野口先生の臨床研究が出版されました 🎉
  • 慢性心不全症例に対する各種負荷頚静脈の比較検討です
  • 実際の負荷法は吸気・5回立ち上がり・蹲踞の3種類です
  • いずれの負荷も予後予測に有用で予後予測能に大差なし
  • ただ5回立上がりと蹲踞は膝痛や腰痛で実施不能例あり
  • 最終的には負荷頸静脈は吸気が最も実用的な方法と結論


😎 つぶやき
  • これは当院で行ってきた一連の負荷頚静脈研究(①6分間歩行,②吸気負荷,③PEF vs REFなど)の最終報告です.臨床で生じた疑問に対する研究を行い,新たな疑問に対する追試を行うということの繰り返しでした.最終的に「吸気による頚静脈負荷は様々なタイプの心不全で予後予測に有用」というゴールにたどり着けました.
  • 本論文の査読者から負荷の様子を追加するよう指摘されました.実際の動画よりもピクトグラムの方がいいのではと考え,無料画像を検索しました.しかしふさわしいものなかったので自作しました(上記のFigure 1).思ったより簡単で,今ではあらゆる体位や動作を表現できるようになりました.やっぱ何事も挑戦ですね.

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(松下記念病院 川崎達也)

2026-01-19

ChatGPT(GPT-5.2)の返答

  • AIを仕事で利用する頻度がとても増えました.とんでもない嘘を自信満々で答えるときがあるため,返答を鵜吞みにすることはできません.しかし大いに参考になります(特に基本的な知識がある領域)
  • AIは進化がとても早い領域です.その変化を知るため現時点のレベルをまとめておきます.各設問に対するAIの答えをそのまま記載します.忘れなかったら😅1年後に同じことを最新AIに問うてみます

 
Q1 心尖拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 心尖拍動は左心室収縮により生じる胸壁の拍動で、心機能評価に重要な身体所見である。正常では左第5肋間・鎖骨中線上に触知され、範囲は限局する。外側・下方への偏位は心拡大を示唆し、びまん性で強い拍動は左心室肥大や容量負荷を考える。触知困難な場合は肺気腫や肥満が原因となることがある。このように心尖拍動は心疾患の存在や重症度推定に有用である。

Q2 心音の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 心音は心臓の弁運動や血流変化により生じ、心機能や弁膜症評価に重要な身体所見である。第Ⅰ音は房室弁閉鎖を反映し、増強は頻脈や僧帽弁狭窄、減弱は心筋障害を示唆する。第Ⅱ音は半月弁閉鎖音で、分裂の変化は肺高血圧や右脚ブロックなどの診断に有用である。第Ⅲ音は容量負荷や心不全、第Ⅳ音は心室拡張障害を示すことが多い。さらに心雑音の有無や性状から弁膜症や先天性心疾患の推定が可能であり、心音聴診は非侵襲的に循環器疾患を評価できる基本かつ重要な診察手技である。

Q3 頚静脈拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 頚静脈拍動は右心系の圧・容量状態を反映する重要な身体所見である。内頚静脈の拍動を観察することで中心静脈圧を推定でき、右心不全、容量負荷、脱水の評価に有用である。正常では半坐位で鎖骨上に軽度の拍動を認める程度であり、明らかな怒張は右心不全、三尖弁閉鎖不全、心タンポナーデ、収縮性心膜炎などを示唆する。波形の観察も重要で、a波増高は右房圧上昇、v波増高は三尖弁閉鎖不全を考える。Kussmaul徴候(吸気時の頚静脈怒張増強)は収縮性心膜炎や右室梗塞に特徴的である。頚静脈拍動は非侵襲的かつ迅速に右心機能を評価でき、循環動態把握に欠かせない所見である。

Q4 頚動脈拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 頚動脈拍動は左心室からの駆出血流を直接反映する重要な身体所見であり、心拍出量や大動脈弁疾患の評価に有用である。正常では立ち上がりが速く、なだらかに下降する拍動を触知する。拍動の減弱や遅延(parvus et tardus)は大動脈弁狭窄を示唆し、逆に強く跳ねるような拍動(bounding pulse)は大動脈弁閉鎖不全や高拍出状態で認められる。二峰性拍動は肥大型心筋症を、拍動の左右差は頚動脈狭窄や大動脈解離を疑う所見となる。また、頚動脈雑音の聴取は動脈硬化性病変のスクリーニングとして重要である。頚動脈拍動の触診・聴診は簡便かつ非侵襲的に全身循環や弁膜症の手がかりを得られるため、循環器診察における基本かつ不可欠な所見である。

Q5 傍胸骨拍動の臨床的意義を200語程度にまとめてください
  • 傍胸骨拍動は胸骨左縁で触知される心拍動で、主に右心系や心室負荷の状態を反映する重要な身体所見である。正常では明瞭に触知されないが、持続的で強い傍胸骨拍動は右心室肥大や右心系圧負荷を示唆する。肺高血圧、肺動脈弁狭窄、慢性肺疾患に伴う肺性心などで認められることが多い。また、胸骨左縁下部での拡張期に強い拍動は右心室容量負荷や三尖弁閉鎖不全を考える手がかりとなる。心室中隔欠損などでは拍動が増強する場合もある。傍胸骨拍動は視診・触診のみで評価可能であり、右心機能や肺循環異常を推定するうえで有用な、基本的かつ重要な循環器身体所見である。


(松下記念病院 川崎達也)

2025-10-16

診療室内で運動負荷

無理すると息切れがあるという男性(座位)


👀 解説
  • 安静座位で内頚静脈の拍動なし
  • 吸気負荷で一瞬,僅かに拍動?
  • 診察室内を2周歩いてもらった
  • すると座位で明瞭な拍動(➢)
  • 最終診断は非代償性の心不全

👶 コメント
  • 頚静脈の座位定性法の可能性は無限です.様々な負荷が追加できるからです.吸気負荷が最も簡便ですが,前屈負荷や蹲踞負荷,左上肢挙上負荷,立位負荷なども可能です.そしてそれらを組み合わせることも有用です.
  • 当院で最初に行った負荷頚静脈法は6分間歩行でした(論文).しかし診察室やベットサイドでは実施が困難で活用範囲が限定されます.今回行った診察室内を少し歩きまわってもらう負荷はベットサイドでも可能です.

(松下記念病院 川崎達也)

2024-08-22

酷暑もあと少し?

虚血性心疾患でフォロー中の症例(座位)

😊 解説
  • 外頚静脈を明瞭に視認(矢印) ➜ 静脈圧上昇?
  • ネックックーラーを外すと外頚静脈は視認不能
  • 深吸気負荷で内頚・外頚静脈ともに視認できず
  • フィジカル所見から心不全状態ではないと判定
  • 自覚症状はなく予定採血のBNP値も正常範囲内
  • 最終的に首掛けクーラーによる偽陽性と考えた
👔 ネッククーラー
  • このneck coolerがいつ頃から使われているのか知りませんが(首かけ扇風機よりは後発?),今年は特に見かけるようになりました.保冷剤による冷却効果だけではなくて,冷却プレートへの通電で直接冷やすタイプもあるようです.
  • 本症例には心不全の既往はなかったのですが,今までなかった外頚静脈が目立ち「あれっ?」と思いました.しかしネッククーラをしたままで吸気負荷を追加したら外頚静脈は見えなくなりました(上記動画には含まれていません).
  • 長い歴史をかけて磨き上げられた身体所見ですが,時代とともにアップデートしていく必要があります.コロナ禍以降は診察室でもマスク装着がスタンダードになったため,それを加味した判定などです(一例:マスクでマスク)

(松下記念病院 川崎達也)

2025-08-07

頚静脈の座位定性法の弱点

労作時の息切れで来院した症例(座位)


🐝 解説
  • 右頚部腫瘍(30年著変なし)
  • 安静座位で頚静脈は視認せず
  • 深吸気負荷後も頚静脈は陰性
  • 心音は明瞭なギャロップあり
  • BNPは著増(>1000 pg/ml)
  • 心エコー図で左室駆出率18%

🐙 頚静脈の座位定性の弱点

身体所見は診断特異度は高いのですが,感度が少し劣るという共通した問題点があります(評価者のばらつきもですが😑).一方,頚静脈の座位定性(シンプル頚静脈)は感度も特異度も臨床的には十分すぎるくらい高いと思われます.ただし特定の病態では役立たないと感じることもあるので,以下に列記してみます.

(松下記念病院 川崎達也)

2025-03-13

立位負荷と日常生活

慢性心不全例(HFpEFでEF=60%)

💁 解説
  • 頚部に血管の隆起あり(外頚静脈)
  • 吸気時虚脱(クスマウル徴候陰性)
  • 鎖骨上窩の周期的陥凹は呼吸性変動
  • 吸気負荷で頚部に拍動出現(矢印)
  • 内頚静脈の拍動であり心不全の状態
  • 座位から立位の体位変換で拍動消失

👻 補足
  • 本例は様々は治療を行っても内頚静脈の座位所見が陰転化しない慢性心不全例です.ただし日常生活には支障はなく,長年安定しています.
  • 座位から立位という体位変換はもちろん心臓にとっての大きな仕事です.しかし立位による前負荷(静脈還流)の低下は心負担を減らします.
  • 本例のように立位で内頚静脈所見が悪化しないあるいは陰性である症例は自覚症状に乏しいことが多いと思います(立位でも陽性の自験例)

(松下記念病院 川崎達也)

2025-06-12

Ⅳ音消失し頚静脈出現

急に息遣いが荒くなった症例(座位)

😊 解説
  • 呼吸と嚥下に伴う頚部の動きが目立つ
  • 内頚静脈の拍動を判定することは困難
  • 吸気負荷後も内頚静脈はやはり難しい
  • しかし外頚静脈の拍動は明瞭(矢印)
  • 最終診断は心房細動による心不全悪化

💁 独り言
  • 本例の基礎疾患は肥大型心筋症でした.同疾患では左室コンプライアンスが低しているため,心房は常に過負荷状態です.左室への血液充満に対する心房の果たす役割が大きく,心房細動を生じたときのダメージは他の疾患より大と思われます.いわゆる「HCMでS4消失し頚静脈出現」というやつです.
  • 肥大型心筋症では洞調律にも関わらずⅣ音を認めない症例が少なからず存在します.このような症例では運動耐容能が低下し(当院の臨床研究),心血管事故も多い(当院の臨床研究)と思われます.でもⅣ音が明瞭でも油断は禁物です.心房に頼る血行動態が,細動で一気に破綻することがあります.

(松下記念病院 川崎達也)

2025-07-31

サロンパスにも負けず

息切れで来院(座位)

😋 解説
  • 首に貼られたシップで頚静脈評価は困難?
  • しかしよく見ると頚部の中央に明瞭な隆起
  • しかも耳垂直下まで陽性拍動を確認できる
  • その後の検査で非代償性心不全を確認した

😎 現場実況
  • 本例はシップを見た瞬間に「これでは判定できないな」と安直に考えてしまい,頚部中央の明瞭な拍動に気が付くのに少し時間を要した.頚静脈拍動は用手的に圧迫できる弱い拍動であるが,最重症の陽性波(三尖弁逆流によるランチシ徴候が多い)はかなり力強い.実際に,本例も指で押さえてもなかなか消失しなかった.
  • 本例では動画の途中に大きな呼吸をしていることにも注目して欲しい(吸気負荷は未実施である).このように自発的な大きな呼吸も心不全所見の一つと考えられる(特にコロナ以降のマスク装着時).なお通常呼吸時に耳下まで達する陽性波を呈する頚静脈拍動は,深吸気負荷でさらに悪化することは少ないと思われる.
  • 本例は心電図で右脚ブロック+左軸偏位+ウェンケバッハ型2度房室ブロックであった(三枝ブロックならぬ四枝ブロック?😁).心電図検査後にもう一度,頚静脈拍動を見直したが,ウェンケバッハ型2度房室ブロックとは自信をもっては言えなかった(反省:同様の過去の経験).理論的にはほとんどすべての不整脈は,頚静脈+頚動脈所見(または橈骨動脈触知)で鑑別できるのだが…(匠の業)

(松下記念病院 川崎達也)

2025-05-05

頚部で動脈拍動と静脈拍動を同時に視認すれば…

下腿浮腫が悪化した症例(座位)

😊 解説
  • 頚部中央に周期的隆起(動脈 or 静脈)
  • よく見ると周期的な二峰性陥凹(矢印)
  • 陥凹は必ず静脈なので頚部中央は動脈!
  • 吸気負荷で陽性波は変化なし(=動脈)
  • 静脈拍動は筋肉の緊張で見えなくなった
  • 最終診断は連合弁膜症の非代償性心不全

💁 コメント
  • 頚部で動脈拍動と静脈拍動を同時に視認すれば,ぜひ時相に注目してください.頚部の隆起時(収縮期)に内頚静脈が陥凹(x谷)しているはずです.そして頚部の隆起の終了後(拡張期)に頚静脈の二つ目の陥凹(y谷)が出現しているはずです.もっとも座位では静脈圧の伝播速度が動脈よりも遅れるためか,本例では少しぎくしゃくした動きになっていますが…
  • 頚部で動脈拍動と静脈拍動を同時に視認すれば,高心拍出性の心不全が疑われます.動脈拍動は大脈であるコリガン脈を示唆し,静脈拍動は右房圧の高度上昇を意味するためです.なお本例では吸気負荷を行っていますが,安静時に拍動を視認すれば,負荷後に見えなくても心不全です

(松下記念病院 川崎達也)

2025-01-02

負荷心尖拍動

慢性左心不全の増悪例

😐 解説
  • 乳房下に抬起性心尖拍動 → 左室の拡大・肥大
  • 心窩部にも明瞭な抬起性拍動 → 右室負荷の疑い
  • 座位から立位の体位変換で左室の拍動は変化なし
  • 心窩部の拍動は減弱~消失(右室負荷の減少?)

💟 追加コメント
  • 本例の心尖拍動の変化をどう解釈するかは難しい.心窩部の拍動が立位に伴い目立たなくなったことは,前負荷の減少による右室負荷の低下で説明できそう.一方,心尖拍動(左室)の所見は,前負荷の減少が立ち上がりという仕事で相殺されたと考えるのがいいかもしれない.
  • 心臓の検査では負荷を積極的に併用している(心電図や心エコー,核医学,MRI,心カテなど).身体所見でも然り.負荷を併用した頚静脈評価法(負荷頚静脈)はかなり解明されてきたと個人的には思っている.今後は負荷心尖拍動の臨床的意義も調べていく必要があるかも...

(松下記念病院 川崎達也)

2025-06-26

「とりあえず吸気負荷」

久しぶりに外来を受診した心不全例(座位)

🐤 解説
  • 息遣いが荒く頚部拍動の有無は判定難
  • 吸気で鎖骨上窩に明瞭な拍動(矢印)
  • 本例はHFrEFで怠薬後に息切れを自覚
  • その後の精査で心不全増悪を確認した
🐣 独り言
  • 負荷を併用した頚静脈の座位定性法(シンプル頚静脈)では,安静時に拍動を認めれば負荷を追加する必要はありません.ただし本例のように頚静脈の拍動なのか呼吸に伴う変化なのか分からない症例を時々経験します.そのようなときには「とりあえず負荷をかけてみる」のがいいと思います.特に吸気負荷なら手間もかからず,負荷に対するリスクもほとんどありません.


(松下記念病院 川崎達也)

2024-07-04

頸静脈の立位負荷②

拡張型心筋症(CRTD)例が息切れで来院(座位)

🐤 解説
  • 座位で鎖骨上に周期的な陥凹(内頸静脈)
  • 中心静脈圧はかなり上昇していると判断
  • 座位→立位で拍動パターンの変化に注目
  • 拍動は一旦消失するもその後に再び出現
  • しかもパターンは陥凹ではなく隆起(→)
  • 症状も強く(血圧は低めも)利尿薬追加
🐥 追加コメント
  • 通常は,座位から立位の体位変化で頚静脈拍動パターンが改善します(陥凹→消失または隆起→陥凹など).この場合は労作時の息切れの訴えはあまり強くなく,日常生活はなんとか送れいていることが多いと思います(自験例).
  • しかし本例のように立位で改善が乏しい症例ではやはり辛そうです.本例はスピロノラクトン25 mgの追加で体重が3 kg低下して,座位で頚静脈拍動も消失しました(ただし吸気負荷後やトレッドミル負荷中は僅かに陽性)
  • 本例では長年,患者さん自身がいつも頚静脈を確認されています.自覚症状との関連も確かなので,担当医(投稿者)のみならず患者さんもとても信頼しているフィジカル所見です.毎回BNP値を確認する必要もありません.

(松下記念病院 川崎達也)

2024-10-07

シンプル頚静脈© Simple JVP©

  • 頚静脈評価が心不全管理に役立つことは疑いありませんが,あまり現場では活用されていません.その大きな理由に複雑な方法論の問題があると思われます.本邦のガイドラインには「45度の半座位で内頸静脈の拍動上縁と胸骨角の垂直距離が3cm以上で静脈圧上昇」と記載されています.しかし臨床現場では患者さんに45度の半座位という姿勢をとってもらうことは容易ではありません.さらに内頸静脈は深部静脈であるため,その拍動上縁を見極めることも難しいと思われます.
  • 当院では頚静脈のシンプルな評価方法を追求してきました.まぁこれ位でいいかな〜という段階に達したので,その手法を「シンプルJVP」としてアプリ化(WEB版)してみました.ポイントは,座位の姿勢で頸静脈拍動が視認できるか否かの定性法です.そして軽度〜中等度の中心静脈圧上昇を見逃さないために各種負荷を併用します.当院では患者さん自身やそのご家族にも活用していただいています.将来,ガイドラインに記載されたらすてきだな〜なんて思っています 😊

(シンプルJVP:日本語版 / English edition)

(松下記念病院 川崎達也)

2026-09-24

心不全の頚静脈評価:レアケース

息切れを訴える非閉塞性の肥大型心筋症(座位)

🔎 解説
  • 安静座位で頚部に周期的な拍動あり(矢頭)
  • 用手的に容易に圧迫可→動脈ではなく静脈
  • 時相は前収縮期(橈骨拍動前)→頚静脈a波
  • 吸気後はa波が消失(他の陥凹や隆起なし)
  • 本例は最終的にHCMの心不全と診断された

😐 追加コメント
  • 肥大型心筋症では、頚静脈のa波を半数以上の症例で視認できます。これは心房収縮時に硬い心室に血流がスムースに流入できずに、頚静脈に逆流するからです。右室肥大がなくても左室肥大の硬さが、心室中隔を介して右心系にも伝わります(ベルンハイム効果)。
  • HCMの約7割にa波を認めますが、これは臥位であって、座位で視認できる症例は稀です(その頻度)。座位で認めるためには、中心静脈圧がある程度、上昇している必要があるためと思われます。よって座位でa波を認めるHCMでは、心不全の合併を疑います。
  • 本例は吸気後にはa波の拍動が不明瞭です。通常、a波は視認することが難しい弱い波で、吸気負荷など筋肉(胸鎖乳突筋など)の緊張時には、まず見えないと思います。もっとも、重症心不全ならHCMでも、x谷やy谷の陥凹あるいはv波の隆起を座位で視認します。

(松下記念病院 川崎達也)

2025-03-27

負荷の組み合わせ

心筋梗塞後の症例(座位)

🐔 解説
  • 安静では頚部に明らかな拍動なし
  • 吸気保持で拍動が出現?(矢印)
  • 吸気を保持したまま座位➜立位へ
  • 微妙な頚部の拍動は完全に消失!

    🐙 コメント
  • 本例は治療によってHFrEFからHFpEFに改善したHFrecEF症例です.深吸気保持(前負荷増加)で拍動が出現しているなら,中心静脈圧(≒右房圧)は軽度~中等度に上昇していると考えられます.しかし座位から立位への体位変換(前負荷減少)では中心静脈圧は低下しています. 実際に本例はテニスを楽しんでいます.
  • 吸気負荷などで頚静脈拍動が出現しても,立位で消失する症例は日常生活に支障が少ないと思います(自験例).逆に立位になっても拍動が持続する症例は,労作時の息切れが問題になることが多いようです(自験例).さまざまな負荷が可能なシンプル頚静脈©は,心不全管理管理で無限の可能性を秘めているかも...😁

(松下記念病院 川崎達也)

2026-06-25

安静陽性なら負荷は必須ならず

先天性心疾患術後例の息切れ

🔒 解説
  • 胸部正中に手術瘢痕(問診でファロー四徴症と判明)
  • 座位で内頚静脈の陥凹(矢頭)→ 非代償性心不全
  • 吸気負荷で鎖骨上窩の内頚静脈拍動は一見、不明瞭
  • しかしよく見ると頚部中央に拍動が出現(矢印群)
  • 下腿浮腫はなく、心音は汎収縮期逆流性雑音+Ⅲ音
  • 最終診断は亜急性の僧帽弁逆流(腱索断裂の疑い)

🔓 独り言
  • 安静座位で頚部に視認する内頚静脈の拍動は高度の中心静脈圧の上昇を示唆します。この代償が破綻した状態が、吸気で改善することは(経験的にも)ないと考えます。
  • しかし本例のように、吸気で拍動が不明瞭になる症例を稀ながら経験します。その多くは頚部の筋肉(特に胸鎖乳突筋)の緊張に伴う静脈拍動の不明瞭化と考えます。
  • ご存じのように下腿浮腫は心不全で出現する身体所見の一つですが、特異性はありません。また本例のように比較的急な経過で増悪した心不全では、下腿浮腫は稀です。

(松下記念病院 川崎達也)