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検索キーワード「上肢挙上」に一致する投稿を関連性の高い順に表示しています。 日付順 すべての投稿を表示
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2023-04-13

上肢挙上と心負荷

息切れで来院した症例(端座位)

🙋 解説
  • 右頸部に大きな陽性波(巨大v波)で中心静脈圧は上昇
  • 拍動上縁は額レベル付近で推定中心静脈圧は20cm水柱
  • 左上肢の垂直挙上で拍動上縁は数cm上昇(耳下レベル)
  • 最終診断は弁膜症による慢性心不全の増悪(非代償期)

 💁 つぶやき
  • 左上肢挙上で明瞭な息切れが出現した典型的な症例を経験以降,挙上負荷を行うことが増えました(別の自験例).その機序は上肢挙上に伴う静脈還流の増加(前負荷増大)だろうと安易に考えていました.
  • しかし本例の動画を編集中に,上肢挙上を開始直後から拍動上縁が上昇していることに気がつきました(画面右に少し写っている左上肢の動きに注目).この現象は上肢の静脈還流だけでは説明は困難です.
  • どうやら上肢の静脈血液の還流(前負荷増大)に加え,挙上という仕事(心拍数増加を含む),呼気時間の延長(胸腔内圧上昇),吸気時間の短縮(前負荷減少)などが複雑に関与している様子(下表参照)


🉐 上肢挙上負荷の過去投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2023-08-10

上肢挙上で中心静脈圧 ⏫

自覚症状が悪化した心不全症例(体位は座位)

🐦 解説
  • 外頸静脈を視認可能 ➜ その上縁は頸部中央あたり
  • 上下変動があるため中心静脈圧は上昇と判断可能
  • 内頸静脈も鎖骨上窩で僅かに陥凹を認めると判断
  • 左上肢挙上で外頸静脈の拍動上縁は5cm程アップ
  • 慢性左心不全の増悪と考えて内服調整を行なった

 🐤 診察室中継
  • 上肢挙上のみでも中心静脈圧って結構(5cm水柱くらい)上がるんだと思いながら頸部を見ていました.その後に患者さんの顔を見たら真っ赤になっていたので驚きました(ビデオでは少し分かりにくいと思いますが...).
  • 上肢挙上のみで明瞭な息切れが出現した症例(動画中の音声に注目!)を経験したこともあります.この様な強い反応は,吸気負荷ではあまり経験したことがありません.理由は不明ですが機序は過去に考察(ココ

🉐 上肢挙上負荷の過去投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2022-11-14

😱 恐怖の上肢挙上負荷試験:頸静脈

慢性心不全 (HFpEF) の増悪が疑われる症例

👴 解説
  • 安静時には座位で外頸静脈を明瞭に視認可能(ただし上縁は拍動あり)
  • よく見ると内頸静脈の陥凹も確認できるため中心静脈圧はかなり上昇
  • 左上肢を肩上まで挙上 ➜ 外頸静脈の拍動消失+内頸静脈の陥凹出現
  • 左上肢を垂直に挙上 ➜ 呼吸困難感が出現(患者さんの荒い息切れ!

👵 ひとり言
  • 座位で内頸静脈の拍動が見えない時には吸気負荷を行いクスマウル徴候の有無を確認するようにしています.これは中等度までの中心静脈圧上昇を見逃さないためです.
  • 最近は左上肢の挙上負荷を併用しています(肩痛で無理なことも少なくありませんが).前負荷の増加程度は上肢挙上 ≒ 吸気負荷と思っていました(以前の投稿).
  • ただし本例では急に息遣いが荒くなり少し怖くなりました.上肢挙上負荷は,少なくとも座位で内・外頸静脈が全く視認できない症例に限定する方が安全かも...😑

松下記念病院 川崎達也)

2022-10-20

新しい頸静脈負荷法:上肢挙上

慢性左不全の症例:坂道で息切れあり

🍩 解説
  • 座位で鎖骨上に内頸静脈の拍動は視認できない(中心静脈圧の高度上昇なし)
  • 吸気負荷で二峰性の陥凹が出現(静脈圧は中等度上昇:目安は9-14cm水柱)
  • 吸気負荷の中止で拍動は消失するが,左上肢の挙上で拍動が再度出現(矢印)

😗 独り言
  • 慢性期心疾患の病態評価には負荷検査が必要です(例えば負荷心電図,負荷心エコー図,負荷シンチグラフィ).最近では心臓カテーテル検査中にも負荷を行なっています(冠血流予備能比FFRなど).
  • もちろん頸静脈評価にも負荷を適応できます(当院の研究:6分間歩行負荷吸気負荷).前負荷を増やす方法は多数ありますが(蹲踞姿勢や下肢挙上,肝圧迫など),本例のように上肢挙上も簡便です.
  • 個人的な経験からは左側のみの挙上がいいと思います.右側挙上あるいは両側挙上(前負荷が倍増)では,あたりまえですが右内頸静脈の視認(特に鎖骨上窩の僅かな陥凹出現の判定)が難しくなります.

松下記念病院 川崎達也)

2023-09-14

上肢挙上負荷は慎重に

慢性心不全の増悪症例(体位は座位)

👿 解説
  • 内頸静脈を視認(矢印)➜ 中心静脈圧は高度上昇
  • その拍動は陥凹波ではなく陽性波(ランチシ徴候)
  • 吸気負荷でも虚脱せず ➜ 広義クスマウル徴候陽性
  • 左上肢の挙上に伴い外頸静脈の明瞭な拍動が出現
  • 中心静脈圧の上昇程度:上肢挙上負荷>吸気負荷

💀 独り言
  • 座位での頸静脈評価の問題点は軽度〜中等度の中心静脈圧の上昇を見逃す場合があることです(安静座位で視認すれば推定15 cmH2O以上).この見落としを防ぐオススメの手技が負荷頸静脈評価法です(45度座位も有用ですが実施困難)
  • 負荷頸静脈評価法で最も簡便な方法が,前負荷を増やす吸気負荷だと思います.同負荷は簡便に加えてとても安全です.安静時に内頸静脈が陽性拍動を呈している症例でも,負荷後に自覚症状が悪化した症例を経験したことはありません.
  • 左上肢挙上による頸静脈負荷法も診察室で簡便に追加できる負荷で重宝しています.しかし自覚症状が明らかに悪化する症例を稀ならず見かけ要注意です(症例1:動画中の音声に注目/症例2:ビデオでは少し分かりのですが顔が真っ赤に)

🉐 上肢挙上負荷の過去投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2023-08-31

バンザイはダメでした 😓

慢性左心不全の増悪が疑われる症例

🐥 解説
  • 座位で頸部に内頸静脈の2峰性陥凹(中心静脈圧の高度上昇)
  • 吸気で内頸静脈の陥凹は隆起(ランチシ徴候)に変化(矢印)
  • 両側の上肢を挙上するとシャツの襟が頸部を隠してしまった
  • 慌てて襟元を覗いてみたがやはり頸静脈の拍動は確認できず

🐤 コメント
  • 上肢挙上は吸気よりも強い負荷になることが少なくありません.吸気負荷は前負荷の増大が中心ですが,上肢挙上負荷は上肢の静脈血液の還流(前負荷増大)に加え,挙上という仕事(心拍数増加を含む),呼気時間の延長(胸腔内圧上昇)などが加わるためと思われます(過去の投稿).
  • 本例では吸気負荷で陽性波(巨大v波/cv merger)が出現したため,過剰負荷にならないか少しヒヤヒヤしながら上肢挙上を追加しました.しかし両手をバンザイしてもらったら服がせり上がって頸静脈が見えなくなりました.急いで服をずらしましたが頸静脈の拍動は確認できませんでした.
  • 単なる視界不良でなく,ペンバートン徴候(Pemberton's sign)と同様の機序が働いているのかもしれません.拡大した両側の頸静脈が万歳ポーズで圧迫された結果,頭部からの静脈還流が減少しそうです.顔面うっ血が生じないのは甲状腺腫大や縦隔腫瘍と異なり完全閉塞にならないため?

松下記念病院 川崎達也)

2023-11-20

「アレっ?」と思ったら慎重に

2週間前から息切れが続く症例(座位)

🐥 解説
  • 頸部は右側のみでなく正中,左側も拍動(隆起)
  • 吸気負荷でも陽性波所見に変化なし(動画なし)
  • 同様に左上肢の挙上後にも頸部所見に変化なし
  • 最終診断は大動脈弁逆流のコリガン脈(頸動脈)

🐤 つぶやき
  • 右側に限局しない陽性拍動なら動脈性を真っ先に考えるべきでした.呼吸負荷や上肢挙上負荷で変化がないならなおさらです.しかし何故かこの時は頸動脈のことが少しも頭に浮かびませんでした.当日の外来があふれていたことと本例の病歴が典型的な心不全であったためかもしれません(反省😓).前頸静脈(Anterior jugular vein)の拍動って珍しいな〜と思っていました.
  • 上肢の重量は片側で体重の4%程度だそうです(例:体重60 kgなら2.4 kg).2Lのペットボトルを挙上・保持する動作はなかなかの重労働です.挙上に伴う前負荷増大(上肢内血液の心臓への還流)および後負荷増大(上肢が心臓よりも高位に移動)を考えると,上肢挙上は蹲踞姿勢(最強負荷新最強負荷)に匹敵するなかなかの負荷ではないかと思っている今日この頃です.

松下記念病院 川崎達也)

2019-12-12

末梢静脈

  • 息切れで当科を受診した症例で非代償性の左心不全が疑われる
  • 心臓の高さより少し下から右側の上肢をゆっくり挙上している


🔎 解説
  • 上肢の挙上とともに怒張していた前腕の表在静脈が虚脱している
  • 表在静脈が完全に消失した高さと右房との高さの差が中心静脈圧
  • 簡易法では静脈消失が鎖骨上なら中心静脈圧はかなり上昇と判定

🏈 コメント
  • 左側上肢よりも右側上肢で判定したい(理由).中心静脈圧の信頼度はおそらく内頸静脈,外頸静脈,表在静脈の順に低下(静脈径や静脈弁,右房からの距離などが影響).よって表在静脈による中心静脈圧の推定はあくまでも参考程度に.
  • 上肢の挙上に対する表在静脈の反応は少し遅延するため,静脈怒張に変化があれば暫くその高さで維持.また上肢の挙上は筋収縮の影響を減らすために受動的に行いたい.ただし静脈を目立たせるため拳は軽く握った方がいい?
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2022-12-01

これなら安心

拡張型心筋症+アブレーション後の症例
診察前の心電図検査で心房細動が再発していることが判明した

🐦 解説
  • 端座位で鎖骨上に内頸静脈の拍動なし ➜ 中心静脈圧の高度上昇なし
  • 吸気負荷でも拍動は出現せず ➜ 中心静脈圧の中等度〜高度上昇なし
  • 左上肢の挙上でも拍動は視認せず ➜ 中心静脈圧の中等度の上昇なし
  • 息切れなどの心不全症状なく聴診でもⅢ音を聴取せず ➜ 1月後再診

🐳 独り言
  • 以前は吸気負荷で内頸静脈の拍動が出現しなかったら(広義のクスマウル徴候陰性),「これなら一安心」と判断していました.しかし最近では心不全(新規または再発・増悪)が疑われる症例では,吸気負荷が陰性の場合に吸気と左上肢挙上の同時負荷を行うようにしています.
  • 実は本症例は診察室に入ってきて椅子に腰掛けた直後の検査で,左上肢挙上負荷は陽性でした.しかしスマホを取り出して撮影許可を得た後の上記記録では陰転化していました.1〜2分の座位で視認できなくなる静脈圧の上昇なら,急いで介入しなくても大丈夫だろうと判断しました.

松下記念病院 川崎達也)

2023-06-15

左上肢挙上:

前日にERで喘息と診断された咳嗽症例

😈 解説
  • 座位で右頸部に内頸静脈の拍動(陥凹)あり(凹矢印)
  • 咳嗽が強いため吸気負荷の代わりに左上肢の挙上負荷
  • 負荷後は頸部陥凹が(おそらく)隆起に変化(凸矢印)
  • 心音で明瞭なギャロップを確認して急性心不全と診断

👾 コメント
  • 深吸気止めで内頸静脈の陥凹が隆起に変化(ランチシ徴候)する症例は散見されます(自験例).本例の主訴は咳嗽であり呼吸負荷が難しいため(多くは咳き込む),代わりに左上肢負荷を行いました.もちろん肝頸静脈逆流(Hepatojugular reflux test)も施行可能ですが,臥床になるためやはり患者さんは咳き込んだと思います.
  • 本例は前日の救急外来で喘息による咳嗽と診断されていました.重症喘息例の頸静脈拍動の代わりに陥没呼吸を認めることがあります(自験例).重症COPDでは下位肋間に内方陥凹(フーバー徴候)を認めます(自験例).もちろん肺疾患を合併した心不全症例もありますが(自験例),安易な咳喘息の診断は慎む必要があります.

👿 上肢挙上負荷の過去投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2024-10-10

広義の耳ウインク・サイン

慢性心不全増悪で入院中の症例(座位)

👿 解説
  • 頸部に明瞭な拍動(陥凹ではなく隆起)を視認する
  • 下から上への緩徐な陽性波 ➜ 静脈性(ランチシ徴候)
  • 外頚より内頚静脈の拍動上縁が高い(内頚を信頼!)
  • 左上肢の挙上に伴い内頸静脈の拍動上縁は上昇
  • 耳垂に揺れはないがその背面には拍動あり(矢印)
  • 本例の心エコー図は重症の三尖弁逆流+肺高血圧

💀 広義の耳ウインクサイン
  • 狭義の winking earlobe sign といえば耳たぶの揺れが必要です(英語の文言通り).でも本例のように耳朶後方の皮膚面が拍動していれば広義の耳ウインクサインとしてもいいと思います.
  • 本例には明瞭な三尖弁逆流がありました.しかし三尖弁逆流がほとんどないにも関わらず,明瞭な内頸静脈の陽性波を認めることが少なからずあります.特に開心術後の症例に多く経験します.
  • 心臓病診断学の実際(吉川純一著)には,その機序として「心膜の閉鎖にからんだ三尖弁輪下降の制限」が提案されています.左心膜完全欠損でも同様の所見が観察されると記載されています.
  • 個人的には,静脈コンンプライアンスの低下あるいは静脈キャパシティーの限界を反映している症例も散見されるのではと思います.よってv波が容易に圧上昇につながるのではないのかな~😐

🉐 上肢挙上負荷の過去投稿 ➜ コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2024-12-19

ブルブルブル

数日前から動悸が持続する症例

🐝 ハミングバード徴候
  • 吸気時に拍動があり?(呼気時なし)
  • 深吸気で内頚静脈の早い拍動が明瞭
  • 左上肢挙上で拍動明瞭化+上縁上昇
  • 最終診断は2:1伝導の心房頻拍(PAT)
  • 再発だったので後日アブレーション

 🐦 追加コメント
  • 本例は発症数日で来院されたため心不全には至っていませんでした.しかしこの状態が2週間ほど持続すると頻拍誘発性心筋症から心不全になります.その時には中心静脈圧が上昇するので安静時でもハミングバード徴候(フロッグ徴候の亜型)が明瞭に観察できると思います(自験例
  • 初期のハミングバード徴候(Hummingbird sign)を見逃さないためにも頻脈を呈する症例では負荷頚静脈評価が重要です.本例では左上肢挙上の方が,深吸気時より拍動が明瞭でした.もっとも負荷前でも吸気時には拍動が見えますが...(今回はすぐ気付きました 😤 プチ自慢)

松下記念病院 川崎達也)

2023-11-13

症状があてにならない時

息切れがあるのかないのかはっきりしない症例

😶 臨床現場
  • 座位では僅かに拍動あり? ➜ 心不全ありとは言えず
  • 吸気負荷で内頸静脈の隆起?(拍動なし)➜ 心不全?
  • 左上肢挙上で周期的な陥凹出現 ➜ 心不全ありと判断
  • 最終診断は慢性左心不全(HEpEF)➜ SGLT2i を投与

🔗 復習
  • 高齢者の心不全例では自覚症状が曖昧なことがあります.加齢に伴う身体活動の低下や各種知覚センサーの鈍化が原因と推測されます.また認知機能障害の合併も念頭に置く必要があります(自験例:ニコニコしている症例).システマティックレビュー(J Card Fail 2017;23:464-75)では,心不全患者で認知症の頻度が43%に達していました(95%信頼区間30~55).怪しければ吸気負荷に加えて左上肢挙上負荷前屈負荷の追加が役立ちます.

松下記念病院 川崎達也)

2023-07-13

診察室での簡便な負荷

慢性心不全でフォロー中の症例(数日前に息切れを自覚/現在は改善)

😽 解説
  • 端座位で内頸静脈の拍動なし ➜ 中心静脈圧の高度上昇なし
  • 吸気負荷で拍動は出現せず ➜ 中心静脈圧の中等度上昇なし
  • 吸気を保持したまた左上肢挙上で拍動なし ➜ ちょっと安心
  • さらに前屈位負荷を追加しても拍動は見えず ➜ かなり安心
  • 心不全は十分に代償されていると判断して内服薬は変更せず

😺 独り言
  • 本例で行なった負荷の組み合わせはとても簡便なので,時々診察室で行なっています.ただし吸気負荷による前負荷の増大や前屈位による胸腔内圧の上昇と比較して,上肢挙上に伴う心負荷のメカニズムは意外に複雑の様です(過去の投稿).
  • 蹲踞姿勢は前負荷増大+後負荷増大+胸腔内圧上昇で強い負荷です(トリプル負荷).吸気負荷+蹲踞姿勢は外来診察室で行える最強の心負荷(負荷の四重奏)でしょうか.もっとも蹲踞は膝痛などで実施できないことが少なくありません.

松下記念病院 川崎達也)

2023-11-02

今週の一枚 🎯

慢性心不全でフォロー中の症例(座位)

🔥 解説(個人的見解)
  • 端座位で鎖骨上に内頸静脈の拍動はなし ➜ 中心静脈圧の高度上昇なし
  • 吸気でも拍動は出現せず ➜ 中心静脈圧の中等度上昇なし(ビデオなし)
  • 左上肢の挙上で陥凹が出現(矢印)➜ 中心静脈圧の軽度〜中等度の上昇
  • 新たに出現した陥凹は不規則 ➜ 心房細動の疑い(実際に本例はAFです)

💛 心不全否定のMyパターン
  • 症状で心不全を疑わない症例:安静時に内頸静脈の座位陰性を確認
  • 心不全が否定できない症例:安静時と吸気負荷後ともに陰性を確認
  • 心不全の可能性あり例:安静吸気左上肢挙上すべて陰性を確認

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎達也)

2024-03-18

Advanced but stable HF

慢性左心不全で通院中の症例(座位)

😊 解説
  • 座位で内頸静脈の拍動 ➜ 中心静脈圧は高度に上昇
  • 拍動は陥凹でなく隆起で上縁は下顎角より上(矢印)
  • 左上肢垂直挙上負荷を行うが所見にあまり変化なし
  • 外頸静脈の拍動上縁も安静・負荷ともに頸部の中央
  • 本例の症状は安定し労作時の増悪もあまり認めない

😎 独り言
  • 座位で内頸静脈拍動を視認(座位陽性)なら,中心静脈圧の高度上昇が疑われます(>15 cm水柱).本例のように上縁が高くかつ隆起型ならほぼ確定です.このような症例には通常何らかの対策が必要です(利尿薬追加や入院加療).しかし治療抵抗性の座位陽性例も臨床現場では稀ながら経験します.
  • 左上肢の挙上負荷は吸気負荷よりも心負荷が大きいと思われます(機序:過去の投稿).座位陽性心不全症例で,その高負荷に対する頸静脈所見の増悪が乏しければ,労作時の症状増悪が少ないような気がします.つまり悪いながら安定している心不全(advanced but stable HFかもしれません.

松下記念病院 川崎達也)

2022-11-10

🎯 今週の一枚

端座位の慢性左心不全例(ステージD)




松下記念病院 川崎達也)

2024-01-11

❌とりあえずBNP測定

いつもより少し脈が早い慢性心不全例(座位)

😀 解説
  • 安静時に右頸部に内頸静脈の拍動を視認せず
  • 左上肢の垂直挙上でも内頸静脈の拍動は陰性
  • 左上肢挙上のまま吸気負荷を追加したが陰性
  • そのまま前屈してもらっても内頸静脈は陰性
  • 本例では慢性心不全の増悪はなしと判断した

 🐲 独り言
  • 慢性心不全の増悪を考えなければならないバイタルサインは様々です.酸素飽和度の低下はもちろんですが,体重の増加や血圧の上昇,心拍数の増加などでしょうか.
  • 慢性左心不全例で増悪が疑われたら,やはり頸静脈所見の変化の確認が大切です.心音の変化(例:ギャロップやⅢ音,Ⅱ音肺動脈成分の亢進)よりも高感度です.
  • 本例の様に安静+3つの負荷が陰性なら概ね大丈夫と判断しています.「とりあえずBNP測定」はあまり好きではないので...(とりあえず生中🍺は大好きですが 😚)

松下記念病院 川崎達也)

2024-01-22

心不全と難聴

時々息遣いが荒くなる難聴例(端座位)

👂 解説
  • 指示が通らないため安静の頸静脈所見は判定困難
  • 左上肢挙上で内頸静脈の明瞭な陥凹が出現(矢印)
  • 本人の発語が混入して心音は十分には評価できず
  • 最終的に収縮の保たれた心不全(HFPEF)であった

🙉 追加コメント
  • 米国の70歳以上の横断的な国民健康栄養調査では,難聴の有病率は心不全症例で74.4%と,非心不全症例の63.3%より高率です(JAMA Otolaryngol Head Neck Surg 2018;144:273-5).さらに心不全のある高齢者では難聴が強いほど活動性が低下することも報告されています(Clin Interv Aging 2020:15:635-43).
  • 上記の全米調査で心不全および難聴のある参加者のうち補聴器を着用しているのはわずか16.3%でした.聴力障害なら筆談で対応すればいいのではと思われますが,心不全患者では認知症が43%とかなり高率です(J Card Fail 2017;23:464-75).そんな時こそ左上肢の挙上負荷が役立つかもしれないので追加してみてください.

松下記念病院 川崎達也)

2024-04-18

座位定性法:より深淵へ

息切れで来院した症例

👉 解説
  • 内頸静脈に陽性波(触診で静脈性:ランチシ徴候)
  • 拍動の上縁は顎下以上であるため定量評価は困難
  • 左上肢の挙上で陽性波の持続時間が延長している
  • 本例の最終診断は高度TRを伴った非代償性心不全

👍 追加コメント
  • 頸静脈の座位定性法は拍動上縁の位置から半定量的な評価も可能です.しかし本例のように内頸静脈の拍動上縁が顎下まで達している症例では,各種負荷に対する反応を上縁変化から判断することは困難です.
  • しかし位置の変化に時間の変化(例:短時間隆起→長時間隆起)も加味するとより深い評価が可能です.もっとも負荷前の所見から中心静脈圧は極めて上昇しているので,それで十分かもしれませんが...😅

松下記念病院 川崎達也)