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2023-07-13

診察室での簡便な負荷

慢性心不全でフォロー中の症例(数日前に息切れを自覚/現在は改善)

😽 解説
  • 端座位で内頸静脈の拍動なし ➜ 中心静脈圧の高度上昇なし
  • 吸気負荷で拍動は出現せず ➜ 中心静脈圧の中等度上昇なし
  • 吸気を保持したまた左上肢挙上で拍動なし ➜ ちょっと安心
  • さらに前屈位負荷を追加しても拍動は見えず ➜ かなり安心
  • 心不全は十分に代償されていると判断して内服薬は変更せず

😺 独り言
  • 本例で行なった負荷の組み合わせはとても簡便なので,時々診察室で行なっています.ただし吸気負荷による前負荷の増大や前屈位による胸腔内圧の上昇と比較して,上肢挙上に伴う心負荷のメカニズムは意外に複雑の様です(過去の投稿).
  • 蹲踞姿勢は前負荷増大+後負荷増大+胸腔内圧上昇で強い負荷です(トリプル負荷).吸気負荷+蹲踞姿勢は外来診察室で行える最強の心負荷(負荷の四重奏)でしょうか.もっとも蹲踞は膝痛などで実施できないことが少なくありません.

(松下記念病院 川崎達也)

2022-07-21

前屈は意外に高負荷?

労作時の息切れを訴える症例

🐦 解説
  • 座位の安静時に右鎖骨上に頸静脈の拍動を視認しない(座位陰性)
  • 吸気負荷を追加後も頸静脈拍動の出現なし(クスマウル徴候陰性)
  • しかし少し前かがみになると内頸静脈の拍動が出現(前屈負荷陽性)
  • 拍動は陽性波(ランチージ徴候陽性)かつ不規則(心房細動を示唆)
  • 最終的に本例は,持続性心房細動を伴った慢性左心不全と診断した

🐤 臨床現場
  • 安静端座位で頸静脈拍動がないため著明な中心静脈圧の上昇(目安は15cm水柱)はないと判断.吸気負荷(クスマウル徴候)も陰性であるため「中等度の上昇もなさそうだな〜」と思っていました.
  • しかし症状が心不全のまさしく”short of breath”であったため,前かがみ(頭部前方位姿勢)になってもらったら陽性波が出現してびっくり 😮 前屈による胸腔内圧上昇は(僕が)思っているより高負荷?
  • 蹲踞は前負荷増大+後負荷増大でかなりの負荷量です.蹲踞+前屈負荷は旧最強負荷でいわゆるトリプル負荷.蹲踞+前屈負荷+吸気負荷が新最強負荷でいわゆる負荷の四重奏.すべて勝手に命名ですが...😅
ランチシ
(松下記念病院 川崎達也)

2022-10-20

新しい頸静脈負荷法:上肢挙上

慢性左不全の症例:坂道で息切れあり

🍩 解説
  • 座位で鎖骨上に内頸静脈の拍動は視認できない(中心静脈圧の高度上昇なし)
  • 吸気負荷で二峰性の陥凹が出現(静脈圧は中等度上昇:目安は9-14cm水柱)
  • 吸気負荷の中止で拍動は消失するが,左上肢の挙上で拍動が再度出現(矢印)

😗 独り言
  • 慢性期心疾患の病態評価には負荷検査が必要です(例えば負荷心電図,負荷心エコー図,負荷シンチグラフィ).最近では心臓カテーテル検査中にも負荷を行なっています(冠血流予備能比FFRなど).
  • もちろん頸静脈評価にも負荷を適応できます(当院の研究:6分間歩行負荷や吸気負荷).前負荷を増やす方法は多数ありますが(蹲踞姿勢や下肢挙上,肝圧迫など),本例のように上肢挙上も簡便です.
  • 個人的な経験からは左側のみの挙上がいいと思います.右側挙上あるいは両側挙上(前負荷が倍増)では,あたりまえですが右内頸静脈の視認(特に鎖骨上窩の僅かな陥凹出現の判定)が難しくなります.

(松下記念病院 川崎達也)

2023-09-14

上肢挙上負荷は慎重に

慢性心不全の増悪症例(体位は座位)

👿 解説
  • 内頸静脈を視認(矢印)➜ 中心静脈圧は高度上昇
  • その拍動は陥凹波ではなく陽性波(ランチシ徴候)
  • 吸気負荷でも虚脱せず ➜ 広義クスマウル徴候陽性
  • 左上肢の挙上に伴い外頸静脈の明瞭な拍動が出現
  • 中心静脈圧の上昇程度:上肢挙上負荷>吸気負荷

💀 独り言
  • 座位での頸静脈評価の問題点は軽度〜中等度の中心静脈圧の上昇を見逃す場合があることです(安静座位で視認すれば推定15 cmH2O以上).この見落としを防ぐオススメの手技が負荷頸静脈評価法です(45度座位も有用ですが実施困難)
  • 負荷頸静脈評価法で最も簡便な方法が,前負荷を増やす吸気負荷だと思います.同負荷は簡便に加えてとても安全です.安静時に内頸静脈が陽性拍動を呈している症例でも,負荷後に自覚症状が悪化した症例を経験したことはありません.
  • 左上肢挙上による頸静脈負荷法も診察室で簡便に追加できる負荷で重宝しています.しかし自覚症状が明らかに悪化する症例を稀ならず見かけ要注意です(症例1:動画中の音声に注目/症例2:ビデオでは少し分かりのですが顔が真っ赤に)

🉐 上肢挙上負荷の過去投稿 ➜ コチラ

(松下記念病院 川崎達也)

2022-06-27

傍胸骨拍動の呼吸負荷

息切れで紹介受診した症例の傍胸骨拍動

🐦 解説
  • 第3肋間胸骨左縁に置いた聴診器の周期的な上下運動を確認
  • 隆起は待機時間の長い抬起性(容量負荷より圧負荷を示唆)
  • 深吸気保持を追加しているが傍胸骨拍動の所見に著変はない
  • 心エコー図で推定された肺動脈の収縮期圧は60mmHg程度

🐤 つぶやき
  • 頸静脈評価では吸気負荷(クスマウル徴候の有無の判定)が汎用されています(多分😅).しかし傍胸骨拍動の評価では,呼吸負荷の追加は一般的ではないと思います.個人的には時々行っていますが,あまり有用性を実感することはありません(本例でもそうでした).
  • 吸気負荷では中心静脈圧に加えて肺動脈圧や体血圧も上昇することが知られています(下図).よって理論上は吸気負荷で傍胸骨拍動も増強されるはずです.問題は吸気時に胸腔容積が増大して右室と胸骨の密着度が低下することです.きっと相殺されるのでしょうね.


(松下記念病院 川崎達也)

2023-05-04

首の回しすぎに要注意

息切れを訴える症例(端座位)

🐦 解説
  • 顔がほぼ90度左側を向いている ➜ 各種頸静脈にも影響あり
  • 内頸静脈 ➜ 拍動を視認し吸気後は上縁上昇(頸部の上1/3)
  • 外頸静脈 ➜ 胸鎖乳突筋までは怒張(吸気負荷への反応なし)
  • 前頸静脈 ➜ 安静時に周期的拍動が明瞭(上縁は内頸と同じ)
  • ただ吸気では前頸静脈上縁はあまり変わらない(内頸と乖離)

😀 ショート動画は多くを語る
  1. 安静時の前頸静脈の心周期に伴う明瞭な拍動(上縁の上下運動)を考えると,外頸静脈にも同様の拍動が観察されてしかりです.よって本例は顔を左方に強く向けたことで外頸静脈が胸鎖乳突筋に圧排されていると考えられます.つまり「頸静脈拍動の評価時には首の回転はほどほどに」
  2. 内頸静脈の拍動上縁は吸気負荷後にかなり上昇しています(広義のクスマウル徴候が陽性).一方,明瞭な拍動を認めた前頸静脈の上縁は,吸気負荷でもさほど上昇していません.つまり「中心静脈圧の推定に,内頸静脈以外はあまり頼ってはいけない(特に周期的拍動を欠く時)」
  3. 「内頸静脈が座位で視認できる時に,吸気負荷で拍動が消失する症例があるのでは...」という意見があるようです.一見もっともらしく聞こえますが,個人的にはあまり経験したことがありません.つまり「座位で陽性ならクスマウルで悪化(吸気陽性)」😑 これは現在,調査中です

(松下記念病院 川崎達也)

2023-11-27

胸鎖乳突筋 Sternocleidomastoid muscle

軽労作での息切れで来院した症例(体位は座位)

🐤 解説
  • 座位で内頸静脈の明瞭な拍動を視認可 ➜ 中心静脈圧は高度に上昇
  • 拍動は隆起ではなくて陥凹で不規則と思われる ➜ 心房細動の疑い
  • 吸気負荷の追加 ➜ 胸鎖乳突筋が明瞭化し頸静脈反応は評価できず
  • 患者さんの右側から再度負荷 ➜ 拍動上縁は上昇するが陽性波なし
  • 本例の最終診断は心房細動を合併した非代償性の左心不全(PEF)

🐥 独り言
  • 座位で内頸静脈の陥凹を認めた場合,吸気負荷で陽性波(CV merger)になれば心不全はより重篤と考えられます.本例は負荷後も陰性波のままだったため,そこまで重症ではないと考えられました.ちなみに吸気負荷で拍動が消失する症例を経験することは(ほぼ)ありません(直近の座位陽性12例では吸気で拍動消失例なし).
  • 安静座位で内頸静脈の拍動を認めない症例で,吸気後に拍動が出現すれば中心静脈は中等度上昇していると(個人的には)判断しています.胸鎖乳突筋が安静時から目立っている場合(自験例)や本例のように吸気で目立つ場合(偽クスマウル徴候)があります.しかし筋肉は拍動しないので頸静脈と見間違うことはないと思います.

(松下記念病院 川崎達也)

2023-12-25

🏆 論文

  • 当院のリハビリテーション室のPT笠井先生の研究が出版されました
  • 吸気負荷を用いた頸静脈の座位定性法による心不全リスク評価です
  • 同評価法は心不全の多様性(REF vs PEF他)によらず一貫して有用
サブグループ解析

😀 当院の頸静脈評価
  • 当院では頸静脈の座位定性法を知って以降,積極的に臨床活用してきました.つまり安静時に右鎖骨上に拍動があるか否かです.視認しなければ心不全は安定していると判断していました.しかしある時,安定しているにも関わらず運動負荷後に頸静脈拍動が出現した症例に遭遇しました.本例は残念ながら数ヵ月後に死亡されました.
  • この時に心疾患の慢性期では負荷が重要であることを再認識しました.負荷心電図や負荷心エコー図と同様に,負荷頸静脈です.そこで負荷頸静脈の報告を検索したのですが,ほとんどないことが分かりました.これは頸静脈評価の従来定量法(例:45度半坐位で胸骨角からの垂直距離を測定:ルイス法)に問題があると考えました.
  • 近年普及してきた座位定性法なら,負荷後も頸静脈の判定が容易です.早速6分間歩行で行ってみると,予想以上にいい結果が得られました(笠井論文).運動が困難な症例も少なくないので,吸気負荷(前負荷増大)に対する反応を確認しましたが同様に良い結果でした(車古論文).今回は第三弾で心不全の多様性に対する検討です.

💁 論文の過去投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(松下記念病院 川崎達也)

2025-10-16

診療室内で運動負荷

無理すると息切れがあるという男性(座位)


👀 解説
  • 安静座位で内頚静脈の拍動なし
  • 吸気負荷で一瞬,僅かに拍動?
  • 診察室内を2周歩いてもらった
  • すると座位で明瞭な拍動(➢)
  • 最終診断は非代償性の心不全

👶 コメント
  • 頚静脈の座位定性法の可能性は無限です.様々な負荷が追加できるからです.吸気負荷が最も簡便ですが,前屈負荷や蹲踞負荷,左上肢挙上負荷,立位負荷なども可能です.そしてそれらを組み合わせることも有用です.
  • 当院で最初に行った負荷頚静脈法は6分間歩行でした(論文).しかし診察室やベットサイドでは実施が困難で活用範囲が限定されます.今回行った診察室内を少し歩きまわってもらう負荷はベットサイドでも可能です.

(松下記念病院 川崎達也)

2024-03-14

傍胸骨拍動の吸気負荷

CTEPHで外来通院中の症例(仰臥位で左が頭側)

🐳 解説
  • 傍胸骨に置いた聴診器に明らかな拍動なし
  • 吸気に伴い聴診器に上下運動が出現(矢印)
  • 拍動は数拍持続しその後に不明瞭になった
  • 本例は状態は安定し日常生活で息切れなし
  • ただし心エコー図で軽度の肺高血圧は残存

🐟 復習
  • 抬起性の傍胸骨拍動は肺高血圧に伴う右室圧負荷を示唆します.稀に左房負荷(自験例)や肺動脈拍動(自験例)もあります.本例で認めた吸気負荷に伴う傍胸骨拍動の出現は潜在的な肺高血圧を示唆していると思っています.
  • 吸気中は中心静脈圧に加えて肺動脈圧や体血圧も上昇するため(過去の投稿),理論的には吸気負荷で傍胸骨拍動は増強されるはず.しかし同時に胸腔容積も増大して右室と胸骨の密着度の低下から相殺される可能性もあり?

(松下記念病院 川崎達也)

2023-08-31

バンザイはダメでした 😓

慢性左心不全の増悪が疑われる症例

🐥 解説
  • 座位で頸部に内頸静脈の2峰性陥凹(中心静脈圧の高度上昇)
  • 吸気で内頸静脈の陥凹は隆起(ランチシ徴候)に変化(矢印)
  • 両側の上肢を挙上するとシャツの襟が頸部を隠してしまった
  • 慌てて襟元を覗いてみたがやはり頸静脈の拍動は確認できず

🐤 コメント
  • 上肢挙上は吸気よりも強い負荷になることが少なくありません.吸気負荷は前負荷の増大が中心ですが,上肢挙上負荷は上肢の静脈血液の還流(前負荷増大)に加え,挙上という仕事(心拍数増加を含む),呼気時間の延長(胸腔内圧上昇)などが加わるためと思われます(過去の投稿).
  • 本例では吸気負荷で陽性波(巨大v波/cv merger)が出現したため,過剰負荷にならないか少しヒヤヒヤしながら上肢挙上を追加しました.しかし両手をバンザイしてもらったら服がせり上がって頸静脈が見えなくなりました.急いで服をずらしましたが頸静脈の拍動は確認できませんでした.
  • 単なる視界不良でなく,ペンバートン徴候(Pemberton's sign)と同様の機序が働いているのかもしれません.拡大した両側の頸静脈が万歳ポーズで圧迫された結果,頭部からの静脈還流が減少しそうです.顔面うっ血が生じないのは甲状腺腫大や縦隔腫瘍と異なり完全閉塞にならないため?

(松下記念病院 川崎達也)

2022-06-20

🏆 論文

🎉 当院の循環器内科で行われた臨床研究が出版されました 🎉 

  • 対象は心不全で松下記念病院に入院した138例です.退院前に簡易定性法による頸静脈評価に加えて,吸気負荷を追加しました.
  • 退院後の予後は,安静時に拍動を認めた症例(下図の赤)で心事故(死亡または心不全再入院)が有意に高率でした(予想通り).
  • さらに安静時には視認しなくても吸気負荷で拍動が出現する症例(クスマウル徴候陽性)も同様に予後不良でした(下図の黒).


😀 負荷頸静脈
  • 循環器疾患は負荷することで診断の感度と特異度を改善することができます.負荷心電図,負荷心エコー図,負荷心筋シンチグラフィしかりです.最近は心臓カテーテル検査時にも負荷を行う機会が増えてきました(冠血流予備量比など)
  • もちろん身体所見にも負荷はありますが,臨床現場ではあまり用いられていないように思います.当院では2020年に6分間歩行後の頸静脈所見が心不全症例のリスク評価に有用であることを報告しました(Am J Cardiol 2020;125:1524-8).
  • 6分間歩行は運動可能な症例に限定かつ診察室での施行は不可能です.本論文はこれらの問題点を克服するために実施されました.クスマウル徴候が陽性の症例は,安静時に拍動が視認できる症例と同程度に予後不良であることは驚きです.

💁 論文の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(松下記念病院 川崎達也)

2022-12-01

これなら二安心

拡張型心筋症+アブレーション後の症例
診察前の心電図検査で心房細動が再発していることが判明した

🐦 解説
  • 端座位で鎖骨上に内頸静脈の拍動なし ➜ 中心静脈圧の高度上昇なし
  • 吸気負荷でも拍動は出現せず ➜ 中心静脈圧の中等度〜高度上昇なし
  • 左上肢の挙上でも拍動は視認せず ➜ 中心静脈圧の中等度の上昇なし
  • 息切れなどの心不全症状なく聴診でもⅢ音を聴取せず ➜ 1月後再診

🐳 独り言
  • 以前は吸気負荷で内頸静脈の拍動が出現しなかったら(広義のクスマウル徴候陰性),「これなら一安心」と判断していました.しかし最近では心不全(新規または再発・増悪)が疑われる症例では,吸気負荷が陰性の場合に吸気と左上肢挙上の同時負荷を行うようにしています.
  • 実は本症例は診察室に入ってきて椅子に腰掛けた直後の検査で,左上肢挙上負荷は陽性でした.しかしスマホを取り出して撮影許可を得た後の上記記録では陰転化していました.1〜2分の座位で視認できなくなる静脈圧の上昇なら,急いで介入しなくても大丈夫だろうと判断しました.

(松下記念病院 川崎達也)

2024-12-05

負荷で改善しているわけではないと思います

弁置換術後の症例(座位)

💧 解説
  • 座位で頚部中央に明瞭な拍動を視認する
  • 陥凹なので静脈拍動 ➜ 非代償性心不全
  • 深吸気負荷で胸鎖乳突筋が明瞭になった
  • それと同時に内頚静脈の拍動は不明瞭に
  • BNP:前回172 pg/ml ➜ 今回305 pg/ml
  • 過労回避と減塩指導で早めのフォローへ

💦 個人的見解
  • 吸気時には胸腔内圧が陰圧になるため,健常者では中心静脈圧が低下します.しかし安静座位で内頚静脈の拍動を視認できるほど中心静脈圧の症状した症例(例えば15 cm水柱 or 11 mmHg以上)では,その圧が正常化することはほぼないと思います.実際に圧の測定はしていませんが,頚静脈所見はほぼ悪化します(拍動上縁の上昇あるいは拍動パターンの変化[陥凹から隆起など])
  • しかし日々の臨床では,吸気負荷で内頚静脈の拍動が逆に不明瞭になる症例に稀ながら遭遇します.本例のように吸気という動作に伴い胸鎖乳突筋が明瞭になることもその一つの理由かと思います.内頚静脈は深部静脈であるがため,胸鎖乳突筋を介した皮膚面の拍動で認識する必要があります.胸鎖乳突筋が緊張すると深部の拍動を認識しにくくなるということは容易に理解できます.
  • そもそも論として「安静時に座位で内頚静脈の拍動を認める症例には負荷が必要なのか?」という問題があります.頚静脈評価の普及を願って作成したアプリ「シンプル頚静脈©」では,安静時に陽性なら負荷は不要と謳っています.負荷で重症度を細分化したいとの想いは分かりますが簡便な半定量評価で十分なのかもしれません(例えば3分割法:拍動上縁が鎖骨上窩・頚部中央・顎下)

(松下記念病院 川崎達也)

2024-06-10

🏆 論文

  • 当院の専攻医の野口先生の臨床研究が出版されました 🎉
  • 慢性心不全症例に対する各種負荷頚静脈の比較検討です
  • 実際の負荷法は吸気・5回立ち上がり・蹲踞の3種類です
  • いずれの負荷も予後予測に有用で予後予測能に大差なし
  • ただ5回立上がりと蹲踞は膝痛や腰痛で実施不能例あり
  • 最終的には負荷頸静脈は吸気が最も実用的な方法と結論


😎 つぶやき
  • これは当院で行ってきた一連の負荷頚静脈研究(①6分間歩行,②吸気負荷,③PEF vs REFなど)の最終報告です.臨床で生じた疑問に対する研究を行い,新たな疑問に対する追試を行うということの繰り返しでした.最終的に「吸気による頚静脈負荷は様々なタイプの心不全で予後予測に有用」というゴールにたどり着けました.
  • 本論文の査読者から負荷の様子を追加するよう指摘されました.実際の動画よりもピクトグラムの方がいいのではと考え,無料画像を検索しました.しかしふさわしいものなかったので自作しました(上記のFigure 1).思ったより簡単で,今ではあらゆる体位や動作を表現できるようになりました.やっぱ何事も挑戦ですね.

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

(松下記念病院 川崎達也)

2021-07-05

新”最強”負荷法

息切れで来院した症例

👻 解説
  • 立位では頸静脈の拍動は目立たないが,しゃがみこみ(蹲踞姿勢)で内頸静脈の陽性拍動が出現(矢頭)
  • その後に追加した深吸気で,内頸静脈の陽性拍動は顎下まで上昇した(矢印)➜ 広義のクスマウル徴候陽性
  • 耳垂にある45度の皺にも注目 ➜ フランク徴候またはearlobe creaseと呼ばれ虚血性心疾患を示唆する
  • 本例は冠動脈バイパス術の既往があり慢性左心不全の増悪と診断 ➜ 利尿薬の追加と減塩指導を行い2週間後に再診

👾 独り言
  • 蹲踞負荷は前負荷(静脈還流)と後負荷(下肢血管抵抗)がいずれも上昇します.さらに蹲踞時にはバランスをとろうと前かがみ(前屈負荷)になる多いことが多いため,個人的にはトリプル負荷と呼んでいます(旧"最強"負荷法).
  • 今回はさらに吸気負荷を加えているため,これが外来診察室で行える"最強"の心負荷かもしれません(命名:負荷の四重奏).もちろん蹲踞負荷は膝痛などで施行できないことが少なくないので,応用範囲は限られますが…

(松下記念病院 川崎達也)

2025-06-26

「とりあえず吸気負荷」

久しぶりに外来を受診した心不全例(座位)

🐤 解説
  • 息遣いが荒く頚部拍動の有無は判定難
  • 吸気で鎖骨上窩に明瞭な拍動(矢印)
  • 本例はHFrEFで怠薬後に息切れを自覚
  • その後の精査で心不全増悪を確認した
🐣 独り言
  • 負荷を併用した頚静脈の座位定性法(シンプル頚静脈)では,安静時に拍動を認めれば負荷を追加する必要はありません.ただし本例のように頚静脈の拍動なのか呼吸に伴う変化なのか分からない症例を時々経験します.そのようなときには「とりあえず負荷をかけてみる」のがいいと思います.特に吸気負荷なら手間もかからず,負荷に対するリスクもほとんどありません.


(松下記念病院 川崎達也)

2022-11-14

😱 恐怖の上肢挙上負荷試験:頸静脈

慢性心不全 (HFpEF) の増悪が疑われる症例

👴 解説
  • 安静時には座位で外頸静脈を明瞭に視認可能(ただし上縁は拍動あり)
  • よく見ると内頸静脈の陥凹も確認できるため中心静脈圧はかなり上昇
  • 左上肢を肩上まで挙上 ➜ 外頸静脈の拍動消失+内頸静脈の陥凹出現
  • 左上肢を垂直に挙上 ➜ 呼吸困難感が出現(患者さんの荒い息切れ!)

👵 ひとり言
  • 座位で内頸静脈の拍動が見えない時には吸気負荷を行いクスマウル徴候の有無を確認するようにしています.これは中等度までの中心静脈圧上昇を見逃さないためです.
  • 最近は左上肢の挙上負荷を併用しています(肩痛で無理なことも少なくありませんが).前負荷の増加程度は上肢挙上 ≒ 吸気負荷と思っていました(以前の投稿).
  • ただし本例では急に息遣いが荒くなり少し怖くなりました.上肢挙上負荷は,少なくとも座位で内・外頸静脈が全く視認できない症例に限定する方が安全かも...😑

(松下記念病院 川崎達也)

2025-03-27

負荷の組み合わせ

心筋梗塞後の症例(座位)

🐔 解説
  • 安静では頚部に明らかな拍動なし
  • 吸気保持で拍動が出現?(矢印)
  • 吸気を保持したまま座位➜立位へ
  • 微妙な頚部の拍動は完全に消失!

    🐙 コメント
  • 本例は治療によってHFrEFからHFpEFに改善したHFrecEF症例です.深吸気保持(前負荷増加)で拍動が出現しているなら,中心静脈圧(≒右房圧)は軽度~中等度に上昇していると考えられます.しかし座位から立位への体位変換(前負荷減少)では中心静脈圧は低下しています. 実際に本例はテニスを楽しんでいます.
  • 吸気負荷などで頚静脈拍動が出現しても,立位で消失する症例は日常生活に支障が少ないと思います(自験例).逆に立位になっても拍動が持続する症例は,労作時の息切れが問題になることが多いようです(自験例).さまざまな負荷が可能なシンプル頚静脈©は,心不全管理管理で無限の可能性を秘めているかも...😁

(松下記念病院 川崎達也)

2023-02-09

油断禁物:否定の証明は常に困難

🕗 朝の病棟詰所で...
  • 指導医「胸部X線は立派な心不全だよ」
  • 専攻医「確かにBNPも上昇しているし...」
  • 指導医「頸静脈はどうなの?」
  • 専攻医「頸静脈は見えないんです」
  • 指導医「マジ? ちょっくら見てくるわ」

👥 現場実況
  • 臥床(枕なし)では頸静脈拍動は視認せず(動画前半)
  • 臥床のまま深吸気負荷を追加しても拍動なし ➜ 脱水?
  • しかし座位で明瞭な内頸静脈の拍動が出現(動画後半)
  • 深吸気負荷で拍動は消失せず(広義のクスマウル徴候)
  • 患者さんが協力的であったため病棟の皆で所見を共有

 👤 追加コメント
  • 臥床(枕あり)では正常の中心静脈圧でも頸静脈の拍動(少なくともx谷)を観察できます(自験例).枕なしではなにも見えないこともありますが,吸気負荷を追加すればなんからかの変化が出現すると思います.
  • 一方,本例のように中心静脈圧が極端に上昇した症例では,臥床では内頸静脈の拍動が観察できないことがあります(つまり判定上限を超過).このような場合では半座位や座位にする必要があります(判定上限の引き上げ).
  • もっとも臥床で内頸静脈が視認できなくても,外頸静脈が怒張していることから中心静脈圧の著増を推定することができる場合もあります(自験例).しかしやはり外頸静脈は信頼性が高くないため過信は禁物です(理由).

(松下記念病院 川崎達也)