👴 歴史クイズ

（Wellcome Images）

😗 オスラー

• カナダ生まれの内科医かつ医学者であるSir William Osler（1849–1919）
• 感染性心内膜炎で手足に出現するオスラー結節（Osler's node）を発見
• 医学教育に情熱を持ち数々の名言や格言は100年後も受け継がれている

😐 確認

• オスラー結節は免疫学的機序に基づくため有痛性かつ隆起性の病変である．網膜出血斑であるRoth's spot（ロート斑）も免疫学的現象（痛みはないようであるが...）．一方，ジェインウェイ病変やスプリンター出血，眼瞼結膜出血，口腔内粘膜出血などは敗血性梗塞を反映しているため原則，平坦で痛みを伴わない．

🉐　関連投稿 ➜ 過去の歴史クイズ（※画面右にあるラベル一覧からも選択可能です）
フィジカル　広場　心臓　physical exam examination

（松下記念病院　川崎達也）

発熱が持続する症例の口腔

👴 解説

• よく見ると口腔粘膜に点状出血が散在している（ヒントの白丸）
• 本例は最終的にMRSAによる僧帽弁の感染性心内膜炎と診断した

同所見はジェインウェイ病変やスプリンター出血，眼球結膜出血と同様に，敗血性梗塞を反映した血管現象の一つ．一方，オスラー結節や眼底👀のRoth斑（読み方はロスではなくてロート）は免疫学的機序で生じる．いずれにしても心エコー図で疣腫の有無を調べる前に末梢サイン（peripheral signs）の有無を丁寧に確認しておきたい．

☆ 関連投稿 ➜ 末梢サインの頻度 　
フィジカル　広場　心臓　physical exam examination

（松下記念病院　川崎達也）

感染性心内膜炎：末梢サインの頻度

• 感染性心内膜炎の身体所見では心雑音と末梢サインに注目します．心雑音や音質変化は感染性心内膜炎を示唆しますが，初診の症例でその判定は困難です．心雑音を認めない症例も3～4割あります（Eur Heart J 2023;44:3948-4042）．
• 一方，末梢サインの感度は低めですが，とても高い特異度を有しています．月間心エコーで原稿依頼を受けたときに，その出現頻度を調べたのでここに記載しておきます（調査した論文は心エコー 2025;26:22-6を参照してください）．

末梢サイン	出現頻度
点状出血	0.6～30%
オスラー結節	1.9～10%
ジェインウェイ病変	1.6～10%
スプリンター出血	10～26%

😊 おまけ

• 感染性心内膜炎のDuke診断基準が2023年に更新（Duke ISCVID基準：Clin Infect Dis 2023;77:518-26）され，末梢サインは臨床診断の小基準として今回も明記されています．心雑音に関しては新規の逆流性雑音に限ると記載
• 末梢サインは，出現や消退が病期や病勢に影響され，塞栓に由来する所見は左心系の病態に限られますが，高い特異性を有しています．鑑別診断に感染性心内膜炎が含まれる病態ではエコー前に是非，確認したい所見です

（松下記念病院 川崎達也）

末梢クイズ

• 不明熱で当院を紹介受診した症例

👿　スプリンター出血（線状出血／splinter hemorrhage）

• 爪床にある毛細血管の破綻で縦長に観察される（通常は痛みを伴わない）
• 本例は血液培養が陽性かつ心エコー図で疣腫 ➜ 感染性心内膜炎と診断
• 初報は（おそらく）英国の医師 Thomas Horder（BMI 1920;2:301-11）
• 修正Duke診断小基準に含まれ頻度は約10%（ガイドライン2017年改訂版）
• 強皮症や全身性エリテマトーデス，関節リウマチ，外傷，白癬などでも出現

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フィジカル　広場　心臓　physical exam examination

（松下記念病院　川崎達也）

爪には爪を A nail for a nail

数ヵ月前から労作時の息切れを感じるようになった症例

✋ クインケ脈（Quincke pulse）

• 一見，特記すべき所見を認めない（例：テリー爪やスプリンター出血）
• しかし爪を軽く圧迫すると，爪床の周期的な色調変化（赤白）が出現
• 上腕に水槌脈（Water-hammer pulse）はなく，心尖でランブルを聴診
• 甲状腺機能亢進はなかったが，エコーで中等度〜高度の大動脈弁逆流
• 本例の最終的な診断は大動脈弁逆流による代償性の慢性左心不全状態

😙 独り言

• クインケ徴候は大脈を反映したフィジカル所見で，その名はよく知られ医師国家試験に出題されたこともあります（※）．しかし実臨床で経験することはあまり多くないかもしれません．大動脈弁逆流症（高度）と診断されている複数の症例で試したけど，認められなかったという声をしばしば耳にします
• その描出には爪の圧迫がポイントでしょうか？　本例のように検者の指腹を患者さんの指腹と同じ高さに置いて，爪先で爪先を軽く押さえるのがコツと思います（他の自験例）．有名な身体所見の割に臨床的な有用性には乏しいという意見もありますが（過去の投稿），綺麗に描出できたときは喜びもひとしおです．

👻 爪に関する過去の投稿は コチラ（PC版なら画面右の分類からも選択可）

（松下記念病院 川崎達也）