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検索キーワード「腹部大動脈瘤」に一致する投稿を関連性の高い順に表示しています。 日付順 すべての投稿を表示
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2025-05-19

腹部大動脈瘤による重複脈(Dicrotic Pulse)

  • 定義 大動脈瘤に関連し,1心周期中に2つの異なる脈波が発生した状態(収縮期上昇+低い重複切痕+顕著な拡張期上昇)
  • 機序 正常大動脈と大動脈瘤のインピーダンスの急激な変化により、瘤の近位端と遠位端の両方で脈波の反射が発生する
  • 成分 心収縮によって生成される前方脈波および大動脈瘤から反射された後方脈波との相互作用による異常な動脈圧波形
  • 病態 重複脈(または重拍脈)を示す他の病態には重症の心不全や心タンポナーデ、循環血液量減少、敗血症などがある

- 腹部大動脈瘤の66歳男性の術前(左)と術後(右)-


松下記念病院 川崎達也)

2022-07-07

お腹は吸気より呼気

心機能の評価目的で循環器内科を受診した症例

🐤 解説
  • 通常呼吸や吸気止めでは分かりにくいが呼気止めで臍周囲の上下運動(矢印)
  • 触診では動脈性の拍動で圧痛やスリルはなかった(聴診でも血管雑音はなし)
  • CTで腹部大動脈瘤を認めた(腎動脈下〜分岐部の紡錘型で最大短径は50mm)

🐣 独り言
  • 頸静脈では吸気負荷が大切で,呼気負荷の意義は乏しいと思われます(過去の投稿).一方,呼気負荷は聴診や心尖拍動(自験例)で役立ちます.腹部動脈瘤でも有用かもしれませんが,触診には完敗です(自験例).やはり”お腹は触るもの”です.
  • 腹部で拍動の視認または触知=腹部大動脈瘤ではありませんが,初診時には必ず一度はお腹を触っておくようにしています.「動脈瘤の破裂を回避することは外来担当医の責務です」と信頼している友人医師に教えてもらいました 😊


松下記念病院 川崎達也)

2019-11-14

お腹を触る

  • 検診で心電図異常を指摘され循環器内科を受診した高齢者
  • 臥床で記録した腹部(自然呼吸下で左の白いタオルが尾側)

🐥 解説
  • 呼吸に伴う腹壁の上下運動と異なった規則正しい拍動がある(軽く指を添えると拍動はより明白)
  • 腹部CTで腎動脈下〜総腸骨分岐部に紡錘型の腹部大動脈瘤(外径の最大短径が70mm)を認めた

👶 呟き
  • 拍動=大動脈瘤ではない(特に痩せた女性)が,破裂すれば致命的になる疾患である.治療可能な病態であるため,破裂するまでに診断することが外来担当医の責務と考えられる.初診時は必ず,定期受診時にも時々はお腹を触っておきたい.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2021-12-23

沈黙の臓器

息切れで受診した在宅酸素中のCOPD症例

💣 解説
  • 腹式呼吸+ビア樽状胸郭はCOPDに合致(ただしフーバー徴候はなし)
  • 右季肋部〜心窩部(付箋の貼り付け部)に拍動あり ➜ 肝拍動の疑い
  • 拍動のパターンは収縮期に隆起(付箋よりも腹壁の方が分かりやすい)
  • 肝拍動は基本的に頸静脈拍動に類似 ➜ 巨大V波(三尖弁逆流)の疑い
  • 最終的にCOPDによる肺性心に関連した重症の三尖弁逆流と診断した

  • 身体所見は「頸静脈 ➜ 傍胸骨 ➜ 心尖拍動 ➜ 心音」と進めることが多いと思います.よって循環器外来では腹部はついつい忘れがちです(😯僕だけ?)しかしお腹の診察(特に初診時)はとても大切です.これは腹部大動脈瘤を見つけるチャンスだからです(自験例).外来で長年フォローしてる心疾患の患者さんが,腹部動脈瘤の破裂で死亡する悲劇は主治医として何が何でも回避!
  • 実際に肝拍動が診断にとても有用だったケースはあまり経験しません(収縮性心膜炎の自験例).その他の身体所見(頸静脈や心音など)で診断できることが多いからかもしれません.しかしフィジカルを愛する医療従事者としては,肝臓のアピールには是非,気がついてやりたいものです.とてもおしゃべりな心臓(心音・心雑音=心臓語)と違って,肝臓は沈黙の臓器なのですから…

松下記念病院 川崎達也)

2023-09-07

手抜きではありません 😤

倦怠感を訴える高齢男性(体位は座位)

😀 解説
  • 端座位で心尖拍動は左乳輪の左外側へ偏位 ➜ 心拡大の疑い
  • 心尖拍動は2肋間で観察でき長い隆起時間 ➜ 心肥大の疑い
  • 吸気保持で心尖拍動はより明瞭に(通常は吸気時に不明瞭)
  • 心エコー図で遠心性肥大あり ➜ 最終診断は慢性の左心不全

😑 自白
  • 最近は心不全が疑われる症例では,頸静脈評価はほとんど座位でのみ行っています.もちろん脱水を疑う症例では臥位で拍動消失を確認しますが...
  • 同様に心尖拍動も座位でのみ確認しています.もちろん肥大型心筋症が疑われる症例では臥位や左側臥位でダブルインパルスを探しにいきますが...
  • 実は腹部大動脈瘤を確認するための初診時の腹部触診も座位で済ませることが増えてきました.背中とお腹を両側の手掌で挟み込むようにして...
  • なんでも簡略化することが良いとは思っていません.しかし時間をかける身体所見の評価は必要な症例のみでいいのではと感じる今日この頃です

松下記念病院 川崎達也)