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2022-04-14

クスマウル徴候:陰性? 陽性?

慢性心不全の増悪で来院した症例

🐤 解説
  • 座位で外頸静脈を明瞭に視認できる.呼吸性変動(吸気時に虚脱)があるため中心静脈圧の判定に利用可能(外頸静脈は内頸静脈と異なり逆流防止弁の効果が強いため,呼吸性変動がない場合はあまり信用できない).
  • 外頸静脈は呼気時には怒張しているが,吸気時には虚脱するためクスマウル徴候(Kussmaul's sign)は陰性と判断.しかし深吸気保持(ビデオ後半)では外頸静脈の怒張が出現しているためクスマウル徴候は陽性?
  • 内頸静脈の拍動も鎖骨上窩(矢頭)で観察できるため,中心静脈圧は確実に上昇している.忘れがちな 前頸静脈(Anterior jugular vein:矢印)は吸気時に拍動が明瞭で,広義のクスマウル徴候陽性と考えられる.

🐥 独り言
  • ドイツの医師 アドルフ・クスマウル が発見したこの負荷法は,非常に奥が深いと思います.臨床現場では本例のように複雑な反応を示す例が散見されます.その詳細な原因は不明ですが,吸気時の胸腔内圧低下と静脈還流の増加にタイムラグがあるためかもしれません.肺の状態(例:肺葉切除後)などの影響を受けることもあるようです(自験例).個人的にはとても気に入っている負荷なので,あまり深く考えずにほぼ全例に行なっています 😊

松下記念病院 川崎達也)

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