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2024-04-29

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


👻「フィジカル講習会」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2024-04-25

今週の一枚 🎯 一発診断

心電図異常の無症候例(座位)

👭 二峰性心尖拍動(double apical impulse)
  • 左乳輪の下内側に心尖の拍動を視認
  • 健常者のタッピングとは異なる動き
  • ”グニョ グニョ”とした不思議な動き
  • 付箋では二段階モーション(矢印)
  • 最終的に心尖部肥大型心筋症と診断

👶 追加コメント
  • HCMは拡張相に移行しなければ,通常は心拡大を来たしません.よって男性なら本例のように左乳輪の内側に拍動があります(女性では正中より10 cm以内).
  • 肥大型心筋症に対する二峰性心尖拍動の診断感度・特異度・正診率は各々27%,98%,66%です(当院研究).これは心尖部型(APH)に限りません.
  • 2峰性心尖拍動は大きなA波と抬起性拍動(左室肥大を示唆)によって構成されます.よってこの部位では明瞭なⅣ音が聴診できます(もちろん触診も可能).
  • Ⅳ音は聴診よりも触診の方が気付きやすいと言われることがありますが(触ってナンボの法則),個人的には大きな雑音がなければ聴診の方が簡単...(雑音症例

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎達也)

2024-04-22

聴診器

Ogawa S, Namino F, Mori T, Sato G, Yamakawa T, Saito S. AI diagnosis of heart sounds differentiated with super StethoScope. J Cardiol. 2024 Apr;83(4):265-271.



心音図検査装置である超聴診器AMI株式会社)は、(1) 心拍数の変動を検出するための心電図と心音の同時収集、(2) 可聴周波数帯域での最適化されたS/N比、および (3) 信号の取得が可能である。不可聴周波数範囲を含む心音データを視覚化する機能により、遠隔聴診中に音質の変化による影響を受けることなく定量的な結果を提供することができる。心臓専門医が確認した心音の8つの一般的な臨床所見(全収縮期雑音、収縮後期雑音、収縮期駆出性雑音、拡張期逆流性雑音、拡張早期雑音、往復雑音、S3、および S4)の正解率は84.4 %で、S3とS4の正解率は100%であった。


😊 独り言
  • 当院で使用している心機図検査装置 MES-1000(フクダ電子株式会社)はとても優れた装置ですが,残念ながら現在は販売されていません.壊れたらどうしよう...😨
  • 上記研究の心音図検査装置AMI‐SSS01シリーズ(AMI株式会社)は当院未導入ですが,デモをしていただいたことがあります.とても使い勝手が良くて本当に驚きました.
  • 本機は心音図のみで心機図(心尖拍動や頸静脈波形,頸動脈拍動など)は記録できませんが,AIの診断サポートはとても魅力的です.今後の発展と普及に期待しています.

松下記念病院 川崎達也)

2024-04-18

座位定性法:より深淵へ

息切れで来院した症例

👉 解説
  • 内頸静脈に陽性波(触診で静脈性:ランチシ徴候)
  • 拍動の上縁は顎下以上であるため定量評価は困難
  • 左上肢の挙上で陽性波の持続時間が延長している
  • 本例の最終診断は高度TRを伴った非代償性心不全

👍 追加コメント
  • 頸静脈の座位定性法は拍動上縁の位置から半定量的な評価も可能です.しかし本例のように内頸静脈の拍動上縁が顎下まで達している症例では,各種負荷に対する反応を上縁変化から判断することは困難です.
  • しかし位置の変化に時間の変化(例:短時間隆起→長時間隆起)も加味するとより深い評価が可能です.もっとも負荷前の所見から中心静脈圧は極めて上昇しているので,それで十分かもしれませんが...😅

松下記念病院 川崎達也)

2024-04-15

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


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松下記念病院 川崎達也)

2024-04-11

今週の一枚 🎯

肥大型心筋症で通院中の患者さんから相談を受けました

💅  爪甲そうこう剥離症(Onycholysis)
  • 爪剥離は冬に基部から始まり上方へ進行
  • 夏には自然に治癒(この数年繰り返し)
  • 服用薬はなくⅣ音を除き身体所見は正常
  • 栄養や甲状腺機能を含む血液検査は正常
  • 皮膚科的には爪甲剥離を除いて異常なし
  • 職業は通常デスクワークで寒冷刺激なし

👋 本態性爪甲剥離症(Idiopathic onycholysis)
  • 爪甲剥離症の原因としては,感染症(真菌など),乾癬,外傷または損傷,薬物反応(テトラサイクリンなど),栄養不良,甲状腺疾患,紫外線暴露,刺激性反応などがある.
  • 本例は特発性爪甲剥離症(Idiopathic onycholysis)と診断したが,爪甲剥離症が季節的なことから,冬の低温多湿などの環境条件が病状の悪化に関連している可能性がある.
  • 爪甲剥離には下図に示すように様々な型があるが,いずれも爪の先端~中央に生じていることに注目.本例は爪床基部から生じているようであるが,その原因は不明であった.

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松下記念病院 川崎達也)

2024-04-08

フィジカル忘備録:第21回循環器Physical Examination講習会より

  • 心房中隔欠損では肺高血圧がなくてもⅡ音の肺動脈成分が亢進する(肺動脈の基部が拡大し胸壁に近づく+肺血流が増加するため)
  • 心房中隔欠損では相対的PSによる収縮期駆出性雑音に加えて三尖弁拡張期ランブルを聴取することがある
  • 循環器フィジカルイグザミネーションの実際(2005/9/1,吉川純一編集,文光堂)は青本と言われている
  • Dr.水野のうたう♪心音レクチャー /ケアネットDVD(ケアネット,2017/1/1)がいい
  • 心不全の心機能分類 NYHA ではⅡ度はⅡs(slight limitation of physical activity)とⅡm(moderate limitation of physical activity)に細分するが,Ⅲ度はⅢa(慢性)とⅢb(最近の症状出現:Patients in NYHA class IIIb closely resemble those with a recent history of dyspnea at rest)
  • 心不全の身体所見の要は低還流,肺うっ血,体液貯留の3つである
  • 敗血症の低灌流は膝を見るとより(一番冷たい)
  • 下肢挙上は自己輸血(補液500mlと同じCRT改善効果)
  • 大動脈のRCCとLCCの間に左脚枝があるので手術時には慎重に行う
  • Prosthesis-patient mismatch (PPM) は患者の体格に対して不適切に小さい人工弁が留置され十分な有効弁口面積(EOA)が得られない状態
  • functional MRは雑音が聞こえにくい


当日の風景(少数の現地聴講+全国にWEB配信)

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松下記念病院 川崎達也)

2024-04-04

今週の一枚 🎯

倦怠感があるため紹介された超高齢者


松下記念病院 川崎達也)

2024-04-01

過剰心音の復習

S3(Ⅲ音,第3音)
  • 左室充満圧(左房圧)が20ー25 mmHg以上に上昇 ➜ 左室急速流入速度の増大と突然の停止 ➜ S3出現

S4(Ⅳ音,第4音)
  • 左室拡張末期圧が20ー25 mmHg以上に上昇 ➜ 左房機能が亢進 ➜ S4出現


👹 つぶやき
  • 心不全の定義はいくつか提案されていますが(例:学会の定義),その本質は左室充満圧の上昇と考えられます.よってⅢ音と関連します.一方,左室拡張末期圧の上昇は,心不全とは必ずしもイコールではないことに注意が必要です.肥大や虚血で左室コンプライアンスが低下すると,左室拡張末期圧は意外と容易に上昇します.この場合にⅣ音が出現しますが,左室充満圧(左房圧)が上昇するまでは心不全とは言わない方がいいと思います.

🎵 心音に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)