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2025-12-11

ゲルハルト様徴候 Gerhardt-like sign 

意識障害で搬入された症例


👺 解説
  • 少し荒めの呼吸が目立つ(腹式)
  • 呼気時に左季肋部に拍動(矢印)
  • 本例は甲状腺の腫大と雑音あり
  • 最終的な診断は甲状腺クリーゼ

👽 コメント
  • 大動脈弁逆流症では左上腹部に拍動を認めることがあります(ゲルハルト徴候/Gerhardt sign).その機序は大脈に伴う脾臓の収縮期拍動です.同様に肝臓の拍動はローゼンバッハ徴候(Rosenbach sign)と呼ばれています.
  • 本症例で認めた左季肋部の拍動は,甲状腺機能亢進症による大脈で生じたゲルハルト(様?)徴候でしょうか? 右季肋部の拍動は不明瞭ですが,触診では肝臓の拍動(ローゼンバッハ[様?]徴候)もあるような気がしました😉 

松下記念病院 川崎達也)

2025-11-20

論文 🏆 NEJM

  • 当院で経験した症例がN Engl J Medに掲載されました
  • 意識障害でER搬入された若者で甲状腺クリーゼでした
  • 甲状腺腫大と頚部のコリガン脈甲状腺雑音が特徴的
  • 動画や音声はコチラで確認できます(無料登録が必要)


🐔 独り言
  • 甲状腺クリーゼの身体所見は、いつか遭遇するだろうと長年待っていました。また本例は当初 EHJ - Case Reports に投稿する予定でした。でも投稿直前に「ダメもとでNEJMいってみるか」と送ったら――まさかの採択🎉準備と挑戦って大切。なお当院でのNEJM Images in Clinical Medicine の戦績は32投稿4採択です。本邦でトップクラスだったら嬉しいな…😉

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2025-10-23

フィジカル忘備録

  • 先日,循環器 Physical Examination 研究会が主催するフィジカル合宿に参加してきました。身体所見のマイスターたちが興味深い症例を持ち寄って議論するというとても充実した2日間でした(夜の宴会も😉)。ディスカッションの中で耳にした巨匠達の貴重な言葉をここに記録しておきます。聞き違いがあればすいません。

  • 高心拍出状態での収縮期雑音はスクラッチ様(scratch murmur)
  • 甲状腺雑音はバセドウ病で出現するが破壊性甲状腺では通常なし
  • 破壊性甲状腺は症状で亜急性甲状腺炎と無痛性甲状腺炎へ大別可
  • 甲状腺中毒では雑音の有無で方針(破壊性へのメルカゾール回避)
  • 破壊性甲状腺炎ではサイログロブリンが病態と並行して増減する
  • 傍胸骨で右室拍動は心機図でRF有、左房拍動は収縮後期にピーク
  • シャイエ症候群(ムコ多糖症Ⅰ型の軽症)では沈着による弁膜症
  • 重症の僧帽弁逆流(MR)は頚動脈の立ち上がりが早く持続が短い
  • 重症MRでは駆出が早く済むから右脚ブロックがなくてもⅡ音分裂
  • 純粋なMRでは重症でもランブルは稀(狭窄が多少でもあると出る)
  • 4LSBで汎収縮期雑音でもTRとは言えない(MR雑音の伝播がある)
  • 急性肺血栓塞栓の肺高血圧は40-50mmHgまで(それ以上なら虚脱)
  • 一方、慢性やacute on chronicは70-80 mmHg以上可(例:CTEPH
  • 急性肺塞栓症で頚静脈陰性なのは発症時に体液量が多くないため?
  • 心室からの駆出流波形と開始が合致する心音は駆出音と考えられる

松下記念病院 川崎達也)

2025-09-22

Cabot-Locke murmur カボット・ロック雑音

  • 概要 重症貧血患者に認めることがある拡張早期雑音(大動脈弁逆流症と異なり減衰しない)
  • 由来 米国の医師 Cabot RC と Locke EA の報告(Bull Johns Hopkins Hosp 1903;14:115-20
  • 性状 胸骨左縁で最も大きく聴取され貧血の改善に伴い消失(弁膜症がないことが前提条件)


😐 独り言
  • 貧血や甲状腺機能亢進症、発熱時には心拍出量の増加による機能性雑音が生じることはよく知られています。しかし基本的には収縮期の駆出性雑音で、Cabot-Locke murmurのような拡張期雑音は稀と思われます(金沢大学十全医学会雑誌 1964;70:338-53)。
  • カボット・ロック雑音の原因は不明だそうですが、興味があります。Dock's murmur(ドック雑音)と同様に実際の音や心音図も見つけるころができませんでした。日常臨床で貧血を経験することは稀ではないため、何とか記録できるように努力してみます。

松下記念病院 川崎達也)

2025-08-25

Rosenbach sign ローゼンバッハ徴候

  • 大動脈弁逆流症で出現する右上腹部の拍動(肝臓の収縮期拍動)
  • 由来はドイツの医師Ottomar Ernst Felix Rosenbach(1851–1907)
  • 報告はÜber arterielle Leberpulsation. 1878:4:498-500(コレ?
  • 甲状腺機能亢進で出現する閉眼時の眼瞼の微細な震えも同名徴候

 

😁 おまけ
  • 個人的には甲状腺クリーゼの若者で肝拍動を視診できたことがあります.もちろんこれもローゼンバッハ徴候(Rosenbach sign)と呼んでいい? 

松下記念病院 川崎達也)

2025-07-28

リンカーン徴候 Lincoln sign

  • 大動脈弁逆流症による大脈のため膝窩動脈が過度に拍動して下肢が周期的に動く現象
  • 同疾患で頭部が心拍に一致し前後にゆれるド・ミュッセ徴候(de Musset sign)の足版
  • 命名はこの所見を示した第16代アメリカ合衆国の大統領 Abraham Lincoln(1809-1865)
  • 1863年にガードナーが有名な写真 ビッグフット を撮影し左足のぼやけを指摘(下図)
  • ジャーナリストのブルックスが膝窩動脈の拍動で脚が僅かに動いた可能性を提唱した
  • 1961年医師ゴードンが身体的特徴からリンカーンはマルファン症候群であったと推測
  • 1964年シュワルツは彼のマルファン症候群の特徴に関する更なる系譜学的証拠を提示


左足先のみピントがぼけている点に注目

💀 追加コメント
  • リンカーンがマルファン症候群であったかどうかは今もって不明だそうです(DNAは未公表).著名な遺伝学者ビクター・マキュージックは、その確率を50:50としています(Nature 1991;352:279-81).ちなみに彼は暗殺された初めての米大統領です.
  • 本徴候は膝をうまく組んで(体側の膝の真上に膝窩動脈),下肢の力を抜くよう指導など,一定の条件を満たさないと出現しないと予想します.以前に大動脈弁逆流での足背動脈のコリガン脈を記録したことがありますが,とても微妙な所見でした(ココ
  • 骨シンチグラフィにもリンカーン徴候と呼ばれる所見があるようです.下顎骨への核種の取り込みが過剰に亢進した(まるで黒ひげ)状態で,SAPHO症候群や骨パジェット病,悪性腫瘍転移,薬剤性顎骨壊死,副甲状腺機能亢進症などで認めるようです.

松下記念病院 川崎達也)

2025-06-19

今週の一枚 🎯

心不全で入院中の男性



松下記念病院 川崎)

2025-04-17

今週の一枚 🎯

大動脈瘤を指摘された男性



松下記念病院 川崎)

2025-03-14

🏆 論文

  • 循環器内科の本田先生が執筆されたケースレポートが出版されました
  • 収縮期雑音を呈した動脈管開存(PDA)の一例です(連続雑音なし)
  • 軽度肺高血圧のみでEisenmenger(アイゼンメンジャー)症候群なし
  • 心エコー図では拡張期にも短絡シグナルが描出されますが雑音なし

🎉 PDA雑音
  • PDA患者の典型的な雑音といえばもちろん(第2音で途切れることなく持続する)連続性雑音です。本例のような大動脈-肺動脈シャントに加えて、動静脈シャント(冠動脈動静脈瘻、右心室へのバルサルバ洞動脈瘤破裂など)や動脈および静脈の流れの変化(静脈雑音乳腺雑音甲状腺雑音など)があります。
  • 肺高血圧を伴うと拡張期雑音が消失することは理にかなっています。ただし本例の肺高血圧は軽度でした(平均圧28 mmHg、1.4~2.1 WU)。本例では収縮期雑音のみを聴取かつ記録した正確な原因は不明ですが、貧血や肝硬変などの併存疾患が非典型的なPDA雑音に変化させたと考えるのが妥当でしょうか?
  • Eisenmenger患者にみられるように、大動脈圧と肺動脈圧の平衡例では、雑音が完全に消失し無音性PDAになります(一部の症例では拡張期雑音のみ)。PDA雑音の性状は、肺動脈内のジェットの方向によっても変化するようです。本論文の考察ではこの辺りを(少し)深堀したので興味がある方はご覧ください。


👉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2025-02-06

頚静脈の座位定性法も無敵ではありません

鼠経ヘルニア術前に心電図異常を指摘された症例(座位)


  • 息切れなど心不全を示唆する症状はないが,BNP値は150 pg/ml程度に上昇していた.心エコー図には特記すべき異常所見はなし.
  • 心不全の有無を判定するため頚部を観察したが,大きな腫瘍に占拠されていた.橋本病による長い治療歴あり(現在はeuthyroid)
  • 心音でも心不全を示唆する所見(Ⅲ音やⅡ音肺動脈成分の亢進など)はなし.日常生活から判定した運動耐容能も保たれていた.
  • 胸部圧迫感の自覚はなく,冠危険因子も高血圧のみ.最終的に手術に支障はないと判断して,紹介元の外科医に返書を作成した.
  • 稀ながら頚静脈の座位定性法が困難が状況がある.甲状腺疾患による甲状腺腫肥満猪首,座位姿勢の困難例などが相当する.

松下記念病院 川崎達也)

2024-04-11

今週の一枚 🎯

肥大型心筋症で通院中の患者さんから相談を受けました

💅  爪甲そうこう剥離症(Onycholysis)
  • 爪剥離は冬に基部から始まり上方へ進行
  • 夏には自然に治癒(この数年繰り返し)
  • 服用薬はなくⅣ音を除き身体所見は正常
  • 栄養や甲状腺機能を含む血液検査は正常
  • 皮膚科的には爪甲剥離を除いて異常なし
  • 職業は通常デスクワークで寒冷刺激なし

👋 本態性爪甲剥離症(Idiopathic onycholysis)
  • 爪甲剥離症の原因としては,感染症(真菌など),乾癬,外傷または損傷,薬物反応(テトラサイクリンなど),栄養不良,甲状腺疾患,紫外線暴露,刺激性反応などがある.
  • 本例は特発性爪甲剥離症(Idiopathic onycholysis)と診断したが,爪甲剥離症が季節的なことから,冬の低温多湿などの環境条件が病状の悪化に関連している可能性がある.
  • 爪甲剥離には下図に示すように様々な型があるが,いずれも爪の先端~中央に生じていることに注目.本例は爪床基部から生じているようであるが,その原因は不明であった.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎達也)

2023-10-30

視診だけでは難しいが...

労作時の動悸感を訴える症例(端座位)

😀 解説
  • 安静時や吸気時に鎖骨上にわずかに拍動あり??
  • 前屈で周期的拍動(隆起)が明瞭になった(矢印)
  • 隆起を触ってみると明らかに動脈性拍動であった
  • 本例は最終的に心不全の状態ではないと判断した

 😎 追加コメント
  • 前屈で頸静脈所見が悪化する症例は少なくありません.陥凹から隆起になることが多いと思いますが(自験例),吸気陰性なのに前かがみでいきなり陽性波を示す症例もあります(自験例).前屈は吸気負荷よりも心臓への負担が大きいと思います
  • 本例も一見,中心静脈圧の上昇が疑われましたが,最終的には体位変換に伴って顕性化した動脈拍動でした.大脈を示す病態(大動脈弁逆流や甲状腺機能亢進,発熱,貧血など)はないため,加齢に伴う動脈蛇行(=偽コリガン脈)と診断しました.
  • 鑑別すべき病態に肥大型心筋症のa波の顕性化があります(自験例).触診で静脈を確認したら次は脈や心音を併用した時相確認が必要です.隆起のタイミングが前収縮期なら硬くなった心室(HCMなど)や不整脈(キャノンa波)などを考えます.

松下記念病院 川崎達也)

2023-08-31

バンザイはダメでした 😓

慢性左心不全の増悪が疑われる症例

🐥 解説
  • 座位で頸部に内頸静脈の2峰性陥凹(中心静脈圧の高度上昇)
  • 吸気で内頸静脈の陥凹は隆起(ランチシ徴候)に変化(矢印)
  • 両側の上肢を挙上するとシャツの襟が頸部を隠してしまった
  • 慌てて襟元を覗いてみたがやはり頸静脈の拍動は確認できず

🐤 コメント
  • 上肢挙上は吸気よりも強い負荷になることが少なくありません.吸気負荷は前負荷の増大が中心ですが,上肢挙上負荷は上肢の静脈血液の還流(前負荷増大)に加え,挙上という仕事(心拍数増加を含む),呼気時間の延長(胸腔内圧上昇)などが加わるためと思われます(過去の投稿).
  • 本例では吸気負荷で陽性波(巨大v波/cv merger)が出現したため,過剰負荷にならないか少しヒヤヒヤしながら上肢挙上を追加しました.しかし両手をバンザイしてもらったら服がせり上がって頸静脈が見えなくなりました.急いで服をずらしましたが頸静脈の拍動は確認できませんでした.
  • 単なる視界不良でなく,ペンバートン徴候(Pemberton's sign)と同様の機序が働いているのかもしれません.拡大した両側の頸静脈が万歳ポーズで圧迫された結果,頭部からの静脈還流が減少しそうです.顔面うっ血が生じないのは甲状腺腫大や縦隔腫瘍と異なり完全閉塞にならないため?

松下記念病院 川崎達也)

2023-04-10

ペンバートン徴候 Pemberton's sign

  • 両腕を垂直挙上したときに出現する一連の身体所見と自覚症状
  • 由来は英医師 Hugh Pemberton の報告(Lancet 1946;248:509
  • 顔面うっ血やチアノーゼ,呼吸困難感などがあれば陽性と判断
  • 甲状腺腫や縦隔腫瘤などによって生じる血管の圧迫がその原因

甲状腺腫大の77歳男性(図Cの矢印は気管偏位を示す)

甲状腺腫20年の病歴を持つ58歳女性

📺 おまけ
  • 上記の2症例はともにNEJMに掲載されています.いずれも今世紀ですが,2018年掲載の上段の症例には動画があり時代の進歩を感じますココから動画参照)
  • 下段の症例は2004年掲載で,当時はまだ動画共有システムがありませんでした,ちなみに YouTube は2005年設立で最初の投稿動画は Me at the zoo(ジョード・カリム投稿)

(投稿者 川崎)

2023-03-16

下腿浮腫:圧痕の有無と回復時間

下腿浮腫で紹介受診した症例

🐤 解説
  • 靴下を脱いだ時点でゴム跡(sock marks)➜ 浮腫の疑い
  • 脛骨前面を母指を用いて5~10秒間,約5mmの深さで圧迫
  • 圧痕 ➜ リンパ浮腫・甲状腺機能低下・蜂窩織炎は否定的
  • 圧痕回復の遅いslow edema(≧40秒)➜ 低ALBは否定的
  • 最終的に本例のpitting edemaの原因は心不全と診断した

🐦 たかが浮腫,されど浮腫
  • 浮腫とは細胞外液が血管外の間質に生理的な代償能を超えて過剰に貯留した状態と定義され,その原因は多岐に渡ります.
  • 主な原因は,静水圧の上昇(A),膠質浸透圧の低下(B),血管透過性の亢進(C),リンパ系の還流障害(D)

松下記念病院 川崎達也)

2023-02-02

ミノサイクリンによる色素沈着

👤 Minocycline-induced hyperpigmentation
  • 頻度:有病率は2.4〜41%で,治療期間や累積投与量と相関(顔面を除く)
  • 病理:基底ケラチノサイトでのメラニンの増加および真皮メラノファージ
  • 鑑別:アジソン病,甲状腺機能亢進,ヘモクロマトーシス,悪性腫瘍など
  • 治療:ミノサイクリン中止,日光への露出回避,色素特異的レーザーなど


繰り返す創部感染症でミノサイクリン200 mg/日を6年服用していた症例

👹 追加情報
  •  薬剤性色素沈着にはミノサイクリン以外にも,アミオダロンやブレオマイシン,プロスタグランジン,経口避妊薬,フェノチアジン,抗マラリア薬などが知られています.
  • 特にアミオダロンによる色素沈着は”Blue man”として知られています(下図).ちなみに”Red man”といえばバンコマイシンによる過敏反応のレッドマン症候群です.


松下記念病院 川崎達也)

2023-01-30

心疾患も合併することがあります 😶

💙 アルカプトン尿症(Alkaptonuria)
  • 原因:ホモゲンチジン酸-1,2-ジオキシゲナーゼの酵素欠損による常染色体潜性[劣性]遺伝疾患
  • 診断:尿中ホモゲンチジン酸の増加(24時間尿で通常20~30mgが1〜8gへ増加)➜ 遺伝子検査
  • 頻度:米国の発症率は約25万人に1人,スロヴァキア北西で頻度が高い(およそ19,000人中1人)
  • 三徴:暗褐色尿または放置後に暗褐色尿,色素沈着(30歳〜),脊椎・大関節の関節炎(20歳〜) 
  • 合併大動脈弁や僧帽弁の石灰化・逆流,大動脈拡張,腎結石,前立腺結石,甲状腺機能低下など
  • 治療:対症療法/欧州では進行を遅らせるニチシノン(高チロシン血症治療薬)(日本は未承認)



松下記念病院 川崎達也)

2023-01-16

カロテン血症 Carotenosis

  • カロテノイド色素の過剰摂取で皮膚(特に掌や足底,鼻など)が黄染した状態
  • 同色素が多い食物(ミカンなど)を過食すると生じるため柑皮症とも呼ばれる
  • 黄疸は眼球結膜(強膜)が黄色くなるが,柑皮症ではならないため区別は可能
  • 白眼黄染が生じない理由はカロテンと親和性が高い脂質が強膜には少ないため

マンゴーとオレンジを6週間に渡って何度も食べた19歳女性

👵 もっと詳しくなら...
  • カロテノイドは脂溶性化合物でα-およびβ-カロテン,β-クリプトキサンチン,リコペン,ルテイン,ゼアキサンチンから構成されています.ミカン以外にもリンゴやオレンジ,パパイヤ,豆,モモ,ベリー,パイナップル,マンゴー,ブロッコリー,キャベツ,カボチャ,ニンジン,ほうれん草,トマト,レタス,バター,チーズ,卵黄,肉,牛乳,栄養補助食品,パーム油などに様々な食物に含まれています.
  • カロテノイドは消化管からの受動拡散によって吸収され,一部は腸粘膜や肝臓でビタミンAへ代謝され,残りは汗・皮脂・尿・消化管分泌物として体外へ排出されます.カロテン血症の最も一般的な原因はカロテン過剰摂取ですが,稀に糖尿病や腎疾患(糸球体腎炎やネルフローゼ症候群など),甲状腺機能低下症,神経性食欲不振症,原発性肝疾患などの全身性疾患に起因することもあるようです.
  • 食事誘発性カロテン血症は病歴と身体所見から診断されます.ただし血清ベータカロテン値が高いこと,ビタミンA値が正常またはわずかに上昇していること,および肝機能検査の結果が正常であることによって確認できます.基礎疾患がなければ深刻な結果につながる可能性が低い良性疾患(美容的な問題は除く)で,食事中のカロテン量を減らすことで消失します.ちなみに昔はカロチンと呼んでいました.


松下記念病院 川崎達也)

2022-11-03

論文 🏆 if you miss the goiter…😱

  • 当院の初期研修医 熊田先生が循環器内科で経験した症例が出版されました
  • 労作時の息切れで受診 ➜ 心エコー図で肺高血圧(推定収縮期圧50 mmHg)
  • 頻脈はないが甲状腺の軽度びまん性腫脹あり ➜ 最終的にバセドウ病と診断
  • 心肺疾患や血栓症なし ➜ 肺高血圧症のダナポイント分類第1群または第5群
  • 本例は甲状腺治療のみで肺動脈収縮期圧は経時的に低下して最終的に正常化


😀 臨床現場
  • 肺高血圧のガイドラインには第5群として①血液疾患(慢性溶血性貧血,骨髄増殖性疾患,脾摘出),②全身性疾患(サルコイドーシス,肺組織球増殖症,リンパ脈管筋腫症),③代謝性疾患(糖原病,ゴーシェ病,甲状腺疾患),④その他(腫瘍塞栓,線維性縦隔炎,慢性腎不全,区域性肺高血圧)の4つが記載されています.
  • 本例では「甲状腺疾患をたまたま合併した第1群肺高血圧」(共に若い女性に多い)と「甲状腺疾患が誘発した第5群肺高血圧」が考えられました.甲状腺の治療と並行して,肺高血圧の特異的薬物治療(プロスタサイクリン経路・エンドセリン受容体拮抗薬・一酸化窒素経路)の導入の要否を判断する必要があります.
  • 本例では(患者さんと協議の上)甲状腺治療のみを開始しました.肺高血圧が特異的薬物治療なく消失したため,「甲状腺疾患が誘発した第5群肺高血圧」と考えられました.肺高血圧と甲状腺疾患が合併した場合,17症例中16例で甲状腺治療のみで肺高血圧が正常化したという(すごい😮)報告があります(Angiology 2006;57:600-6).

👿「論文」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2022-10-03

Rachitic Rosary くる病念珠

  • Rachitic(発音:rəkítik)くる病の/Rosary(発音:róuzəri)宗教の数珠(じゅず)
  • Ca欠乏による石灰化欠如と肋軟骨関節軟骨の過成長で,肋骨骨幹端が増大した状態
  • くる病や骨軟化症,副甲状腺機能低下症などで出現して,肋骨念珠とも呼称される


👿 頭の整理
  1. なんらかの代謝異常によって発症した骨の石灰化障害のうち,成長軟骨帯閉鎖以前に発症するもの(つまり小児)をくる病(rickets),骨端線閉鎖が完了した後の病態(つまり大人)を骨軟化症(osteomalacia)と呼んでいる.
  2. ①ビタミンD欠乏性(摂取 or 日光不足),②ビタミンD依存性(遺伝性:1型=腎臓でビタミンD活性化の酵素異常/2型=ビタミンDの受容体異常),③低リン血症性(摂取不足,腸での吸収不足,腎臓での再吸収不足,血中から骨や細胞への過剰移動)に大別
  3. 英名 rickets の語源はギリシャ語の背骨を意味する rhakhis に由来している.一方,芳名のくる病は,背中が曲がる状態を表す漢字の佝僂または痀瘻からきているらしい.洋の東西を問わず背中に由来している点は興味深い.

松下記念病院 川崎達也)