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2025-12-15

心音クイズ(Q13・Q14)

  • 持田製薬さんと作成している心音クイズのシーズン2 第二弾です(GROUP T inc.さんにも感謝 🙏 レイアウトも一新).今回は臨床現場でしばしばお目(耳?)にかかる2症例です.もっとも少しひねりを効かせた(聴かせた?)症例です 😉
  • 今後も3ヵ月毎に2症例ずつアップする予定です(次回は2026年2月の予定).無料なのでよろしければご覧ください(※Q3以降は初回のみ簡単な登録が必要).一緒に聴診学の楽しさと奥深さを共有できれば作成者としては嬉しい限りです 😁


松下記念病院 川崎達也)

2025-12-11

ゲルハルト様徴候 Gerhardt-like sign 

意識障害で搬入された症例


👺 解説
  • 少し荒めの呼吸が目立つ(腹式)
  • 呼気時に左季肋部に拍動(矢印)
  • 本例は甲状腺の腫大と雑音あり
  • 最終的な診断は甲状腺クリーゼ

👽 コメント
  • 大動脈弁逆流症では左上腹部に拍動を認めることがあります(ゲルハルト徴候/Gerhardt sign).その機序は大脈に伴う脾臓の収縮期拍動です.同様に肝臓の拍動はローゼンバッハ徴候(Rosenbach sign)と呼ばれています.
  • 本症例で認めた左季肋部の拍動は,甲状腺機能亢進症による大脈で生じたゲルハルト(様?)徴候でしょうか? 右季肋部の拍動は不明瞭ですが,触診では肝臓の拍動(ローゼンバッハ[様?]徴候)もあるような気がしました😉 

松下記念病院 川崎達也)

2025-12-08

フィジカルクイズ(No. 33 & 34)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週末に循環器に関するフィジカルクイズをX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらのページには2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2025-12-04

これは世界記録

  • びっくりする論文を眼にしたので本ページで共有します(N Engl J Med 2025;393:e33
  • インフルエンザの感染後に悪化した心房細動を伴う心不全(HFpEF)の89歳女性です
  • 三尖弁逆流による前額静脈の拍動(ランチシ徴候)には驚き(特に動画がすごい😮)


💀 独り言
  • 上記報告では体位が記載されていないため中心静脈圧の推定値は不明ですが,半坐位としても30㎝水柱は超えていそうです.右心不全が主体でなければ出現しない身体所見?
  • 自験例で静脈拍動の最上縁記録は側頭部(立位)です(こめかみサイン/Temple sign of JVP).同症例を臥位にしてもNEJM症例のような前額での拍動はありませんでした.
  • 前額静脈の拍動はTRの長い病歴や皮下組織のルーズさなど様々な要因が組み合わされないと出現しないのではと思います.頭部の表在静脈の解剖を引用しておきます(下図).


松下記念病院 川崎達也)

2025-12-01

学習アプリの効果

  • 面白い論文が出版されたのPICO(ピコ)形式で共有します(Nurse Educ Pract 2025:89:104620

    1. P – 看護学生,モバイルアプリケーションを用いた心血管身体の学習効果
    2. I – ランダム化比較試験,42名をアプリ群、40名を対面指導群に割り当て
    3. C – 学生の学習効果,自己学習能力、知識、学習満足度を両群間で比較
    4. O – アプリ群でスキルパフォーマンスは有意に向上した.他は有意差なし

😌 独り言
  • アプリが身体所見の学習に有用であることは言を俟ちません.いつでも・どこでも・だれもが利用できるからです.しかしその効果のエビデンスは意外にも少ないような気がします.
  • アプリやWEBコンテンツの開発者の一人としてはこのような論文をとても嬉しく思います.投稿者も様々なコンテンツを公開しているのでよろしければご覧ください(松下ハート塾

松下記念病院 川崎達也)

2025-11-27

今週の一枚 🎯 SNAP診断

健診で心雑音を指摘された男性(座位)

😋 解説
  1. 両側頚部に周期的な陽性拍動(矢印)
  2. 拍動は鋭く鎖骨上窩→顎下まで一瞬
  3. このような両側の迅速隆起は動脈性
  4. 予想通り心エコー図で大動脈弁逆流
  5. 機序は一回拍出量の増加による速脈

💁 おまけ

松下記念病院 川崎)

2025-11-24

フィジカルクイズ(No. 31 & 32)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週末に循環器に関するフィジカルクイズをX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらのページには2週分ずつまとめてアップします.



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松下記念病院 川崎達也)

2025-11-20

論文 🏆 NEJM

  • 当院で経験した症例がN Engl J Medに掲載されました
  • 意識障害でER搬入された若者で甲状腺クリーゼでした
  • 甲状腺腫大と頚部のコリガン脈甲状腺雑音が特徴的
  • 動画や音声はコチラで確認できます(無料登録が必要)


🐔 独り言
  • 甲状腺クリーゼの身体所見は、いつか遭遇するだろうと長年待っていました。また本例は当初 EHJ - Case Reports に投稿する予定でした。でも投稿直前に「ダメもとでNEJMいってみるか」と送ったら――まさかの採択🎉準備と挑戦って大切。なお当院でのNEJM Images in Clinical Medicine の戦績は32投稿4採択です。本邦でトップクラスだったら嬉しいな…😉

👉「論文」の過去の投稿は コチラ(ウェブ版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2025-11-17

螺旋状毛 Corkscrew hair

  • 先日,コルクスクリュー(corkscrew hair)に関する報告を立て続けに眼にしました.きっとそのうちに循環器外来でも出会うと思うので(既に遭遇しているも気付かずスル〜?😥),ここにアップしておきます.

- 皮下出血で来院した若者 -

😎 解説
  • 左大腿後面に皮下出血あり(パネルA)
  • 四肢全体に毛包性紅斑あり(パネルB)
  • ダーモスコピーで螺旋状毛(パネルC)
  • 生検で表皮出血と毛包開口部の縮れ毛
  • 本症例の最終診断は壊血病(Scurvy)

😑 螺旋毛:深掘り
  • 壊血病の典型的な皮膚症状の一つで,ビタミンC欠乏症に起因するコラーゲン合成障害によって発生
  • 他の原因には頭部白癬(Tinea Capitis)や外胚葉異形成症候群(Ectodermal Dysplasia Syndromes)


松下記念病院 川崎達也)

2025-11-13

手抜きダメ

10年前にペースメーカ植込み術を受けた症例
ひと月前から息切れ(座位ですべて吸気後)

😐 解説
  • 頚静脈の拍動なし(ただし下部は見えず)
  • 吸気後の鎖骨上窩にわずかに陥凹あり?
  • 立ち上がって診察室内を2周してもらった
  • すると頚部の中央に明瞭な陽性波(矢印)
  • 触診にて動脈拍動でなく静脈拍動を確認
  • 本例は最終的に心不全と診断(HFpEF)
  • ペースメーカ本体も確認したが問題なし

😞 現場実況
  • 長年安定している症例でありシャツの襟を立てたまま観察(反省)
  • 安定しているというバイアスで鎖骨上窩の拍動もスルー(反省2)
  • 患者さんの訴えが強くしぶしぶ歩行負荷を追加で陽性波(反省3)

松下記念病院 川崎達也)

2025-11-10

フィジカルクイズ(No. 29 & 30)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週末に循環器に関するフィジカルクイズをX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらのページには2週分ずつまとめてアップします.



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松下記念病院 川崎達也)

2025-11-06

有名ですが…実臨床では…

心雑音を指摘された症例(座位)

😎 解説
  • 頚部の中央右側に周期的な拍動あり
  • 隆起なので動脈性か静脈性の鑑別要
  • 用手的な圧迫で消失せず動脈と判断
  • 最終診断は中等度大動脈狭窄逆流
😑 つぶやき
  • 大動脈弁狭窄の頚動脈拍動は特徴的な変化を示すことが知られています。例えば遅脈(遅い立ち上がり+小さい振幅+長く持続)や、shudder(微細な振動)などです。しかし実臨床でこのような典型例を示す例はむしろ稀です。
  • 本例のように大動脈弁逆流を伴ったり、加齢に伴う動脈の蛇行が加わるので、頚動脈の視診・触診のみで診断することはお薦めしません。頚動脈所見の基本を押さえた上で(下表)、聴診などを加味した総合的な判断が望まれます。

松下記念病院 川崎達也)

2025-11-03

なるほどの説得力

  • ちょっと面白い論文を眼にしたので本ページでも共有します(US Cardiol 2025:19:e16
  • 座位から前屈すると内頚静脈のサイズが拡大することをエコーで確認(下の図と動画)
  • 臨床的意義がある心不全症例ではエコーを使わなくても身体所見で判定可能(自験例


松下記念病院 川崎達也)

2025-10-30

誤診やむなし❓

増悪する息切れで来院した症例(座位)

😐 解説
  • 頚部に内頚静脈の拍動を認める(矢印)
  • 不規則なので心房細動 AF?(時折大?)
  • 安静で陽性なので吸気などの負荷は不要
  • 隆起性 ➜ v波なら重症三尖弁逆流 TR
  • その後の精査で予想通り非代償性心不全
  • ただしAFではなくて3度房室ブロック 😮

😓 独り言
  • 完全房室ブロックの頚静脈所見では間欠的に出現する巨大a波(キャノンa波)が有名です(自験例)。その機序は右房収縮時に三尖弁が閉鎖しているためです。よって期外収縮でも出現することがあります(自験例
  • 本例はもともと活動性が低いためか、房室ブロックによる立ち眩みやふらつきはなかったようです。しかし徐脈が暫く(1-2週間以上?)続き非代償性心不全に至り、床上でも症状が出現するようになって来院と予想
  • 本例の頚静脈拍動は陽性波なのでa波に加えv波も見えていると思われます(よって視診で徐脈を見抜くのは困難)。a波の大きさがQRSとのタイミングで変化し絶対不整に見えるので、AF+高度TRの誤診もやむなし?

松下記念病院 川崎達也)

2025-10-27

フィジカルクイズ(No. 27 & 28)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週末に循環器に関するフィジカルクイズをX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらのページには2週分ずつまとめてアップします.



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松下記念病院 川崎達也)

2025-10-23

フィジカル忘備録

  • 先日,循環器 Physical Examination 研究会が主催するフィジカル合宿に参加してきました。身体所見のマイスターたちが興味深い症例を持ち寄って議論するというとても充実した2日間でした(夜の宴会も😉)。ディスカッションの中で耳にした巨匠達の貴重な言葉をここに記録しておきます。聞き違いがあればすいません。

  • 高心拍出状態での収縮期雑音はスクラッチ様(scratch murmur)
  • 甲状腺雑音はバセドウ病で出現するが破壊性甲状腺では通常なし
  • 破壊性甲状腺は症状で亜急性甲状腺炎と無痛性甲状腺炎へ大別可
  • 甲状腺中毒では雑音の有無で方針(破壊性へのメルカゾール回避)
  • 破壊性甲状腺炎ではサイログロブリンが病態と並行して増減する
  • 傍胸骨で右室拍動は心機図でRF有、左房拍動は収縮後期にピーク
  • シャイエ症候群(ムコ多糖症Ⅰ型の軽症)では沈着による弁膜症
  • 重症の僧帽弁逆流(MR)は頚動脈の立ち上がりが早く持続が短い
  • 重症MRでは駆出が早く済むから右脚ブロックがなくてもⅡ音分裂
  • 純粋なMRでは重症でもランブルは稀(狭窄が多少でもあると出る)
  • 4LSBで汎収縮期雑音でもTRとは言えない(MR雑音の伝播がある)
  • 急性肺血栓塞栓の肺高血圧は40-50mmHgまで(それ以上なら虚脱)
  • 一方、慢性やacute on chronicは70-80 mmHg以上可(例:CTEPH
  • 急性肺塞栓症で頚静脈陰性なのは発症時に体液量が多くないため?
  • 心室からの駆出流波形と開始が合致する心音は駆出音と考えられる

松下記念病院 川崎達也)

2025-10-20

Ⅳ音とエコーA波:深堀

  • 数年前ですが講演後に「肥大型心筋症で明瞭なⅣ音を認めるのに心エコー図のA波が低いのはどうしてですか?」と質問を受けました.残念ながらその場ではうまく答えることができませんでした.そのやり取りをWEBでご覧になっていた身体所見の巨匠から解説メールをいただきました.
  • 先日,Ⅳ音とその機序に関してX(旧Twitter)に投稿を行いました(ココ).しかし私の理解および文章が不正確であったため,翌日に同じ巨匠から再度,解説メールをいただきました(とても反省).同じ過ちを繰り返さないためにも,忘備録として下記にまとめをアップしておきます.

💫 巨匠の指導内容の要約
  • 左室拡張末期圧(EDP)上昇例の左室流入A波はすべて増高するわけではない。EDPが中等度以上に上昇すると心房機能は亢進しているにも拘わらずA波は減高する(いわゆる偽正常化)。この場合でも立派なⅣ音を聴取(HCMの大半はこのパターン)
  • その原因は左室が硬すぎるあるいはEDPが高すぎるため心房機能は亢進しているのに左室側には少ししか流入できないためで、大半は肺静脈側に逆流している。実際このような例の肺静脈血流波形を記録するとA波が著明に増高している。
  • 以上のことから、Ⅳ音が出現する病態は、左室流入A波増高・肺静脈血流A波正常左室流入A波減高・肺静脈血流A波増高の2つがあり、後者の方がより進行した状態で予後不良と言える。 
  • 左室流入A波は小さくても、心房機能は亢進しているため左室圧A波は増大している(これが心尖拍動のA kickとして触れる)。すなわち、左室流入A波は小さくても左室を振動させるパワーとしては十分に働いている。
 
🔗 帽弁口血流速波形と違って心尖拍動のA波は偽正常化しにくい
  • LVEDPが約20mmHgを超えると僧帽弁口血流速波形(MVF)は偽正常化し始めるが(下図左)、心尖拍動のA波率(A/H)は偽正常化せずLVEDPが30~35mmHgくらいまで増大し続ける(下図右)。
  • A/Hは、それ以上の著明な上昇(LV-preA圧の中等度上昇も同時に伴う状態)になって初めて減高に向かう。この時点にまで至ればMVF-A波・PVF-A波ともに減高し、Ⅳ音も当然弱くなる。
  • 肥大心や拡大心においてMVFが一見正常パターンで正常か偽正常かの判断に迷った時にACG-A波を触れるかあるいは記録したACGのA波増高を確認できたならばMVFが偽正常であると判断できる。

Jpn J Med Ultrasonics 1986;13:315-323に関連する原画)

松下記念病院 川崎達也)

2025-10-16

診療室内で運動負荷

無理すると息切れがあるという男性(座位)


👀 解説
  • 安静座位で内頚静脈の拍動なし
  • 吸気負荷で一瞬,僅かに拍動?
  • 診察室内を2周歩いてもらった
  • すると座位で明瞭な拍動(➢)
  • 最終診断は非代償性の心不全

👶 コメント
  • 頚静脈の座位定性法の可能性は無限です.様々な負荷が追加できるからです.吸気負荷が最も簡便ですが,前屈負荷蹲踞負荷左上肢挙上負荷立位負荷なども可能です.そしてそれらを組み合わせることも有用です.
  • 当院で最初に行った負荷頚静脈法は6分間歩行でした(論文).しかし診察室やベットサイドでは実施が困難で活用範囲が限定されます.今回行った診察室内を少し歩きまわってもらう負荷はベットサイドでも可能です.

松下記念病院 川崎達也)

2025-10-13

フィジカルクイズ(No. 25 & 26)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週末に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



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松下記念病院 川崎達也)

2025-10-09

無塩食

長年安定していた心不全例(座位)


🍟 現場実況
  • 通常は安静時も吸気時も頚静脈は陰性
  • 今回は安静時に鎖骨上窩で陥凹(矢印)
  • 深吸気保持で外頚静脈が怒張している
  • 内頚静脈の拍動の上縁も上昇(矢頭)
  • しかも拍動パターンは陥凹から隆起へ
  • 予定していた心エコー図には著変なし
  • 問い直すと自覚症状は悪化していたと

🍙 追加コメント
  • 安定していた心不全が悪化した原因を尋ねたら「継続していた無塩食を少し前に辞めた」ことを教えてくれました.
  • 無塩食は思っているよりも簡単なようです.自宅で無塩調理(食塩や醤油,味噌などの調味料を使用しない)だけ
  • 無塩食だから外食不可も古い考えだそうです.現在では無塩を依頼すれば多くのお店で対応してもらえるようです.
  • 無塩(かつ無糖)の食生活を20年以上も継続されている循環器内科専門医が霧島記念病院におられます(コチラ

松下記念病院 川崎達也)

2025-10-06

心音クイズ(Q11・Q12)

  • 持田製薬さんと作成している心音クイズのシーズン2 第二弾です(GROUP T inc.さんにも感謝 🙏).今回はちょっと珍しい右心系の心雑音を呈した2症例です.ココで経験しておけば実際の臨床現場で遭遇した時にも迷わずフィジカル診断?
  • 今後も3ヵ月毎に2症例ずつアップする予定です(次回は2025年11月の予定).無料なのでよろしければご覧ください(※Q3以降は初回のみ簡単な登録が必要).一緒に聴診学の楽しさと奥深さを共有できれば作成者としては嬉しい限りです 😁


松下記念病院 川崎達也)

2025-10-02

Martorell's ulcer マルトレル潰瘍

  • 概要 高血圧(拡張期?)に関連した下肢の痛みを伴う難治性潰瘍
  • 原因 高血圧性下肢潰瘍、高血圧性潰瘍、壊死性血管性皮膚炎など
  • 由来 スペインの血管外科医 Martorell(Angiology 1950;1:133-140
  • 症状 疼痛の強い単一または複数の病変(主に下腿前外側部に出現)
  • 疫学 高血圧のコントロール不良な中年(50~70歳)の女性に多い
  • 原因 内側動脈の小細動脈の閉塞により引き起こされる虚血性病変
  • 鑑別 カルシフィラキシス壊疽性膿皮症塞栓症、末梢動脈疾患
  • 治療 Ca遮断薬やACE阻害剤、プロスタグランジンE(PGE1)など
  • 予後 他の病因による潰瘍より強い痛みを伴い治療への反応は不良


- マルトレル潰瘍の1例 -

松下記念病院 川崎達也)

2025-09-29

フィジカルクイズ(No. 23 & 24)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週末に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



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2025-09-25

Key-Hodgkin murmur キー・ホジキン雑音

  • 概要 梅毒による大動脈弁逆流で出現する拡張早期雑音(ノコギリで木を切るようなザラザラした音)
  • 由来 英国の医師 Key CA(1793-1849)と Hodgkin T(1798-1866)(Lond Med Gaz 1829;3:433-43
  • 鑑別 キー・ホジキン雑音は拡張早期漸減性雑音でオースティン・フリント雑音は拡張中期ランブル


😐 独り言
  • この音もCabot-Locke murmur(カボット・ロック雑音)と同様に、不思議な拡張早期の雑音です。原因は大動脈弁のretroversion(後方に曲がること)と報告されていますが、今から200年近くも昔の論文です(実物はココ)。梅毒による大動脈弁逆流(第3期:感染から数年〜数十年)が激減した現在となっては、実際に経験することはちょっと難しいかも…

松下記念病院 川崎達也)

2025-09-22

Cabot-Locke murmur カボット・ロック雑音

  • 概要 重症貧血患者に認めることがある拡張早期雑音(大動脈弁逆流症と異なり減衰しない)
  • 由来 米国の医師 Cabot RC と Locke EA の報告(Bull Johns Hopkins Hosp 1903;14:115-20
  • 性状 胸骨左縁で最も大きく聴取され貧血の改善に伴い消失(弁膜症がないことが前提条件)


😐 独り言
  • 貧血や甲状腺機能亢進症、発熱時には心拍出量の増加による機能性雑音が生じることはよく知られています。しかし基本的には収縮期の駆出性雑音で、Cabot-Locke murmurのような拡張期雑音は稀と思われます(金沢大学十全医学会雑誌 1964;70:338-53)。
  • カボット・ロック雑音の原因は不明だそうですが、興味があります。Dock's murmur(ドック雑音)と同様に実際の音や心音図も見つけるころができませんでした。日常臨床で貧血を経験することは稀ではないため、何とか記録できるように努力してみます。

松下記念病院 川崎達也)

2025-09-18

Dock's murmur ドック雑音

  • 概要 左前下行枝に高度の狭窄がある場合に生じる拡張期雑音(特に拡張早期と拡張後期)
  • 由来 アメリカの心臓専門医 William Dock (1898-1990) の初報(Am J Med 1967;42:617-9
  • 性状 第三肋間で胸骨中央から4cm左側に限局して座位時に心音図で記録することができる


- 音響分析結果と対応する血管造影 -

😉 呟き
  • 当院では虚血性心疾患でも多くの心音図を記録してきましたが、Dock's murmurを思わせる不思議な雑音(拡張早期と拡張後期にアクセント)を経験したことはありません。これは方法論の問題?(座位かつ特殊な部位での記録が必要)
  • ウェブ上にきれいな音ファイルあるいは心音図のアップはないようです。個人的にも興味があるので、なんとか記録できるよう挑戦してみます。心音図でなければ記録できないという記載も見かけますが…記録されるなら聴取できるのでは⁉

松下記念病院 川崎達也)

2025-09-15

フィジカルクイズ(No. 21 & 22)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週末に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2025-09-11

頚静脈波形

  • 頚静脈拍動と中心静脈圧、ドプラ波形の関連を概説する論文(Ther Adv Pulm Crit Care Med 2025 Jul 16;20:29768675251359700)を眼にしました。
  • 頚静脈の波形の分かりやすいイラストがあったのでアップしておきます。なお図の説明文はAIによる自動翻訳を活用(説明文中の引用論文は割愛)

頸静脈拍動(JVP)および頸静脈血流速度(JVFV)の生理学
(A) 心電図(ECG)、心音図(PCG)、および右心房圧(PRA)の時間的関係を示す。PCG の SX は心音を表す。PRA または JVP の上昇波は本文で説明される a波、c波、v波 である。下降波は x下降、x′下降、y下降 と呼ばれる。IC は等容収縮ノッチを示す。灰色で塗られた領域は JVFV を表し、s波(収縮期) および d波(拡張期) を含む。図解は心周期における右心の変化を示し、RA は右心房、RV は右心室を意味する。 (B) JVP の波形記録は19世紀半ばに初めて発表され、12 世紀末から20世紀初頭にかけて Mackenzie によりさらに詳細に発展した。JVP の陽性波は、その解剖学的・生理学的な起源に基づいて命名され、a波は右心房、c波は総頸動脈、v波は右心室 を反映するとされた。Mackenzie はまた、三尖弁逆流症における JVP の病的変化を記載しており、初期には a(心房型) から v(心室型) へと移行することを示した。疾患の初期段階では、顕著な v波 は心房細動(すなわち「心房性」)により生じる。心房収縮が失われることで右心房がうっ血し、右心房圧(PRA)が収縮後期に上昇するため、機能している三尖弁(TV)が心基部方向へ戻る際に高い v波が発生するためである。しかし疾患が進行すると、v波はさらに顕著になり、収縮期の早期に出現するようになる。これは逆流性の血液量が機能不全の三尖弁から逆流するためであり、いわゆる「心室型 v波優位」と呼ばれる。 同様の進行は、肺高血圧患者において Ranganathan と Sivaciyan によって内頸静脈(IJV)ドプラ超音波で記録された JVFV でも報告されており、以下で述べる。(C) JVFV は 装着型ドプラ超音波 によって測定され、これについても以下で記載する。

Sivaciyan と Ranganathan が提唱した頸静脈血流速度(JVFV)の分類システムの模式図
詳細は本文を参照のこと。ここおよび図1において、右心房方向への JVFV は y軸の下向きに、頭部方向への血流速度は y軸の上向きに示されている。 仰臥位では、最上段のパターン(s > d)が正常であり、持続的な逆行性 a波は認められない。大きな逆行性 a波および v波は、単相性拡張期パターン(ここでは表示されていない)で観察されることがある。 逆行性収縮期速度(最下段のパターン)は、臨床的に重要な**三尖弁逆流(TR)**を示す典型的な所見であるが、房室解離において心房収縮が閉じた三尖弁に対して生じる場合にもみられる。この場合、逆行性収縮期速度は不規則である。 略語: RA = 右心房 RV = 右心室 TAPSE = 三尖弁輪収縮期移動量(tricuspid annular plane systolic excursion)

😇 おまけ

上記論文では当院で行った頚静脈の臨床研究を4編も引用してもらいました 😊 謝謝
  1. Kasai K, Kawasaki T, Hashimoto S, Inami S, Shindo A, Shiraishi H, Matoba S. Response of Jugular Venous Pressure to Exercise in Patients With Heart Failure and Its Prognostic Usefulness. Am J Cardiol 2020;125:1524-1528 ➜ 日本語の解説
  2. Shako D, Kawasaki T, Kasai K, Sato Y, Honda S, Sakai C, Harimoto K, Shiraishi H, Matoba S. Jugular Venous Pressure Response to Inspiration for Risk Assessment of Heart Failure. Am J Cardiol 2022;170:71-75 ➜ 日本語の解説
  3. Kasai K, Kawasaki T, Hashimoto S, Kanehiro C, Yabu S, Shindo A, Matoba S. Jugular Venous Pressure and Kussmaul's Sign as Predictors of Outcome in Heart Failure. Int Heart J 2023;64:1088-1094 ➜ 日本語の解説
  4. Noguchi M, Kasai K, Honda S, Sakai C, Harimoto K, Kawasaki T. Jugular Venous Response for Risk Stratification in Heart Failure. Cureus 2024;16:e58423 日本語の解説

松下記念病院 川崎達也)

2025-09-08

Gerhardt sign ゲルハルト徴候

  • 大動脈弁逆流で出現する左上腹部の拍動(脾臓の収縮期拍動)
  • 命名はドイツの医師 Carl JAC Gerhardt(1833-1902)に由来
  • ただし脾臓の動脈性拍動の初報は Nicolaes Tulp (1594–1674)
  • ザイラー徴候とも呼ばれている(Am Heart J 1928;3:447-53

 

😐 コメント
  • 上記の動画はローゼンバッハ徴候(大動脈弁逆流による肝拍動)でリンクした動画と同じものです.脈圧の開大(大脈)に伴う肝拍動と脾臓拍動は基本的に同じ現象ですが,ネット上に動画としてはほとんど検索しません.綺麗な動画が記録できたらぜひアップをお願いします(投稿者も努力します) 

松下記念病院 川崎達也)

2025-09-04

今週の一枚 🎯

松下ERランチ・カンファレンスの症例ですがフィジカルが関連するのでこちらにもアップしておきます
 
前日からの胸痛を訴える若者(突然発症で吸気時に増悪/気胸の既往歴あり)



松下記念病院 川崎達也)

2025-09-01

フィジカルクイズ(No. 19 & 20)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週金曜日に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2025-08-28

教育ビデオ 📺 収縮期逆流性雑音(Systolic regurgitant murmur)

僧帽弁逆流症(Mitral regurgitation: MR)の一例

🎶 解説
  • Ⅰ音とⅡ音の間にある心雑音なので収縮期雑音
  • 雑音の音量は漸増や漸減に欠く箱型(長方形)
  • Ⅰ音とⅡ音は心雑音に埋没するため認識が困難
  • 僧帽弁逆流,三尖弁逆流,心室中隔欠損の3疾患

🎵 コメント
  • フィジカルの巨匠からのアドバイス(過去の投稿)を元に作成した,心音図をなぞりながら音を聴く教育ビデオです(版権放棄かつ利用時の引用記載も不要)
  • 最初は「実際の心音と心音図上の線の動きをあわせるのが大変だな~」と思いましたが,パワーポイントを用いてやってみると意外に簡単に作成できました.

松下記念病院 川崎達也)

2025-08-25

Rosenbach sign ローゼンバッハ徴候

  • 大動脈弁逆流症で出現する右上腹部の拍動(肝臓の収縮期拍動)
  • 由来はドイツの医師Ottomar Ernst Felix Rosenbach(1851–1907)
  • 報告はÜber arterielle Leberpulsation. 1878:4:498-500(コレ?
  • 甲状腺機能亢進で出現する閉眼時の眼瞼の微細な震えも同名徴候

 

😁 おまけ
  • 個人的には甲状腺クリーゼの若者で肝拍動を視診できたことがあります.もちろんこれもローゼンバッハ徴候(Rosenbach sign)と呼んでいい? 

松下記念病院 川崎達也)

2025-08-21

教育ビデオ 📺 収縮期駆出性雑音(Systolic ejection murmur)

大動脈弁狭窄症(Aortic stenosis: AS)の一例

🎶 解説
  • Ⅰ音とⅡ音の間にある心雑音なので収縮期雑音
  • 雑音は漸増・漸減型(ダイアモンド型 or 菱形)
  • よってⅠ音とⅡ音を聴取できる(特にⅡ音!)
  • 例えば大動脈弁狭窄症やHCMの左室流出路狭窄

🎵 コメント
  • フィジカルの巨匠から以下のような内容のメールをいただきました.「講習会では心音図が心音と一緒に動画として提示される.でも聴衆はとてもそれを目で追えない.心音図をなぞりながら音を聴かせるという風にすればとても理解しやすい.」
  • 「心音図は必ずしも実物でなくて絵でもいいですよ」とも言われましたが,せっかくなので実物を使用してみました.本動画は教育用として作成したので,商業目的を除いてご自由にご活用ください(版権放棄かつ利用時の謝辞記載も不要です)

松下記念病院 川崎達也)

2025-08-18

フィジカルクイズ(No. 17 & 18)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週金曜日に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



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松下記念病院 川崎達也)

2025-08-14

Ⅳ音の深堀

心電図異常を指摘された無症候例

😎 解説
  • 漸増・漸減する収縮期の駆出性雑音あり
  • 前収縮期(拡張後期)に大きな過剰心音
  • 低調成分が主体であるためS4(赤四角)
  • 本例の最終診断は閉塞性肥大型心筋症

😛 追加コメント
  • 洞調律の肥大型心筋症では肥大部位にかかわらずS4を高頻度(約70%)に認める(Circ J  2023;87:1068-74)。
  • なおS4の生じる前提として、心室コンプライアンスの低下あるいは拡張末期圧の上昇に対する心房機能の亢進が必須
  • 増高した心室流入血流が硬い心室を振動させてS4が発生(Tavel ME. Year Book Medical Publishers;1971:44-63)
  • この振動はA波として触知でき(下図),抬起性拍動と合わせて二峰性心尖拍動(double apical impulse)と呼ばれる.
  • なお心房細動ではⅣ音(第4音)は記録されない.また洞調律であっても心房機能が低下すればS4は減弱~消失(


松下記念病院 川崎達也)

2025-08-11

Ⅲ音の深堀

息切れを主訴に受診した症例

😎 解説
  • 心尖部に拡張早期の大きな過剰音を認める
  • S2の約140ms後に出現する低調音(四角)
  • これらの特徴はS3(Ⅲ音/第3音)に合致
  • 本例は最終的に拡張型心筋症と診断された
😛 追加コメント
  • Ⅲ音の機序として,左室充満圧(≒左房圧)の上昇による左室急速流入速度の増大とその突然の停止が推察されている(Jpn Heart J 1976;17:150-62
  • その圧変化は心尖拍動図の急速流入(RF: rapid filling)波として触知することができる(下図参照:上図よりS3が小さいのは心尖に圧端子を置くため)
  • 本例では減弱したS1にも注目(通常は心尖部側でS1>S2).左室収縮力が低下すると左室圧の上昇が緩徐でS1が減弱(Am J Cardiol 1971;28:140-9


松下記念病院 川崎達也)

2025-08-07

頚静脈の座位定性法の弱点

労作時の息切れで来院した症例(座位)


🐝 解説
  • 右頚部腫瘍(30年著変なし)
  • 安静座位で頚静脈は視認せず
  • 深吸気負荷後も頚静脈は陰性
  • 心音は明瞭なギャロップあり
  • BNPは著増(>1000 pg/ml)
  • 心エコー図で左室駆出率18%

🐙 頚静脈の座位定性の弱点

身体所見は診断特異度は高いのですが,感度が少し劣るという共通した問題点があります(評価者のばらつきもですが😑).一方,頚静脈の座位定性(シンプル頚静脈)は感度も特異度も臨床的には十分すぎるくらい高いと思われます.ただし特定の病態では役立たないと感じることもあるので,以下に列記してみます.

松下記念病院 川崎達也)

2025-08-04

フィジカルクイズ(No. 15 & 16)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週金曜日に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



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松下記念病院 川崎達也)

2025-07-31

サロンパスにも負けず

息切れで来院(座位)

😋 解説
  • 首に貼られたシップで頚静脈評価は困難?
  • しかしよく見ると頚部の中央に明瞭な隆起
  • しかも耳垂直下まで陽性拍動を確認できる
  • その後の検査で非代償性心不全を確認した

😎 現場実況
  • 本例はシップを見た瞬間に「これでは判定できないな」と安直に考えてしまい,頚部中央の明瞭な拍動に気が付くのに少し時間を要した.頚静脈拍動は用手的に圧迫できる弱い拍動であるが,最重症の陽性波(三尖弁逆流によるランチシ徴候が多い)はかなり力強い.実際に,本例も指で押さえてもなかなか消失しなかった.
  • 本例では動画の途中に大きな呼吸をしていることにも注目して欲しい(吸気負荷は未実施である).このように自発的な大きな呼吸も心不全所見の一つと考えられる(特にコロナ以降のマスク装着時).なお通常呼吸時に耳下まで達する陽性波を呈する頚静脈拍動は,深吸気負荷でさらに悪化することは少ないと思われる.
  • 本例は心電図で右脚ブロック+左軸偏位+ウェンケバッハ型2度房室ブロックであった(三枝ブロックならぬ四枝ブロック?😁).心電図検査後にもう一度,頚静脈拍動を見直したが,ウェンケバッハ型2度房室ブロックとは自信をもっては言えなかった(反省:同様の過去の経験).理論的にはほとんどすべての不整脈は,頚静脈+頚動脈所見(または橈骨動脈触知)で鑑別できるのだが…(匠の業

松下記念病院 川崎達也)

2025-07-28

リンカーン徴候 Lincoln sign

  • 大動脈弁逆流症による大脈のため膝窩動脈が過度に拍動して下肢が周期的に動く現象
  • 同疾患で頭部が心拍に一致し前後にゆれるド・ミュッセ徴候(de Musset sign)の足版
  • 命名はこの所見を示した第16代アメリカ合衆国の大統領 Abraham Lincoln(1809-1865)
  • 1863年にガードナーが有名な写真 ビッグフット を撮影し左足のぼやけを指摘(下図)
  • ジャーナリストのブルックスが膝窩動脈の拍動で脚が僅かに動いた可能性を提唱した
  • 1961年医師ゴードンが身体的特徴からリンカーンはマルファン症候群であったと推測
  • 1964年シュワルツは彼のマルファン症候群の特徴に関する更なる系譜学的証拠を提示


左足先のみピントがぼけている点に注目

💀 追加コメント
  • リンカーンがマルファン症候群であったかどうかは今もって不明だそうです(DNAは未公表).著名な遺伝学者ビクター・マキュージックは、その確率を50:50としています(Nature 1991;352:279-81).ちなみに彼は暗殺された初めての米大統領です.
  • 本徴候は膝をうまく組んで(体側の膝の真上に膝窩動脈),下肢の力を抜くよう指導など,一定の条件を満たさないと出現しないと予想します.以前に大動脈弁逆流での足背動脈のコリガン脈を記録したことがありますが,とても微妙な所見でした(ココ
  • 骨シンチグラフィにもリンカーン徴候と呼ばれる所見があるようです.下顎骨への核種の取り込みが過剰に亢進した(まるで黒ひげ)状態で,SAPHO症候群や骨パジェット病,悪性腫瘍転移,薬剤性顎骨壊死,副甲状腺機能亢進症などで認めるようです.

松下記念病院 川崎達也)

2025-07-24

本例は中等症~重症の心不全

下腿浮腫で来院した大動脈弁置換術後例(座位)

😋 解説
  • 安静座位で頚部中央に陥凹を認める
  • 深吸気の負荷で一見、拍動が消失?
  • よく見ると顎下に明瞭な陥凹(矢印)
  • 非代償性心不全と考え利尿薬を追加

😎 コメント
  • 心不全の「シンプル頚静脈©」は,拍動を視認するか否かの定性法ですが,慣れてくれば定量法にも挑戦してみてください.
  • 本例は中心静脈圧(≒右房圧)の上昇が中等症~重症の心不全と判定できるでしょうか.大まかな目安は下表をご参考に💁

軽症 中等症 重症
拍動の上縁 鎖骨上窩 頚部中央 顎下
負荷の有無 吸気保持で早期のみ拍動 吸気保持で拍動持続 安静時に拍動
拍動の様式 二峰性の陥凹 一峰性の陥凹 隆起



松下記念病院 川崎達也)

2025-07-21

フィジカルクイズ(No. 13 & 14)

  • 循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.
  • 2025年4月から毎週金曜日に循環器に関するフィジカルクイズを2題ずつX(旧Twitter)で発信しているので,よろしければフォローしてみてください(@PhysicalExamin1).こちらにも2週分ずつまとめてアップします.



👻「フィジカルクイズ」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2025-07-17

MR=鎖骨放散・小

健診で心雑音を指摘された症例

😎 解説
  • 心尖部で収縮期雑音を聴取する
  • Ⅱ音(S2)不明瞭で逆流性雑音
  • 右鎖骨(上)では雑音は不明瞭
  • 心エコーで僧帽弁逆流を認めた
😛 追加コメント
  • 大動脈弁狭窄の収縮期駆出性雑音と異なり(自験例)、僧帽弁逆流の雑音は鎖骨にあまり放散しない。息止めをしない聴診では、呼吸音に埋もれて雑音を認識することが難しい。是非ASとの鑑別に利用したい。
  • MRでは逆流性雑音がⅡ音を超えるため、Ⅱ音の認識が困難になる。ただしこの原則は心尖部では当てはまるが、肺動脈弁領域ではあてにならない。その理由はⅡ音の肺動脈成分(2P)を聴取するためである。

松下記念病院 川崎達也)