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2025-03-10

心不全と長母音(声)

  • 急性の非代償性心不全では発声も注目すべき身体所見の一つになるようです.肺うっ血などによる息切れに加えて,声帯浮腫などの影響があるようです.心不全症例に「あ~」と言ってみてくださいという日が来るのかもしれません(すでに実施されている施設が少なくなかったりして…😅)

🚨 臨床研究Appl Sci (Basel) 2023;13:1827
  • 急性心不全で入院した患者52人の会話を毎日記録
  • 音声と会話の特徴を同定し治療中との関連を調査
  • 治療後は治療前より安定(明瞭で速くて長い発声)


😀 独り言
  • 息切れの判定方法としてはリハビリ中のトークテスト(Talk test)が有名です.運動強度を推定する簡便な方法の一つで,快適に会話しながら行える運動強度はおおむね安全に実施できることがガイドラインにも記載されています. 
  • 昨年の心不全学会での講演で,「長母音を18秒出せれば5メッツ以上の運動耐容能」ということを耳にしました(論文を探し出せず).循環器診療では身体所見が大切ですが,音声に関してはまだこれからの領域かもしれません.

松下記念病院 川崎達也)

2025-03-06

診る練習ビデオ

心雑音で来院した症例

👀 解説
  • 安静では指先に特記すべき所見なし
  • 圧迫時の爪床の中部~遠位部に注目
  • 白色とピンク色の色調変化に気づく
  • 最終診断は二尖弁の大動脈弁逆流症

👂 独り言
  • 心音(特にⅢ音やⅣ音などの低調音)は,何度も聴いて耳に覚え込まします.視覚も同じです.何度も見ていると僅かな変化にも気が付きます.
  • この動画はそういった眼の練習に最適と思われます.本例は中等度の大動脈弁逆流ですが,中等度以上なら,ほぼクインケ徴候は観察できます.
  • 本コンテンツには大動脈弁逆流例の爪床変化が多くアップされています(コチラから).爪圧迫以外の描出ワザも是非,マスターしてください.

松下記念病院 川崎達也)

2025-03-03

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


👻「フィジカル講習会」の過去の投稿は コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2025-02-27

🏆 論文

  • 初期研修医の西機先生が循環器内科で経験した症例がPubMedに収載
  • 左室中部閉塞の形態を呈したATTR心臓アミロイドーシスの一例です
  • 洞調律なのにⅣ音を欠き,OKサイン(Perfect O sign)も不可でした
  • 心アミでParadoxic Jet Flow(奇異性血流)を描出した世界初の報告

🎉 Paradoxic Jet Flow: PJF(奇異性血流)
  • 拡張早期に心尖部から心基部に向かう血流シグナルで,心尖部ポーチの存在の間接的な証拠です.当科は本所見にとても興味を持つ医師が複数名在籍して,今までにPJFに関連する世界初と思われる症例を報告してきました.
  • 例えばPJF雑音(Tex Heart Inst J 2018;45:102-5),運動誘発PJF(J Cardiol Cases 2021;23:170-2),右心系PJF(J Med Cases 2020;11:57-60)などです.とてもニッチな所見ですが,これからもこだわっていこうと思います.

松下記念病院 川崎達也)

2025-02-24

脱水とうっ血

大動脈弁位人工弁症例の息切れ(座位)

💦 解説
  • 頚部の皮膚は乾燥して張りがない
  • 安静時に頚部に拍動もある(矢印)
  • 吸気で拍動の明瞭化 ➜ 内頚静脈
  • 皮膚をつまむ ➜ ツルゴール低下

😐 追加コメント
  • 本例は視診で中心静脈圧上昇(心不全)と血管内脱水と診断できそう
  • BNP値は300台であったがご本人の息切れや倦怠感の訴えは強かった
  • もちろんこのような症例には安易な利尿薬追加や減塩指導は避けたい
  • 血圧が正常高値であったため降圧薬の強化と心臓リハビリを追加した

松下記念病院 川崎達也)

2025-02-20

😊 素敵な紹介 パート2

なんとなく元気がない慢性心不全例(座位)

💁 ランチシ徴候(三尖弁逆流)
  • 頚部の中央に明瞭な拍動(隆起)あり
  • 容易に圧迫されるため動脈でなく静脈
  • 心エコー図で高度の三尖弁逆流を確認
  • 推定される肺動脈収縮期圧は50 mmHg
  • 整脈かと思ったが心電図では心房細動
  • 最終的に心不全(PEF)の増悪と診断

 📧 共通言語「座位で頚静脈が見える」
  • 本例もかかりつけ医からの紹介がとても素敵であった(前回の素敵な紹介).「足に浮腫はないけど,首がピコピコしています」と...👍
  • 頚静脈の座位定性法が広がると,心不全の診断をより迅速に行うことができます.無料アプリ「シンプル頚静脈©」を是非ご活用ください
  • 病院やクリニック,救急隊,施設職員だけでなく,心不全患者さんやその家族にもこの表現が共通言語として広がることを願っています.

(無料画像から作成)

松下記念病院 川崎達也)

2025-02-17

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です.「生きた physical examination」を体感・習得して,「感動できる」ものにしていきたいと思っています.毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


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松下記念病院 川崎達也)

2025-02-13

健常者の心機図

フリーの画像がなくて苦労されているとお聞きしたのでPPTで作成してみました(版権放棄😙ご自由にお使いください) 
  • 心電図
  • 心音図
  • 頚動脈波曲線
  • 頚静脈波曲線
  • 心尖拍動図


松下記念病院 川崎達也)

2025-02-10

心音クイズ(Q7・Q8)

  • 持田製薬さんと作成している心音クイズの第四弾です(GROUP T inc.さんにも感謝 🙏).今回はⅡ音肺動脈成分の亢進とⅢ音が共存した症例および重合奔馬調律から四部調律に変化した症例を取り上げました.5領域(2R, 2L, 3L, 4L, 心尖部)の心音と複数の心音図を提示しています.是非,心音の違い(変化)を聴き比べてみてください.
  • 今回でシーズン1(3ヵ月毎2症例計8例)が終了しました.そしてシーズン2も始まることが決定しました 😁 無料なのでよろしければご覧ください(※Q3以降は簡単な登録が必要).一緒に聴診学の楽しさと奥深さを共有できれば作成者としては嬉しい限りです .


松下記念病院 川崎達也)

2025-02-06

頚静脈の座位定性法も無敵ではありません

鼠経ヘルニア術前に心電図異常を指摘された症例(座位)


  • 息切れなど心不全を示唆する症状はないが,BNP値は150 pg/ml程度に上昇していた.心エコー図には特記すべき異常所見はなし.
  • 心不全の有無を判定するため頚部を観察したが,大きな腫瘍に占拠されていた.橋本病による長い治療歴あり(現在はeuthyroid)
  • 心音でも心不全を示唆する所見(Ⅲ音やⅡ音肺動脈成分の亢進など)はなし.日常生活から判定した運動耐容能も保たれていた.
  • 胸部圧迫感の自覚はなく,冠危険因子も高血圧のみ.最終的に手術に支障はないと判断して,紹介元の外科医に返書を作成した.
  • 稀ながら頚静脈の座位定性法が困難が状況がある.甲状腺疾患による甲状腺腫肥満猪首,座位姿勢の困難例などが相当する.

松下記念病院 川崎達也)

2025-02-03

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


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松下記念病院 川崎達也)

2025-01-30

今週の一枚 🎯

胸痛で来院した中年男性



松下記念病院 川崎)

2025-01-27

仕事外で訪れた老人ホームで...

下腿浮腫があるとスタッフから聞きました(座位)

👵 解説
  • 両側の下腿浮腫(圧痕性)
  • 頚部に眼をやると拍動あり
  • 拍動は陥凹なので頚静脈!
  • 非代償性心不全と診断した

 👴 現場実況
  • 本例のバイタルサインは安定し,息切れなど心不全を示唆する症状は全くありませんでした.ほとんどの時間をベットに腰かけて過ごしているため,施設のスタッフは重力による水分貯留と判断していたようです.
  • 内頚静脈の判定方法(シンプル頚静脈©)を施設スタッフにお伝えました.幸い翌々日が施設担当医の診察日で,そこで利尿薬が処方され改善 😀 原因はお菓子の大量消費による塩分過多と思われました 😮

松下記念病院 川崎達也)

2025-01-23

顎下と顎のラインにも注目

息切れが再発した拡張型心筋症例(座位)

😐 解説
  • 安静座位で頚部に拍動は視認しない
  • 深吸気(保持)でも拍動は出現せず
  • BNP値は157 → 1,400 pg/mLに著増
  • 最終的に心不全増悪と診断して入院
💁 追加コメント
  • 内頚静脈は深部静脈であるため胸鎖乳突筋を介する皮膚面の拍動として認識されます.よって本例のように評価が難しい場合があります.一方,外頚静脈は表在静脈であるため視認は容易ですが,中心静脈圧の推定には不向きです(その理由).
  • 高度の肥満では内頚静脈の観察は困難になります(本例のBMIは約35 kg/m2).BMIがあまり大きくなくても首が太くて短い場合(いわゆる猪首)では同様に観察が困難です.一つの目安は顎下や顎のラインが不明瞭なことでしょうか(下図)


松下記念病院 川崎達也)

2025-01-20

第21回 循環器Physical Examination講習会より


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2025-01-16

今週の一枚 🎯

発熱が続く症例の眼瞼結膜

👀 点状出血(Petechiae)
  • 右の眼瞼結膜に複数の点状出血を認める
  • 収縮期雑音はあるが大動脈弁位は人工弁
  • 他の末梢サイン(オスラー結節など)無
  • 経胸壁心エコーで大動脈弁周囲は不鮮明
  • 経食道心エコーで大動脈弁の疣腫を確認
  • 血液培養4ボトルから全てE. faecalis検出
  • 最終診断はもちろん感染性心内膜炎(IE)

😐 IEあれこれ
  • 感染性心内膜炎で血管塞栓に関連した無痛性の点状出血が生じることは,カナダ生まれの内科医であるSir William Osler(1849–1919)が19世紀に既に記載している(Br Med J 1885;1:522-26).
  • その出現頻度は罹患部位や病期によって異なると思われるが,0.6~30%と報告されている(月間心エコー 2025年1月号).体のあらゆる部分に出現するが,眼瞼結膜や口腔粘膜が検出しやすい.
  • 感染性心内膜炎のDuke診断基準が2023年に改定された(Clin Infect Dis 2023;77:518-26).このDuke-ISCVIDクライテリアでも末梢サインは臨床診断の小基準として明記されている.
  • ちなみに欧州で行われた感染性心内膜炎3011例の前向きコホート研究(Eur Heart J 2019;40:3222-32)では,22.3%に発熱がなく,34.9%では心雑音を欠いていたことにも注目しておきたい.

👻「今週の一枚」の過去の投稿は コチラ(松下ERランチ・カンファレンスの名物コーナー)

松下記念病院 川崎)

2025-01-13

😊 素敵な紹介状

息切れが増悪した慢性心不全例(座位)

💗 慢性心不全の増悪
  • 座位で通常呼吸時には頚部に拍動なし
  • よく見ると吸気時に鎖骨上窩に拍動?
  • 深吸気で拍動が安定して出現(矢印)
  • 拍動は陥凹 → 静脈性 → CVPは上昇 

 💓 臨床現場
  • 本例はかかりつけ医からの紹介状がとても素敵であった.「頚静脈の拍動が見えるのでSGLT2阻害薬を追加しました」と記載してあった.
  • 当院受診は薬剤追加の1週間後で,その間に患者さんも自覚症状がずいぶん楽になった様子.当時は通常呼吸時に拍動が明瞭だったと予想.
  • もっとも吸気負荷後にまだ拍動が観察できるので追加加療は必要.自験データでは安静時陽性と吸気後陽性の1年後事故率は同程度(論文

松下記念病院 川崎達也)

2025-01-09

今週の一枚 🎯

腎機能が悪化した症例(Cr 1.4 → 4.5 mg/dl)



松下記念病院 川崎)

2025-01-06

第21回 循環器Physical Examination講習会より


循環器Physical Examination講習会は故・吉川純一先生が2003年に立ち上げられた身体所見に関する研究会です。「生きた physical examination」を体感・習得して、「感動できる」ものにしていきたいと思っています。毎週情報発信をしているので,よければSNSでフォローしてみてください.


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松下記念病院 川崎達也)

2025-01-02

負荷心尖拍動

慢性左心不全の増悪例

😐 解説
  • 乳房下に抬起性心尖拍動 → 左室の拡大・肥大
  • 心窩部にも明瞭な抬起性拍動 → 右室負荷の疑い
  • 座位から立位の体位変換で左室の拍動は変化なし
  • 心窩部の拍動は減弱~消失(右室負荷の減少?)

💟 追加コメント
  • 本例の心尖拍動の変化をどう解釈するかは難しい.心窩部の拍動が立位に伴い目立たなくなったことは,前負荷の減少による右室負荷の低下で説明できそう.一方,心尖拍動(左室)の所見は,前負荷の減少が立ち上がりという仕事で相殺されたと考えるのがいいかもしれない.
  • 心臓の検査では負荷を積極的に併用している(心電図や心エコー,核医学,MRI,心カテなど).身体所見でも然り.負荷を併用した頚静脈評価法(負荷頚静脈)はかなり解明されてきたと個人的には思っている.今後は負荷心尖拍動の臨床的意義も調べていく必要があるかも...

松下記念病院 川崎達也)