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2020-05-28

🏆 論文

  • 当院の理学療法士である笠井先生(日本心臓リハビリテーション学会認定指導士)の研究論文が出版されました
  • 内頸静脈は中心静脈圧の推定に有用ですが特定の体位(例:45度座位)を要するなど評価に訓練が必要です
  • そこでより簡便な簡易定性法(座位で鎖骨上に見えるか否か)を導入し心不全例の6分間歩行前後で判定しました
  • 安静時に内頸静脈を視認しなくても負荷後には14%で視認でき,陽性群は運動耐用能が低く心事故も高率でした
  • 同判定方法は極めて容易であり,慢性心不全症例の新たなリスク評価法として臨床現場への普及が期待されます

(Am J Cardiol 2020;125:1524-8)

 👻 独り言
  • 内頸静脈を評価する従来複雑法ではカルテ記載法も以外に容易ではありませんでした(例:内頸静脈の変動上縁は45度座位で胸骨角から垂直方向に3cm).しかし本例ではとても簡便です(座位陰性).実際の症例 ➜ コチラ.おまけに本手法はクスマウル負荷蹲踞負荷などにも容易に応用できるのでとても実践的です.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-05-25

心タンポナーデ

心タンポナーデを生じた担癌症例の頸静脈(45度座位)

🐥 解説
  • ドレナージ前(後半は深吸気保持) ➜ 外頸静脈が一貫して隆起(まさに怒張)+クスマウル徴候陽性
  • ドレナージ後 ➜ 外頸静脈の怒張は消失し,内頸静脈に陥凹が出現している(特に後半の深吸気時)
  • 心タンポナーデでは心周期を通じて持続的な圧迫でy谷が消失(y谷は健常者でも不明瞭なこと有
  • さらに奇脈(吸気時の収縮期血圧が10mmHg以上低下)があれば心タンポナーデが強く疑われる

🐤 奇脈のナゾ
  • 深吸気には通常でも収縮期血圧が低下します(3-9 mmHg).奇脈と言うからには,収縮期血圧が上昇する病態なのかと思うかもしれませんが,そうではなく低下が増強する状態です.Kussmaulが奇脈と名付けた理由は「心尖拍動が1呼吸周期を通して心尖拍動を認めるにも関わらず,吸気時に脈拍が消失するため」だそうです(マクギーのフィジカル診断学より).
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination クスマール
松下記念病院 川崎達也)

2020-05-21

爪も見よう 🐾(心臓ではありませんが…)

ふらつきでERに搬入された症例

😗 偽性黄色爪症候群(Pseudo yellow nail syndrome)
  • 黄色爪(おうしょくそう)症候群とはイギリスの皮膚科医Sammanらが提唱した疾患概念(Br J Dermatol 1964;76:153-7).先天性なリンパ還流異常があり,後天的に感染などを契機に顕在化すると考えられている.爪甲は肥厚して成長遅延を伴う(爪の成長速度:正常人では週0.5~1.2mm,黄色爪では週0.2mm以下).合併症として生じた肺病変(胸水や気管支拡張症など)やリンパ浮腫の治療以外に,ビタミンEやクラリスロマイシンの内服,ステロイド局注などが行われることがある.(参考:日呼吸会誌 2010;48:458-62
  • 本例は一見,黄色爪症候群(Yellow nail syndrome)と思われるが,手指爪には問題なかった(ようである)ため偽性黄色爪症候群と考えられる.数年間放置した足爪が本例のような外観を呈することは稀ではない.偽性黄色爪症候群(Pseudo yellow nail syndrome)のその他の原因として薬用化粧品などが報告されている(J Cutan Aesthet Surg 2013;6:4-11).なお本例の主訴であるふらつきは感染症(フォーカス不明)によると考えられた.

🉐 関連投稿(爪編)

松下ERランチ・カンファレンスとのマルチポストです 🎶
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-05-18

📣 心音クイズ:倦怠感と息切れで来院した男性





フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-05-14

冷たい手足

意識消失で倒れているところを発見されてERに搬入された症例



フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-05-11

肥大型心筋症のクスマウル徴候(外頸静脈)

無症状の非閉塞性肥大型心筋症(座位で通常呼吸 ➜ 深呼吸)

👶 解説
  • 座位での通常呼吸では頸静脈は視認できない(座位陰性).一方,深吸気後には外頸静脈が隆起している(クスマウル徴候陽性).呼吸再開後には外頸静脈の怒張は速やかに消失している.
  • クスマウル徴候は収縮性心膜炎や右心不全,重症左心不全でよく知られているが,肥大型心筋症でも決して稀ではない.本例は外頸静脈であるが,内頸静脈で出現することもある ➜ コチラ

🐣 おまけ

フィジカル 広場 心臓 physical exam examination クスマール
松下記念病院 川崎達也)

2020-05-07

👀 眼クイズ

発熱が持続する症例の左眼瞼結膜


フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)

2020-05-04

心膜ドレナージ

アブレーション後に心タンポナーデになり心膜ドレナージを施行した症例

🐧 解説
  • 本例は発作性心房細動を有したが,肥大を含めた他の器質的心疾患はなし.しかしドレナージ中はとても力強い心尖拍動を認めた(視診でも触診でも抬起性と言えると思う).カテーテル抜去後は,胸壁を介して心尖拍動を認識することはできなかった(半左側臥位を含む).心尖拍動の触知の可否は,肥大の程度や胸壁からの距離,性別(女性)に影響されることが報告されている(J Cardiol 2010;55:256-65

😗 おまけ
  • インターベンション中の合併症に対して緊急に挿入した心膜ドレナージ(ピッグテールカテーテル)の抜去時に,患者さんが疼痛を訴えることが少なくない.医師も引き抜き時にかなりの抵抗を感じることがある(本例ではいずれも著明).
  • このような現象は悪性疾患などに伴い生じた心タンポナーデで挿入した心膜ドレナージでは稀である.その正確な機序は不明であるが,急性心膜炎の状態にある心膜刺激による疼痛と一部凝固した心嚢内血液による引き抜き抵抗が予想される.
フィジカル 広場 心臓 physical exam examination
松下記念病院 川崎達也)