このブログを検索

2023-07-31

👂 心音の周波数帯域

  • Hzは周期的な現象の単位で1秒あたりの生起回数のこと(基本単位としては秒の逆数 /s)
  • Hz(ヘルツ)はドイツの物理学者 Heinrich Rudolf Hertz(1857-1894)の名に由来する
  • 心音の主成分は〜100 Hz(S1は10~40 Hz,S2は30~40 Hz),心雑音は200 Hz以上が多い
  • ヒトの可聴域は20 Hz~20 kHz(2 kHz~5 kHzが最も高感度で,加齢に伴い高周波が低下)



さまざまな楽器の周波数帯域

松下記念病院 川崎達也)

2023-07-27

歓迎されないコンビ

難治性左心不全で入院中の症例

👿 解説
  • 座位で顎下に内頸静脈の拍動(陥凹)あり(ビデオの矢印)
  • 中心静脈圧は高度に上昇と推察 ➜ 非代償性心不全に合致
  • ベットテーブル(心臓より15cm低位)にある手背を確認
  • 末梢静脈の怒張なくツルゴール低下 ➜ 血管内脱水の疑い

💙 独り言
  • ツルゴール低下は脱水を示唆しますが,高齢者ではあまり当てになりません(ツルゴール消失は有用).もっとも非代償性の心不全症例では心臓より下にある表在静脈は怒張することが多いため(自験例),ツルゴールより座位アンサム徴候を確認するほうが多いでしょうか.
  • 上記ビデオで見られるように中心性のうっ血(本例では肺うっ血)と末梢の脱水が共存した心不全症例では,その加療がより困難になることが多いような気がします.例えばカテコラミンなど強心剤の持続静注やメカニカル・サポートの導入を要することが少なくないと思います.

松下記念病院 川崎達也)

2023-07-24

👴 歴史クイズ




松下記念病院 川崎達也)

2023-07-20

クインケ脈のスマホ法

無症状の大動脈弁逆流例(中等症〜重症)の爪床

👶 解説
  • 明らかな拍動(クインケ脈/Quincke's pulse)はなかった
  • 爪床の圧迫でも出現せず(動画なし:陽性になった自験例
  • ただしスマホのライトに爪床を置くと明瞭な拍動が顕性化

🔦 診察室実況
  • スマホのライトを用いたクインケ徴候の検出方法はtwitterなどでも有名です.用指的な爪床圧迫とは異なり,微妙な力加減が一切不要でオススメです.
  • 実は頸静脈拍動を見るためのペンライトでもやってみました.僕のライト(下図)は巨匠のお薦めで,ペンライト界のメルセデス・ベンツだそうです.
  • 爪床拍動はペンライトの方がスマホよりはるかに明瞭でしたが,患者さんが指の違和感を訴えました.自分でやってみると数秒後にかなりの熱感 😱


💅 爪に関する過去の投稿 ➜ コチラ(PC版なら画面右の分類からも選択可)

松下記念病院 川崎達也)

2023-07-17

驚異の心臓:トガリネズミ

🌟 先日の松下心電塾
  • 当院の初期研修医に「最も心拍数が速い生き物は何?」という宿題をだしました.
  • 翌週にトガリネズミの心拍数がとても速いことを調べてきてくれた方がいました.

  • トガリネズミ科(Soricidae)は哺乳綱真無盲腸目に分類されるが,ネズミ類とは縁遠くモグラなどに近縁の動物で英語では shrew と総称される.
Wiki CC 表示-継承 3.0)

  • 3頭のソリシントガリネズミ(平均体重3.02 g)を麻酔下で最大超過用量のイソプロテレノールを単回投与したときの最高心拍数は1,043±66 拍/分 (Am J Physiol 1992;262:R842-51

💙 トガリネズミの心臓の特徴
  1. 大きくて細長い心室
  2. 心房中隔と心室中隔,房室弁と動脈弁は通常の哺乳類と同様
  3. 心室壁はほとんどが緻密な心筋で,右心内腔に小柱はほぼなし
  4. 洞結節と心室中隔頂部に連続する房室伝導軸あり
  5. 冠動脈は大動脈に比例して巨大

😎 おまけ
  • 僕が用意していた心拍数が最も早い生物に対する答えは中南米にすむハチドリでした.細小の鳥類で空中で静止するホバリング飛行ができ最大心拍数は毎分1,500回に達するようです(Eur J Cardiothorac Surg 2006;29:S178-87
  • ちなみに最も遅いのはガラパゴス諸島に生息する最大の陸ガメであるガラパゴスゾウガメで心拍数は毎分6回だそうです(Dialogues in cardiovascular medicine 2006;11:5-17).ただし冬眠明けのガマは毎分1回という情報あり.

松下記念病院 川崎達也)

2023-07-13

診察室での簡便な負荷

慢性心不全でフォロー中の症例(数日前に息切れを自覚/現在は改善)

😽 解説
  • 端座位で内頸静脈の拍動なし ➜ 中心静脈圧の高度上昇なし
  • 吸気負荷で拍動は出現せず ➜ 中心静脈圧の中等度上昇なし
  • 吸気を保持したまた左上肢挙上で拍動なし ➜ ちょっと安心
  • さらに前屈位負荷を追加しても拍動は見えず ➜ かなり安心
  • 心不全は十分に代償されていると判断して内服薬は変更せず

😺 独り言
  • 本例で行なった負荷の組み合わせはとても簡便なので,時々診察室で行なっています.ただし吸気負荷による前負荷の増大や前屈位による胸腔内圧の上昇と比較して,上肢挙上に伴う心負荷のメカニズムは意外に複雑の様です(過去の投稿).
  • 蹲踞姿勢は前負荷増大+後負荷増大+胸腔内圧上昇で強い負荷です(トリプル負荷).吸気負荷+蹲踞姿勢は外来診察室で行える最強の心負荷(負荷の四重奏)でしょうか.もっとも蹲踞は膝痛などで実施できないことが少なくありません.

松下記念病院 川崎達也)

2023-07-10

問題:硬い左室+Ⅳ音なし=?

  • 先日,明瞭な左室肥大(びまん性に15mm程度)と拡張障害(E/e'=30)を認めた方が精査目的で循環器内科を受診されました.洞調律にも関わらずⅣ音が聞こえませんでした.Ⅳ音はⅠ音に近接すると聴診では認識が困難になることがあるため,心音図でも確認しましたが,やはりⅣ音は痕跡すらありませんでした.本例は最終的にATTR型の心アミロイドーシスと診断されました.

  • ピロリン酸は両心室のみならず両心房にも良好に集積(骨より明瞭)していました. 左室肥大や虚血などで左室コンンプライアンスが低下する病態ではⅣ音をよく聴取します(例:洞調律の肥大型心筋症では70%以上).一方.硬い左室を呈する典型疾患である心アミロイドーシスでは洞調律であってもⅣ音が欠損してくることが報告されています(Am J Cardiol 2000;86:244-6,他) 

  •  Ⅳ音が生じるためにはstiff LVのみでは不十分で,そこに血流を押し込む心房の頑張り心房の辛抱)が必須です.洞調律のHCMでもⅣ音がなければ,運動耐容能は低下して心事故(特に心房細動への移行)と関連することを当院から報告しています(Ann Noninvasive Electrocardiol 2022;27:e12932).アミロイドーシス症例の心房障害の原因は主として心房へのアミロイド沈着の様です(Clin Cardiol 2021;44:322-31,他)

松下記念病院 川崎達也)

2023-07-06

いつも患者さんから教えてもらっています 🙇

中等度の大動脈弁閉鎖不全の症例

😀 解説
  • 爪床が僅かながら周期的な色調変化(クインケ脈
  • 自ら指先を机に押し付けてもらうと色調変化消失
  • ただし押し付けを解除後の数拍は色調変化が明瞭

😅 臨床現場
  • 患者さんに大動脈弁逆流で出現する身体所見を説明しながら,一緒に爪を見ていました.僕は陰性かなと思っていたけど,患者さんが「先生,拍動が見えるよ」と逆に教えてくれました.確かによく見たらわずかに拍動がありました.指先を机に押し付けて解除時に拍動が出現することも教えてくれました.
  • クインケ脈にも程度があると思っています.その程度(負荷不要>他動的圧迫>自動的圧迫)と部位(指先全体>爪床のみ)の組み合わせから,ある程度は大動脈逆流の重症度判定が可能でしょうか(過去の投稿).本ページには多数のクインケ徴候が投稿されていますのでよろしければご確認ください(コチラ).

松下記念病院 川崎達也)

2023-07-03

心尖拍動も体位依存

肥大型心筋症でフォロー中の症例(症状なし)

🐤 解説
  • 左半側臥位では明瞭な抬起性心尖拍動あり
  • よく見ると付箋の振動から二峰性心尖拍動
  • ただし仰臥位では心尖拍動は不明瞭になる
  • もちろん本例では巨大Ⅳ音を聴取かつ触知

🔗 復習
  • 心尖拍動は,その位置(心拡大と関連)や様式(心肥大と関連)などを評価することが大切です.ただし頸静脈と同様に,体位によってその所見が変化します(視認性や触知率も含む)
  • 感度的には左半側臥位がベストですが,座位も簡便で悪くないと思います(必要に応じて呼吸調整).最も分かりにくい(感度が低い)のは仰臥位ですが,逆に特異度は良好でしょうか

松下記念病院 川崎達也)